JP2640122B2 - 脱炭抑制を図った鉄鋼素材の熱間圧延方法 - Google Patents

脱炭抑制を図った鉄鋼素材の熱間圧延方法

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JP2640122B2 JP13765888A JP13765888A JP2640122B2 JP 2640122 B2 JP2640122 B2 JP 2640122B2 JP 13765888 A JP13765888 A JP 13765888A JP 13765888 A JP13765888 A JP 13765888A JP 2640122 B2 JP2640122 B2 JP 2640122B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明はビレット、ブルーム、スラブ等の鉄鋼素材を
高温に加熱した状態で圧延する熱間圧延方法に関する。
本発明は脱炭深さを極めて浅く、例えば0.05mm以内に納
め得る鉄鋼素材の熱間圧延方法に関する。
[従来の技術] 従来より、ビレットなどの鉄鋼素材を熱間圧延するに
あたっては、高温ガス中で加熱する加熱炉内に鉄鋼素材
を装入して鉄鋼素材を1000℃程度に加熱する加熱工程
と、加熱した鉄鋼素材を熱間状態で圧延装置により圧延
する圧延工程とを順次実施することにしている。こで鉄
鋼素材としてビレットを用いた場合における従来の加熱
工程での昇温状態は、第9図に示されている。第9図に
示すように従来の加熱工程では、ビレットを1000℃前後
まで加熱する時間は約60分間である。
[発明が解決しようとする課題] 上記した熱間圧延方法では、加熱炉内に鉄鋼素材を装
入して鉄鋼素材を加熱する加熱工程を長時間にわたり実
施する関係上、鉄鋼素材の表面に脱炭現象が生じること
を回避できない。特に、ミル剛性が小さい圧延装置で鉄
鋼素材を圧延する場合には、圧延工程の前に圧延を良好
に行なうべく、脱炭温度以上の高温に鉄鋼素材を所定時
間加熱保持することが望ましいため、脱炭深さが深くな
りがちである。
ところで、近年、鉄鋼素材では、殊に高強度化の要請
が著しい自動車部品の鉄鋼素材では、脱炭深さを極めて
浅くすることが要請されつつある。例えば、ばね部材で
は、疲労強度および疲労寿命の向上のため、脱炭深さが
0.05mm以内と、鉄鋼素材を長時間加熱保持する加熱炉を
使用する場合における極限に近い脱炭深さまで浅くする
ことが要請されつつある。
脱炭深さを浅くするだけならば、加熱工程における鉄
鋼素材の加熱温度を700〜800℃前後と低めにすればよい
が、低めにした場合には、鉄鋼素材の偏熱差が増し、圧
延ロールの折損につながるおそれがある。さらには、鉄
鋼素材の加熱温度が低いと鉄鋼素材の延性を充分に確保
できず、そのためミル剛性が小さい圧延装置を用いて圧
延する際には不利である。また鉄鋼素材の偏熱差が増す
ことは、鉄鋼素材の部分的な延性差が大きくなる等し、
圧延材の厚み寸法が変動する傾向にあり、結果として、
厚み公差の保証の面で不利である。このように、圧延工
程前の鉄鋼素材の加熱温度を低めにすることは、種々の
不具合が生じ、好ましくない。
本発明は上記した実情に鑑みなされたものであり、そ
の目的は、脱炭抑制を図った鉄鋼素材の熱間圧延方法を
提供するにある。
[課題を解決するための手段] 本発明の脱炭抑制を図った鉄鋼素材の熱間圧延方法
は、高温ガス中で加熱する加熱炉で鉄鋼素材を脱炭初期
領域温度または脱炭発生領域以下の温度で加熱する加熱
工程と、誘導加熱炉内の誘導加熱コイル内に鉄鋼素材を
相対移動させて鉄鋼素材の少なくとも表面部を誘導加熱
で急速加熱する急熱工程と、急熱工程を経た鉄鋼素材を
圧延装置により熱間状態で圧延する圧延工程とを順次実
施することを特徴とするものである。鉄鋼素材としては
ビレット、ブルーム、スラブ等が代表的なものであり、
その組成は例えば、SUP9(JIS規格)を用いることがで
き、重量%で炭素0.56〜0.64%、マンガン0.70〜1.00
%、シリコン1.5〜1.80%、イオウ及びリン0.035%以下
とすることができる。
以下、各工程に分けて説明する。
加熱工程では、高温ガス中で加熱する加熱炉を用い、
加熱炉で鉄鋼素材を脱炭初期領域温度または脱炭発生領
域以下の温度まで、通常700〜800℃程度まで、鉄鋼素材
の表面および内部をほぼ均熱状態に加熱する。加熱炉中
の在炉時間は鉄鋼素材の表面温度および内部温度の均一
性を考慮して選択するが、一般的には60〜80分とするこ
とができる。加熱速度は例えば10deg/分〜13deg/分程度
とすることができる。加熱炉としては、一般的に、鉄鋼
素材を装入口からプッシャーにより連続的に炉内に装入
し、かつ装入口とは別の取出口から鉄鋼素材を連続的に
取出す連続炉を用いる。場合によっては加熱炉は、鉄鋼
素材の装入と取出とを兼用する開口をもつバッチ炉でも
よく、あるいは炉床に移動ビームを備えその移動ビーム
を周期的に持上げ運動と前進運動をさせ、鉄鋼素材を順
次移送するウォーキングビーム炉としてもよい。前記し
た連続炉としては、従来と同様に、鉄鋼素材を予熱する
予熱帯、予熱後の鉄鋼素材を所定温度に昇温させる均熱
帯、鉄鋼素材の表面温度と内部温度をほぼ均一にする均
熱帯よりなる三帯炉を用いることができる。加熱炉の燃
料としては特に限定されず固体燃料、液体燃料のいずれ
でもよく、例えば、COGガス、コークス炉ガス、高炉ガ
ス、これらの混合ガス、重油ガス、プロパンガス等を採
用できる。
急熱工程では、誘導加熱コイルをもつ誘導加熱炉を用
い、誘導加熱炉の誘導加熱コイルに誘導加熱電流を流
し、その状態の誘導加熱コイル内に鉄鋼素材を相対移動
させ、これにより鉄鋼素材の少なくとも表面部に誘導電
流を生じさせ、鉄鋼素材の少なくとも表面部を誘導加熱
で急熱する。急熱工程では、一般的には、誘導加熱炉を
静置状態とし、駆動ローラの上に鉄鋼素材を載せ、鉄鋼
素材を駆動ローラの回転駆動で走行させ、鉄鋼素材を誘
導加熱炉内を通過させることにより行うことができる。
誘導加熱では、誘導電流が導体の表面部に集中して導体
の深部を流れないといういわゆる表皮効果があるので、
誘導加熱電流の周波数は、これを考慮して選択される
が、例えば1000Hzあるいは500Hzとすることができる。
急熱工程では、誘導加熱炉を複数個直列状態に配置
し、直列状態の各誘導炉内に鉄鋼素材を順次走行させる
ことができる。誘導加熱炉の長さ、鉄鋼素材の走行速度
は誘導加熱の程度に影響する。即ち、誘導加熱炉の長さ
が長い程、鉄鋼素材の走行速度が遅い程、鉄鋼素材の誘
導加熱量は大きい。例えば、誘導加熱炉の長さは4〜8m
程度、鉄鋼素材の走行速度は0.2〜0.4m/sec、誘導加熱
時間は総計で20〜40秒とすることができる。
直列状態に配置した複数個の各誘導炉内に鉄鋼素材を
順次通過させる場合、最終側の誘導加熱炉の通電量を小
さくし、加熱炉に近い側の誘導炉の通電量を大きくする
構成とすれば、急熱工程の最初の部分で通電量を大きく
して鉄鋼素材を急速に加熱でき、そして、急熱工程の最
後の部分で通電量を小さくして鉄鋼素材を緩く加熱する
と共に鉄鋼素材の内部への伝熱効果を図り得る。これに
より急熱工程全体における鉄鋼素材の表面部及び内部の
均一加熱性を確保するのに有利である。
また、本発明の熱間圧延方法では、直列状態に配置し
た各誘導加熱炉、あるいは、誘導加熱炉間に、鉄鋼素材
の温度を検出する複数個の温度検出手段を設け、各温度
検出手段を制御手段に接続してもよい。この場合は各温
度検出手段の出力に応じて制御手段が各誘導加熱炉へ通
電量を大小に調整し、これにより各誘導加熱炉の加熱量
(ビレットWに生じる誘導電流値)を調整することもで
きる。例えば、急熱工程の入口側から第1番目の誘導加
熱炉3を通過する際のビレットWの温度が基準温度より
も低い場合であっても、入口側から第2番目、第3番
目、第4番目等の誘導加熱炉3への通電量を制御手段に
より増加すれば、第2番目、第3番目、第4番目等の残
りの誘導加熱炉3による誘導加熱量(ビレットWに生じ
る誘導電流値)を増加でき、結局、急熱工程の出口側で
はビレットWの温度は高くなる。このような構成にすれ
ば、最初の誘導加熱炉を通過する鉄鋼素材の温度がばら
ついている場合であっても、急熱工程の出口側から搬出
される鉄鋼素材を一定の温度維持にするのに有利であ
る。又は、鉄鋼素材の搬送速度を変化させ、加熱時間を
変えてもよい。
本発明の熱間圧延方法においては、圧延工程では、2
重ロール、3重ロール等の圧延装置を用い、急熱工程を
経た鉄鋼素材を圧延装置により熱間状態で圧延する。圧
延スケジュールは製品寸法に応じて適宜設定する。圧延
装置としては従来より使用している単基配列、一軸式配
列、多軸式配列、連続式配列等の公知の圧延装置を採用
できる。圧延工程では、通常、粗圧延、仕上圧延を順次
実施し、鉄鋼素材を薄板状、厚板状、棒状、線状等の圧
延材とする。圧延温度は必要に応じた適宜選択される
が、通常、900〜1000℃程度とすることができる。圧延
された圧延材は冷却床で冷却するか巻取機で巻きとるこ
ともできる。
なお、本発明の熱間圧延方法の急熱工程では、誘導加
熱といった内部加熱方式を採用しており、鉄鋼素材を高
温例えば800℃〜1000℃に加熱する時間は通常、数十秒
とかなり短くて済むので、一般的には鉄鋼素材の表面に
酸化膜であるスケールはほとんど生ぜず、生じたとして
も薄いスケールである。ここでスケールを無視できない
場合、あるいはスケールの厚みが厚い場合には、圧延作
業の前に、スケールブレーカで鉄鋼素材の表面のスケー
ルを除去することが好ましい。
[実施例] 以下、本発明の熱間圧延方法にかかる一実施例につい
て第1図〜第7図を参照して説明する。本実施例で用い
る装置全体の概略平面図は第1図に示されている。
まず、加熱工程では、高温ガス中で加熱する加熱炉と
しての加熱炉1を用いる。加熱炉が1は炉殻と炉殻に貼
り合された耐火物層とをもつ。加熱炉1の構造は第2図
に示めされている。第2図に示すように、加熱炉1は、
装入口10に連通する予熱帯11と、予熱帯11に続く加熱帯
12と、加熱帯12に続き排出口13に連通する均熱帯14とで
形成されている。加熱炉1の予熱帯11、加熱帯12、均熱
帯14にわたり案内用の水冷構造のパイプ状のスキッド15
が配設されている。加熱炉1の加熱源はCOGである。
加熱工程では、プッシャー16の作動で加熱炉1の装入
口10から予熱帯11に鉄鋼素材としてのビレットW(長さ
3.2m、幅11.4cm、厚み11.4cm)を横列状態で順次送り込
み、ビレットWを予熱帯11で予熱する。加熱炉1ではプ
ッシャー16によりビレットWが装入口10から順次送られ
てくるので、ビレットWは横列状態のまま間欠的にスキ
ッド15上を加熱帯12、均熱帯14へと搬出される。本実施
例ではビレットWを均熱帯14で最終的に800℃前後まで
加熱し、ビレットWの表面部と内部とをほぼ均熱状態と
する。加熱工程でのビレットWの昇温状態は、第8図に
示すように60分間で脱炭初期領域温度である800℃前後
まで加熱するものである。ビレットWは排出口13から間
欠的に排出される。排出されたビレットWはシュート17
を滑ってVローラ群2のVローラ20に載せられ、Vロー
ラ群2によりビレットWの長さ方向へ縦列状態で順次搬
送される。Vローラ群2がビレットWを搬送する搬送速
度は0.45m/sec程度である。このとき、第5図に示すよ
うに、ビレットWの側面W2はVローラ20の傾斜面21で支
持され、ほぼ45度傾斜したままの状態の菱形状で搬送さ
れる。なお、Vローラ群2を形成する各Vローラ20は、
図略の駆動モータに連結された駆動タイプであり、かつ
高さ位置が調整自在である。
急熱工程では誘導加熱炉3を用いる。誘導加熱炉3は
本実施例では8個直列に配置されている。各誘導加熱炉
3の長さは800mm程度である。第3図、第4図に示すよ
うに、各誘導加熱炉3は、ビレットWが走行する挿入孔
30を中央部にもつ耐火物層からなる炉本体31と、炉本体
31の耐火物層に埋設された誘導加熱コイル32とをもつ。
誘導加熱コイル32は高周波変圧器等の電気設備に接続さ
れている。急熱工程では、誘導加熱コイル32に誘導加熱
電流を流す。このように誘導電流を流した状態の誘導加
熱コイル32内に、Vロール20で搬送させるビレットWを
挿入させ、これによりビレットWの表面部に誘導電流を
生じさせ、以てビレットWの表面部を誘導加熱で急熱さ
せる。急熱の状態は第8図に示されており、ビレットW
の表面部は最終的には1000℃前後となる。本実施例で
は、急熱工程全体に必要とする時間は20秒間程度であ
る。誘導加熱電流の特性として前記した表皮効果がある
ので、誘導電流の周波数は、これを考慮して選択されて
おり、本実施例では500Hzに設定されている。誘導加熱
炉3の挿入孔30内をビレットWが走行する際には、第5
図に示すように、ビレットWの側面W2はVローラ20の傾
斜面21で支持されているので、ビレットWは菱形のまま
搬送される。故に、平ロールを上にビレットWを載せて
平ロールでビレットWを搬送させる場合に比較して、ビ
レットWがVロール20の軸方向へ大きくずれる問題を改
善でき、従って、ビレットWの軸芯を誘導炉3の挿入孔
30の軸芯に極力近づたり、合致させたりすることが可能
となり、ビレットWの誘導加熱を均一に行うのに有利で
ある。
上記した誘導加熱炉3には第3図に示すように案内レ
ールを兼ねる鉄鋼製のスキッド33が設けられている。こ
のスキッド33にそってビレットWの側面W2は案内されて
搬送される。したがって、この意味でも、誘導加熱炉3
内を搬送されるビレットWの軸芯を誘導加熱炉3の挿入
孔30の軸芯に極力近づけたり合致させたりすることが可
能となり、ビレットWの誘導加熱を均一に行うのに有利
である。
本実施例では加熱工程において加熱炉1でビレットW
に発生した低温部であるスキッドマークを誘導加熱炉3
で加熱できるので、ビレットWの温度むらの制御に大い
に有利である。
なお、上記した各誘導加熱炉3は第6図に示すように
昇降シリンダ35のシリンダロッド35aに連結されてお
り、昇降シリンダ35の作動により誘導加熱炉3を上方に
移動することができる。従って、誘導加熱炉3を使用せ
ずに単にVローラ群2でビレットWを搬送させたいだけ
の場合には、昇降シリンダ35を作動させて誘導加熱炉3
を上方に移動させておく。
本実施例では、前記のごとく急熱工程の後で圧延工程
を実施する。圧延工程では圧延装置5を用いる。圧延装
置5は、第7図に示すようにモータ50でロール51、52、
53を駆動させる一軸式配列であり、粗圧延機と仕上圧延
機とで構成されている。そして圧延工程では、急熱工程
を経たビレットWを900〜1000℃程度の熱間状態で粗圧
延機で粗圧延し、その後仕上圧延機により仕上圧延す
る。圧延工程を実施する前の状態のビレットWの厚みは
114mmであったが、圧延工程を終えた後のビレットWの
厚みは19mmであり、従って本実施例では圧延工程全体で
のビレットWの圧下率は83%であった。
なお、圧延工程を終えた圧延材は図略の冷却床で冷却
される。
(実施例の効果) 本実施例の熱間圧延方法によれば、ビレットWを1000
℃に加熱するにあたり、ビレットWの外方から加熱する
方式の外部加熱手段ではなく、ビレットW自身で加熱す
る内部加熱手段としての誘導加熱手段を採用しているの
で、加熱工程の終了温度である800℃から1000℃へと加
熱するにあたり、20秒間程度と極めて短時間で済む。こ
のように800℃から1000℃への加熱時間が極めて短時間
であるため、ビレットWの表面部には脱炭現象がほとん
ど生じないが生じたとしても極めて浅い。
更に、急熱工程では、圧延表面となるビレットWの表
面部を誘導加熱により高温に加熱できるため、それだけ
急熱工程の後で実施する圧延工程を良好に行ない得る。
したがってビレットWの表面部に脱炭層が仮に生じてい
たとしても、圧延により厚み方向にビレットWは押圧さ
れるため、脱炭層はビレットWの長さ方向および幅方向
に大きくのび、脱炭層を更に一層薄くすることが可能と
なる。
ところで、加熱工程において加熱炉1でビレットWを
加熱する際にはビレットWの底面部に、スキッド15の跡
として、温度の低い部分であるスキッドマークが生じ
る。この点本実施例では、加熱工程の後で実施する急熱
工程において、誘導加熱によりビレットWの表面部を集
中的に高温に加熱するため、ビレットWの表面部の温度
むらの原因となるスキッドマークを消失させるか、ある
いはほとんど無視できる程小さくし得る。故に、圧延に
有利である。従ってビレットWの表面部に脱炭層が仮に
生じていたとしても、急熱工程の後で実施する圧延工程
で脱炭層をのばして一層薄くすることが可能となる。そ
の結果、仕上圧延を経た圧延材(JIS−SUP9)の表面部
の平均脱炭深さはトータル脱炭深さで0.040mm〜0.060mm
と極めて浅かった。なお、加熱炉だけで1000℃前後に加
熱した後に圧延する従来の熱間圧延方法では、同じ圧下
率で平均脱炭深さ(トータル脱炭深さ)は0.10mmであっ
た。このことから、本実施例の熱間圧延方法によれば、
脱炭深さを従来に比べて40〜50%に浅くすることができ
ることがわかる。
本実施例の熱間圧延方法によれば、誘導加熱炉3を使
用せずに単にVローラ群2でビレットWを搬送させたい
だけの場合には、昇降シリンダ35を作動させて誘導加熱
炉3を上方に移動させて外しておく。そのため、誘導加
熱炉3を用いて急熱工程を実施する形態と、誘導加熱炉
3を外して急熱工程を実施せずVローラ20でビレットW
を単に搬送するだけの形態とを、昇降シリンダ35の作動
で容易に切替えることができ、従って装置の汎用性が増
す。
(他の実施例) 本実施例の構成に加えて、直列状態に配置した各誘導
加熱炉3間を走行する走行中のビレットWの温度を検出
する複数個の温度検出手段を設けると共に、多数個のV
ローラ20の回転速度をそれぞれ独立に制御する制御手段
を設けることができる。この場合には、各温度検出手段
の出力に応じて、制御手段が各Vローラ20を駆動させる
各駆動モータの回転速度を独立に調整し、各Vローラ20
による搬送速度を調整し、ひいては各誘導加熱炉3にお
けるビレットWの誘導加熱時間を調整する構成とする。
なお制御手段は、CPUでソフト的に構成できるし、デジ
タルシーケンスで構成することもできる。温度検出手段
としては非接触タイプである放射温度計を採用できる。
上記のようにVローラ20の搬送速度を調整する制御手
段を設ければ、急熱工程の入口側を通過する際のビレッ
トWの温度がばらついている場合であっても、急熱工程
の出口側では、ビレットWの温度の均一性を確保でき
る。例えば、急熱工程の入口側から第1番目の誘導加熱
炉3を通過する際のビレットWの温度が基準温度よりも
低い場合であっても、第2番目、第3番目、第4番目等
の誘導加熱炉3に隣接する駆動モータの回転速度を制御
手段により減少すれば、第2番目、第3番目、第4番目
等の残りの誘導加熱炉3を通過するビレットWの通過速
度が遅くなり、誘導加熱時間をそれだけ長くできる。故
に第2番目、第3番目、第4番目等の残りの誘導加熱炉
3による誘導加熱量を増加でき、結局、入口側では温度
が低かったビレットWは、急熱工程の出口側ではその温
度が高くなる。
上記した実施例では、誘導加熱炉3は直列状態に8個
配置されている構成であるが、これに限らず、第10図に
示す他の実施例のように、ビレットWが走行する挿入孔
30の内径の大きさが異なる複数個の誘導加熱炉3A、3B、
3Cを並列に可動フレーム60に取付けてもよい。このよう
に複数個並列に取付けた可動フレーム60をビレットWの
走行方向、つまり第10図の矢印Y方向にそって直列に複
数個配置する構成とする。この場合には、各可動フレー
ム60を各シリンダ装置61に接続し、シリンダ装置61のシ
リンダロッド61aの作動により、各可動フレーム60を水
平方向、つまり第10図に示す矢印E方向に移動自在とす
ることができる。この実施例の場合にはビレットWの種
類が変更になりビレットWの断面積が変わった場合に
は、シリンダ装置61を作動させて可動フレーム60を矢印
E方向又はこれと逆方向に移動させ、これにより誘導加
熱炉3の挿入孔30の内径の大きさを変更することができ
る。従って、ビレットWの断面積の大きさが変った場合
であっても、誘導加熱を効果的に行なうことができる。
なお上記したシリンダ装置61に代えて駆動モータ等を用
いて可動フレーム60を移動させることもできる。
上記した実施例では、誘導加熱炉3の誘導加熱コイル
32は横断面円筒形状をなしているが、これに限らず、第
11図に示す他の実施例のように、誘電加熱炉65の誘導加
熱コイル64は横断面長円あるいは楕円の筒状とすること
もできる。この場合には、誘導加熱コイル64の短径側の
寸法をビレットWの厚み寸法L1に対応させ、かつ、誘導
加熱コイル64の長径側の寸法をビレットWの長さ寸法L2
に対応させることができる。このように誘導加熱コイル
64の長径側の寸法をビレットWの長さ寸法L2に対応させ
た場合には、誘導加熱コイル64の軸方向にそって、つま
り第11図を示している紙面の手前側に向けて、ビレット
Wを横列させたまま走行させる。この場合には、ビレッ
トWの長さ方向の端面W1の表面部にも誘導電流が流れ、
端面W1をも効果的に内部加熱できる。ここで、ビレット
Wの長さ方向の端面W1は冷えがちであるため、端面W1を
効果的に内部加熱できることは、ビレットWの長さ方向
の温度のばらつきを解消するのに有利である。
例えば第12図に示すように第11図に示す横断面長円状
の誘導加熱コイル64をもつ誘導加熱炉65を配置すること
もできる。第12図に示す例は、加熱炉1の出口に連接し
て誘導加熱炉65を設置した場合である。即ち、加熱炉1
の出口から横列状態で搬出されたビレットWは、横列状
態のまま誘導加熱炉65の入口に搬入され、横列状態のま
ま誘導加熱炉65の出口から搬出され、そして、直列に配
置したローラ67により縦列状態に圧延装置68へ搬送され
る。
なお、Vローラ20で搬送するビレットWを菱形形状に
保持できるのに有利なように、Vローラ20の表面部に、
図示はしないが、周方向にのびる環状溝部または環状突
部を形成してもよい。この場合には、環状溝部、環状突
部にビレットWの角部を係合させ、係合によりビレット
Wの菱型形状を維持する。
[発明の効果] 本発明の熱間圧延方法によれば、鉄鋼素材を高温の圧
延温度に加熱するにあたり、内部加熱手段である誘導加
熱手段を採用しているので、加熱炉での加熱工程終了温
度から高温の圧延温度(例えば1000℃)へと加熱するに
あたり極めて短時間(例えば20秒間)で済み、このよう
に極めて短時間であるため、鉄鋼素材の表面部には脱炭
現象がほとんど生じない。更に、加熱工程の後で実施す
る急熱工程では、鉄鋼素材の主として表面部を誘導加熱
により集中的に高温に急熱させるため、圧延表面となる
鉄鋼素材の表面部を高温に維持でき、急熱工程の後で実
施する圧延工程を良好に行ない得る。したがって鉄鋼素
材に脱炭層が仮に生じていたとしても、その脱炭層を圧
延によりのばして薄くすることが可能となる。その結
果、本発明の熱間圧延方法では、圧延材の表面部の脱炭
部の脱炭深さ(トータル脱炭深さ)は極めて浅くなり、
例えば0.045mmであり、0.05mm以内であった。
ところで、加熱工程において加熱炉が鉄鋼素材を加熱
する際には鉄鋼素材の底面部に、温度の低い部分である
スキッドマークが生じる。この点本発明の熱間圧延方法
では、加熱工程の後で急熱工程を実施するため、誘導加
熱により鉄鋼素材の表面部を集中的に高温に加熱でき
る。そのため、温度むらの原因となるスキッドマークを
消失させるか、あるいはほとんど無視できる程に小さく
し得る。故に、圧延の度合を大きくでき、脱炭層が仮に
生じていたとしても、圧延により脱炭層をのばして一層
薄くすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本実施例の熱間圧延方法で使用する装置の概略
平面図、第2図は加熱工程で用いる加熱炉の概略断面
図、第3図は急熱工程で用いる誘導加熱炉の正面図、第
4図は誘導加熱炉内にビレットを挿入して急熱工程を実
施している状態の斜視図、第5図はVローラでビレット
を走行させている状態の正面図、第6図は誘導加熱炉を
昇降シリンダで支持している状態の側面図、第7図は圧
延工程で用いる圧延装置の概略平面図、第8図は本実施
例の熱間圧延方法の加熱工程、急熱工程の昇温状態を示
すグラフである。第9図は従来の熱間圧延方法の加熱工
程の昇温状態を示すグラフである。第10図は他の実施例
で用いる装置の要部の平面図、第11図は更に異なる実施
例で用いる誘導加熱炉の誘導加熱コイルの概略正面図で
ある。第12図は更に別の実施例で用いる装置の概略平面
図である。 図中、1は加熱炉、2はVローラ群、3は誘導加熱炉、
5は圧延装置をそれぞれ示す。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】高温ガス中で加熱する加熱炉で鉄鋼素材を
    脱炭初期領域温度または脱炭発生領域以下の温度で加熱
    する加熱工程と、誘導加熱炉の誘導加熱コイル内に前記
    鉄鋼素材を相対移動させて前記鉄鋼素材の少なくとも表
    面部を誘導加熱で急速加熱する急熱工程と、前記急熱工
    程を経た前記鉄鋼素材を圧延装置により熱間状態で圧延
    する圧延工程とを順次実施することを特徴とする脱炭抑
    制を図った鉄鋼素材の熱間圧延方法。
JP13765888A 1988-06-03 1988-06-03 脱炭抑制を図った鉄鋼素材の熱間圧延方法 Expired - Lifetime JP2640122B2 (ja)

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