JP2650516B2 - 二重環縫いミシンの糸切り装置 - Google Patents

二重環縫いミシンの糸切り装置

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JP2650516B2
JP2650516B2 JP15776891A JP15776891A JP2650516B2 JP 2650516 B2 JP2650516 B2 JP 2650516B2 JP 15776891 A JP15776891 A JP 15776891A JP 15776891 A JP15776891 A JP 15776891A JP 2650516 B2 JP2650516 B2 JP 2650516B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、二重環縫いミシンの糸
切り装置に関し、特に糸切り装置に設けた下メスと上メ
スとのルーパーに対するルーパーの移動方向と直交する
方向への位置調節の簡単化を図ったものに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、一般に、ルーパーと1又は複数の
縫針とを用いて加工布に飾り縫いが可能な二重環縫いミ
シン及びこの二重環縫いミシンにおける飾り縫い終了時
にルーパーの下糸と縫針の針糸とを切断する糸切り機構
は周知である。例えば、特公昭61─9080号公報に
は、針板の直ぐ下側に、1対の湾曲した案内スリットが
形成され且つ糸保持子を取付けたすべり板がルーパーの
駆動方向と平行に配設され、更に糸保持子の上側に位置
するカッタとその下側に位置する糸挟子とを取付けた担
持体が糸保持子と平行に配設され、駆動レバーの回動に
よりすべり板をルーパーの方へ移動させて糸保持子に針
糸を係合させ、すべり板の待機位置への移動途中におい
て、カッタで針糸を切断するようにした糸切断装置が記
載されている。
【0003】ところで、本願の発明者は、ルーパーの下
糸に係合する第1フックと縫針の針糸に係合する第2フ
ックとを設けた下メスを下メスレバーに取付けるととも
に、これら両糸を切断する為の上メスを上メスレバーに
取付け、これら両メスレバーの回動支点をミシンベッド
部に設けたベースプレートに同一箇所で回動可能に枢支
し、糸切り駆動手段により、下メスレバーを待機位置と
下メスが針糸及び下糸に係合する作用位置とに亙って往
復回動させるとともに、上メスレバーをその待機位置と
糸切断位置とに亙って往復回動させることにより、下メ
スレバーが作用位置へ回動したときに、下糸とルーパー
に係合している針糸とを下メスに係合させ、その後下メ
スレバーが待機位置へ回動する途中において、下メスに
係合した両糸を糸切断位置の上メスで切断するようにし
た糸切り装置を実用化した。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ここで、一般に、この
種の糸切り装置においては、下メスレバーが作用位置に
移動したときに、特に下メスに下糸及び針糸を確実に係
合させる為に、下メスの位置を、ルーパーに対してルー
パーの移動方向と直交する方向(以下、ルーパーの移動
直交方向という)に精度良く位置調節する必要があり、
また下メスに係合した下糸及び針糸を上メスで確実に切
断させる為に、糸切断位置の上メスの位置を下メスに対
して正規の位置に精度良く位置調節する必要がある。
【0005】しかし、前記本願の発明者が考えた糸切り
装置においては、上メスレバー及び下メスレバーをベー
スプレートに回動可能に枢支して、これら両メスレバー
を糸切り駆動手段により回動させて、下メスに係合した
針糸及び下糸を切断する構成なので、この糸切り装置を
ミシンに組込む前段階において、上メスと下メスとの位
置関係を正規の位置関係となるように位置調節した状態
で、上メスを上メスレバーに取付け且つ下メスを下メス
レバーに取付けたとしても、糸切り装置をミシンに組込
んだときに、下メスレバーを作用位置に回動させたとき
の下メスの位置がルーパーの位置に対してルーパーの移
動直交方向にズレている場合には、下メスをルーパーの
移動直交方向に位置調節しなければならず、しかも同時
に上メスを下メスの位置変更に応じて再度位置調節しな
ければならず、ルーパーの位置に対する上メス及び下メ
スの位置調節作業が非常に煩雑化するとともに、この調
節作業に多大の時間を要すること、などの問題がある。
【0006】本発明の目的は、糸切り装置に設けた下メ
スと上メスとのルーパーに対するルーパーの移動方向と
直交する方向への位置調節を簡単化し得るような二重環
縫いミシンの糸切り装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明に係る二重環縫い
ミシンの糸切り装置は、下端に縫針を装着可能な針棒
と、この針棒を上下に往復駆動させる針棒駆動機構と、
針糸に下糸を係合させるためのルーパーと、このルーパ
ーを針棒の上下動と調時して布送り方向と直交する方向
に往復駆動させるルーパー駆動機構とを備えた二重環縫
いミシンにおいて、ルーパーが針糸に係合した係合位置
のときに下糸及び針糸を切断する為の糸切り装置は、下
糸に係合する第1フック及び針糸に係合する第2フック
を有する下メスと、この下メスを固着した下メスレバー
と、これら第1及び第2フックに係合した糸を下メスと
協働して切断する為の上メスと、この上メスを固着した
上メスレバーと、下メスレバーと上メスレバーとを夫々
回動可能に枢支する為のベースプレートと、下メスレバ
ーをその待機位置と下メスが針糸及び下糸と係合する作
用位置とに亙って往復回動させるとともに上メスレバー
をその待機位置と切断位置とに亙って往復回動させる駆
動手段と、下メスレバーの回動支点と上メスレバーの回
動支点とをベースプレートに同一の枢支部材を介して共
通に枢支する枢支機構であって下メスレバーの作用位置
における下メスの位置を、下メスと上メスとをほぼ所定
の位置関係に保持した状態で、少なくとも、ルーパーの
移動方向と直交する方向に位置調節できるように枢支す
る枢支機構とを設けたものである。
【0008】
【作用】本発明に係る二重環縫いミシンの糸切り装置に
おいては、枢支機構により、下メスを固着した下メスレ
バーの回動支点と上メスを固着した上メスレバーの回動
支点とが、同一の枢支部材を介して共通にベースプレー
トに夫々回動可能に枢支されているので、この枢支機構
を介して下メスレバーの作用位置における下メスの位置
を、下メスと上メスとをほぼ所定の位置関係に保持した
状態で、少なくとも、ルーパーの移動方向と直交する方
向にルーパーに対して正規の位置となるように容易に位
置調節できる。しかも、下メスと上メスとは所定の位置
関係に保持されているので、下メスの位置を調節するだ
けで、下メスに対する上メスの位置調節を省略すること
ができる。
【0009】そして、縫針が最上位置で且つルーパーが
針糸に係合した係合位置のときに、駆動手段により下メ
スレバーがその待機位置から下メスに針糸及び下糸が係
合する作用位置に回動されるとともに、上メスレバーが
その待機位置から切断位置に回動され、このとき下メス
の第1フックに下糸が係合され且つ第2フックに針糸が
係合される。更に、下メスレバーが駆動手段により待機
位置へ回動する途中において、第1及び第2フックに係
合した糸が切断位置の下メスと協働して切断される。そ
の後、下メスレバーと上メスレバーとが駆動手段により
夫々待機位置に回動される。
【0010】
【発明の効果】本発明に係る二重環縫いミシンの糸切り
装置によれば、〔作用〕の項で説明したように、糸切り
装置は、下メスを固着した下メスレバーと、上メスを固
着した上メスレバーと、これら両メスレバーを往復回動
させる駆動手段と枢支機構とを設けているので、下メス
レバー及び上メスレバーが駆動手段により往復回動され
て、下メスに係合した下糸及び針糸を確実に切断するこ
とができる。
【0011】更に、枢支機構を設けたので、下メスレバ
ーの作用位置における下メスの位置を、この枢支機構を
介してルーパーの位置に対する正規の位置に容易且つ精
度良く位置調節できる。しかも、下メスと上メスとは
所定の位置関係に保持されているので、下メスの位置
を調節するだけで、下メスに対する上メスの位置調節を
省略することができ、ルーパーの位置に対する上メス及
び下メスの位置調節作業を大幅に簡単化することができ
る。
【0012】
【実施例】以下、本発明の実施例について図面に基いて
説明する。本実施例は、二重環縫いミシンとしての飾り
縫いミシンに設けた糸切り装置に本発明を適用した場合
のものである。飾り縫いミシン1は図1〜図9に示すよ
うに、ミシンベッド部2と、そのベッド部2の右端部か
ら立設された脚柱部3と、その脚柱部3からベッド部2
に対向するように左方へ延びるアーム部4とから構成さ
れ、ベッド部2には送り歯7を上下動させる送り歯上下
駆動機構(図示略)及び前後動させる送り歯前後駆動機
構(図示略)、ルーパー54を布送り方向と直交する方
向に往復駆動させるルーパー駆動機構40、ルーパー5
4の下糸55及び縫針11の針糸13を切断する糸切り
装置60などが設けられ、アーム部4には3本の縫針1
1を下端に装着可能な針棒9を上下動させる針棒駆動機
構、天秤を針棒9の上下動に調時して上下動させる天秤
駆動機構(図示略)、糸切り装置60で切断された針糸
13を押え足8の上側に払い且つ針糸13の糸端部を保
持する糸払い兼保持機構20などが設けられている。
【0013】前記針棒駆動機構は、通常のミシンのもの
と同様なので図示せずに簡単に説明すると、ミシンモー
タで回転駆動される上軸に固着された針棒クランクに連
結レバーの一端部が回転可能に連結され、この連結レバ
ーの他端部が針棒抱きを介して針棒9に連結され、針棒
クランクの回転により連結レバーを介して針棒9が上下
に往復駆動される。この針棒9の下端部には、図1に示
すように針取付け具10が固着され、この針取付け具1
0には3本の縫針11が布送り方向と直交する方向に所
定間隔おきに着脱可能に装着されている。但し、図2に
示すように、左側の縫針11の先端は中央の縫針11の
先端より所定寸法だけ低く、また右側の縫針11の先端
は中央の縫針11の先端より所定寸法だけ高くなってい
る。尚、符号12は目孔である。
【0014】次に、糸払い兼保持機構20について、図
2〜図5に基いて説明すると、アーム部4の頭部5のミ
シン機枠21には、正面視略クランク状の固定板22が
ビス23で取付けられ、この固定板22の右端部分の背
面側にはロータリーソレノイド(以下、単にソレノイド
という)24が固着され、その左端部には糸払いレバー
25がビス26で回動可能に枢支され、糸払いレバー2
5の他端部には糸払い部材27の基端部がビス28で固
着されている。更に、ソレノイド24の駆動軸29には
回動板30が固着され、左右方向向きに配設された糸払
いリンク31の右端部はこの回動板30にビス32によ
り回動可能に枢支されるとともに、その左端部は糸払い
レバー25の一端部にビス33により回動可能に枢支さ
れている。但し、回動板30は、ソレノイド24に内装
された図示外の巻きバネにより図2にて常に時計回転方
向に回動付勢されている。
【0015】前記糸払い部材27の先端部には、図3〜
図5に示すように、ガイド溝34及び係合孔35を有す
るフック部27aが形成され、目孔12から下方に延び
る針糸13がフック部27aに係合可能になっている。
薄板状のバネ部材からなる糸掴みバネ36はその基端部
でビス37により固定板22に固着され、この糸掴みバ
ネ36の先端近傍部には、糸払い部材27のフック部2
7aと協働して針糸13を保持する為に上方に湾曲した
糸保持部36aが形成され、その糸保持部36aよりも
縫針11側の先端部分には、フック部27aに係合して
下方に垂れる針糸13を案内するV字状のガイド部36
bが一体形成されている。
【0016】従って、ソレノイド24が駆動されないと
きには、前記巻きバネにより回動板30と糸払いリンク
31は図2に実線で示す待機位置に位置しているので、
糸払い部材27のフック部27aは、針上停止状態の縫
針11の略側方の実線で示す糸保持位置に位置してい
る。後述の糸切り装置60により針糸13が切断された
後、ソレノイド24が駆動されたときには、回動板30
が2点鎖線で示す回動位置に回動するので、糸払いリン
ク31、糸払いレバー25を介して糸払い部材27が2
点鎖線で示す位置に揺動移動されるので、フック部27
aは縫針11の下方近傍の糸捕捉位置に移動して目孔1
2から下方に延びる針糸端部13aに係合する(図3参
照)。
【0017】その後、ソレノイド24の駆動が停止され
たとき、フック部27aは針糸端部13aを係合した状
態で糸保持位置に復帰移動する。このとき、フック部2
7aから下方に垂れる針糸端部13aは、糸保持部36
bよりも縫針11側の案内部36aのV字状の狭い範囲
に規制されているので、フック部27aと糸保持部36
aとの協働により確実に保持される。尚、符号14は下
端に押え足8を着脱可能に取付けた押え棒、符号15は
針板、符号Wは加工布である。
【0018】次に、ルーパー54を布送り方向と直交す
る方向に駆動するルーパー駆動機構40について、図6
に基いて説明する。ベッド部2内に左右方向に配設さ
れ、前記上軸の回転に同期してミシンモータにより回転
駆動される下軸41には、前後方向に延びる連杆43の
前端部が偏心カム42を介して揺動可能に連結され、連
杆43の後端部は、下軸41に平行に配設された回動軸
44に固着された揺動アーム45に回動可能に連結され
ている。一方、下軸41と直交状に配設され、ルーパー
取付け部材53が固着されたルーパー作動軸46は機枠
21に回動可能且つ前後方向移動可能に支持されてい
る。
【0019】このルーパー作動軸46には、係合溝が形
成された係合体47が回動可能且つ前後方向移動不能に
支持され、この係合溝に係合する係合駒49は、回動軸
44に取付けた回動アーム48の先端部に回動可能に取
付けられている。更に、上下方向に配設され、ルーパー
作動軸46を回動させる揺動アーム50の上端部は、下
軸41の左端部に固着された偏心カム51に回動可能に
嵌合され、その下端部には、ルーパー作動軸46に固着
された回動アーム52の球軸部52aが嵌合連結されて
いる。また、前記ルーパー取付け部材53には、正面視
略コ字状のルーパー54の基端部がロッド54aを介し
て取付けられている。
【0020】従って、下軸41がミシンモータにより回
転すると、連杆43は偏心カム42を介して前後方向に
往復運動し、揺動アーム45を介して回動軸44が往復
回動するので、回動アーム48及び係合駒49と係合溝
との係合を介してルーパー作動軸46が前後方向に往復
移動される。一方、下軸41の回転により揺動アーム5
0が偏心カム51を介して略上下方向に往復運動するの
で、ルーパー作動軸46は回動アーム52を介して往復
回動される。その結果、ルーパー54の先端部は、布送
り方向と直交する方向にルーパー作動軸46の回動量に
比例する往復運動と、ルーパー作動軸46の前後方向移
動量に相当する往復運動とにより、3本の針糸13に係
合し得るように楕円軌跡を描くようになっている。
【0021】次に、ルーパー駆動機構40の直ぐ上側の
ベッド部2内に配設された糸切り装置60について、図
7〜図9に基いて説明する。前記ベッド部2内にベース
プレート61が水平に配設され、機枠21に設けた複数
のボス部にビス止めされている。このベースプレート6
1には、平面視略扇形状の上メスレバー62と略クラン
ク状の下メスレバー64とが後述の枢支機構85により
回動可能に枢支されている。上メスレバー62の突出部
62aには上メス63が固着されている。下メスレバー
64には、第1フック65a及び第2フック65bが先
端部に形成された平面視湾曲状の下メス65の基端部が
固着されるとともに、略左右方向に延びる駆動連杆66
の左端部がビス67で回動可能に連結されている。この
駆動連杆66の右端部は糸切り駆動機構70の作動軸7
1にビス68で回動可能に連結されている。この駆動連
杆66の一部分には、ターンバックルを用いたストロー
ク調節部66aが設けられ、駆動連杆66の長さはこの
ストローク調節部66aにより調節可能になっている。
【0022】次に、糸切り駆動機構70について説明す
ると、前記左右方向に延びる作動軸71は、機枠21に
取付けた平面視コ字状の支持部材72に左右方向移動可
能に支持され、この支持部材72の内側に位置する作動
軸71には、作動レバー73とバネ受け部材74とが夫
々作動軸71を挿通させた状態でビス止めされ、このバ
ネ受け部材74と支持部材72との間の作動軸71には
圧縮バネ75が外装されている。従って、作動軸71及
び作動レバー73は圧縮バネ75のバネ力により常に左
方(矢印B方向)に弾性付勢されている。更に、作動レ
バー73には、機枠21の後側に左右方向向きに配設さ
れた糸切りソレノイド76のプランジャー77が連結さ
れ、この糸切りソレノイド76は機枠21に固着した取
付け板78に取付けられている。
【0023】従って、糸切りソレノイド76が駆動され
ないときには、作動レバー73及び作動軸71は実線で
示す待機位置に位置しているので、下メスレバー64は
駆動連杆66を介して実線で示す待機位置に位置してい
る。糸切りソレノイド76が駆動されたときには、作動
レバー73及び作動軸71が矢印A方向に移動して2点
鎖線で示す作動位置に位置するので、同時に下メスレバ
ー64は駆動連杆66を介して2点鎖線で示すように時
計回転方向に回動され、下メス65はその先端部分がル
ーパー54の直ぐ上側に位置する作用位置(図8参照)
まで時計回転方向に回動する。このとき、第1フック6
5aにはルーパー54の下糸55が係合され且つ第2フ
ック65bには針糸13が係合される。
【0024】その後、糸切りソレノイド76が駆動され
なくなったときには、圧縮バネ75のバネ力により作動
レバー73及び作動軸71が待機位置まで矢印B方向に
移動復帰するので、同時に下メスレバー64が待機位置
に回動する。この下メスレバー64の待機位置への回動
途中において、第1フック65aに係合した下糸55と
第2フック65bに係合した針糸13とが上メス63に
より順次切断される。ここで、上メス63の下面には、
図7・図8に示すように、下メス65の下面に下方から
当接する糸保持バネ79が固着され、上メス63により
切断された下糸55だけが下メス65とこの糸保持バネ
79とにより保持される。
【0025】ところで、前記上メスレバー62には、下
メスレバー64に当接する円形の当接部材80がビス止
めされ、上メスレバー62のバネ受け部62bとベース
プレート61とに複数回屈曲させた線状のバネ81が張
架され、上メスレバー62はこのバネ81のバネ力によ
り常に時計回転方向に弾性付勢されている。更に、上メ
スレバー62の時計回転方向の回動量を規制する為に、
ベースプレート61にビス止めされた側面視クランク状
のストッパ部材82の係止部に上メスレバー62の係合
部62cが当接するようになっている。
【0026】即ち、下メスレバー64が待機位置のとき
には、上メスレバー62は、当接部材80と下メスレバ
ー64との当接によりバネ81のバネ力に抗して実線で
示す待機位置に位置している。このとき、係合部62c
とストッパ部材82の係止部とには所定量の隙間が設け
られている。そして、下メスレバー64が作用位置へ回
動するのに伴って、上メスレバー62も同時にバネ81
のバネ力により時計回転方向に回動するが、係合部62
cがストッパ部材82の係止部に当接したとき、上メス
レバー62は2点鎖線で示す切断位置でその回動が規制
される。また、下メスレバー64が待機位置に復帰する
ときには、上メスレバー62は、下メスレバー64と当
接部材80とが当接した時点から下メスレバー64と同
期して待機位置に復帰回動される。
【0027】次に、上メスレバー62の回動支点と下メ
スレバー64の回動支点とを、同一の枢支部材86を介
して共通にベースプレート61に回動可能に枢支する枢
支機構85について、図7・図9に基いて説明する。上
メスレバー62の回動支点と下メスレバー64の回動支
点とには夫々軸孔62d・64aが形成され、この軸孔
62d・64aに、鍔部を有する円筒状の枢支部材86
が上方から挿入されている。この枢支部材86には、
中心から外れた位置にビス孔86aが上下方向に形成
され、枢支部材86はこのビス孔86aを挿通させたビ
ス87でベースプレート61に螺着されている。即ち、
両メスレバー62・64は、同一の枢支部材86を介し
、それらの回動支点を共通の枢支位置に保ちながら
ースプレート61に回動可能に枢支されている。
【0028】下メス65の位置を調節するには、先ずこ
のビス87を緩めて、枢支部材86を時計回転方向或い
は反時計回転方向に回させれば、両メスレバー62・
64の回動支点が、枢支部材86を介して移動するの
、下メスレバー64の作用位置における下メス65の
位置を、下メス65と上メス63とをほぼ所定の位置関
係に保持した状態で、ルーパー54の移動方向と直交す
る方向を含む方向に位置調節可能である。
【0029】ところで、符号90は、縫製開始時に下糸
55がルーパー54から外れないように、糸切断時に下
糸55を所定量だけ糸駒から繰出しておく為の下糸繰出
し機構であり、本発明に直接関係しないので、その説明
を省略する。
【0030】次に、下メス65の作用位置におけるルー
パー54に対する下メス65の前後方向の位置を調節す
る作用について、図7〜図9に基いて説明する。飾り縫
いミシン1の組付けに際して、前記ベースプレート61
に予め、下メスレバー64と上メスレバー62とを枢支
機構85により組付けるとともに、ストッパ部材82、
当接部材80及びバネ81を組付け、更に下メス65と
上メス63とが所定の位置関係となるように決定された
取付け位置で、下メス65が下メスレバー64に固着さ
れるとともに、上メス63が上メスレバー62に固着さ
れる。その後、このベースプレート61がベッド部2内
の所定位置に装着され、下メスレバー64に駆動連杆6
6の左端部がビス67で連結される。
【0031】次に、下メス65の位置調節に際しては、
図7に示すように、駆動連杆66を待機位置から2点鎖
線で示す作用位置に手動で回動させた状態で、ビス87
を緩め、枢支部材86を時計回転方向或いは反時計回転
方向に回させる、両メスレバー62・64の回動支
が、枢支部材86がビス87に対して偏心した方向へ
枢支部材86を介して同時に移動する。それ故、当接部
材80による両メスレバー62・64の当接関係によ
り、下メス65と上メス63とをほぼ所定の位置関係に
保持した状態で、図8に示すように下メス65の両フッ
ク65a・65bが形成された先端部をルーパー54に
対して、ルーパー54の移動方向(矢印C方向)と直交
する方向(以下、矢印Dで示すルーパー移動直交方向と
いう)に容易に位置調節することができる。そして、最
後にビス87を締め直す。ここで、ストローク調節部6
6aにより駆動連杆66の長さを調節して、これら両フ
ック65a・65bのルーパー54に対する左限移動位
置を両糸13・55切断に適した所定の位置に調節でき
る。
【0032】このように、糸切り装置60は、下メス6
5を固着した下メスレバー64と、上メス63を固着し
た上メスレバー62と、これら両メスレバー62・64
を往復回動させる糸切り駆動機構70及び枢支機構85
などを設けているので、下メスレバー64及び上メスレ
バー62が糸切り駆動機構70により往復回動されて、
下メス65に係合した下糸55及び針糸13を確実に切
断することができる。
【0033】更に、上メスレバー62の回動支点と下メ
スレバー64の回動支点とを、同一の枢支部材86を介
して共通に枢支する枢支機構85を設けたので、下メス
レバー64の作用位置における下メス65の位置を、こ
の枢支機構85を介してルーパー54に対する正規の位
置に容易に位置調節でき、しかも下メス65と上メス6
3とはほぼ所定の位置関係に保持されているので、下メ
ス65の位置を調節するだけで、下メス65に対する上
メス63の位置調節を省略することができ、ルーパー5
4に対する上メス63及び下メス65の位置調節作業を
大幅に簡単化することができる。
【0034】尚、枢支部材86にビス87のネジ部の外
形より大きなビス孔を設け、枢支部材86をルーパー移
動直交方向Dに位置調節可能に枢支機構85を構成する
ことも可能である。尚、ベースプレート61にルーパー
移動直交方向Dと平行に長円孔を設け、枢支部材86
を、このルーパー移動直交方向Dに位置調節可能に、ビ
ス87とナットによりベースプレート61に取付けるよ
うにして枢支機構85を構成することも可能である。
尚、糸切りソレノイド76に代えて、エアシリンダや種
々のアクチュエータを用いることが可能である。尚、ス
プレダーを設けて、上飾り糸を用いるようにした飾り縫
いミシン、或いはその他種々の二重環縫いミシンの糸切
り装置に本発明を適用できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【図1】糸切り装置を設けた飾り縫いミシンの斜視図で
ある。
【図2】アーム部及びミシンベッド部の部分拡大正面図
である。
【図3】糸払い部材が糸捕捉位置へ移動したときの針糸
と糸払い部材と糸掴みバネとの位置関係を示す斜視図で
ある。
【図4】糸払い部材が糸保持位置への移動途中の針糸と
糸払い部材と糸掴みバネとの位置関係を示す図である。
【図5】糸払い部材が糸保持位置へ移動したときの図4
相当図である。
【図6】ルーパー駆動機構の斜視図である。
【図7】ミシンベッド部内に設けられた糸切り装置の平
面図である。
【図8】下メスが作用位置に移動したときのルーパーと
下メスと上メスとの位置関係を示す部分斜視図である。
【図9】図7の9─9線縦断断面図である。
【符号の説明】
1 飾り縫いミシン 9 針棒 11 縫針 13 針糸 40 ルーパー駆動機構 54 ルーパー 55 下糸 60 糸切り装置 61 ベースプレート 62 上メスレバー 63 上メス 64 下メスレバー 65 下メス 66 駆動連杆 70 糸切り駆動機構 71 作動軸 73 作動レバー 76 糸切りソレノイド 85 枢支機構 86 枢支部材 87 ビス
フロントページの続き (72)発明者 伊藤 常文 名古屋市瑞穂区苗代町15番1号 ブラザ ー工業株式会社内 (72)発明者 岩越 弘恭 名古屋市瑞穂区苗代町15番1号 ブラザ ー工業株式会社内 (72)発明者 上田 清志 名古屋市瑞穂区苗代町15番1号 ブラザ ー工業株式会社内

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下端に縫針を装着可能な針棒と、この針棒
    を上下に往復駆動させる針棒駆動機構と、針糸に下糸を
    係合させるためのルーパーと、このルーパーを針棒の上
    下動と調時して布送り方向と直交する方向に往復駆動さ
    せるルーパー駆動機構とを備えた二重環縫いミシンにお
    いて、 前記ルーパーが針糸に係合した係合位置のときに下糸及
    び針糸を切断する為の糸切り装置は、下糸に係合する第
    1フック及び針糸に係合する第2フックを有する下メス
    と、この下メスを固着した下メスレバーと、これら第1
    及び第2フックに係合した糸を下メスと協働して切断す
    る為の上メスと、この上メスを固着した上メスレバー
    と、下メスレバーと上メスレバーとを夫々回動可能に枢
    支する為のベースプレートと、前記下メスレバーをその
    待機位置と下メスが針糸及び下糸と係合する作用位置と
    に亙って往復回動させるとともに上メスレバーをその待
    機位置と切断位置とに亙って往復回動させる駆動手段
    と、下メスレバーの回動支点と上メスレバーの回動支点
    とをベースプレートに同一の枢支部材を介して共通に
    支する枢支機構であって下メスレバーの作用位置におけ
    る下メスの位置を、下メスと上メスとをほぼ所定の位置
    関係に保持した状態で、少なくとも、ルーパーの移動方
    向と直交する方向に位置調節できるように枢支する枢支
    機構とを設けたことを特徴とする二重環縫いミシンの糸
    切り装置。
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