JP2650030B2 - 自動製パン機用角型パン焼型 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は、自動製パン機の重要な部品であるパン焼型
に関するものである。自動製パン機は、家庭で手軽に食
パン等のパンが製造できる事が特徴で最近急速に普及し
はじめている。

そして、このパン焼型（パンケースあるいはホツパー
と呼ばれる事もある）は、その中でパン原料粉末（小麦
粉、イースト、砂糖、塩等の混合粉末）をこね、発酵さ
せ、さらに焼き上げるというための容器である。

その容器内面には、弗素樹脂が通常被覆されている。
この目的は、パンをこねる際にパン生地が内面にこびり
つかないようにするため、および焼き上げ後にパンが容
易にとり出せるためである。被覆されている弗素樹脂と
しては、耐熱性の最も大きな四弗化エチレン樹脂（PTF
E）が用いられる。

このPTFEは、260℃までの連続使用に耐え、焼く場合
の温度240〜250℃に十分耐える。

（従来技術） 従来このようなパン焼型としては次の二つがある。ま
ず第一に肉厚２〜3mmのアルミ鋳物であらかじめ容器を
作り、さらにこの内面に四弗化エチレン樹脂を被覆し焼
付けたものであり、形状は角型で、大きさは開口が120
〜130mm角、深さ約130mm角である。

第二に、あらかじめ弗素樹脂を被覆したアルミニウム
またはアルミニウム合金板をプレス成形によって容器形
状に加工したもので、この形状は丸型であり、大きさは
間口が直径130mm、深さ130mm程度のものである。

また従来、このような弗素樹脂被覆板を成形して角型
容器を作るという例は炊飯ジヤー内鍋として、開口に対
して比較的深さの浅いものの例がわずかにある程度であ
る。

（発明が解決しようとする問題点） 従来のものの問題点として、まず第１にアルミ鋳物容
器に弗素樹脂を被覆したものでは、肉厚が厚いために冷
却に時間がかかるという問題点があり、第２にあらかじ
め弗素樹脂を被覆したアルミ板を成形する場合には0.8
〜1.0mm程度のうすい容器ができ、コストメリットがあ
る反面、パン形状として違和感のある丸型形状のものし
かできないという問題点があった。

また、弗素樹脂被覆板を形成して、間口に対して比較
的深さの浅い角型容器の例はあるがパンの形状が偏平と
なり不適当である。

また開口に対して深さのある形状にプレス形成した場
合には、側面にしわが発生し、また弗素樹脂にピンホー
ル等が発生し、さらには弗素樹脂とアルミ板との密着力
が低下する等の問題があり満足なものは得られなかっ
た。

（問題点を解決するための手段） 本発明はあらかじめ弗素樹脂を被覆したアルミニウム
又はアルミニウム合金板をプレス成形にて角型に成形し
た自動製パン機用角型パン焼型を提供することにある。

パン焼型として理想的な角型形状を達成するためには
弗素樹脂を被覆したアルミニウムまたはアルミニウム合
金板の伸び及び被覆されている弗素樹脂の伸びが重要で
あることを見い出し問題点を解決するに至った。

（作 用） 角型パン焼型とは第１図（平面図）及び第２図（断面
図）に示す形状であり、弗素樹脂２を被覆したアルミニ
ウム又はアルミニウム合金板１をプレス成形にて角型に
形成される。ここでパン焼型として理想的な角型形状と
は、コーナー部のＲが15mm以上、55mm以下、さらに開口
の対角距離（Ａ）と深さ（Ｂ）との比率B/Aが0.5以上、
1.5以下である。

つまり、コーナー部のＲが15mmより小さいと、プレス
成型自体が非常に難しくまた55mmをこえるとパン形状が
丸型に近づいて前述の違和感が出てくる。また、B/Aが
0.5より小さいとパン形状が偏平となり、また1.5をこえ
るとプレス成形が難しい。

次に、このような形状をもつ容器を形成する場合に最
大の問題は（１）プレス加工による弗素樹脂被覆板の割
れおよび（２）プレス加工時最もよく伸ばされる側面部
に於ける樹脂表面の白化であった。

これらを防止するためには、弗素樹脂被覆板の伸びが
25％以上、および弗素樹脂の伸びが350％以上である必
要がある。

つまり、弗素樹脂被覆板の伸びが25％より小さいとプ
レス加工において割れやすく、さらに弗素樹脂の伸びが
350％より小さいとプレス後側面部に於いて樹脂表面の
白化現象を起す。この白化現象は被覆された弗素樹脂の
多孔質化またはアルミニウム又はアルミニウム合金板と
被覆された弗素樹脂界面に於ける部分的なはくり現象で
あると考えられる。従って白化現象を起したパン焼型を
実際に使用するとしみが発生し、さらに弗素樹脂がはく
りし、短期間で使用できなくなる。

ここでいう、弗素樹脂被覆アルミニウム板の伸びは、
JIS−2241でのアルミニウム板の伸び測定方法によるも
のである。

また、弗素樹脂の伸びとは、被覆されている弗素樹脂
の伸びであり、弗素樹脂被覆アルミニウム板のアルミニ
ウムを塩酸等で溶解して弗素樹脂膜をとり出し、その膜
の伸びを測定した値である。次に本発明のパン焼型を得
るための製造方法について述べる。

まず、弗素樹脂被覆板を得るためには、まずアルミニ
ウム板表面を電気化学的または化学的にエッチングして
表面に微細な凹凸を設け、この上に弗素樹脂分散液を塗
布し、焼付る方法が最もよい。

ここで、本発明の弗素樹脂被覆板の伸び25％以上を得
るためにはアルミニウム中のJIS−1050,JIS−1100,JIS
−3003という合金成分のものを用いるか、またはJIS−3
004というMg−Mn系合金でもMg量が0.8％以下、Mn1.1％
以下のものを用いる事が好ましい。

さらに、弗素樹脂の伸び350％以上を得るためには四
弗化エチレン樹脂の場合、上記の焼付温度を380℃〜450
℃とする事、および下地凹凸の凸部の樹脂の厚さが10μ
以上である事が好ましい。さらに顔料等の充填剤はでき
るだけ少ない方が好ましい。このような弗素樹脂被覆板
を形状にプレス成形することにより、本発明のパン焼型
を得る事が角型できる。

次に本発明の実施例について述べる。

（実施例１） 別表のような種々の厚さ1.0mmのアルミニウム板を用
い、このアルミニウム板を陽極としてNaCl水溶液中20ク
ローン/cm²の電気量でエッチング処理を行ない表面に微
細な凹凸を設けた。この面に四弗化エチレン樹脂分散液
（ダイキン工業（株）製Ｄ−1F）を塗布し400℃で10分
焼付た。この弗素樹脂被覆板の伸びをJIS2241に基づい
て測定し、さらにこの一部を塩酸にてアルミニウムを溶
解して樹脂の伸びを測定した。またこの被覆板を直径34
0mmに円板に打ちぬき、プレス加工により、コーナー部R
35mm、一片の長さ130mm、内角距離184mm、深さ130mmの
角型パン焼型を成形した。成形での割れ発生有無を下表
のとおりまとめた。

（実施例２） 実施例１記載の特殊品（（株）神戸製鋼所 ASB材）
を用い、実施例１と同じ方法にて、四弗化エチレン樹脂
被覆板を得た。この場合に、焼付条件を下表２のように
変えてそれぞれ弗素樹脂膜の伸びを測定した。このとき
の被覆板の伸びはすべて26％であった。

弗素樹脂膜の伸びは、被覆後アルミニウムを溶解して
膜のみとり出し巾10mm、長さ200mmに打ちぬき、これを
チャック間30mm、引張速度45mm/分にて破断時の伸びを
測定した。

さらに被覆板のアルミニウムと樹脂との密着力をクロ
スカットごばん目はくり試験にて測定した。この方法
は、ナイフで樹脂にアルミ基材に達する1mm間隔のごば
ん目を100コ入れ、この上にセロテープをおしつけただ
ちにはがす。

そして、100コのごばん目のうち樹脂が残っているご
ばん目の数を数える方法である。

次に、この被覆板を実施例１と同様にプレスした。プ
レス後、最もよく伸ばされている側面の密着力を同様に
測定した。さらに側面の樹脂の白化の有無を目視で確認
した。これらの結果を表２にまとめる。

上表により、弗素樹脂膜の伸びが小さいものについて
はプレス後密着力が低下する事がわかる。

（発明の効果） 以上の様に本発明は、パン焼型として理想的な角型形
状を有する角型パン焼型を提供するものであり、自動製
パン機に用いると非常に効果的である。

【図面の簡単な説明】

第1,2図は本発明の角型パン焼型の平面図及び縦断面図
を夫々例示している。 （１）……弗素樹脂 （２）……アルミニウム又はアルミニウム合金板

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】弗素樹脂を被覆したアルミニウムまたはア
   ルミニウム合金板をプレス成形にて角型に成形した自動
   製パン機用角型パン焼型において、角型パン焼型のコー
   ナー部Ｒが15mm以上、55mm以下さらに、開口の対角距離
   （Ａ）と深さ（Ｂ）との比率B/Aが0.5以上1.5以下であ
   り、かつ弗素樹脂を被覆したアルミニウムまたはアルミ
   ニウム合金の伸び率が25％、および被覆されている弗素
   樹脂の伸び率が350％以上である事を特徴とする自動製
   パン機用角型パン焼型。