JP2643198B2 - 熱電池の製造法 - Google Patents

熱電池の製造法

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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明はリチウム/ニ硫化鉄系熱電池のリチウム負極
の改良に関し、その目的は長時間作動に適した素電池を
提供することにある。
従来の技術 熱電池は常温で不活性であるが、高温に加熱すると活
性となり、外部へ電力を供給し得るようになる電池で貯
蔵形電池の一種である。従って5〜10年あるいはそれ以
上の所蔵後においても製造直後と何ら電池特性が変らな
いので緊急用電源に利用されている。この電池は、高温
で作動させるために電極反応が活性に進み易く、分極も
少ないので大電流放電性に優れ、更に使用可能な環境温
度範囲が広く、使用時に起動信号を入力すると瞬時に電
力が取出せる等の特徴を有する。しかし一方では数分以
内の極めて短時間しか使用できないという短所を有して
いる。
この課題を解決するために、電池の作動可能な温度域
を長時間保持する条件について、断熱材およびその構成
や蓄熱材料等に関して従来から研究が進められて来た。
本発明では、素電池の特性改良、特に負極にリチウム
を用い正極に二硫化鉄を用いたリチウム/二硫化鉄系の
負極の改良を図ることにより、長時間作動性のよい熱電
池を提供するものである。更に詳述するならば、純リチ
ウムを負極としその表面の電気化学反応面にアルミニウ
ムを反応させリチウム−アルミニウム合金を形成するこ
とによって、特性の向上を図ろうとするものである。
従来、リチウムの表面にアルミニウムを反応させて、
リチウム−アルミニウム層を形成する方法は以下のよう
な先行技術があった。
(1) リチウムシートと孔のあいたアルミニウムシー
トとから積層物をつくり、その後この積層物を有機溶媒
中に溶解したリチウム塩の溶液と接触させることによる
リチウム−アルミニウム合金電極の製造方法に関して
は、特公昭61−46947号公報に記載されている。
(2) 同上の特公昭61−46947号公報には、リチウム
シートとアルミニウムシートとのサンドイッチ構造物
を、リチウムの融点付近の温度で、同時にこのサンドイ
ッチ構造物を加圧しながら熱ソーキングする(米国特許
第3981743号)という製造方法が紹介されている。
(3) 金属リチウムの表面に電解もしくは無電解また
は蒸着もしくは圧着後熱処理により形成されたリチウム
−アルミニウム層を有する有機溶媒系の電解質を用いた
電池に関して、特開昭56−86463号公報に記載されてい
る。
(4) 金属リチウムに貼り付けられたアルミニウム箔
が自然にリチウム−アルミニウム合金となり、その厚み
制限を行った内容に関して、特開昭62−170163号公報に
記載されている。
発明が解決しようとする問題点 上記(1)は、有機溶媒として例えばジオキソラン,
テトラヒドロフラン,溶存リチウム塩として過塩素酸リ
チウム,ヘキサフルオロリン酸リチウム等を用いるた
め、高温で使用する(400〜700℃)熱電池にとっては不
要でかつ悪影響を及ぼす材料を取除く必要があり、また
孔の開いたアルミニウムよりも全面リチウム−アルミニ
ウム層で被われていることが望ましい。
(2)は、リチウム融点(186℃)より20〜30℃低い
熱板間に挾み、加圧状態で5分間以上保持するときリチ
ウム,アルミニウム合金が生成する。この方法では生産
性が望めない。(3)の方法のうち、圧着後熱処理する
方法についてはその実施例が述べらていない。そのため
(2)の方法との差異ならびにその特徴が全く不明であ
る。また、リチウム表面にアルミニウム薄膜が圧着され
たものに、(1)で記述した同種溶液中でリチウムの電
解析出を3時間かけて行わねばならないため、熱電池に
は適さない。(4)の方法は自然にリチウムとアルミニ
ウム箔が合金生成するまで長時間貯蔵し、その後でなけ
れば出荷ができないという欠点がある。
以上のように従来の純リチウムの少なくとも表面にリ
チウム−アルミニウム合金層を形成方法は、熱電池にと
って不要な材料を除去する必要があったり、また合金生
成に長時間必要として生産性が向上しないという欠点が
あった。
本発明は、上記のような従来の問題点を解消し、容易
にリチウム・アルミニウム合金層が形成され、生産性に
優れ、かつ特に熱電池を長時間作動させるに適したリチ
ウム負極を用いた素電池を提供することを目的とする。
問題点を解決するための手段 この問題点を解消するため本発明は、鉄粉の表面にリ
チウムを保持させリチウムの融点以上においても流動性
を有しない鉄−リチウム層をつくる工程と、前記鉄−リ
チウム層の片面が電気化学反応をするように構成して金
属製カップ内に収納する工程と、鉄−リチウム層の反応
面にアルミニウムシートを重ね合せて不活性ガス雰囲気
中でリチウムの融点以上に加熱処理を行う工程と、その
後冷却固化する工程を経て製造された、少なくとも電気
化学反応面がリチウム−アルミニウム合金層を〜有する
負極、もしくは金属製カップ内にリチウム層と鉄粉層の
2層を鉄粉層を上にして収納する工程と、鉄粉層の上に
アルミニウムシートを重ね合せて不活性ガス雰囲気中で
リチウムの融点以上に加熱処理する工程と、その後冷却
固化する工程を経て製造された、少なくとも電気化学反
応面がリチウム−アルミニウム合金層を有する負極を用
い、これに溶融塩電解質と二硫化鉄正極を組合せて素電
池を構成した熱電池の製造法である。
作用 この製造法を用いれば、リチウムを融点以上にしてア
ルミニウムシートと合金反応させることが出来るうえ、
300〜600℃の高温にて熱処理が可能となるために短時間
で合金化し、尚かつただ単に鉄−リチウム面、もしく
は、リチウム層の上に形成された鉄粉層の上にアルミニ
ウムシートを重ね合せて2枚の熱板間に挟むだけという
簡単な作業内容でよい。従って、前記(1)のようにア
ルミニウムに孔を開ける必要もなく、電極反応面の全面
にリチウム−アルミニウム合金が形成され、(2),
(3),(4)のように合金化されるために長い時間を
必要としない。
本発明の負極を用いた場合、電極反応面が純リチウム
の場合と比べて活性度が低下しているため、長期間の熱
電池の貯蔵中に生じる封入空気を吸収して電池内が減圧
となる現象が抑制される。従って、高電圧(例えば500V
DC)を印加して電池絶縁を測定する場合においても、従
来配慮されてきたPaschens Law(封入ガスにより、電極
間隔と圧力の積によって耐電圧が決まる)による絶縁破
壊の心配がなくなる。
また、従来構成出来なかった電池作動温度で溶融状態
となるリチウム組成が70原子%以上のリチウム−アルミ
ニウム合金も使用できるため、電池電圧は純リチウムと
変らないが電池作動時間が改善されるという効果があ
り、時に低電流密度放電で長時間作動させる熱電池の性
能向上に役立つこととなる。
実施例1 以下本発明の実施例を第1図と第2図を用いて説明す
る。
第1図は本発明の製造工程図を示す。図において、リ
チウムの20重量%相当をステンレス容器に入れ350℃に
加熱溶融し、これに乾燥済みの鉄粉を80重量%相当を加
え混合撹拌してペースト状とする。これを固化してイン
ゴットとし、ローラー間を通してシート状とした後、金
型で円板に打抜く。得られた円板は鉄−リチウム層であ
る。クリーニング処理された鉄,ステンレス鋼等からな
る金属製カップに前記円板を収納しクリンプして一体構
造とする。この様にしたものは片面はカップであり、他
の片面は鉄−リチウム層となり、この面にクリーニング
処理されたアルミニウムシートを重ね合せ、Arガス等の
不活性ガス中で500℃にコントロールされた2枚の熱板
間に5〜10秒間挾む。この短時間にアルミニウムシート
はリチウムと反応しリチウム・アルミニウム合金となっ
て鉄・リチウム層と一体になってしまう。のち冷却固化
し負極が得られる。
前記負極と、塩化リチウム−塩化カリウム(融点352
℃)の混合溶融塩と酸化マグネシウムからなる電解質層
と、二硫化鉄と前記混合溶融塩の混合正極層を加圧一体
に成型して素電池を構成する。
第2図は第1図の工程図中の重ね合せ〜加熱処理につ
いて図示したもので、1は鉄・リチウム層、2は金属製
カップであり、鉄−リチウム層1を収納した後、カップ
の周縁を内側に曲折してカシメを行い一体構造とする。
3はアルミニウムシートで、鉄・リチウム層面に重ね合
せ、発熱体を組み込んだ上部熱板と下部熱板5の間に挾
み、鉄・リチウム層面でリチウム・アルミニウム合金を
生成させる。
実施例2 他の方法によって、リチウム層と鉄粉層の2層を金属
製カップ内に鉄粉層を上にして収納したのち、第1図の
重ね合せ〜素電池の工程が同じ場合について下記に述べ
る。
まずリチウムシートを円板に打抜き金属製カップ内面
に張り付けたのち金型にセットし、その上から所定量
(リチウムに対し一定の重量比となる量)の鉄粉を加圧
成型すると同時にクリンプを行う。こうして得られたも
のはリチウム層と鉄粉層の2層になっており、この上に
(鉄粉層)アルミニウムシートを重ね合せ、Arガス中50
0℃で熱処理を行うと、リチウム層は溶融して鉄粉層に
含浸し、次いでアルミニウムシートと接触リチウム−ア
ルミニウム合金を生成する。
上記実施例1,2により得られる素電池は、第3図の如
き構成となっている。図中、6はリチウム−アルミニウ
ム合金化処理した鉄−リチウム層、7はカシメ済み金属
製カップでリチウム−アルミニウム合金化鉄−リチウム
層と一体となって、負極8を形成している。9はLiCl−
KCl50重量%とMgO50重量%の混合物を加熱溶融後、粉
砕,造粒ののち加圧成型で得た電解質層、10は二硫化鉄
64重量%、LiCl−KCl16重量%、LiCl−KClとSiO2の混合
物20重量%の混合物を加圧成型で得られた正極層であ
る。
第4図は、本発明の製造法を用いた負極を使用して積
層形熱電池を構成した縦断面図である。
図中、11は第3図の素電池で必要枚数を直列に積層す
ることで所望する電圧が得られ、過塩素酸カリウム/鉄
系発熱剤12と交互に組み合せて直列構成とする。13及び
14は上,下の蓄熱層で例えばLi2SO4−NaClとSiO2からな
る層であり、素電池11と発熱剤12のスタックの作動温度
を長時間維持させるものである。15は電気式点火器でそ
のリード線は一対の起動用端子16に接続され、この端子
よりパルス電流を通電すると火炎を発してヒートパッド
17を燃焼し、更に導火帯18に燃焼伝ぱさせる。19,20は
正極出力端子と負極出力端子で、スタックの最上部と最
下部から引出した内部リード線を接続する。21は断熱層
でMIN−K と呼ばれる特殊な高性能断熱材を用いてス
タックを包囲した。22は起動用端子16,出力端子19,20を
取付けた電池蓋、23は電池ケースで、封口部24をTIG溶
接にて完全気密とする。
次に本実施例の効果を調べた結果について述べる。下
表は素電池直径75mm,電池外径95mm,電池高さ90mmの形状
における100mA/cm2の低率電流密度で放電しながら600秒
時点で1000mA/cm2の効率電流密度で10秒間放電し、再び
100mA/cm2にもどして放電を続けた試験結果である。
持続時間とは最大電圧値の75%を維持し続けた時間で
あり、パルス負荷電圧とは効率電流密度の負荷をかけた
時の最低電圧値を示したものである。試料No.1は市販の
リチウム・アルミニウム合金粉末を粉体成型して得た電
極であり、一方試料No.9は鉄・リチウム層単独の従来品
であって、試料No.2〜8は本発明の製造法で作製した負
極を用いている。
この結果で明らかなように、試料No.5および6近傍の
Li:Al比が持続時間,パルス負荷電圧の総合成績で優れ
ており、実用的範囲はLi:Al=70:30〜95:5原子%であっ
た。
発明の効果 以上の説明から明らかなように、鉄−リチウム層の電
気化学反応面にアルミニウムシートをリチウムの融点以
上の温度で加熱溶融処理を行い、のち冷却固化して製造
した負極、もしくは、リチウム層と鉄粉層の2層を金属
製カップ内に鉄粉層を上にして収納したのち、鉄粉層の
上にアルミニウムシートを重ね合せてリチウムの融点以
上で加熱溶融処理を行い、のち冷却固化して電気化学反
応面にリチウム−アルミニウム合金層を形成した負極で
あって、リチウムとアルミニウムの原子比率が70:30〜9
5:5の範囲であれば、長時間作動性に優れた、生産性の
よい熱電池を提供できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一実施例における負極および素電池の
製造工程図、第2図は鉄−リチウム層にアルミニウムシ
ートを重ね合せて加熱処理する工程の分解図、第3図は
素電池構成を示す断面図、第4図は同素電池を用いた積
層形熱電池の縦断面図である。 1……鉄−リチウム層、2……金属製カップ、3……ア
ルミニウムシート、8……負極、9……電解質層、10…
…正極層、11……素電池、12……発熱剤。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 粟野 彰規 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電 器産業株式会社内 (56)参考文献 特開 昭62−128455(JP,A) 特開 昭62−139269(JP,A)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】鉄粉の表面にリチウムを保持させてチウム
    の融点以上においても流動性を有しない鉄−リチウム層
    をつくる工程と、前記鉄−リチウム層の片面が電気化学
    反応をするよう金属製カップ内に収納する工程と、鉄−
    リチウム層の反応面にアルミニウムシートを重ね合せて
    不活性ガス雰囲気中でリチウムの融点以上に加熱処理す
    る工程と、その後冷却固化する工程を経て製造された、
    少なくとも電気化学反応面がリチウム−アルミニウム合
    金層を有する負極を用い、これに溶融塩電解質と二硫化
    鉄正極を組合せて素電池を構成した熱電池の製造法。
  2. 【請求項2】リチウムとアルミニウムの原子比率が百分
    率で70:30〜95:5の範囲である特許請求の範囲第1項記
    載の熱電池の製造法。
  3. 【請求項3】金属製カップ内にリチウム層と鉄粉層の2
    層を鉄粉層を上にして収納する工程と、鉄粉層の上にア
    ルミニウムシートを重ね合せて不活性ガス雰囲気中でリ
    チウムの融点以上に加熱処理する工程と、その後冷却固
    化する工程を経て製造された、少なくとも電気化学反応
    面がリチウム−アルミニウム合金層を有する負極を用
    い、これに溶融塩電解質と二硫化鉄正極を組合せて素電
    池を構成した熱電池の製造法。
  4. 【請求項4】リチウムとアルミニウムの原子比率が百分
    率で70:30〜95:5の範囲である特許請求の範囲第3項記
    載の熱電池の製造法。
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