JP2640287B2 - リポソーム材料 - Google Patents

リポソーム材料

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JP2640287B2 JP2188485A JP18848590A JP2640287B2 JP 2640287 B2 JP2640287 B2 JP 2640287B2 JP 2188485 A JP2188485 A JP 2188485A JP 18848590 A JP18848590 A JP 18848590A JP 2640287 B2 JP2640287 B2 JP 2640287B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明はリポソーム材料に関するものである。
(従来の技術) 従来、卵黄レシチン、卵黄ホスファチジルコリン、大
豆油レシチンとか、それらの構成成分であるリン脂質、
さらには合成レシチンが水中250Å〜5μmの大きさの
閉鎖小胞体(ベシクル)、すなわち生体類似の脂質二分
子膜構造を有する構造体であるリポソームを形成するこ
とが知られている。このリポソームは、薬剤や酵素を封
入した超マイクロカプセル材料としての用途を持ち、イ
ンシュリン、ヘパリン、ビタミンK、コルチコステロイ
ド及び各種の抗ガン剤等の水溶性、油溶性薬剤をリポソ
ームの内水相や疎水性壁膜に封入し、徐効性又はより速
効性の治療薬の開発研究が進められている。
化粧品の分野でも、室温に保存した場合に不安定なビ
タミンE、アスコルビン酸等の活性物質をリポソーム処
方化することにより、その保存期間の長期安定化を図る
ことが行われている。
また、レシチンから成るリポソームは、肝ぞう、脾ぞ
う、リンパ節などに集積する傾向があるが、スルファチ
ドの添加により血液脳関門透過性のリポソームも開発さ
れた。これにD−グルコースオキシダーゼを封入したも
のは、先天的酵素欠陥症の治療に有効であることが知ら
れている。また、ヘモグロビンや鉄(II)ポルフィリン
をリポソームに封入した人工赤血球なども提案されてい
る。ガン細胞と反応するモノクロナール抗体をリポソー
ムの表面に結合させ、内部に抗ガン剤を保持させてガン
細胞への指向性を持つ新薬剤型のミサイル療法も研究さ
れている。さらに、リポソームの免疫学への応用も研究
され、リポソームを血清中の抗体価測定や診断薬などと
して使用することも試みられている。また、リポソーム
を用いた経皮投与システムが考えられ、リポソームに内
包した薬剤のみが皮膚表層のケラチン層を透過し、リポ
ソーム自身は透過しないものも発表されている〔石井文
由、佐々木一郎、フレグランスジャーナル,No.91,100
(1988)〕。
特開昭63−2921号公報には、N−高級アシルアミノ酸
を基剤とするリポソーム製剤が示されている。この公報
には、前記リポソームが臓器選択的蓄積性があることを
示すにとどまり、リポソーム中の薬剤の放出を促進させ
ることについては全く記載されていない。
(発明が解決しようとする課題) リポソームに内包された医薬、化粧品等の各種薬剤
は、通常、静注、筋注、皮下注、経口投与、皮膚への塗
布などの方法で使用されるのであるが、この場合、水分
散リポソームの保存過程での安定性は重要である。しか
も一旦使用に供した場合は人体の所定部位ですみやかに
内容物が放出されるようなインテリジェントな機能を持
ったリポソームの開発が現在非常に望まれている。さら
に、リポソームの形成材料としては当然無毒性のものが
必須の条件となってくる。
本発明は、外水相の還元条件やpH条件に応じて内包薬
剤を放出し、かつケラチンに対してすぐれた親和性を有
して皮膚への吸着透過性を有する機能を持ったリポソー
ムの開発を目的とする。
(課題を解決するための手段) 本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意研究を行なっ
た結果、N,N′−ジアシルシスチン及び還元剤壁膜材を
用いたリポソームに薬剤を封入したものは、外水相の還
元条件に応じてそのリポソーム壁膜が破壊されて内包薬
剤を放出することを見出すとともに、該リポソームはケ
ラチンに対してすぐれた親和性を有することを見出し、
本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、壁膜がN,N′−ジアルキ
ルシスチンを含有するリポソームと還元剤との組合わせ
からなるリポソーム材料が提供される。
本発明で用いるN,N′−ジアシルシスチンにおけるア
シル基としては、炭素数8〜22のものが用いられ、好ま
しくは炭素数10〜18の飽和若しくは不飽和の高級脂肪酸
由来のアシル基が用いられる。シスチンとしては、L、
DL及びD型のものが用いられる。
本発明で用いる壁膜がN,N′−ジアシルシスチンを含
有するリポソーム(以下、単にリポソームSとも言う)
の形成方法は特に制限されないが、従来より公知の方法
を採用できる。このような公知の方法の詳細について
は、例えば菊池寛、井上圭三、「細胞工学」,1136(1
983)、石井文由、佐々木一郎、「フレグランスジャー
ナル」91,100(1988)、野呂俊一、石井文由,「薬
局」,35,1193;1329(1984)等に詳述されている。
本発明におけるリポソームSの壁膜材は、N,N′−ジ
アセチルシスチンからなるもので、水中でラメラ液晶を
形成するような二鎖型界面活性剤で、条件により二分子
膜構造を有する閉鎖小胞体を安定に生成するもの、例え
ばリン脂質分子とN,N′−ジアシルL−シスチンとの混
合物を用いるのが好ましい。またこの混合物には、二分
子膜を補強するためにコレステロールを添加することが
できる。さらに荷電物質としてリン酸ジセチルやステア
リルアミン等を添加してもよい。リン脂質としては、一
般に使用されているものを単独または混合物の形で用い
ることができる。N,N′−ジアシルシスチンの使用量は
全壁膜に対するモル%で、5〜40%、好ましく10〜30%
の割合である。
次に具体的に本発明で用いるリポソームSの製造法に
ついて説明すると、100mlのナス型ナラスコにモル比で7
0:20:10又は60:20:20、50:20:30、40:20:40等の割合で
卵黄レシチン:コレステロール:N,N′−ジアシルシスチ
ンを秤量する。これを低沸点の溶媒なら何でも使用でき
るが、通常クロロホルム、ジクロロメタン、エーテル、
メタノール、エタノール等やそれらの混合溶媒を用いて
溶解する。油溶性の薬剤を包含させるときはこの段階で
薬剤を添加して溶解する。その後、エバポレーターで溶
媒を除き減圧乾燥する。この中に蒸留水またはpH6.0〜
7.5の緩衝液を適当量加えて、ボルテックスミキシング
法または超音波法により振動を与えてリポソームSの水
分散液を作り、リポソームSの疎水性脂質部に油溶性薬
剤や化粧品となるべき油溶性物質をトラップする。トラ
ップされていない薬剤はゲル濾過法、透析法、遠心分離
法などで取除く。一方、水溶性の薬剤をリポソームSに
内包させる場合には、前記と同様に卵黄レシチン:コレ
ステロール:N,N′−ジアシルシスチンを秤量、溶解、乾
燥した後蒸留水又はpH6.0〜7.5の緩衝液に薬剤を溶解し
て加え、以下同じ手法でリポソームSを形成し、外水相
に存在する薬剤を除くためにゲル濾過法、透析法、遠心
分離法などの処理を施す。これにより、内水相に水溶性
薬剤を含むリポソームSを得る。このリポソームSの壁
膜材の重量は水に対し0.1〜3重量%である。
前記リポソームSは、還元剤感受性を有するものであ
る。従って、リポソームSを還元条件に保持することに
より、内包薬剤を放出させることができる。このような
還元条件は還元剤を使用することにより形成される。
本発明でいう、還元剤には、アスコルビン酸、アルコ
ルビン酸ナトリウム、チオグリコール酸、チオグリコー
ル酸ナトリウム、ビタミンE、亜硫酸ナトリム、亜硫酸
水素ナトリウム等の通常の還元剤の他、生体内還元性酵
素、グルコース分解酵素やグルコース分解補酵素とグル
コース等からなる還元性物質が包含される。また、リポ
ソームSと還元剤を組合せたリポソーム材料を水溶液に
投入することにより、リポソームの破壊を生じさせるこ
とができる。
本発明者らの実験においてはリポソームS内に内包さ
れた薬剤の流出速度が非常に精密に測定できるように蛍
光物質のカルセインを薬剤の代替物として用いた。リポ
ソームSは水中または通常の環境においては内包した薬
剤を安定に保持しつづけるが、還元剤の作用によりある
いはpH条件の調節により薬剤を放出し始める機能を有す
るものである。リポソームSが還元剤感受性を有する主
な理由は、N,N′−ジアシルシスチンが還元剤の作用に
よりその分子中に存在するS−S結合が切断され、S−
H未端のN−アシルシステインとなり、バルキーで水に
ほとんど不溶性であった分子から、分子量がほぼ半分で
親水性の大きい分子に変化することにより、水に対する
溶解度が増加し、界面活性を有する物質に変化すること
に起因するものと考えられる。
リポソームSに使用されるリン脂質としては、例え
ば、卵黄レシチン、卵黄ホスファチジルコリン、ホスフ
ァチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ス
フィンゴミエリン、ジセチルリン酸、ホスファチジルグ
リセロール、ホスファチジン酸、アゾレクチン、L−α
−ジパルミトイルホスファチジルコリン、ホスファチジ
ルイノシトール及びこれらの混合物をあげることができ
る。要はリポソームを一般に形成することのできるリン
脂質であれば何でも用いることができ、さらに、ショ糖
エステル、ラムノリピッド、スピクリスポール酸アルキ
ルアミン塩、ジオクタデシルジメチルアンモニウムブロ
ミドなど天然や人工ベシクル形成材料も用いることがで
きる。
(発明の効果) 本発明で用いるリポソームSはN,N′−ジアシルシス
チンを含有する壁膜を有し、生体安定性が高く、pH6以
下で保存した場合、卵黄レシチン等の通常の標準的材質
からなるリポソームと同様に安定で、内包する薬剤は放
出されず、化学的、コロイド化学的に長期安定である。
一方、このリポソームSは還元剤感受性を有し、リポ
ソームの外水相の環境が還元条件になると、リポソーム
に内包された薬剤は徐々に放出され、還元条件に応じて
放出の速度が増大する。リポソームに封入する薬物とし
ては油溶性、水溶性のいずれも使用され、このリポソー
ムSは、薬剤等を封入した徐放性、機能性の新薬剤型リ
ポソームとして好適なものである。
リポソームSは還元剤感受性とともにpH感受性を有
し、アルカリ側になると薬剤の放出が始まる機能を有し
ているので、経口投与にも、経口投与にも好適である。
化粧品用リポソームとして、ビタミンC、Eなどの還元
剤又は還元剤を内包したリポソームとリポソームSとを
混合して使用すれば、その還元剤の作用により、あるい
はリポソームから流出する還元剤の作用によりリポソー
ムSは破壊される。本発明で壁膜材として用いるN,N′
−ジアシルシスチンは、生体由来の特に毛髪や皮膚に多
く存在する無毒性のアミノ酸と脂肪酸を用いて、アシル
化反応により得られるもので、安定性及び安全性の高い
物質であり、リポソームSも安全性の高いものである。
本発明で用いるリポソームSにおいて、インシュリンを
内包させたものは、グルコースを増加により、生体内酵
素が活躍し、グルコースを脱水素し、結果的にシスチン
が還元されて、リポソームは破壊され、インシュリンが
放出されるので糖尿病の治療薬としても用いられる。
(実施例) 次に本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明す
る。
参考例1 (a)N,N′−ジアシルL−シスチンの合成 N,N′−ジラウロイルL−シスチンの合成は以下の手
順で行った。300mlの丸底三ツ口フラスコにL−シスチ
ン1.20gを秤量する。次に反応溶媒としてアセトン−水
を70ml:50mlの割合で混合し、この60mlを使用して水酸
化ナトリウム0.96gを溶解した後0℃に冷却後、撹拌し
ながら滴下ロートを用いてラウロイルクロライド2.625g
を30分間で滴下した。滴下後反応系は白濁し、沈殿物が
生成したがその後室温で2時間撹拌を続けた。反応後1N
−塩酸を用いて反応系を酸性にし、沈殿物を濾過、乾燥
した。この時点での収率は100%であったが、n−ヘキ
サン中に分散し60℃に加熱、エタノールを系全体が透明
になるまで滴下後冷却して再結晶を行った。再結晶を数
回繰り返し精製した。
融点110〜111℃、収量1.98g、収率65.5%。
(b)N,N′−ジオクタノイルL−シスチンの合成 300mlの丸底三ツ口フラスコにL−シスチン1.20gを秤
量する。次に反応溶媒としてアセトン−水を70ml:50ml
の割合で混合し、この60mlを使用して水酸化ナトリウム
0.96gを溶解した後、丸底三ツ口フラスコに注入、撹拌
溶解後、0℃に冷却し、オクタノイルクロライド1.95g
を30分間にわたり滴下した。この間反応系は白濁沈殿物
が生じた。反応は室温で2時間継続した後1N−塩酸を用
いて反応系を中和弱酸性とした後、沈殿物を濾過、乾燥
した。この時点での収量2.38g、収率88.8%、再結晶は
n−ヘキサン中に沈殿物を分散させて60℃に加熱、アセ
トン数滴を加えて溶解後−20℃まで冷却して再結晶を行
った。分子量536、融点107〜108℃、収量0.92g、収率3
4.3%。
同様にして、パルミトイルクロライドを用いることに
より、N,N′−ジパルミトイルL−シスチン(収率71
%)を得た。
(c)N−オクタノイルL−システィンの合成 300mlの丸底三ツ口フラスコにL−シスチン1.21gを秤
量する。次に反応溶媒としてアセトン−水を20ml:35ml
の割合で混合し、この55mlを使用して水酸化ナトリウム
1.44gを溶解した後丸底三ツ口フラスコに注入し、撹拌
溶解した後、0℃に冷却し、オクタノイルクロライド1.
95gを30分間にわたり滴下した。この間反応系は白濁沈
殿物が生じた。反応は室温で2時間継続した後1N−塩酸
を用いて反応系を中和弱酸性とした後、エチルエーテル
を用いて反応物を抽出、エーテル相を水洗後、亡硝を用
いて脱水し、エバポレーターでエーテルを除去して目的
物を得た。n−ヘキサンに加熱溶解後、−20℃に冷却固
化して精製した。この操作を繰り返して得られた精製物
は液状であったが、数日後に固化した。
収量1.87g、収率75.7%、融点51〜53。
参考例2(リポソームの調製) 卵黄レシチン21.95mg、コレステロール3.1mg、参考例
1で合成したN,N′−ジラウロイルL−シスチン2.4mg
(モル比7:2:1)を50ml容ナス型フラスコに秤量し、ジ
クロロメタン・メタノール混合溶媒(容積比3:2)5mlを
加えて溶解させた。
次にこのナス型フラスコをロータリーエバポレーター
に接続して溶媒を除き、フラスコ内壁に薄膜を張り、更
にデシケーターに入れて減圧下1時間乾燥した。この後
4×10-4mol/の濃度になるように水に溶解した。カル
セイン(蛍光塗料)溶液5mlを加え、ボルテックスミキ
サーで20分間振動し、いくらか白濁した黄色のリポソー
ムを含む懸濁液を得た。この液をセーファデックスG−
50のカラム(径20mm、高さ250mm)によりゲル濾過し、
フラクションコレクターに分取し、各フラクションにつ
き蛍光強度を測定した。はじめに流出するカルセイン内
包リポソームと外水相にあるカルセインは完全に分離
し、蛍光強度は2つのピークに分離した。はじめに流出
したフラクションのピーク部分がカルセイン内包リポソ
ームで、内包されてないカルセインとは完全に分離して
後のフラクションとして流出した。カルセイン内包リポ
ソームはコールターN−4サブミクロンパーテクルアナ
ライザーにより、レーザー光を用いて粒子径分布を測定
したところ、平均粒径423nmであった。蛍光測定は480nm
を励起光とし、520nmでのカルセインの極大エミッショ
ン波長での強度を測定した。リポソーム内水相にカルセ
イン蛍光色素が封入されたことを確認するため、リポソ
ーム分散液3.5mlをとり、これに10%トリトンX−100
(ポリオキシエチレンイソオクチルフェニルエーテル)
水溶液100μを加えた試料を作り、この蛍光強度を測
定したところ、水を加えて同じ容積としたリポソーム溶
液に比較して2倍以上の強度を示した。この事実により
蛍光色素がリポソームの中に封入されていることが確認
された。この実験の原理は、リポソーム内水相に封入さ
れた蛍光色素は、はじめから濃厚な状態にあるため、52
0nmのカルセインの特性吸収が濃度消光の性質により、
わずかしか観察されないのに対し、リポソームがトリト
ンX−100により破壊され、カルセインが外水相に流出
し、そして外水により希釈されることにより520nmの蛍
光が強度を増大させて観察されるという高濃度自己消光
を利用したものである。
更に前記リポソーム懸濁液は室温に放置して、毎日2
回づつ蛍光強度測定を行なったが、経時的な強度の変化
は3週間みられなかった。
実施例1 卵黄レシチン70mol%、コレステロール20mol%、N,
N′−ジラウロイルL−シスチン10mol%の組成からな
る、4×10-4mol/濃度のカルセイン蛍光色素を含むリ
ポソーム(A)水分散体を参考例2にならい作製した。
また、同時にN,N′−ジラウロイルL−シスチンを含ま
ず卵黄レシチン26.1mg、コレステロール3.9mgからなる
カルセイン濃厚液(4×10-4mol/)を内包するリポソ
ーム(B)を参考例2の方法で調製した。このリポソー
ム分散液(A)及び(B)につき外水相に還元性試薬と
して知られるアスコルビン酸の5%溶液20μを滴下
し、リポソーム内水相からのカルセインの流出速度を蛍
光強度の測定により30分ごとに観察した。リポソーム
(A)水分散体ではカルセインが少しづつ流出し、300
分後の漏れは全内水相中のカルセイン量の25%に達し
た。同じ実験において、標準リポソーム(B)ではアス
コルビン酸の存在にかかわらず外水相へのカルセインの
漏れは1週間の測定観察を通じても認められなかった。
このことから、リポソーム(A)では壁膜中にN,N′−
ジラウロイルL−シスチンが組み込まれていることと、
アスコルビン酸の還元作用によりS−S結合の切断が起
こり、より親水性の大きいN−ラウロイルL−システイ
ンに変化することによる壁膜の破壊又は壁膜のわれ等が
発生したものと考えられる。
また、N,N′−ジラウロイルL−シスチンのかわりに
N,N′−ジオクタノイルL−シスチン(参考例1(b)
参照)10mol%を用い、本実施例に従って調製したリポ
ソームの場合でもアスコルビン酸によるリポソーム壁膜
の破壊とカルセインの流出が観測された。還元剤として
はアスコルビン酸ナトリウム、チオグリコール酸、チオ
グリコール酸ナトリウム、ビタミンE、亜硫酸ナトリウ
ム、亜硫酸水素ナトリウム等でも同様にリポソームの破
壊が起こった。
実施例2 参考例2において卵黄レシチン−コレステロール−N,
N′−ジラウロイルL−シスチンの配合を6:2:2mol、5:
2:3mol、4:2:4mol比に変え、その他はすべて同じ方法で
調製した。これらのカルセイン含有リポソームは実施例
1に示したとおり還元剤感受性を示し、5%アスコルビ
ン酸20μを3.5mlのリポソーム分散液に添加した場
合、300分後のカルセインの流出は6:2:2の場合30%、前
記モル比が5:2:3の場合50%、4:2:4の場合75%とN,N′
−ジラウロイルL−シスチンの含有量の多い方がカルセ
インの流出速度も大きい傾向を示した。
実施例3 参考例2において用いたN,N′−ジラウロイルL−シ
スチンのかわりにN,N′−ジオクタノイルL−シスチン1
0mol%を使用してリポソームを調製した。このものも、
実施例1に示したアスコルビン酸による破壊作用にとも
なうカルセインの流出を示した。
実施例4 実施例2における卵黄レシチン−コレステロール−N,
N′−ジラウロイルL−シスチンのmol比が4:2:4からな
るカルセイン含有リポソーム水分散液を3.5mlづつ3ケ
の容器に分取した。これにアスコルビン酸1%、3%、
5%の溶液20μをそれぞれ添加してカルセインの漏れ
を蛍光測定した。300分後の漏れは1%アスコルビン酸
の場合75%であった。カルセインの流出速度はチオグリ
コール酸、チオグリコール酸ナトリウム、ビタミンE、
亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等還元力の違
いによって相違はあるが、アスコルビン酸と同様の破壊
効果があることが確認された。コールターN−4型サブ
ミクロンパーテクルアナライザーによるリポソーム粒子
の平均粒子径は380nmであった。
実施例5 参考例2に従ってN,N′−ジラウロイルL−シスチン
を壁膜に10mol%含有し、4×10-4の濃度のカルセイン
を含有するリポソームを合成した。この水分散液1mlを
とり、グルコース分解酵素(20U/2ml、pH7.6蒸留水溶
液、東洋醸造製、GLDH T−43)2mlおよび、グルコース
の分解補酵素、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド
NADP+(Sigma chemical Co.USA)20μ(0.22mol/溶
液)、フラビンアデニンジヌクレオチドFAD(Sigma che
mical Co.USA)20μ(7.27wt%)を添加しよく混合す
る。この系につき蛍光測定を10分毎に120分間行った
が、蛍光強度の増加は認められなかった。この混合液に
D−グルコース12%溶液30μ(グルコース20μmolを
含む)を添加し、その後50分毎に系の蛍光強度を測定し
たところ、リポソーム内水相に内包されたカルセイン全
濃度に対し、100分後に10%、150分後に17%、200分後
に22%、250分後に28%の流出が認められた。
この実験結果はリポソーム内にインシュリンを内包さ
せた場合、生体内でグルコース濃度が正常値0.12%以上
に達した場合、グルコース分解酵素やグルコース分解補
酵素の作用によりリポソームが破壊され、インシュリン
が流出するような糖尿病の治療薬としての機能性リポソ
ームの開発に道を開いたものである。この実験に関する
参考文献として、現代化学,1989,12月号、p10〜11、臨
床化学分析III分析ライブラリー3、日本分析化学会
編、丹羽正治、北村元仕、斎藤正行共著,東京化学同
人,p441等が参照される。
参考例3(リポソームのケラチン膜への浸透実験) 参考例2に従って、N,N′−ジラウロイルL−シスチ
ンを壁膜に10mol%、20mol%、30mol%を含有し、カル
セイン4×10-4mol/を内包するリポソームを合成し
た。更に、卵黄レシチン80mol%、コレステローリ20mol
%を含有し、N,N′−ジラウロイルL−シスチンを含有
しない壁膜を有し、内水相には4×10-4mol/濃度のカ
ルセインを封入したリポソームを合成した。これらリポ
ソーム水分散液300mlづつをそれぞれ50mlのビーカーに
とり、その分散液に幅4.5mm、長さ40mm、厚さ180μmの
ケラチン膜を浸し、恒温水槽中で37℃にし、30分ごとに
ケラチン膜をリポソーム分散液から取出し、蒸溜水に入
れた後直ちに口紙で水分を取り、蛍光測定を行なった。
その蛍光強度はN,N′−ジラウロイルL−シスチンの含
有量が30、20、10mol%の順に、60分後に30、19、13及
び120分後に40、22、15となった。蛍光限度の増大はリ
ポソームのケラチン膜への吸着量の増大を示すものであ
り、ケラチン膜(人間の皮膚構造と最も類似していると
考えられる膜)への親和性が増大した事になる。一方セ
ルロース膜に対しては120分後でもリポソームの吸着に
よる蛍光限度は何れのリポソームにおいても2以下であ
った。同じ壁膜組成のカルセイン含有リポソームにつき
ケラチン膜透過実験を行なったところ、N,N′−ジラウ
ロイルL−シスチンの壁膜中の含有量30、20、10、0mol
%につき120分後の透過カルセインの蛍光強度は45、4
0、25、15で、300分後の蛍光強度は78、75、60、55であ
った。また、リポソームに包含しないカルセイン試薬の
ケラチン膜透過は同じ条件で実験を行なっても120分後
2、300分後7で非常に小さいものであった。以上の様
に薬剤をリポソームに包含する事およびリポソーム壁膜
にN,N′−ジラウロイルL−シスチンを導入する事は人
間の皮膚によく類似するケラチン膜の代過に対して吸収
および透過の両方に対して大きな促進効果を発揮した。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 鎌上 三郎 東京都板橋区本町23―23 リンテック株 式会社内 (72)発明者 海瀬 久靖 東京都板橋区本町23―23 リンテック株 式会社内 合議体 審判長 石田 吉信 審判官 大高 とし子 審判官 内田 淳子 (56)参考文献 特開 昭63−2921(JP,A)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】壁膜がN,N′−ジアルキルシスチンを含有
    するリポソームと還元剤との組み合わせからなるリポソ
    ーム材料。
  2. 【請求項2】該リポソームが薬剤を含有する請求項1の
    リポソーム材料。
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