JP2631971B2 - 耐荷材 - Google Patents

耐荷材

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JP2631971B2
JP2631971B2 JP17025195A JP17025195A JP2631971B2 JP 2631971 B2 JP2631971 B2 JP 2631971B2 JP 17025195 A JP17025195 A JP 17025195A JP 17025195 A JP17025195 A JP 17025195A JP 2631971 B2 JP2631971 B2 JP 2631971B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、極めて大きい衝撃力が
作用するロックシェッドの梁や柱或いは衝撃吸収柵の支
柱などに適用できる耐荷材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】落石防護用のロックシェッドは安全性確
保の点から極めて高い剛性が要求され、そのため、ロッ
クシェッドを構成する天版や梁や支柱を鉄筋コンクリー
ト構造(RC構造)や鉄骨鉄筋コンクリート構造(SR
C構造)或いはプレストレストコンクリート構造(PC
構造)で築造している。
【0003】
【発明が解決しようとする問題点】ロックシェッドは予
測される落石による衝撃力(運動エネルギー)に対抗で
きる強度に設計されている。しかしながら、これらのコ
ンクリート構造体では、靭性に乏しく最大耐力に達した
後に急激に耐力を失い、また十分な変形能力を有してい
ないため落石の有する運動エネルギーを完全に吸収する
ことができない。その為、予測を越えた落石の発生や落
石の繰り返しによりロックシェッドが破壊されて起こる
悲惨な事故例もいくつか知られている。このような自然
災害から尊い人命を失わないため、より安全性の高いコ
ンクリート構造体の開発が急務となっている。高い曲げ
耐力を得るコンクリート合成構造体としては、コンクリ
ート構造物中に配置したPC鋼線等の引張材に緊張力を
導入するPC構造体や、鋼製の外殻内にコンクリートを
充填した合成構造体が知られている。
【0005】
【本発明の目的】本発明は以上の点に鑑みて成されたも
ので、その目的とするところは、極めて大きな衝撃力や
繰り返しの衝撃力に対する耐力に優れ、大きい変形能力
を有する、耐荷材を提供することにある。
【0006】
【問題点を解決するための手段】即ち本発明は、外殻内
にコンクリートを充填した合成構造体であって、前記合
成構造体内の引張力発生部位にコンクリートから絶縁し
た状態で引張材を配設し、前記引張材の少なくとも一方
をコンクリートに埋設した支圧板に接続し、前記合成構
造体の変形時に引張材に緊張力が導入されるように構成
したことを特徴とする、耐荷材である。また、外殻内に
コンクリートを充填した合成構造体であって、前記合成
構造体内の引張力発生部位にコンクリートから絶縁した
状態で引張材を配設し、前記引張材の一方をコンクリー
トに埋設した支圧板に接続すると共に、コンクリートか
ら露出する前記引張材の他方に、引張材に緊張力を導入
しない状態で定着具を定着し、前記合成構造体の変形時
に引張材に緊張力が導入されるように構成したことを特
徴とする、耐荷材である。また、外殻内にコンクリート
を充填した合成構造体であって、前記合成構造体内の引
張力発生部位にコンクリートから絶縁した状態で引張材
を配設し、前記引張材の両端をコンクリートに埋設した
支圧板に接続し、前記合成構造体の変形時に引張材に緊
張力が導入されるように構成したことを特徴とする、耐
荷材である。 さらに、前述したいずれかの耐荷材にお
いて、引張材の途中に間隔を隔てて複数の支圧板を固着
したことを特徴とする、耐荷材である。また、前述した
いずれかの耐荷板において、支圧板が外殻に内挿可能な
円弧板であることを特徴とする、耐荷材である。さら
に、前述したいずれかの耐荷板において、支圧板が外殻
に内挿可能な環状板であり、板面に引張材を貫挿可能な
透孔を有することを特徴とする、耐荷材である。
【0007】
【実施例1】以下図面を参照しながら本発明に係る一例
について説明する。
【0008】<イ>全体の構造 図1は耐荷材1の図面右側が単純支承されると共に、図
面右側が拘束されて支承され、耐荷材1のほぼ中央に下
向きの曲げ力Fが作用する梁用途に適用した、耐荷材1
のモデル図を示す。耐荷材1は、鋼製の外殻2内にコン
クリート3を打設した合成構造体を基本構成とし、この
合成構造体の内部にコンクリート3から縁切りした状態
で引張材4を配設して構成される。耐荷材1は引張材
4を合成構造体の引張応力の発生側に配置する点と、
PC構造のように予め緊張力は導入せず、耐荷材1に曲
げ力が作用したときに初めて緊張力が導入されるように
引張材4を定着する点と、引張材4の少なくとも一端
に支圧板5を設けてコンクリート3の内部に埋設する点
に特徴を有する。以下耐荷材1の主要な構成要素につい
て詳述する。
【0009】<ロ>外殻 外殻2は公知の鋼製筒体で、その断面形状に特別制約を
受けないが、使用目的や用途に応じて円形、楕円形、角
形などの断面形状を適宜選択して使用する。
【0010】<ハ>引張材 引張材4はPC鋼棒、PC鋼線、PC鋼より線等を使用
できるが、支圧板5の設置の関係からPC鋼棒を使用す
ることが望ましい。コンクリート3と付着しないように
引張材4の両端部を除いた周面にはシース(図示せず)
が被覆してある。また引張材4がPC鋼棒である場合
は、その両端部に支圧板5と定着具6の取付用のおねじ
が刻設されている。
【0011】<ニ>引張材の配設位置 引張材4は耐荷材1の引張応力発生箇所で、外殻2の軸
方向に沿って配設される。図1では耐荷材1の図面右側
の下半部と図面左側の上半部に夫々引張材4を配設した
場合を示す。各引張材4のコンクリート3に埋設される
側の端部はナット7,7を螺着して支圧板5を挟持して
固定し、コンクリート3より外部に露出して引き出され
た各引張材4の他方の露出端部は、公知の定着具6を使
用して定着される。各引張材4の露出端部の定着にあた
って緊張力を導入しないで定着することは前述した通り
である。尚、各引張応力発生箇所に配設される引張材4
の設置数は、1本に限らず図2に示すように複数本を平
行に配置する場合もある。またこの場合にそれら複数本
の引張材4の周囲を覆うように鉄筋(フープ筋)を配設
してもよい。
【0012】<ホ>耐荷板 支圧板5は引張材4の抵抗部材として機能する板体で、
図2に示すような外殻2に内挿可能な円弧板を採用でき
る。支圧板5は板面に各引張材4を挿通可能な孔を有
し、この孔に引張材4の先端部を挿通してナット7で螺
着して固着されている。或いは支圧板5と引張材4の先
端部の他の固着手段としては、直接溶接により固着して
もよい。また支圧板5の他の形状としては、例えば図3
に示すように中央に開口を有する環状の支圧板5であっ
てもよい。環状の支圧板5を使用する場合、他の支圧板
5と固着する側の引張材4の貫通部位はこの引張材4よ
り大径の透孔8を開設して引張材4を貫挿させ、自由に
摺動するようにしてある。支圧板5として重要なこと
は、コンクリート3内での引き抜き抵抗が大きいことは
勿論であるが、外殻2内に充填したコンクリート3が支
圧板5の両側で分断せずに連続するようにコンクリート
3の充填性を配慮した形状であればよい。
【0013】
【作用】以下図面を参照しながら本発明の耐荷材の作用
について説明する。
【0014】図4は実施例1の耐荷材1と対比させる耐
荷材9のモデル図で、同図の耐荷材9は、引張材4の配
置位置のみが異なるだけで、その他の構成や支承形態は
既述した実施例1と同一である。すなわち対比する耐荷
材9は引張材4を耐荷材9の下半側を貫通して配設し、
耐荷材9の両端から露出する引張材4に夫々定着具6を
取り付けた構造になっている。勿論引張材4には予め緊
張力を導入していない。 この状態で比較対象の耐荷材
9のほぼ中央に下向きの曲げ力Fが作用すると、耐荷材
9の片方が拘束されているため、耐荷材9の右上側には
耐荷材9に沿った方向に圧縮力C1 が働き、右下側には
引張力T1 が働く。曲げ力Fは耐荷材9の左側へも波形
に伝達され、耐荷材9の左上側には耐荷材9に沿った方
向に引張力T2 が働き左下側には圧縮力C2 が働く。す
なわち、引張材4の同軸上に引張力T1 と圧縮力C2
発生することになり、結果的に耐荷材9が変形しても引
張材4に緊張力が導入されない。
【0015】これに対して、図1に示すように本実施例
の耐荷材1にあっては同様の曲げ力Fが作用すると、耐
荷材1の右下側に働く引張力T1 に対して、支圧板5a
と定着具6との間に配設した図面下側の引張材4aに緊
張力が導入されてこの引張力T1 に対抗する。同様に引
張材1の左上側に働く引張力T2 に対しては、支圧板5
bと定着具6との間に配設した図面上側の引張材4bが
対抗する。その際、支圧板5a,5bが各引張材4に導
入される緊張力によってコンクリート3の膨脹を拘束
し、コンクリート3の引張による破壊も抑制する。この
為、耐荷材1が大きく変形するまで容易に破壊されるこ
とはない。換言すれば、図1において荷重F作用位置で
は局部的に大きい断面力(曲げモーメント・剪断力・軸
力)が発生し、支圧板5および定着具6の位置では断面
力がほぼ零となる。仮に引張材4の全長に亘ってコンク
リート3が付着している場合を想定すると、断面力が最
大となる荷重の作用位置に位置する引張材4の応力が過
大となって、破断する可能性がある。しかし本発明のよ
うにコンクリート3と引張材4が絶縁されていると、耐
荷材1に局部的に過大な応力が発生せず、支圧板5と定
着具6の間で応力が一様となり、完全に平均化されて小
さい値に留まったままとなる。これにより大きい変形に
至るまで引張材4が破断することはない。
【0016】
【実施例2】図5は引張材4に複数の支圧板5を固着し
た他の実施例を示す。本実施例は引張材4の先端部以外
に途中に所定の間隔を隔てて支圧板5を固着してある。
前記実施例1と同一の部位は同一の符号を付して説明を
省略する。本実施例にあっては、支圧板5の配設数分だ
けコンクリート3に対する引張材4の引張抵抗が増す利
点がある。
【0017】
【実施例3】図6は両端に支圧板5,5を取り付けた引
張材4cをコンクリート3中に埋設して耐荷材1を構成
する他の実施例を示す。引張材4cは、耐荷材1の曲げ
力の作用に伴う引張力の発生箇所に緊張力を導入しない
で配設しておくことは既述した実施例と同様である。し
たがって引張材4cの配設位置は図6に限定されるもの
ではなく、例えば図面上側左右の各引張材4a,4bに
接近して配設したり、或いは独立して引張材4cのみを
配置してもよい。
【0018】
【実施例4】以上の各実施例1〜3に係る耐荷材1は水
平に配置する梁部材だけでなく、縦向きに配置する支柱
に適用しても良い。図7は耐荷材1をロックシェッドを
構成する梁9と柱10に適用した場合を示す。梁9を構
成する耐荷材1の右端は山側斜面に形成した棚部11に
載置され、梁9を構成する耐荷材1の左端はL字状の連
結体12を介して柱10の上端と接続している。柱10
を構成する耐荷材1の下端はフーチング13に支承され
ている。柱10を構成する耐荷材1は、梁9を構成する
耐荷材1に衝撃力(曲げ力)が作用したときに、柱10
の上半外側および下半内側に引張力T3 およびT4 が作
用し、また柱10の上半内側および下半外側に夫々圧縮
力C3 およびC4 が作用することから、引張力T3 およ
びT4 が作用するの上半外側と下半内側に夫々引張材
4,4を配設しておく。尚、耐荷材1の適用はロックシ
ェッド以外の構造物に適用できることは勿論である。
【0019】
【発明の効果】本発明は以上説明したようになるから次
のような効果を得ることができる。 <イ> 外殻とコンクリートによる合成構造体の全長に
亘って引張材を配置すると、同一引張材上に引張力と圧
縮力が作用したときに引張材に緊張力が導入されない。
これに対して、コンクリート中に埋設する支圧板を利用
して引張力の作用する範囲に引張材を配置して耐荷材を
構成する本発明にあっては、耐荷材の変形により確実に
引張材に緊張力を導入することができる。 <ロ> 予め引張材に緊張力を導入するPC工法にあっ
ては、落石等の巨大な衝撃力が瞬間的に作用する用途に
用いると、脆弱さが現れてこのような用途には不向きで
ある。これに対して最初は緊張力を導入せず、曲げが発
生してから引張材に緊張力が導入される本発明の耐荷材
にあっては、引張耐力に優れるため、落石等の巨大な衝
撃力が瞬間的に作用する用途に好適である。 <ハ> 支圧板は引張材の引き抜き抵抗部材として機能
することのほかに、引張材に導入される緊張力によって
コンクリートの膨脹を拘束し、コンクリートの引張によ
る破壊も効果的に抑制できる。そのため、耐荷材が大き
く変形するまで容易に破壊されるのを回避することがで
きる。 <ニ> 一本の引張材に複数の支圧板を固着すれば、支
圧板の配設数分だけコンクリートに対する引張材の引張
抵抗が増すため、大形の支圧板を設置することが困難な
小径断面の耐荷材を構成するのに有利である。 <ホ> 耐荷材は縦横方向のいずれに配置しても機能
し、またその用途もロックシェッドや衝撃吸収柵の支柱
等に適用することができて汎用性に富む。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1に係る耐荷材のモデル図
【図2】 図1のII−IIの断面図
【図3】 他の形態の支圧板の説明図
【図4】 比較対象の耐荷材のモデル図
【図5】 引張材に複数の支圧板を設けた他の実施例に
係る耐荷材の部分断面図
【図6】 両端に支圧板を設けた引張材をコンクリート
中に埋設した他の実施例に係る耐荷材のモデル図
【図7】 耐荷材を梁と柱に適用したロックシェッドの
側面図

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 外殻内にコンクリートを充填した合成構
    造体であって、 前記合成構造体内の引張力発生部位にコンクリートから
    絶縁した状態で引張材を配設し、 前記引張材の少なくとも一方をコンクリートに埋設した
    支圧板に接続し、 前記合成構造体の変形時に引張材に緊張力が導入される
    ように構成したことを特徴とする、 耐荷材。
  2. 【請求項2】 外殻内にコンクリートを充填した合成構
    造体であって、 前記合成構造体内の引張力発生部位にコンクリートから
    絶縁した状態で引張材を配設し、 前記引張材の一方をコンクリートに埋設した支圧板に接
    続すると共に、 コンクリートから露出する前記引張材の他方に、引張材
    に緊張力を導入しない状態で定着具を定着し、 前記合成構造体の変形時に引張材に緊張力が導入される
    ように構成したことを特徴とする、 耐荷材。
  3. 【請求項3】 外殻内にコンクリートを充填した合成構
    造体であって、 前記合成構造体内の引張力発生部位にコンクリートから
    絶縁した状態で引張材を配設し、 前記引張材の両端をコンクリートに埋設した支圧板に接
    続し、 前記合成構造体の変形時に引張材に緊張力が導入される
    ように構成したことを特徴とする、 耐荷材。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれかにおいて、引張
    材の途中に間隔を隔てて複数の支圧板を固着したことを
    特徴とする、耐荷材。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれかにおいて、支圧
    板が外殻に内挿可能な円弧板であることを特徴とする、
    耐荷材。
  6. 【請求項6】 請求項1〜4のいずれかにおいて、支圧
    板が外殻に内挿可能な環状板であり、板面に引張材を貫
    挿可能な透孔を有することを特徴とする、耐荷材。
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