JP2657393B2 - 化学塞栓療法剤 - Google Patents

化学塞栓療法剤

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、難溶解性制癌剤の粗大結晶よりなる化学塞
栓療法剤に関する。
(従来技術) 癌化学療法は、近年、経動脈的塞栓術を中心として、
多岐にわたる方法が試みられている。
この際、殆ど全ての治療実験に於て用いられる材料
は、制癌剤に何等かの成型素材を加えて製剤化し、長期
間の徐放性を付与した製剤である。素材としては、生分
解性物質として、リポゾーム(リン脂質)、ゼラチン、
コラーゲン、澱粉架橋体、ポリDL−乳酸、ゲルフォー
ム、及び血清アルブミン架橋体等が用いられる。また生
非分解性物質としては、エチルセルロース、シリコン、
ポリビニルアルコール、ポリエチレン、カルボキシメチ
ルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、
脂肪族モノグリセリド、脂肪酸プロピレングリコールモ
ノエステル、スチールコイル、オレイン酸エチル、ポリ
エステル、ポリアミド、ポリウレタンポリアクリロニト
リル、ポリアクリルアミド、ポリアクリルサンエステ
ル、ポリプロピレン、及びポリ塩化ビニール等が用いら
れる。
これら素材を用いた製剤の形態としては、マイクロカ
プセル、マイクロスフェアー、ナノカプセル、ヒドロゲ
ル粒子、粉粒体、繊維集合体、フィルム、シート、針、
及びスポンジ等が挙げられる。これまでの治療実験の試
みとしては、例えばエチルセルロースマイクロカプセル
やアルブミン小球体を始めとして、肝臓や腎臓の悪性腫
瘍の化学塞栓療法は比較的良好な成績を示している。
(発明が解決しようとする課題) しかしながら、これらの製剤を動脈内に注入した場
合、生体組織内に存在して、生分解性素材は多種の分解
代謝物を生成し、その毒性の確認が殆ど全ての素材につ
いて成されていない現状、及び生非分解性素材では、永
久に不必要な異物として残留し、その長期安全性の保証
が成されていない現状の下では、未だ実用化は困難であ
る。また、技術的には、制癌剤の含有率が低く、多量の
生体異物である素材の投与を必要とする事等、非常に多
くの課題が存在している。
(課題を解決する為の手段) 臨床応用を図る上で、従来の化学塞栓療法が抱えてい
る多くの課題を解決する手段として、本発明者等は、制
癌剤の投与に際し、製剤化の素材を用いる事無く、制癌
剤単独の物理化学的性質を活用する方法を検討した。
難溶解性の制癌剤の結晶について、その粒子径を選択
する事により、その溶解速度を調節し、結晶状態のフラ
クションは生体組織において塞栓効果を、溶解したフラ
クションは制癌作用を発揮し、これらの両面の競合によ
り、化学塞栓療法剤と成すものである。
即ち、本発明は平均粒子径が約10〜1500μmのシスプ
ラチンの粗大結晶よりなる化学塞栓療法剤に関するもの
である。
本発明で用いられる制癌剤は水に対する溶解度が、37
℃に於て約5%以下、より好ましくは3%以下、更に好
ましくは1%以下の難溶性であれば、その殆どが対象と
なる。より具体的には、シスプラチンを始めとする白金
錯体化合物、エトポシド及びその類縁化合物、アドリア
マイシン及びその類縁化合物、マイトマイシン、シトシ
ンアラビノシド、ブレオマイシン等の脂肪酸誘導体、5
−FUの難溶性誘導体、及び塩基性制癌剤の難溶性塩類等
が例として挙げられる。
各薬剤の結晶の大きさは、投与ルート、投与量、及び
必要とする持続放出時間等の治療目的に応じて調節され
る。実際の投与技術上は、例えば、生理食塩液に分散さ
せて、任意の太さの注射針を自由に通針する大きさであ
る必要がある。この場合の目安としては、10〜1500μm
より好ましくは20〜900μm、更に好ましくは50〜800μ
m程度の範囲の粒子径が望ましい。
なお、本発明の様に、粗大結晶を用いる事は、即、制
癌剤のより化学的純度が高い品質を用いる利点ともな
る。一方、例えば、動注するなど、脈管に注入する治療
方法から、結晶の調製は無菌操作下で行い、かつ、発熱
性物質や変異原性物質の混入を避ける必要がある。
本発明の粗大結晶を製造するには、通常の工業的な結
晶の析出条件とは異なった製造条件を必要とする。即
ち、再結晶の際に、自然冷却又は室温(少なくとも20
℃)以上に保温しつつ、長時間かけて結晶の成長を促す
操作が必須である。
(発明の効果) 後記、実施例1の製剤を用い次の実験を行った。
(1).溶出速度試験(in−vitro) 本品結晶10mgを37℃の生理食塩液5mlに分散し、1時
間毎にシスプラチンの溶出量を測定した。その結果、各
時間毎の溶出量は約800〜1400μg/mlの範囲であり、8
時間後に飽和濃度に達した。
次に、ポリエチレン製細管に本品結晶10mgを充てん
し、これをリンゲル液10ml入り試験かんに浸漬した。以
後、30分毎に、この結晶入りポリエチレン管を次々と新
しいゲル液10mlに移し替えて、各時間毎のリンゲル液中
のシスプラチンの濃度を測定した。その結果、各時間毎
の濃度は40〜50μg/mlの範囲で24時間後迄ほぼ一定であ
った。
以上の様に、本発明の実施例1で調製されたシスプラ
チン粗結晶は極めて徐放性かつ時間に対して一定の溶出
量を示した。
(2)犬への投与試験(in−vivo) 下顎偏平上皮癌担癌マルチーズ犬(♂、7Kg)に2mg/k
gの投与量で、本発明のシスプラチン粗結晶を生理食塩
液に分散し、所属動脈に動注した。
1).抗腫瘍効果 結果を表1に示す。
表1に示した様に、腫瘍体積は、コントロール(薬剤
非投与群)に対して27日後に約80%に減少していた。
2).血中濃度 血中濃度は、投与後、1、2、3及び4日の時点で各
々0.39、0.27、0.23、及び0.19μg/mlと極めて定常的な
値を示した。
これらの結果は、粗結晶が腫瘍組織及び血管に滞留し
てシスプラチンが持続放出され、腫瘍が徐々に縮小さ
れ、化学塞栓剤としての効果を示しているものである。
本発明の化学塞栓療法剤は、以上に述べた様に、血管
を通じて癌腫及び肉腫組織への到達、及び、栄養血管内
部に留まる事による迅速な血管の閉塞の両面から腫瘍の
壊死を早め治療を確実にする事を目的としている。従っ
て、制癌剤の溶出速度も極めて徐放性、かつ各時間毎の
溶出量が一定している事が望ましい。難溶性制癌剤粗大
結晶は粒度分布の影響も作用して、比較的長期間に渡っ
て一定量の溶出が認められ、癌化学療法剤として優れた
性能を持つものである。
(実施例) 以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
実施例 1. シスプラチン1.25gを0.1N−塩酸100mlに加え、85℃に
て溶解させる。溶液を熱時0.22μmのミリポアフィルタ
ーでろ過して除菌し、約3時間を要して室温(20〜25
℃)に冷却し、更に一夜放置する。析出した粗大結晶を
ろ取し、3mlのエタノールで洗浄後、真空乾燥する。以
上により得られた結晶の大きさは約9〜1520μm、最頻
粒径は約220〜460μmであった。
実施例 2. エトポシド1gを15mlのポリエチレングリコール400に
溶解し、この溶液に、50℃で加熱下に、注射用蒸溜水10
0mlを加えて粗大結晶を析出させる。次に、4時間を要
して徐々に冷却し、室温(20〜25℃)で一夜放置後、ろ
取し常温で通風乾燥する。以上により、約15〜1000μ
m、平均粒子径約350μmの結晶を得る。
(1)溶出試験(in−vitro) 本発明の結晶10mgをガーゼに包み、これを、10mlのリ
ンゲル液入り試験管に浸漬する。各6時間毎に順次新し
い試験管に移し替えた後、各試験管内のリンゲル液中に
溶出したエトポシドの濃度を測定した。その結果、120
時間迄測定したが、濃度は、約9〜11μmでほぼ一定で
あった。この際、結晶は、ガーゼの中で、殆ど変わらぬ
外観を示した。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】平均粒子径が10〜1500μmのシスプラチン
    の粗大結晶よりなる化学塞栓療法剤
JP63119154A 1988-05-18 1988-05-18 化学塞栓療法剤 Expired - Lifetime JP2657393B2 (ja)

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