JP2629411B2 - 高純度ネコインターフェロンの製造方法 - Google Patents

高純度ネコインターフェロンの製造方法

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【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、蛋白質の一次構造がネコの遺伝情報由来で
あるインターフェロンを遺伝子組換え核多角体病ウイル
スを利用して量産し、以って医薬品 (抗ウィルス剤)とすることを目的とした、組換えカイ
コ核多角体ウィルスおよびカイコ幼虫を利用して生産し
たネコインターフェロン(以下、FeIFNト略す)を高純
度で製造する方法に関する。
[従来の技術] インターフェロンは、抗ウィルス作用を示す蛋白質を
主成分とする生理活性物質でIFNと略記される。
遺伝子操作技術の進歩によりヒトのIFNのみならず、
ウシ、ウマ、イヌなどの動物のIFNも大量生産が可能と
なり、その結果、ウィルス病や腫瘍などの治療薬として
IFNの用途開発研究が行なわれているものもある。
ネコについても、α、β、γ各タイプのIFNが報告さ
れている(文献1)。
ネコには、ネコエイズ、ネコ白血病、ネコウィルス性
鼻気管炎、ネコカリキウイルス病、ネコ伝染性腹膜炎は
じめ多数のウィルス病が知られている。
そこで、ヒトのαIFNやウシのβIFNを経口投与し、ネ
コ白血病ウィルス感染ネコの延命を図った事例が報告さ
れている。経口ではなく、体内注射を行なえば、より頭
著な効果が期待されるものの、異種IFNに対する中和抗
体の生産が起こることが懸念される。同種IFN、つまり
ネコのIFNが容易に入手可能となれば、ネコの抗ウィル
ス剤、抗腫瘍剤としての用途が開かれると期待される。
本発明者らは、以前にFeIFNを遺伝子操作技術により
生産する方法、すなわちFeIFNをコードするDNAをクロー
ニングし、サルのCOS1細胞、チャイニーズハムスターの
CHO細胞、大腸菌などを利用して生産する方法を開発し
た(文献2)。
[発明が解決しようとする課題] しかしながら、実用に供する程度の高純度のFeIFNを
大量に生産するという方法は未だ確立されていない。本
発明の目的は、遺伝子操作技術を利用し、FeIFNをさら
に高純度に、かつ大量生産する方法を提供することにあ
る。
[課題を解決するための手段] 本発明者らは、かかる状況に鑑み、創意工夫をなし、
カイコ核多角体病ウィルスのDNAをFeIFNの蛋白をコード
するDNAで組換えた組換え体ウィルスを単離し、この組
換え体ウィルスをカイコ生体中で増殖させてFeIFNを生
産することに成功し、さらにFeIFNを高純度で精製する
方法を確立し、かくして本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、FeIFNの蛋白質をコードするDNAを
外来遺伝子として遺伝子組換えされた組換えカイコ核多
角体病ウィルスを、カイコ生体中で増殖させてFeIFNを
生産させた後、生産されたFeIFNを含む溶液を、酸によ
ってpHを1〜4に調整しさらに中和した後に、ブルー色
素を結合させた担体に接触させ、次いで該担体への吸着
物を溶出剤で溶出させることを特徴とする高純度ネコイ
ンターフェロンの製造方法を提供するものである。
以下、本発明に関し逐次詳細に説明する。
本発明の組換えカイコ核多角体病ウィルスは、例えば
文献2に記載のE.coil(pFeIFN1)(微工研条寄第1633
号)から抽出したプラスミドからFeIFNの蛋白質をコー
ドするDNAを切り出して、カイコのクローニングベクタ
ー(文献3)に連結して作製した組換え体プラスミドと
カイコ核多角体病ウィルスDNAとを、カイコ樹立細胞に
コ・トランスフェクションすることにより容易に作製す
ることができる。従って、本発明の組換え体ウィルス
は、in vivo的な方法で作製することができる。
すなわち、FeIFNの蛋白質をコードするDNAを含むプラ
スミドpFeIFN1を含有する大腸菌形質転換体(微工研条
寄第1633号)から、例えば文献4のような一般的な方法
により抽出したプラスミドpFeIFN1からFeIFNの蛋白質を
コードするDNA部分を、例えばpBMO30(文献3)などの
カイコのクローニングベクターの発現調節部分の下流に
連結するという一般的な遺伝子操作に従って組換え体プ
ラスミドを作製することができる。この組換え体プラス
ミドとカイコ核多角体病ウィルスDNA(文献3)とを、
文献3のような方法でカイコ樹立細胞、例えばBM−N株
(文献3)にコ・トランスフフェクションした後、培養
を続け、培養液中に出現した非組換え体(野生型)と組
換え体のウィルスの中から限界希釈法、もしくはプラー
ク法などの一般的な方法によって組換え体ウィルスをク
ローニングすることができる。組換え体ウィルスは多角
体の形成能がないことから、野生型ウィルスと容易に区
別できる。
FeIFNの生産は、前記の組換えカイコ核多角形ウィル
スをカイコ生体中で増殖させることにより行なう。前記
の組換え体ウィルスを含む培養液をカイコ幼虫に注射し
て、クワの葉または合成試料を与えて飼育する。飼育
後、体液を採取し、その上清からFeIFNを回収する。
体液中に存在する組換えカイコ核多角体病ウィルスは
pH1〜4で、4℃で1日保存することによって失活させ
ることができる。
本発明で使用するブルー色素を結合した担体(以下、
ブルー担体と略す)としては、次のものが使用される。
ブルー色素は一般名をCIリアクティブル−2といい、
例えばCIBA−GEIGY社から“シバクロンブルーF3GA"また
は“シバクロンブルー3GA"という商品名で市販されてい
る青色色素などが挙げられる。
実際のクロマトグラフィーに用いるブルー担体として
は、“ブルー・セファロースCL−6B"(Pharmacia社)、
“ブルー・セファロース6フャーストフロー”(Pharma
cia社)、“マトレックスゲル・フリーA"(Amicon
社)、および“アフィゲル・ブルー”(Biorad社)など
の商品名で市販されているブルーアガロースゲル、また
は“ブルー・トリスアクリル−M"(LKB社)、“ブルー
セルロファイン”(チッソ社)などの商品名で市販され
ているブルーセルロースゲルなどが適当であり、容易に
入手することができる。
ブルー担体によるFeIFNの精製操作は次のように行な
う。
すなわち、まずFeIFNを含む溶液をブルー担体に接触
吸着させる。吸着は、バッチ法、カラム法どちらでも可
能であるが、カラム法の方が吸着効率が高い。
溶離は、溶出剤のpH値、イオン強度、疎水度によって
決定される。例えば、高イオン強度下ではpH6〜8でFeI
FNは溶出される。このイオン強度は、リン酸、酢酸、ク
エン酸、ホウ酸、トリス・塩酸などの緩衝液の濃度を上
げたり、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウ
ムのような中性塩の添加(0.2M〜1.0M)により増加させ
ることができる。また、溶出剤中にエチレングリコー
ル、プロピレングリコールなどの疎水的相互作用を弱め
る溶剤を含む場合、pH5〜8での溶出が可能になる。
溶出剤の組成や濃度、液量は特に限定されるものでは
なく、それぞれ材料とした粗FeIFN中に含まれる)夾雑
蛋白質を除去するのに有効で、pHを保持するのに必要な
濃度、吸着されたFeIFNを実質的に回収するのに必要な
量が用いられる。
このようにしてFeIFNをブルー担体に吸着・溶離させ
ることにより、粗FeIFN中に混在していた夾雑蛋白質を
除去して、選択的にFeIFNを精製分離することができ
る。
また、本発明方法は、他のアフィニティークロマトグ
ラフィーと組合わせて使用することもできる。他のアフ
ィニティークロマトグラフィーとしては、銅をキレート
結合させた担体(以下、銅キレート担体と略す)を用い
る方法が好ましく用いられる。また、これらを連続して
使用してもよい。
銅キレート担体としては、アガロース、セルロース、
ポリアクリルアミドゲルなどに、例えばビスカルボキシ
メチルイミノ基[−(CH2COOH)]などのキレート能
を有する交換基が結合した担体を硫酸銅などの銅塩の溶
液で処理した担体が挙げられる。好ましくは、“キレー
ティングセファロース”(Pharmacia社製)などの不溶
性多糖類系担体に銅をキレートさせた担体が用いられ
る。
また、銅キレート担体からの溶離は、通常、リン酸、
酢酸、クエン酸などの酸性緩衝液で行ない、pH以下が好
ましい。しかし、高イオン強度下では、さらに高いpHで
の溶液が可能となる。
[実 施 例] 以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明す
る。
実施例1 (1)抗ウィルス活性測定法 ウィルスはVesicular Stomatitis Virus、感受性細胞
はネコFC9(文献1)を用い、CPE法に従って抗ウィルス
活性を測定した。スタンダードリファレンスとして、NI
Hのヒトの天然型αIFN換算したHuIFNαを用いた。
(2)FeIFNをコードするDNAを含む組換えプラスミドの
作製 形質転換大腸菌E.coli(pFeIFN1)(微工研条寄第163
3号)から文献4の方法で抽出したプラスミドpFeIFN1
20μgを制限酵素SfaN1、Hinc IIで完全分解し、得られ
た複数のDNA断片をアガロースゲル電気泳動で分け、約7
50bpのDNA断片をエレクトロエリューションで取り出
し、約2μgを回収した。こうして、FeIFNをコードす
るDNAを含むSfaN1−Hinc II断片を得た。
クローニングベクターpBM030(文献3)5μgを制限
酵素Bgl II、Sma Iで完全分解し、上記のSfaN1−Hinc I
I断片とT4DNAリガーゼでライゲーションした。この反応
液をコンピテント化したE.coli HB101(宝酒造製)とを
混合し、形質転換を行なった。100μg/mlのアンピシリ
ンを含むLBフレート上に成育するコロニーの中から、ア
ルカリミニスクリーン法で抽出したプラスミドのHind I
IIでの制限分析により、クローニングベクターpBM030に
約750bpのDNA断片が組み込まれているプラスミドを得
た。そのプラスミドのFeIFNをコードするDNAの開始コド
ンを含む約100baseのDNAシーケンスを行なって、pBM30
にFeIFNをコードするDNAが組み込まれているプラスミド
を得た。この組換え体プラスミドをpBmFeIFN1とした。p
BmFeIFN1の作製法を第1図に示す。
(3) FeIFNをコードするDNAで組換えられた組換えカ
イコ核多角体病ウィルスの作製 文献3の方法で組換え体ウィルスを作製した。すなわ
ち、50mM HEPESバッファーpH7.1、0.28M NaCl、0.7mM
Na2HPO4、0.7mM NaH2PO4からなる2.5mlの溶液に、2.
5mlのDNA混合液(0.25M CaCl2、カイコ核多角体病ウィ
ルスBmNPV T3株(文献3)のDNA10μg、組換え体プラ
スミドpBmFeIFN1のDNA65μgを含む)を滴下し、生じた
懸濁液の0.5mlを5mlの10%FBSを添加したTC−10培地
(文献5)中、25cm2のフラスコで平面培養した約3×1
05個のBM−N細胞(文献3)の培養基に加え、カイコ細
胞にDNAを導入した。20日間後、新鮮な培地と交換し、
さらに5日間培養後、培養液を回収した。その培養液を
遠心して清澄化した上清を希釈して、平面に培養したBM
−N細胞の培養基に添加して7日間培養後、顕微鏡観察
によりウィルス感染が見られ、かつ多角体が形成してい
ない培養基を選択した(限界希釈法)。限界希釈法を2
回繰り返すことによって組換え体ウィルスをクローニン
グし、ここで作製したFeIFNをコードするDNAを含む組換
え体ウィルスをBmFeIFN1とした。BmFeIFN1は、European
Collection of Animal Cell Cuturesにブタペスト条約
に基づき寄託されている(Accession No.V89062701)。
(4) 組換え体ウィルス液の調製 75cm2のフラスコ底面で、15mlの10%FBSを含むTC−10
培地中で平面培養した約3×106のBM−N細胞に、前記
(3)でクローニングした組換え体ウィルスを含むBM−
N細胞の培養液50μをBM−N細胞に添加して、27℃で
5日間培養後、培養液を3,000rpmで5分間遠心分離して
遠心上清を組換え体ウィルス液として得た。それぞれの
ウィルス液を10-7希釈し、その1mlをBM−N細胞の培養
基に添加して27℃で7日間培養を続けると、顕微鏡観察
によって培養基のBM−N細胞にウィルス感染が認められ
た。
(5) カイコ生体中でのFeIFNの生産 5令1日目のカイコ幼虫に、(4)で得た組換え体ウ
ィルスのウィルス液をそれぞれ50μ/頭注射し、25℃
で4日間、市販の合成飼料(ビタミルク販売株式会社)
を与えて飼育後、尾脚を切り、体液を氷冷したエッペン
ドルフ・チューブに採取し、遠心し、上清を得、抗ウィ
ルス活性を調べた。7.7×107単位/ml(体液)のFeIFNが
生産されていた。
(6) 組換えカイコ核多角体病ウィルスの失活 0.1ml当たり4×108TCID50の組換えカイコ核多角体病
ウィルスBmFeIFN1を含むカイコ体液を、0.1N塩酸でpH1.
5にして4℃で1日保存した。2N NaOH溶液で中和し、
その1mlをBM−N細胞の培養液に添加したがBM−N細胞
はウィルス感染しなかった。
塩酸によって組換え体ウィルスBmFeIFN1を失活させ、
NaOH溶液によって中和したカイコ体液と粗FeIFN溶液と
した。
(7) ブルー色素を結合させた担体を用いたFeIFNの
精製 前記(6)項の3.8×106U/mlのFeIFN活性を含み、FeI
FN比活性が1.2×106U/mg蛋白質である粗FeIFN溶液14.5
を、“ブルーセファロース(ファースト・フロータイ
プ)"270mlを含むカラムにかけ、続いてこのカラムを0.
5M塩化カリウムを含む50mMトリス・塩酸緩衝液(pH8)1
250mlで洗浄した後、1M塩化カリウムを含む50mMトリス
・塩酸緩衝液(pH8)1.08および1M塩化カリウム、40
%エチレングリコールを含む50mMトリス・塩酸緩衝液
(pH8)1.08でFeIFNを溶出した。溶出されたFeIFNは
4.2×107U/mlのFeIFN活性を含み、比活性1.1×108U/mg
蛋白質であった。このときのFeIFN活性回収率は82.4%
で、比活性は92倍に上昇した。
(8) 銅をキレート結合させた担体を用いたFeIFNの
精製 前記(7)項のブルー担体からのFeIFN溶出液1.08
を、銅をキレート結合させた“キレーティングセファロ
ーズ"150mlを含むカラムに直接かけ、0.3M塩化ナトリウ
ムを含む20mM酢酸緩衝液(pH4.2)で洗浄後、0.3M塩化
ナトリウムを含む20mM酢酸緩衝液(pH3.9)750mlでFeIF
Nを溶出した。溶出されたFeIFNは2.7×107U/mlのFeIFN
活性を含み、比活性を1.4×108U/mg蛋白質であった。こ
のときのFeIFN活性回収率は45%で、比活性は1.3倍に上
昇した。
[発明の効果] 本発明によれば、ネコの抗ウィルス剤、抗腫瘍剤とし
て期待されるFeIFNを高純度で、かつ大量生産すること
ができる。
[参考文献] (1) J.K.Yamamotoら:Vet.Immunol.and Immunopatho
l.,11,1−19,(1986). (2) A.Yanaiら:ヨーロッパ公開特許 第322870号 (3) T.Horiuchiら:Agric.Biol.Chem.,51,1573−158
0,(1987). (4) T.Maniatisら編:Moleculer Cloning,A Laborat
ory Manual,(1982)p86〜96,Cold Spring Harbor Labo
ratory,New York. (5) G.R.Gardiner and H.Stockdale:J.Invertebrat
e Pathology,25,363−370,(1975).
【図面の簡単な説明】
第1図は、ネコインターフェロンをコードするDNAを含
む組換え体プラスミドpBmFeIFN1の作製例の概略図であ
る。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ネコインターフェロンの蛋白質をコードす
    るDNAにより遺伝子組換えされた組換えカイコ核多角体
    病ウイルスを、カイコ体液中で増殖させてネコインター
    フェロンを生産させた後、生産されたネコインターフェ
    ロンを含む溶液を、酸によってpHを1〜4に調製しさら
    に中和した後に、ブルー色素を結合させた担体に接触さ
    せ、次いで、該担体への吸着物を吸着剤で溶出させるこ
    とを特徴とする高純度ネコインターフェロンの製造方
    法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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DE3853523T2 (de) * 1987-12-29 1995-08-17 Toray Industries Synthetisches Plasmid, transformierte Zelle, Katzen-Interferon-Gen und Verfahren zur Herstellung von Katzen-Interferon.

Non-Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
Agric.Biol.Chem.,Vol.51,No.6(1987)P.1573−1580
Nature,Vol.315(1985)P.592−594

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