JP2649074B2 - 構造物の揺動ダンパ装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は、建築などの構造物と基礎とに取り付けら
れて免震効果を向上させるのに利用する構造物の揺動ダ
ンパ装置に関する。

〔従来の技術〕

ビル等の建築構造物（以下端に構造物という）では、
地震等の被害からこの構造物を守るために各種免震シス
テムを採用しているものが既に知られている。このよう
な免震システムとしては、構造物と基礎との間に積層ゴ
ムなどの免震部材と免震部材と免震ダンパを組み合わせ
たものを配置してなるものが広く知られている。ここに
おける積層ゴムは、板状に成形されたゴム材と金属板材
とを交互に積み重ねると共に、ゴム材と金属板材とを接
着その他の方法により固着させてなるものであり、この
積層ゴムを基礎の上に一定の間隔をおいて配置し、その
上に構造物を載置することにより、この構造物を弾性支
持している。

かかる構成により構造物の固有周期を長くし、地震の
場合、積層ゴムが構造物の揺れに応じて剪断変形して地
震力を低減させることができるから、耐震構造のビル等
を建設するコストを小さくすることが可能になる。この
ような従来の免震システムにあっては、地震時等におい
て積層ゴムの変位が大きくなり易く、構造物の揺れがな
かなか止まらないという問題点があった。また、地震の
規模によっては構造物の揺れの振幅が積層ゴムの許容変
位量を超えることがあり、当該積層ゴムの破壊を招くと
いう問題点があった。

この問題点を解消するために、積層ゴムに一方向性の
ピストン式免震ダンパとを組み合せたものも知られるに
至った。

＜発明が解決しようとする課題＞ しかしながら、このような一方向性のものでは各方向
のものを多数設置しなければならず、また免震効果も効
果があるものとないものとができて効率上十分とは云え
なかった。

この発明はこのような従来の問題点に着目してなされ
たもので、構造物の固有周期を長くして地震力を低減さ
せ、かついかなる方向からの地震に対しても効率よく構
造物の揺れを減衰せしめるようにした構造物の揺動ダン
パ装置を得ることを目的とする。

〔課題を解決するための手段〕

本発明では、基礎の上にリング状に配設して内部に粘
性流体を収容した複数の伸縮容器と、対向位置に配設し
た該伸縮容器どうしを連結する連結管と、前記伸縮容器
と前記連結管とに連通するように両者の間に介在して内
部空気を収容した空気室と、前記複数の伸縮容器が作る
中央の空間内に垂下状態で支持して構造物の下面に設置
した作用部材とを備えた構造物の揺動ダンパ装置を提供
する。

〔作用〕

この発明における構造物が地震等の振動を受けて揺動
すると、免震部材が剪断方向に変形し、全方向からの地
震力の伝達を減衰させるべく作用する。これによって、
上記構造物と基礎との間に相対的なずれ運動が生じ、こ
のずれ運動が作用部材を複数の伸縮容器との間に作用
し、その運動方向にある一方の伸縮容器を作用部材が圧
迫する。これによって、この一方の伸縮容器内の粘性流
体が、連続管を通じて、上記運動方向にある他方の伸縮
容器内へ、所定の粘性抵抗をもってゆっくりと移動す
る。そして、この粘性抵抗を受けて、構造物の揺動を急
速に減衰するように機能する。

〔実施例〕

以下に、この発明の一実施例を図に基づいて説明す
る。第１図この発明の基本原理図を示す免震構造図であ
り、１は構造物、２は構造物を設置するための基礎、３
はこれらの構造物１と基礎２との間に介装した免震部材
としての剪断変形可能な積層ゴム、４は同様に構造物１
と基礎２との間に介装した揺動ダンパ装置である。

第２図はこの揺動ダンパ装置４の構成を具体的に示す
断面図、第３図は同じく一部の平面図である。これにつ
いて説明すると、５は基礎２上にボルト固定された取付
基板であり、この取付基板５上にはリング枠６が設置さ
れており、このリング枠６内の取付基板５上には複数の
伸縮容器７がリング状に配置されている。また、リング
枠６外周であって各伸縮容器７に対応する位置には空気
室８がそれぞれ一体に設けられ、これらの空気室８と各
伸縮容器７とは、リング枠６に形成したオリフイス孔９
を通じて連通している、さらに、これらの伸縮容器７の
うち互いに対向するものどうしが連結管10を通じてそれ
ぞれ連通されている。また、各伸縮容器７内には粘性流
体としてのオイルが収容されており、このオイルが圧縮
可能な空気を一部に収容する空気室８および上記連結管
10を通じて、対向する２つの伸縮容器7,7間を移動しう
るようになっている。

一方、上記構造物１は下面に取付底板11をボルト固定
してあり、この取付底板11には垂下部材12が突設され、
この垂下部材12には円筒状の作用部材13が固定されてい
る。そして、この作用部材13は、下記のようにリング枠
６内にリング状に配設された複数の伸縮容器７が作る円
形空間内に介装され、このとき取付基板５には接触しな
いように位置せしめられる。

次に動作について説明する。

まず、地震の発生に伴って、構造物１と基礎２との間
に相対変位させようとする力が作用し、このため構造物
１は積層ゴム３によって長周期化された固有周期にて、
平面内前後および左右の各方向に揺動する。ところが、
上記構造物１に一体に設けられた作用部材13は、その揺
動方向（運動方向）に変位し、この揺動方向にある一方
の伸縮容器７を圧迫する。このため、この一方の伸縮容
器７は押しつぶされて、内部のオイルがオリフイス孔9,
空気室８および連結管10を介して、その揺動方向にある
他方の伸縮容器７内へ移動する。そして、このときオイ
ルは流通断面積の小さいオリフイス孔９および連結管10
を通過する際、流速が低下し、大きな粘性抵抗を呈す
る、そして、この粘性抵抗によって、上記揺動方向の揺
動エネルギを吸収しながら、大きな抵抗力をも呈する。
このため、地震による振動物の揺れを防止するととも
に、その揺動周期を短かくして抑えて免震効果を高める
ことができる。なお、この場合において、空気室８には
一部（上部）に空気が収容されており、この空気の圧縮
性を利用して、伸縮容器７や連結管10に異常に大きな力
が作用するのを防止している。

また、この発明では複数の伸縮容器７によって作用部
材13の周囲を囲むようにしたので、これまでの免震シス
テムでは抑えられない構造物のあらゆる方向への揺動に
対しても、十分な抑止効果を持たしめることができ、方
向性のないユニバーサル粘性ダンパとして、実用性の極
めて高いものとなる。従って、方向性のある粘性ダンパ
を多数並置する場合に比べて、構成の簡素化および経済
性を確保することができることになる。

〔発明の効果〕 以上説明してきたように、この発明によれば粘性流体
を収容した複数の伸縮容器を、基礎の上にリング状に配
設し、これらの伸縮容器のうち互いに対向するものどう
しをそれぞれ連結管によって連結し、上記各伸縮容器が
作る中央の空間に、上記基礎の上に免新部材を介して構
築した構造物下面の作用部材を介装するように構成した
ので、この免震部材に生じる大きな変位を適当なレベル
に抑制し、かつこの抑制を短時間で行えるようにするこ
とができ、従って、免震部材の破壊による交換回数を少
なくすることができるとともに、構造物の揺れを急速に
減衰させることができる等の効果が得られる。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの発明にかかる構造物の揺動ダンパ装置を示
す原理図、第２図はこの発明の揺動ダンパ装置の詳細を
示す断面図、第３図は同じく平面図である。 １……構造物、２……基礎、３……免震部材、４……揺
動ダンパ装置、７……伸縮容器、10……連結管、13……
作用部材。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】基礎の上にリング状に配設して内部に粘性
   流体を収容した複数の伸縮容器と、対向位置に配設した
   該伸縮容器どうしを連結する連結管と、前記伸縮容器と
   前記連結管とに連通するように両者の間に介在して内部
   に空気を収容した空気室と、前記複数の伸縮容器が作る
   中央の空間内に垂下状態で支持して構造物の下面に設置
   した作用部材とを備えた構造物の揺動ダンパ装置。