JP2648467B2 - 動力伝達素子の製造方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、動力伝達素子の製造方
法に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、動力伝達素子として歯車、ウォー
ムギヤ、リングギヤ、タイミングプーリ、Ｖプーリ、ポ
リＶポーリ等の種々の素子が実用化されている。これら
動力伝達素子の製造方法として、粉末合金を使用した焼
結合金法がある。この焼結合金法は、量産性に優れてい
るが、材料自体が脆いため大きなトルクが作用する動力
伝達素子や大形の動力伝達素子の製造には不向きであ
る。

【０００３】別の製造方法として、鋳物加工や鉄丸棒切
削加工による製造方法が既知である。この製造方法で
は、鋳型を用いて鋳物を成形し、鋳物に切削加工を施し
て最終製品が製造されている。また切削加工法では、金
属板からディスク状のプレート材を切り出し、このプレ
ート材をＮＣ旋盤により切削加工を施し全ての加工処理
を切削により行い最終製品が製造されている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】上述した鋳物加工法や
鉄丸棒切削加工法は、強度的には十分に高い強度を得る
ことができ、大きなトルクが作用する素子や大形の素子
の製造に優れている。しかし、多数の処理工程が必要な
ため、量産性に乏しく製造コストが高価になる欠点があ
った。

【０００５】従って、本発明の目的は、製造コストが安
価で量産性に優れ、しかも高精度に製造できる動力伝達
素子の製造方法を提供することにある。

【０００６】

【課題を解決するための手段並びに作用】本発明による
動力伝達素子の製造方法は、回転軸線を有する主軸と、
この主軸に同軸状に配置され、主軸と一体的に回転する
第１のマンドレルと、前記主軸と同軸状に配置され、主
軸に対して従動回転可能な第２のマンドレルと、前記主
軸の回転軸線と平行な回転軸線を有し、主軸の回転軸線
と直交する方向に移動可能な１個又はそれ以上の転造ロ
ーラとを具えるスピンフォーミング成形機を用い、内周
面、外周面及びこれら２個の周面間に位置する２個の側
周面、及び内部に形成したリング状の中空スペースを有
する中空ドーナツ部材を、前記第１のマンドレルと第２
のマンドレルとの間にはさむように前記スピンフォーミ
ング成形機に装着し、この中空ドーナツ部材を、その内
周面を前記主軸又は第１のマンドレルにより規制すると
共に２個の側周面を第１及び第２のマンドレルにより規
制しながら回転させ、この回転中に前記転造ローラを主
軸に近づく方向に移動させて中空ドーナツ部材の外周面
に主軸に向く押圧力を作用させ、この押し圧力により中
空ドーナツ部材をその内部中空スペースが縮小するよう
に塑性変形させることにより外周面及び内周面を所望形
状に成形することを特徴とする

【０００７】本発明では、スピンフォミングにより動力
伝達素子を製造する。スピンフォーミング法により歯車
やタイミングプーリを製造する方法として、リング状の
金属板を絞り加工により中心軸線に平行に延在するイン
ナー部及びアウター部を形成し、次にフォーミング成形
機に装着し、アウター部に転造ローラを押圧させてアウ
ター部に歯を形成することが考えられる。しかし、この
ようにして製造された動力伝達素子は、歯が形成されて
いるアウター部を片持ちで支持するため強度に難点があ
り、大きなトルクが作用する動力伝達素子の製造には不
向きである。このため、本発明では、内部にリング状の
中空スペースを有するドーナツ部材を作り、この中空ド
ーナツ部材にスピンフォーミング加工を施して所望形状
の外周面を形成する。

【０００８】フォーミング成形中、中空ドーナツ部材の
内周面はフォーミング成形機の主軸又は第１のマンドレ
ルにより規制し、２個の内周面を第１及び第２のマンド
レルにより規制する。この状態で、転造ローラを外周面
に押し当て中空ドーナツ部材に対して外周面側から内周
面に向く押圧力を作用させる。この押圧力により、中空
ドーナツ部材が内周側に向くように塑性変形をおこす。
この際、外周面以外の全ての面が第１及び第２のマンド
レル及び主軸により規制されているため、第１及び第２
のマンドレル及び主軸によって規制される形状に塑性変
形する。このとき、内部に中空スペースが存在するた
め、この中空スペースが材料移動に対する逃げとして作
用する。一方、ドーナツ部材が中空ではなく周密な場
合、マンドレル、主軸及び転造ローラによって規定され
る断面積とドーナツ部材の断面積とが正確に一致してい
ない場合、高精度な寸法の動力伝達素子を製造すること
ができない。これに対して、本発明では、ドーナツ部材
にリング状の中空スペースが形成されているため、中空
スペースが材料移動に対する逃げとして機能するため、
断面積が不一致であっても高精度の外形寸法の動力伝達
素子を製造することができる。

【０００９】内周面は主軸の外周面により規制されるの
で、主軸の回転軸線に対して高精度に規制されることに
なる。同様に、ドーナツ部材は、回転しながら外周面が
転造ローラにより規制されるので、外周面も主軸の回転
軸線に高精度で規制される。この結果、内周面及び外周
面が中心軸線に対して高精度に規制された動力伝達素子
を製造することができる。しかも、歯が形成されている
外周面を両側で支持する構造となるため、強度的にも優
れた大きなトルクが作用する大型の動力伝達素子を製造
するのに好適である。特に、歯が形成されている外周面
を片持ち式で支持する動力伝達素子よりも強度を大幅に
向上させることができる。

【００１０】さらに、本発明では、１回の処理工程で内
周面、外周面及び２個の側周面の全てについて成形処理
することができ、この結果製造時間及び製造コストを大
幅に低減することができる。

【００１１】さらに、本発明による動力伝達素子の製造
方法の好適実施例は、前記第１のマンドレルを主軸に対
して固定し、前記第１のマンドレルを主軸の回転軸線に
沿って移動可能に配置し、第２のマンドレルを主軸の回
転軸線に沿って移動させて中空ドーナツ部材の側周面に
押圧力を作用させ、前記押圧力の作用が終了した後、又
は押圧力を作用させながら転造ローラを移動させて外周
面に押圧力を作用させることを特徴とする。このよう
に、中空ドーナツ部材の両側からの押圧力により側周面
を成形した後転造ローラにより外周面から押圧力を作用
させることにより、転造ローラからの押圧力を内周面ま
で良好に伝達させることができる。従って、大径の動力
伝達素子を製造する場合に特に有効である。

【００１２】さらに、本発明による動力伝達素子の製造
方法の好適実施例は、第１及び第２のマンドレルが円環
状の肩部を有し、これら肩部が転造ローラからの押圧力
の一部を受ける作用を果たすことを特徴とする。マンド
レルが円環状の肩部を有する場合、転造ローラとマンド
レルの肩部との間で中空ドーナツ部材の外周部を把持す
るような構成となり、この結果転造ローラからの押圧力
をマンドレルの肩部で有効に受けさせることができ、歯
の形成を一層良好に行うことができる。

【００１３】さらに、本発明による動力伝達素子の製造
方法は、１枚の金属プレートから、内部にリング状の中
空スペースを有する中空ドーナツ部材を製造する工程
と、回転軸線を有する主軸と、この主軸に同軸状に配置
した第１及び第２のマンドレルと、前記主軸の回転軸と
平行な回転軸線を有し、主軸の回転軸線と直交する方向
に移動可能な１個又はそれ以上の転造ローラとを具える
スピンフォーミング成形機を用い、前記中空ドーナツ部
材を、前記第１のマンドレルと第２のマンドレルとの間
にはさむように前記スピンフォーミング成形機に装着
し、この中空ドーナツ部材を、その内周面を前記主軸又
は第１のマンドレルにより規制すると共に２個の側周面
を第１及び第２のマンドレルにより規制しながら回転さ
せ、この回転中に前記転造ローラを主軸に近づく方向に
移動させて中空ドーナツ部材の外周面に主軸に向く押圧
力を作用させ、この押圧力により中空ドーナツ部材をそ
の内部中空スペースが縮小するように塑性変形させるこ
とにより、外周面及び内周面を所望形状に成形すること
を特徴とする。このように、１枚の金属プレートから中
空ドーナツ部材を製造すれば、製造工程を大幅に短縮す
ることができる。

【００１４】１枚の金属プレートから中空ドーナツ部材
を作る方法として、はじめに金属プレートに絞り加工及
びプレス加工を施し、半ドーナツ状部材（ドーナツを輪
切りにした形状の部材）を作り、次にカーリング加工を
施し中空ドーナツ部材に成形することができる。次に、
継目の部分を熔接により結合すれば、強度の高い中空ド
ーナツ部材を容易に製造することができる。

【００１５】カーリング加工により中空ドーナツ部材に
成形した後、平押し加工を行い、中空ドーナツ部材を最
終製品の形状に近い形状に整形することができる。この
平押し加工を施すことにより、次に行うフォーミング成
形に必要な時間を短縮できる顕著な作用効果を達成する
ことができる。

【００１６】尚、１枚の金属板から中空ドーナツ部材を
作り、スピンフォーミング成形により動力伝達素子を製
造する場合、継目部分を熔接する工程は必ずしも必要で
なく、高い機械的強度が要求されない動力伝達素子の場
合、継目部分を熔接しなくても十分に必要な強度の動力
伝達素子を製造することができる。一方、大きなトルク
が作用する高い機械的強度が要求される動力伝達素子を
製造する場合には継目部分を熔接することが好ましい。

【００１７】尚、継目部分の熔接は、カーリング加工を
行った後、又は平押し加工を行った後、或いはフォーミ
ング成形を行った後に行うことができる。この際、平押
し加工により最終製品の形状に近い形状に整形されるの
で、内部に形成される中空スペースも最終製品の内部に
形成される形状に近いものとなるため、フォーミング整
形の材料移動により生ずる内部中空スペースの気圧の上
昇も僅かであり、中空スペースの気圧上昇により影響を
回避することができる。同様に、スピンフォーミング整
形後に継目部分を熔接すれば、中空スペースの気圧上昇
が全く発生せず、良好な動力伝達素子を製造することが
できる。

【００１８】

【実施例】図１〜図３は本発明による動力伝達素子の製
造の一連の製造工程を示すものであり、図１は中空ドー
ナツ部材を作る工程を示し、図２はスピンフォーミング
工程を示し、図３は製造された平歯車の形態を示す。本
例では通常広く用いられている平歯車の製造工程につい
て説明する。図１ａは半ドーナツ部材１（中空ドーナツ
形状のものを輪切りにした形状のもの）を示す平面図、
図１ｂは図１ａのII−II線断面図である。鉄板又はステ
ンレス板に絞り加工を施し、次ぎにプレス加工により図
１ａ及びｂに示す半ドーナツ部材１を作る。

【００１９】次に、２個の半ドーナツ部材１を互いに対
向するように配置し、バット熔接や摩擦熔接等により、
内周側及び外周側の円環突条を互いに結合し、図１ｃに
示す中空ドーナツ部材２を作る。この中空ドーナツ部材
２は内周面２ａ及び外周面２ｂ並びに２個の側周面２ｃ
及び２ｄを有すると共に、その内部にリング状の中空ス
ペース２ｅを有する。

【００２０】次に、切削加工により、必要に応じて熔接
加工で生じたバリを除去する。さらに、必要に応じて焼
鈍処理を行い、ドーナツ部材全体を初期の状態に戻す。

【００２１】次に、スピンフォーミング成形機を用いて
フォーミング加工を行う。スピンフォーミング成形機は
主軸１０を有し、この主軸１０に中空ドーナツ部材２を
嵌合装着する。スピンフォミング成形機は主軸１０と一
体的に回転する駆動用の第１のマンドレル１１及び第１
のマンドレル１１と対向し主軸１０に対して回転自在に
装着され従動回転する第２のマンドレル１２を有し、さ
らにフォーミングローラとして作用する２個の転造ロー
ラ１３ａ及び１３ｂを有する。本例では第１のマンドレ
ル１１は主軸の回転軸線Ｌに対して固定され、第２のマ
ンドレル１２は回転軸線Ｌに沿って移動可能に設定す
る。２個の転造ローラ１３ａ及び１３ｂは共に回転軸線
Ｌに平行な回転軸線を有し、回転軸線Ｌとに平行な方向
及びこれと直交する方向に移動可能に設定され、互いに
同期して中空ドーナツ部材２をその中心に向けて押圧す
る。

【００２２】フォーミング成形に際し、中空ドーナツ部
材２を第１のマンドレルと第２のマンドレルとではさむ
ように主軸１０に装着し、主軸１０を回転させながら第
２のマンドレル１２を回転軸線Ｌに沿って移動させ、第
２のマンドレル１２に連結されている押圧手段（図示せ
ず）の押圧力を利用して中空ドーナツ部材を第１のマン
ドレル１１に対して押圧を開始する。中空ドーナツ部材
に押圧力が作用すると、ドーナツ部材の側周面２ｃと第
１のマンドレル１１との間並びに側周面２ｄと第２のマ
ンドレル１２との間に摩擦力が生じ、ドーナツ部材２は
両側のマンドレルと共に主軸１０の回転速度で回転す
る。さらに、第２のマンドレル１２は主軸に沿って所定
の位置までゆっくり移動し続ける。同時に２個の転造ロ
ーラ１３ａ及び１３ｂを回転軸線Ｌに近づく方向に移動
させ、連結されている押圧手段（図示せず）の押圧力を
利用して中空ドーナツ部材をその外周方向から内周に向
けて互いに対向する２方向から押圧を開始する。この外
周面側からの押圧により、ドーナツ部材２は内周面に向
けて並びに中空スペースの中央に向けて材料移動が生じ
徐々に塑性変形が生ずる。この際、中空ドーナツ部材の
内周面は主軸により規制されるので、ドーナツ部材は２
個の側面、内周面及び外周面から中空スペースの中央に
向く押圧力を受け中空スペースを収縮させるように塑性
変形することになる。この際、内周面は主軸に規制され
るので、ドーナツ部材の内周面は高精度に規制された内
周面が形成され、２個の側周面もマンドレルに規制され
た高精度な面となり、さらに、外周面には２個の転造ロ
ーラにより規制された高精度歯車面が形成される。この
状態を図２ｂに示す。尚、このようにして製造された平
歯車の構造を図３に示す。

【００２３】本例では、側周面からの押圧の開始とほぼ
同時に外周面側からの押圧を開始したが、側周面からの
押圧が終了した後、外周面側からの押圧を開始させるこ
ともできる。また、本例では、２個の転造ローラを用い
て押圧したが、ドーナツ部材の内周面が主軸により規制
されているので、１個の転造ローラだけを用いて塑性変
形させることも可能である。

【００２４】図４〜図６は本発明による動力伝達素子の
別の製造方法を説明するものであり、図４は中空ドーナ
ツ部材を作る工程を示す図であり、図５はスピンフォー
ミング工程を説明する模式図であり、図６は最終的に製
造された製品構成を示す断面図である。本例では、側周
面の幅より大きな幅の内径部及び外径部を有する大径の
平歯車を製造する例について説明する。図４ａ及び４ｂ
に示すように、例えば厚さ３ｍｍの鉄板から絞り加工及
びプレス加工により、図４ａに示す平面形状の半ドーナ
ツ部材２１を作る。このような形状の半ドーナツ部材２
１を互いに対向するように配置してバット熔接により図
４ｃに示す形状の中空ドーナツ部材２２を作る。このド
ーナツ部材２２は内周面２２ａ及び外周面２２ｂ、２個
の側周面２２ｃ及び２２ｄ、及び内部に形成したリング
状の中空スペース２２ｅを有すると共に、内径部２３及
び外径部２４を有している。

【００２５】次に、必要に応じてバリ取り及び焼鈍処理
を行う。次に、図５ａに示すように、中空ドーナツ部材
２２をスピンフォーミング成形機の主軸３０に嵌合装着
する。スピンフォーミング成形機は２個のマンドレル３
１及び３２並びに２個の転造ローラ３３ａ及び３３ｂを
有している。前述した実施例と同様に、第２のマンドレ
ル３２を主軸３０に沿って第２のマンドレル３１に近づ
く方向に移動させ中空ドーナツ部材２２をその両側から
押圧する。両側から押圧力が作用することにより、中空
ドーナツ部材は図５ａに示す形状に塑性変形する。この
際、中空ドーナツ部材の内径部２３は第１及び第２のマ
ンドレルの第１肩部３１ａ及び３２ａにより成形され、
外径部２４は第２の肩部３１ｂ及び３２ｂにより成形さ
れる。この場合にも、中空ドーナツ部材２２の内周面２
２ａは２個のマンドレルの肩部３１ａ及び３２ａから主
軸方向に作用する押圧力により主軸の外径寸法に高精度
に規定される。

【００２６】次に、２個の転造ローラ３３ａ及び３３ｂ
を主軸に近づく方向に移動させ、中空ドーナツ部材２２
の外周面２２ｂに押圧力を作用して歯をフォーミング成
形する。この際、第１及び第２のマンドレル３１及び３
２の肩部３１ｂ及び３２ｂが転造ローラからの押圧力の
受けとして作用するので、大径の歯車であっても歯のフ
ォーミング成形を良好に行うことができる。すなわち、
製造すべき歯車が大径になると転造ローラからの押圧力
を均一に作用させることが困難になるが、本例ではドー
ナツ部材を両側から２個のマンドレルで規制すると共
に、各マンドレルの肩部を転造ローラからの力の受けと
して有効に利用しているので、高精度に規定された歯を
フォーミング形成することができる。このようにして製
造された歯車を図６に示す。尚、中空ドーナツ部材を作
った後、平押し加工を施して最終形状に近い形状に整形
してからフォーミング成形することもできる。

【００２７】図７は本発明によりリングギヤを製造する
ための一連の製造工程を示す。はじめに、断面が偏平の
中空ドーナツ部材４０を作る。中空ドーナツ部材４０を
フォーミング成形機に装着する。フォーミング成形機は
回転軸線Ｌを有する主軸４１と、この主軸４１に固定さ
れ主軸と一体的に回転する第１のマンドレル４２と、主
軸４１に同軸状に配置され第１のマンドレル４２と一体
的に回転すると共に第１のマンドレルに脱着可能なリン
グ状の第２のマンドレル４３と、転造ローラ４４とを具
える。第１のマンドレル４２は主軸の回転軸線Ｌに平行
な円周面４２ａ及び回転軸線Ｌと直交する壁面４２ｂを
有する。

【００２８】図７ａに示すように、第１のマンドレル４
２に中空ドーナツ部材４０を嵌合装着し、第２のマンド
レル４３も第１のマンドレルに装着する。第２のマンド
レル４３は第１のマンドレルに対して固定され、フォー
ミング成形中に第１のマンドレルの壁面４２ｂと第２の
マンドレルの壁面４３ａとの間の距離を所定の値に維持
する。この状態で第１及び第２のマンドレル４２及び４
３並びに中空ドーナツ部材４０を一体的に回転させ、転
造ローラ４４を主軸に近づくように移動させ、中空ドー
ナツ部材４０の外周面を主軸に向けて押圧する。転造ロ
ーラからの押圧力により中空ドーナツ部材は除々に塑性
変形を生じ歯が形成される。この際、ドーナツ部材４０
の内周面は第１のマンドレルの円周面４２ａにより規制
され、その外周面は転造ローラ４４により規制され、さ
らに２個の側周面は第１及び第２のマンドレルの壁面４
２ｂ及び４３ａにより規制される。すなわち、中空ドー
ナツ部材４０は４個の面により規制されているため、内
部の中空スペースに向けて材料移動が行なわれる。従っ
て、中空ドーナツ部材の内周面は第１のマンドレルの円
周面４２ａに高精度に対応し、この結果主軸の回転軸線
Ｌに対して高精度に形成される。また、ドーナツ部材の
外周面も、回転しながら転造ローラにより規制されるた
め、主軸の回転軸線Ｌに対して高精度に規制される。こ
の結果、内周面及び外周面が共にそれ自身の軸線に対し
て高精度に規制されたリングギヤ４５を製造することが
できる。尚、本例では、第２のマンドレルを第１のマン
ドレルに対して固定してフォーミング成形を行なった
が、第２のマンドレルを回転軸線Ｌに沿って移動させな
がらフォーミング成形することも可能である。

【００２９】図８は本発明による動力伝達素子の製造方
法の別の順次の工程を示す線図的断面図である。本例で
は、１枚の金属プレートから中空ドーナツ部材を製造す
る例について説明する。金属プレートに絞り加工及びプ
レス加工を行い、図８ａに示す断面形状ののリング状部
材５０を作る。次ぎに、カーリング加工を行い図８ｂに
示す中空ドーナツ部材５１を作る。この場合、リング状
中空スペース５１ａ及び円周状の継目部分５１ｂが形成
され、リング状中空スペース５１ａは継目部分５１ｂを
介して外部と連通する。

【００３０】次に平押し加工を行い、中空ドーナツ部材
を図７ｃに示す形状に整形する。この平押し加工によ
り、中空ドーナツ部材は最終形態に近い形状に整形され
るので、次に行うフォーミング成形工程における処理時
間を短縮することができる。しかも、中空スペース５１
ａは継目部分５１ｂを介して外部と連通しているので、
平押し加工により中空スペースの体積が減少するように
塑性変形しても中空スペースの気圧は大気圧に維持さ
れ、中空スペースの気圧上昇による不都合を解消するこ
とができる。

【００３１】その後、前述したように、スピンフォーミ
ング成形機を用いてフォーミング加工を行い、最終形態
となるように成形処理を行う。尚、継目部分５１ｂの熔
接は必要に応じて行い、例えば高い強度が要求される歯
車を製造する場合熔接を行い強度を高め、一方、高い強
度が要求されない歯車を製造する場合継目部分の熔接は
不要である。また、継目部分の熔接は、平押し加工を行
った後、又はフォーミング成形処理の後に行うこともで
きる。

【００３２】図９は同様に１枚の金属プレートから中空
ドーナツ部材を作り、スピンフォーミング成形加工を行
うことにより歯車を形成する別の製造を示す。１枚の金
属プレートに絞り加工及びプレス加工を行い図９ａに示
す断面形状のリング状部材を作る。次に、カーリング加
工を行い図９ｂに示す断面形状のリング状ドーナツ部材
を作る。さらに図９ｃに示すように、継目部分に熔接処
理を行う。最後に、平押し加工を施し、図８ｂに示す中
空ドーナツ部材を作る。

【００３３】本発明は上述した実施例だけに限定されず
種々の変形や変更が可能である。例えば、上述した実施
例では平歯車及びリングギヤを製造する場合について説
明したが、ＶプーＶやポリＶプーリ等を製造する場合に
も本発明を適用することができる。Ｖプーリを製造する
場合、外周がＶ形の転造ローラを用いることにより容易
に製造することができる。また、転造ローラの外周を適
切に設定することによりインボリュート歯車等を容易に
製造することができる。

【００３４】また、中空ドーナツ部材の製造方法とし
て、ほぼリング状に湾曲させたパイプを用い、その端面
同士をバット溶接等により結合することより製造するこ
とも可能である。この場合、平押し加工により最終製品
に近い形状に整形し、その後スピンフォーミング加工を
行うことも好適である。

【００３５】また、２個の転造ローラを用いてフォーミ
ング成形する例について説明したが、中空ドーナツ部材
の中周面をフォーミング成形機の主軸により規制してい
るので、１個の転造ローラを用いて、又は３個或いは４
個の転造ローラを用いてフォーミング成形することも可
能である。さらに、２個のマンドレルからの両側からの
押圧力と外周面からの転造ローラからの押圧力とを作用
させる関係は、これらの押圧力を同時に印加してもよ
く、或いは両側マンドレルからの押圧力を先に作用さ
せ、側面側からの規制が終了した後外周側からの押圧力
を作用させてもよく、又はタイミングをずらせて作用さ
せることも可能である。

【００３６】

【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
内部にリング状の中空スペースを有する中空ドーナツ部
材を作り、この中空ドーナツ部材を、その内周面及び側
周面を規制しながら外周面から押圧力を作用させている
ので、リング状中空スペースが材料移動に対する逃げと
して作用し、この結果所望の形状の外周面、内周面及び
側周面を１回のスピンフォーミング加工により成形処理
することができる。この結果、製造時間が一層短縮され
製造コストを大幅に低減することができる。また、中空
ドーナツ部材の内周面及び外周面が共にフォーミング成
形機の主軸の回転軸線を基準にして形成されるので、高
精度の動力伝達素子を安価で優れた量産性を以て製造す
ることができる。また、本発明による動力伝達素子は歯
が形成されている外径部を両側で支持する構成としてい
るので、削り出し加工により製造された動力伝導素子と
ほぼ同等の強度を達成することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】中空ドーナツ部材の製造工程を示す図である。

【図２】スピンフォーミング加工により歯車を製造する
工程を示す図である。

【図３】出来上がった歯車の構造を示す断面図である。

【図４】中空ドーナツ部材の別の製造工程を示す図であ
る。

【図５】スピンフォーミング加工により束を製造する工
程を示す図である。

【図６】出来上がった歯車の構成を示す図である。

【図７】リングギヤの製造工程及び製造されたリングギ
ヤの構成を示す図である。

【図８】１枚の金属板から中空ドーナツ部材を作る工程
を示す線図的断面図である。

【図９】１枚の金属板から中空ドーナツ部材を作る工程
を示す線図的断面図である。

【符号の説明】

１ プレート ２ 半ドーナツ部材 ３ ドーナツ部材 １０ 主軸 １１，１２ マンドレル １３ａ，１３ｂ 転造ローラ

Claims (8)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 回転軸線を有する主軸と、この主軸に同
   軸状に配置され、主軸と一体的に回転する第１のマンド
   レルと、前記主軸と同軸状に配置され、主軸に対して従
   動回転可能な第２のマンドレルと、前記主軸の回転軸線
   と平行な回転軸線を有し、主軸の回転軸線と直交する方
   向に移動可能な１個又はそれ以上の転造ローラとを具え
   るスピンフォーミング成形機を用い、 内周面、外周面及びこれら２個の周面間に位置する２個
   の側周面、及び内部に形成したリング状の中空スペース
   を有する中空ドーナツ部材を、前記第１のマンドレルと
   第２のマンドレルとの間にはさむように前記スピンフォ
   ーミング成形機に装着し、 この中空ドーナツ部材を、その内周面を前記主軸又は第
   １のマンドレルにより規制すると共に２個の側周面を第
   １及び第２のマンドレルにより規制しながら回転させ、 この回転中に前記転造ローラを主軸に近づく方向に移動
   させて中空ドーナツ部材の外周面に主軸に向く押圧力を
   作用させ、この押し圧力により中空ドーナツ部材をその
   内部中空スペースの体積が小さくなるように塑性変形さ
   せることにより外周面を所望形状に成形することを特徴
   とする動力伝達素子の製造方法。
2. 【請求項２】 前記第１のマンドレルを主軸に対して固
   定し、前記第２のマンドレルを主軸の回転軸線に沿って
   移動可能に配置し、 第２のマンドレルを主軸の回転軸線に沿って移動させて
   中空ドーナツ部材の側周面に押圧力を作用させ、 前記押圧力の作用が終了した後、又は押圧力を作用させ
   ながら転造ローラを移動させて外周面に押圧力を作用さ
   せることを特徴とする請求項１に記載の動力伝達素子の
   製造方法。
3. 【請求項３】 前記第１及び第２のマンドレルが円環状
   の肩部を有し、これら肩部が転造ローラからの押圧力の
   一部を受ける作用を果たすことを特徴とする請求項２に
   記載の動力伝達素子の製造方法。
4. 【請求項４】 内部にリング状の中空スペースを有する
   中空ドーナツ部材を作る工程と、 回転軸線を有する主軸と、この主軸に同軸状に配置した
   第１及び第２のマンドレルと、前記主軸の回転軸と平行
   な回転軸線を有し、主軸の回転軸線と直交する方向に移
   動可能な１個又はそれ以上の転造ローラとを具えるスピ
   ンフォーミング成形機を用い、 前記中空ドーナツ部材を、前記第１のマンドレルと第２
   のマンドレルとの間にはさむように前記スピンフォーミ
   ング成形機に装着し、 この中空ドーナツ部材を、その内周面を前記主軸又は第
   １のマンドレルにより規制すると共に２個の側周面を第
   １及び第２のマンドレルにより規制しながら回転させ、 この回転中に前記転造ローラを主軸に近づく方向に移動
   させて中空ドーナツ部材の外周面に主軸に向く押圧力を
   作用させ、この押圧力により中空ドーナツ部材をその内
   部中空スペースの体積が小さくなるように塑性変形させ
   ることにより、 外周面を所望形状に成形することを特徴とする動力伝達
   素子の製造方法。
5. 【請求項５】 中空パイプの両端を結合することにより
   前記中空ドーナツ部材を作ることを特徴とする請求項４
   に記載の動力伝達素子の製造方法。
6. 【請求項６】 金属板から半ドーナツ部材を作り、２個
   の半ドーナツ部材を結合して内部に中空スペースを有す
   る中空ドーナツ部材を作ることを特徴とする請求項４に
   記載の動力伝達素子の製造方法。
7. 【請求項７】 前記中空ドーナツ部材を製造する工程
   が、絞り加工及びプレス加工によ１枚の金属プレートか
   らリング状部材を作る工程と、リング状部材からカーリ
   ング加工により中空ドーナツ部材を製造する工程とを有
   することを特徴とする請求項４に記載の動力伝達素子の
   製造方法。
8. 【請求項８】 中空ドーナツ部材に平押し加工を施し、
   その後スピンフォーミング成形を行うことを特徴とする
   請求項４から７までのいずれか１項に記載の動力伝達素
   子の製造方法。