JP2642978B2 - 無水石こうの製造方法 - Google Patents

無水石こうの製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は,無水石こうプラスター,キーンスセメン
ト,エストリッヒギプス等の原料,あるいは、各種成型
品の充填材として利用される無水石こうの製造方法に関
する。
〔従来の技術〕
従来の無水石こう製造方法に関しては以下の2とおり
がある。
(1)石灰水こう方法排煙脱硫装置から副生する脱硫2
水石こう,または天然石こうを300〜900℃に加熱焼成し
て無水石こうを得る方法。
(2)上記原料に水を加え,スラリー状としたものを23
0℃で加熱,加圧して再結晶化した無水石こうを得る方
法がある。
上記(1)の具体的方法として実験室的には、上記原
料を鉄製の皿に入れ,これを電気炉内,または直火で30
0〜900℃に加熱する方法。工業的には,平がま,ロータ
リーキルン等の焼成設備を用い,これに重油,灯油,天
然ガス等の燃焼ガス顕熱を使用して300〜900℃で連続
的,かつ大量に無水石こうを得る方法。
また、上記(2)の具体的方法としては,上記原料に
水を加え,10〜20wt%濃度のスラリーとしたものを加圧
がまに入れ,230℃で加熱・加圧し,石こうが水に溶解し
て行く過程において結晶水の離脱,無水石こう析出を行
わせる方法である。ただし(2)の方法において工業的
に実用化されたものはまだない。
〔発明が解決しようとする課題〕
前記した従来の(1),(2)の無水石こうの製造方
法においては以下の問題点がある。(1)については,
(a)焼成温度が高いため耐火材など余分な装置コスト
がかかる。(b)気流焼成型であるため粉塵対策として
サイクロン,バグフィルター等の補器が必要である。
(2)については,(c)スラリー状で得られた無水石
こうを脱水するための遠心分離装置が不可欠である。
(d)遠心分離されたものを更に完全脱水するには別な
乾燥装置を必要とする。
〔課題を解決するための手段〕
本発明は上記課題を解決するために,脱硫2水石こ
う,または天然石こうを粉末の状態で用い,媒晶剤とし
てクエン酸ナトリウムを使用して低温域で無水石こうを
得るものである。すなわち,脱硫2水石こう,または天
然石こうの粉末99.95〜98.5重量部にクエン酸ナトリウ
ム0.05〜1.5重量部を加え,125〜150℃の水蒸気雰囲気中
で加熱することを特徴とする無水石こうの製造方法を提
供するものである。
〔作用〕
本発明の無水石こうの製造方法は上記のような製造方
法となるので脱硫2水石こう,または天然石こうに全く
水を加えない場合でも離脱した結晶水がガスとして遊離
しない水蒸気雰囲気中においては,石こうの溶解が起こ
り,再結晶化した無水石こうを得ることができる製造方
法である。
〔実施例〕
以下,本発明を図面に示す実施例に基づいて具体的に
説明する。第1図は本発明に係る無水石こう製造装置の
構造を示す部分断面図である。以下にその説明をする。
ここで,1は反応器,2は撹拌羽根,3は電気炉,4は加熱水,5
は熱電対,6は圧力計,7は電磁撹拌機,8は原料石こう供給
口,9は原料圧送用N2ガス供給口を示す。
ここで,本製造方法の原理を詳述すると,2水石こうに
水を加え加圧加熱すると,2水石こうは水溶液として溶解
し,100℃付近では3/2の結晶水を失って半水石こうとな
る。そして更に230℃付近では,残りの1/2の結晶水を失
って再結晶化した無水石こうとなる。この過程で失なわ
れる結晶水はガスとして気相に遊離しない限り加えた水
と同じ2水石こうの溶解を行なわせる性質を有するもの
である。
第(1)の特徴の脱硫2水石こう,または天然石こう
に全く水を加えない場合でも離脱した結晶水がガスとし
て遊離しない水蒸気雰囲気中においては,石こうの溶解
が起こり再結晶化した無水石こうを得ることができる。
次に第(2)の特徴について説明すると,上記に示し
た2水石こうを水溶液中で加圧・加熱する方法において
媒晶剤を使用する例としては,α型半水石こうの製造方
法が知られている。これは,2水石こうの溶解を抑制する
とともに,溶解した2水石こうが半水石こうとして再結
晶し成長する際,一方向への結晶成長を抑制し,均一に
成長した半水石こうを得るために使用されるものであ
る。これらの媒晶剤としては,コハク酸ナトリウム,ク
エン酸ナトリウム等がある。この2つの媒晶剤を用い
て,脱硫2水石こう,及び天然石こうを本発明の第
(1)の特徴の条件において120〜150℃で加圧・加熱し
たところ,コハク酸ナトリウムを使用したものは,半水
石こう,クエン酸ナトリウムを使用したものは無水石こ
うが得られた。周知のとおり,無水石こうは半水石こう
に比べ安定な物質であり,媒晶剤の媒晶効力の点では,
クエン酸ナトリウムはコハク酸ナトリウムに比べて強力
である。したがって本発明の第(2)の特徴であるクエ
ン酸ナトリウムの使用は,2水石こうの溶解が極めて抑制
され,また半水石こうの結晶成長が同じく極めて抑制さ
れるため,その間に半水石こうは更に安定な無水石こう
へと転化したものである。以上の方法によって無水石こ
うを得られたことにより,高温を必要とせず,粉塵対策
の必要もなく,更に過剰の水を使用していないので遠心
分離装置が不要な無水石こうの製造方法が見いだされ
た。本発明において離脱した結晶水は反応装置出口にお
いて若干加熱し除去するだけで十分である。
その製造装置の機能は加圧機構(不図示)を有した電
気炉3内に反応器1を設置し,該反応器1内には電磁撹
拌機7を介して前記電気炉3の上部に原料圧送用N2ガス
供給口9を備えた原料石こう供給口8から例えば脱硫2
水石こうにクエン酸ナトリウムを加えた原料と,前記反
応器1内の加熱水4を混じえて撹拌羽根2により撹拌さ
れる。この撹拌時に前記した不図示の加圧機構の圧力計
6による圧力の調整,並びに電気炉3内の熱電対5によ
る温度の調整を行いながら反応の促進を可能とする機構
を基本的に具備しているものであって,本装置にこの発
明が限定されるものでないことはもちろんである。
続いて,具体的の実施例を以下に列挙すると 〔実施例1〕 脱硫2水石こう1600gにクエン酸ナトリウム20gを加え
た原料(脱硫2水石こう98.8重量部クエン酸ナトリウム
1.2重量部)を,560g/hrでオートクレーブ内に連続供給
し,オートクルーブ内は撹拌しながら温度は136℃,圧
力は3.2kg/cm2に保った。反応後オートクレーブ内の蒸
気を放出し,水分を除去して,無水石こうを得た。この
間の反応時間は約2.8hrであった。
〔実施例2〕 脱硫2水石こう1110g,クエン酸ナトリウム0.72g(脱
硫石こう99.94重量部,クエン酸ナトリウム0.06重量
部),供給速度482g/hr,オートクレーブ内温度150℃,
圧力4.2kg/cm2,反応時間2.3hrで無水石こうを得た。そ
の他の操作は実施例1に同じである。
〔実施例3〕 脱硫2水石こう1800g,クエン酸ナトリウム28g(脱硫
2水石こう98.5重量部,クエン酸ナトリウム1.5重量
部),供給速度276g/hr,オートクレーブ内温度125℃,
圧力3.1kg/cm2,反応時間6.6hrで無水石こうを得た。そ
の他の操作は実施例1に同じである。
〔実施例4〕 脱硫2水石こう960g,クエン酸ナトリウム3.8g(脱硫
2水石こう99.6重量部,クエン酸ナトリウム0.4重量
部),供給速度241g/hr,オートクレーブ内温度130℃,
圧力3.0kg/cm2,反応時間4.0hrで無水石こうを得た。そ
の他の操作は実施例1に同じである。
〔実施例5〕 脱硫2水石こう880g,クエン酸ナトリウム0.7g(脱硫
2水石こう99.92重量部,クエン酸ナトリウム0.08重量
部),供給速度275g/hr,オートクレーブ内温度141℃,
圧力3.5kg/cm2,反応時間3.2hrで無水石こうを得た。そ
の他の操作は実施例1に同じである。
以上の実施例について表1,及び表2に示した。
〔比較例1〕 脱硫2水石こう770gに水292gを加え更にクエン酸ナト
リウム0.77gを加えた原料(脱硫2水石こう72.45重量
部,水27.48重量部,クエン酸ナトリウム0.07重量部)
をオートクレーブ内に供給速度357g/hrで連続供給し
た。オートクレーブ内温度は143℃,圧力は3.9kg/cm2,
反応時間3.0hrで無水石こうを得た。その他の操作は実
施例1に同じである。
〔比較例2〕 脱硫2水石こう720g,コハク酸ナトリウム0.5g(脱硫
2水石こう99.93重量部,コハク酸ナトリウム0.07重量
部),供給速度276g/hr,オートクレーブ内温度136℃,
圧力3.4kg/cm2,反応時間2.6hrでは,無水石こうは得ら
れず,半水石こうが得られた。その他の操作は実施例1
に同じである。
以上の比較例を表1,及び表2に合せて示した。
表2に示すn値とは反応物中に残った結晶水の量を表
す値であり,その値は次の方法で求めらる。
w1:反応物の重量=1.2〜1.5gをとり秤量する。
w2:秤量したw1の反応物を260℃乾燥器で3hrで乾燥し,
反応物中に残る結晶水を完全に除去後の重量 したがって,w1−w2:離脱した結晶水分の重量,136:CaS
O4の分子,18:水の分子量,以上より,脱硫2水石こうが
全く末反応のままであればn値=20,半水石こうであれ
ばn値=0.5,完全に無水石こうとなっていればn値=0
となる。
表2より分かるとおり,実施例1,2,3はn<0.5であ
り。未反応2水石こうの存在も考慮すれば原料中の大半
が無水石こうとなっているものである。実施例4,5及び
比較例1はn>0.5であるが,得られたものは半水石こ
うよりも無水石こうが多い。実施例1〜5及び比較例1
の反応物を水と混練し,硬化体の試作を試みたが,硬化
しなかった。これは無水石こうが死石こうと呼ばれ,水
和硬化しない特徴の表れである。比較例2は,簡単に水
和硬化した。これは半水石こうの特徴である。
〔発明の効果〕
以上具体的に実施例で説明したとおり,脱硫2水石こ
う,または天然石こうの粉末99.95〜98.5重量部にクエ
ン酸ナトリウム0.05〜1.5重量部を加え,125〜150℃の水
蒸気雰囲気中で加熱すれば無水石こうを得られる。この
とき上記原料石こうに付着水分が存在していても何らの
支障もないことを知ることができる。また実施例1〜5
に示した反応時間以上,反応物を反応器内に滞留させれ
ば,原料石こうを100%無水石こうに転化できることが
推定される。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の実施例に係る無水石こう製造装置の部
分断面図。 1……反応器,2……撹拌羽根,3……電気炉,4……加熱
水,5……熱電対,6……圧力計,7……電磁撹拌機,8……原
料石こう供給口,9……原料圧送用N2ガス供給口。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大黒 武敏 東京都千代田区丸の内2丁目5番1号 三菱重工業株式会社内 (72)発明者 井川 光嗣 広島県広島市西区観音新町4丁目6番22 号 菱明技研株式会社内 (56)参考文献 特開 昭53−15292(JP,A) 特開 昭52−65796(JP,A)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】脱硫2水石こう,または天然石こうの粉末
    99.95〜98.5重量部にクエン酸ナトリウム0.05〜1.5重量
    部を加え,125〜150℃の水蒸気雰囲気中で加熱すること
    を特徴とする無水石こうの製造方法。
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