JP2626344B2 - Ti合金の快削性改善方法と快削性Ti合金 - Google Patents

Ti合金の快削性改善方法と快削性Ti合金

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JP2626344B2 JP24612391A JP24612391A JP2626344B2 JP 2626344 B2 JP2626344 B2 JP 2626344B2 JP 24612391 A JP24612391 A JP 24612391A JP 24612391 A JP24612391 A JP 24612391A JP 2626344 B2 JP2626344 B2 JP 2626344B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、Ti合金の快削性改善
方法、快削性Ti合金、さらにその製造方法に関する。特
に、航空機あるいは自動車等の輸送機器の構造部材ある
いはその機関部の可動部材のように、軽量性と強度が共
に要求される部位に適用できるTi合金の切削性の改善方
法、さらに切削性に優れたTi合金とその製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】TiおよびTi合金は軽量であり、また高強
度でもあるために、航空機あるいは自動車の高速運動部
材等に使用されている。しかし、その製造に際してはTi
およびTi合金の切削性が悪いため、工具寿命が短いこ
と、切削速度が上げられないなどの問題が生じて加工経
費と時間が多くかかるため、大量生産は困難であった。
【0003】TiおよびTi合金の切削性改善方法として
は、特開昭60−251239号公報、特開昭61−153247号公
報、特開昭61−257445号公報、特開昭62−89834 号公
報、米国特許明細書第4,810,465 号、欧州特許公開明細
書第199,198 号において、S、Se、Te、REM(希土類金
属) 、Ca等の1種以上を加える方法が提案されている。
S、Se、Te、REM 、Ca等をTiおよびTi合金に加え、介在
物を形成することにより切削性は向上するが、熱間加工
性ならびに機械的強度 (特に疲労強度) の低下が生じる
ため、その添加量を増加することはできなかった。その
結果として切削性についての改善が不十分であるばかり
でなく、熱間加工性や疲労強度についても従来のTiおよ
びTi合金より劣っていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、従来より、
TiおよびTi合金の切削性は一般に鋼よりも低いとされて
いる。それは、切削屑生成機構の特徴から切削工具の刃
先にかかる力が大きいため切削工具刃が損傷しやすいこ
と、Tiは鋼と比較して熱伝導率が小さいため切削部の温
度が上昇すること、さらにTiが他の元素と反応し易いこ
とからも分かるように切削工具とも反応しやすいことな
どが原因と考えられている。
【0005】このように切削性が低いことは、加工のた
めの経費が大きくなるだけでなく、量産性をも低くする
ことを意味し、このことがTiおよびTi合金部材のコスト
アップの要因の一つとなっている。かくして、本発明の
目的は、TiおよびTi合金の切削性の改善方法を提供する
こと、また軽量であって疲労強度が高い又は耐食性が良
いという性質を維持しながら、同時に切削性にも優れる
Ti合金ならびにその製造方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、Tiおよび
Ti合金の切削性を改善すべく、鋭意研究開発を行いその
過程で下記のような知見を得た。すなわち、Tiおよび
Ti合金にPを添加すると、一部はTiに固溶しマトリック
スの延性を低下させ、残りはTiと反応し介在物を形成す
るが、マトリックスの延性低下とこの介在物の存在との
相乗作用により切削性が著しく向上する。しかし、生成
する介在物は粗大多角形状であり、熱間加工性が悪く、
疲労強度も低い。
【0007】さらにSを添加すると、P単独添加の場
合に形成される介在物中にSが固溶し、介在物が微細化
しやすくなる。これにより、P単独添加の場合と介在物
量は同じであっても、PとSを複合添加した場合には介
在物は微細となり、熱間加工性や疲労強度の低下が小さ
い。
【0008】TiおよびTi合金にPおよびNiを添加する
と、P単独添加の場合に形成される介在物にNiが一部固
溶し、介在物は粒状化しやすくなる。これにより、P単
独添加の場合と介在物量は同じであっても、PとNiを複
合添加した場合には、介在物は粒状化し、熱間加工性や
疲労強度の低下が小さい。さらに、介在物中に固溶しな
い過剰量のNiはTiとの間で金属間化合物を形成し、切削
性改善に寄与する。
【0009】Sによる介在物の微細化効果、Niによる
介在物の粒状化効果は、Pを添加したTiおよびTi合金中
に、SとNiをともに添加した場合にも得られる。
【0010】REM は、むしろPの固溶量を下げ、マト
リックスの延性低下を軽減し、熱間加工性や疲労強度の
低下を抑制する。ただし、固溶できなくなった過剰量の
Pは介在物を形成するため、今度は介在物量は増すこと
になり、介在物が粗大な場合や、粒状化していない場合
には、上記の熱間加工性や疲労強度の低下抑制効果が十
分でなくなることがある。したがって、PとともにREM
を添加する場合にはSとNiをともに添加して、介在物が
微細化・粒状化した状態とするのが好ましい。
【0011】TiおよびTi合金にPおよびSを添加する
際には、硫化鉄、硫化アルミニウム、硫化チタン、リン
化鉄、またはリン化チタンを使用することができる。硫
化鉄とリン化鉄は安価であるが鉄も同時に加えられるの
で、その量が多すぎると切削性に悪影響を与えるため
に、鉄を含まない化合物と同時に加えることにより鉄の
添加量を調整するのが好ましい。
【0012】本発明は、以上の知見にもとずいてなされ
たものであって、その一つの面からは、TiまたはTi合金
に、重量%で、下記群〜のいずれかの快削成分を添
加することを特徴とするTiまたはTi合金の快削性改善方
法である。 P: 0.01〜1.0 %およびS: 0.01〜1.0 %、 P: 0.01〜1.0 %およびNi: 0.01〜2.0 %、 P: 0.01〜1.0 %、S: 0.01〜1.0 %およびNi: 0.01
〜2.0 %、 P: 0.01〜1.0 %、S: 0.01〜1.0 %、Ni: 0.01〜2.
0 %およびREM:0.01〜5.0 %。
【0013】また、別の面からは、本発明は、上述の快
削成分をTiまたはTi合金に配合して成る快削性Ti合金で
ある。かかるTi合金を製造するに際しては、PまたはS
の供給源として硫化鉄、硫化アルミニウム、硫化チタ
ン、リン化鉄およびリン化チタンから成る群から選んだ
1種または2種以上を使うことによって、PまたはPと
SとのTiまたはTi合金への配合が容易に行われる。
【0014】
【作用】次に、本発明の作用についてさらに具体的に説
明する。まず、本発明にあって、上述のいわゆる快削成
分を配合するTiおよびTi合金のうちのTi合金とは、Ti合
金であれば特定のものに制限されず、すでに述べたとこ
ろから当業者には明らかなように、いずれの合金であっ
ても所期の快削性を発揮するのであるが、特に例示すれ
ば、下記の合金元素のうち少なくとも1つを最大で下記
成分量 (重量%) まで添加したもの (2種類あるいはそ
れ以上を添加する場合には合わせて50%まで) を包含す
る。
【0015】Al: 10%、 Sn: 15%、 Co: 10%、 C
u: 5%、 Ta: 15%、Mn: 10%、 Hf: 10%、 W: 1
0%、 Si: 0.5%、Nb: 20%、Zr: 10%、 Mo: 20%、
V: 25%、 Fe: 10%、 C: 5 %、Cr: 15%、
O: 0.5 %、Pt: 0.25%、Pd: 0.25%、Ru: 0.25%、O
s: 0.25%、Ir: 0.25%、Rh: 0.25%。
【0016】本発明が対象とする代表的なTi合金として
は、Ti-3Al-2.5V 、Ti-6Al-4V 、Ti-6Al-2Sn-4Zr-6Mo、
Ti-10V-2Fe-3Al、Ti-15Mo-5Zr-3Al 、Ti-15V-3Cr-3Sn-3
Al、Ti-3Al-8V-6Cr-4Mo-4Zr 、Ti-0.15Pd 等がある。次
に、前述の快削成分の組成配合割合の限定理由を説明す
ると次の通りである。なお、以下にあって「%」は特に
ことわりがない限り、「重量%」である。
【0017】P:Pは、一部はTiに固溶しマトリックス
の延性を低下させるとともに、残りは介在物を形成し切
削性を改善する元素である。しかし、Pを単独添加した
場合には熱間加工性や疲労強度の低下が著しいので、こ
れを避けるために、Pの添加は、SとNiの一方または両
方、或いはSとNiとREM との複合添加にしなければなら
ない。Pは0.01%未満では十分な固溶量が確保できず、
また十分量の介在物も形成されず、切削性改善の効果が
ない。一方、1.0 %超では粗大な介在物が形成され切削
性改善の効果はあるものの、上記の複合添加によっても
熱間加工性や疲労強度の低下が著しくなる。好ましいP
量は、0.03〜0.3 %、特に0.04〜0.12%である。
【0018】S:SはPを添加した時に形成される介在
物を微細化することにより、熱間加工性や疲労強度の低
下を抑制する元素であるが、0.01%未満では介在物が微
細化されず、熱間加工性や疲労強度の低下の抑制効果が
ない。一方、1.0 %超では介在物は増え、その増えた介
在物が粒界に沿って多数形成されるため、熱間加工性や
疲労強度は逆に低下する。Sは、重量%でのP量との比
が、S:P = 1:3〜3:1 の範囲になるように添加すること
が好ましい。この範囲のS量において、介在物の微細化
効果は最も顕著であり、1〜10μmの微細介在物が形成
される。好ましいS量は0.03〜0.30%、特に0.08〜0.24
%である。
【0019】Ni:NiはPを添加した時に形成される介在
物を粒状化することにより、熱間加工性や疲労強度の低
下を抑制する元素である。また、Tiとの間で金属間化合
物を形成し、切削性を改善する。Ni添加量が0.01%未満
では介在物が粒状化されず、熱間加工性や疲労強度の低
下の抑制効果がない。一方、2.0 %超では多量のTi−Ni
間の金属間化合物が生成し、延性が低下し、熱間加工性
や疲労強度は逆に劣化する。好ましいNi量は0.05〜0.60
%、特に0.15〜0.50%である。
【0020】REM: (希土類元素) REM はPと化合しやすい元素であり、マトリックスへの
Pの固溶量を下げ、マトリックスの延性低下を軽減して
熱間加工性や疲労強度の低下を抑制する元素である。RE
M とはLa、Ce、Nd、Y、Sc等の希土類金属のことであ
り、その配合量が0.01%未満では、マトリックスの延性
低下を軽減する効果が小さく、熱間加工性や疲労強度の
低下抑制に寄与しない。一方、5.0 %超ではTiおよびTi
合金に配合・溶解する際にTi溶湯の粘性が上昇し、偏析
が生じやすくなる。REM の添加は、La、Ceを主成分とす
る市販のMm (ミッシュメタル) を用いれば安価に行え
る。好ましいREM の添加量は0.05〜1.5 %、特に0.20〜
1.0 %である。
【0021】本発明にかかる快削性チタン合金は、その
他付随不純物としてH、N等を含むことはあるが、それ
らは例えば合計して0.1 %以下、望ましくは0.05%以下
に抑制すればよい。本発明にかかる快削性Ti合金の製造
に際しては、従来のTi合金と同様に、VAR法およびアー
ク溶解法等、Ti合金製造に適用できるいかなる方法でも
適用できる。その場合、P、Sを添加する際にリン化
鉄、硫化鉄をTi溶湯に加えるとFeが同時に添加される
が、その量が余り多いと切削性が低下するため2.0 %以
下、さらに望ましくは1.0 %以下に抑制することが望ま
しい。したがって、リン化チタン、硫化アルミニウム、
硫化チタン等も同時に添加するのが好ましい。次に、本
発明を実施例を参照しながらさらに具体的に説明する
が、本発明は実施例に記載した特定の態様に限定される
ものではない。
【0022】
【実施例】実施例1 表1および表2に示す化学組成をもった本発明例のTi合
金 (合金No.1〜25) 、従来例のTi合金 (合金No. 26〜3
1) ならびに比較例のTi合金 (合金No. 32〜46)をVAR 法
で溶解し、直径120 ×長さ400(mm)のインゴットを作製
した。このインゴットを1050℃×3hr→空冷の均質化処
理を行った。そして、1150℃に再加熱して直径90mmにま
で鍛伸し、さらに950 ℃に加熱して直径65mmにまで鍛伸
した。
【0023】比較例のTi合金 (合金No. 32〜46) ではい
ずれもその表面に割れが発生したが、試験片は作製でき
る程度のものであった。
【0024】さらに、得られた鍛伸材に705 ℃×1.5 hr
→空冷の焼鈍処理を施した。この焼鈍後の材料より圧縮
試験片 (直径8×長さ12mm) 、回転曲げ試験片 (外寸直
径12×長さ110mm)、およびドリル穴あけ試験片 (厚み20
×幅50×長さ350mm)をそれぞれ採取し各試験に供した。
【0025】合金No. 24とNo. 25の本発明例のTi合金お
よび合金No.30 とNo.31 の従来例のTi合金は、VAR 法で
溶解した直径120 ×長さ400(mm) のインゴットを1050℃
×3hr→空冷の均質化処理を行った後に、1050℃に再加
熱して直径65mmにまで鍛伸した。そして、800℃×1hr
→空冷の溶体化処理を行った後に、前述した圧縮試験片
およびドリル穴あけ試験片を採取しそれぞれの試験に供
した。さらに、残材に500 ℃×15hr→空冷の時効処理を
施し、回転曲げ疲労試験片を採取し試験に供した。試験
結果は同じく表1および表2にまとめて示す。
【0026】圧縮試験は以下に示す条件で行った。 温 度 : 750 ℃ 歪速度 : 1s-1 圧下率 : 75% 圧縮による熱間加工性は試験後の試料表面の割れの有無
により評価した。
【0027】比較例の合金No. 32、33、43のP単独添加
の材料およびNo. 34〜42、44、46のREM 、Ni、P、Sを
多く含む材料のいずれでも割れの発生が認められたが、
本発明例にかかるTi合金 (合金No.1〜25) では割れは認
められなかった。疲労試験は以下に示す条件で行い107
回数での疲労強度を求めた。快削成分を加えない従来例
の特性を考慮して、純Tiに快削成分を加えたものでは24
kgf/mm2以上、快削成分を加えないTi−6Al−4V合金で
は45kgf/mm2 以上を合格と判断した。
【0028】 試料形状: 直径8mmの小野式回転曲げ疲労試験片 温 度 : 室温 比較例の合金No.32 〜46では、いずれも本発明合金No.1
〜25よりも疲労強度が劣っており上記基準を越えるもの
はなかった。ドリル穴あけ試験は以下に示す条件で行っ
た。
【0029】工具材質 : 超硬 (K20 相当) ドリル径 : 6 mm 送 り : 0.1 mm/rev. 回転数 : 980 rpm 潤 滑 : 水溶性潤滑剤 (商品名: コスモクール) 、
4 l/min 穴の深さ : 15 mm(不貫通孔) ドリル穿孔性は純Tiを基準として評価し、次式により算
出される値である。ここで、穿孔距離とはドリルの寿命
までに穿孔できた穴の数と、穴の深さの積である。
【0030】
【数1】
【0031】Pを含む本発明合金は、いづれも対応する
その母材のTiあるいはTi合金よりも優れたドリル穿孔性
を示した。しかし、Pを含んでいても、比較例の合金N
o. 37、41、42のように、Ni、SまたはREM 量が過大で
あると、ドリル穿孔性は母材合金より低下した。以上の
結果、本発明合金は熱間加工性および疲労強度が従来合
金と同等以上であり、かつ切削性が非常に優れているこ
とが明らかとなった。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】実施例2 実施例1に用いた合金No.1、3、11、13、15およびNo.1
6 の本発明例のTi合金について、さらに圧下率を大きく
して、圧縮試験を実施した。温度、歪速度は実施例1と
同じく750 ℃、1s-1、圧下率は85%と、90%の2条件
で行い、実施例1と同様、熱間加工性は試料表面の割れ
の有無により評価した。試験結果を、実施例1の圧下率
75%の結果とともに、表3に示す。表中の○は、割れが
認められなかったもの、×は割れが発生したものを示し
ている。
【0035】純Tiに快削成分のPとSをともに添加した
No.1の本発明の合金は、圧下率90%の試験では割れが発
生したが、P、SおよびNiを添加したNo.3の合金は、圧
下率90%でも割れは発生しなかった。また、Ti−6Al−
4V合金にPとSを添加したNo.11 の合金およびPとNiを
添加したNo.13 の合金では、85%の圧下率で割れが生じ
たが、P、SおよびNiを含むNo.15 の合金では85%、さ
らにREM を添加したNo.16 の合金では、90%の圧下率で
も割れは発生しなかった。
【0036】
【表3】
【0037】実施例3 耐食性に優れる貴金属含有Ti合金についても、本発明の
効果があることを確認した。表4に示す化学組成をもっ
た本発明例のTi合金 (合金No. 51〜58) ならびに従来例
のTi合金 (合金No. 59〜66) をVAR 法で溶解し、直径12
0×長さ400(mm) のインゴットを作製した。そして、こ
のインゴットを1050℃×3hr→空冷の均質化処理を行っ
た。
【0038】そして、合金No. 51〜55およびNo. 58の本
発明例のTi合金と合金No. 59〜63およびNo. 66の従来例
のTi合金のインゴットは、1150℃に再加熱して直径90mm
にまで鍛伸し、さらに950 ℃に加熱して直径65mmにまで
鍛伸した。さらに、得られた鍛伸材に705 ℃×1.5hr →
空冷の焼鈍処理を施した。この焼鈍後の材料より、実施
例1と同一の寸法形状のドリル穴あけ試験片に加え、耐
酸性試験用小片 (厚み3mm×幅10mm×長さ40mm) 、耐す
き間腐食試験片 (厚み3mm×幅30mm×長さ30mm) および
耐硫化腐食試験用小片 (厚み2mm×幅10mm×長さ75mm)
を採取し、試験片加工して、各試験に供した。
【0039】また、合金No. 56およびNo. 57の本発明例
のTi合金と合金No. 64およびNo. 65の従来例のTi合金の
インゴットの場合には、均質化処理後のインゴットを10
50℃に再加熱して直径65mmに鍛伸した。そして、800 ℃
×1hr→空冷の溶体化処理を行った後に、前述したドリ
ル穴あけ試験片、耐酸性試験用小片、耐すき間腐食試験
片および耐硫化腐食試験用小片をそれぞれ採取し、試験
片に加工して、それぞれの試験に供した。
【0040】耐酸性試験は、厚み3mm×幅10mm×長さ40
mmの短冊型に採取した小片を600 番エメリー紙にて研磨
仕上げした後、沸騰5%HCl 水溶液中に6時間浸漬し、
その際の全面腐食量を測定する方法を採用した。そして
各2枚の試験片について腐食量から腐食速度を算出し、
その平均値を比較することにより、耐酸性を評価した。
【0041】すき間腐食試験片対は、採取した厚み3mm
×幅30mm×長さ30mmの2枚の試験片中央部に直径7mmの
穴をあけ、さらにその表面を600 番エメリー紙にて研磨
仕上げした後、これら2枚の試験片の間にジメタクリレ
ート系樹脂 (嫌気性接着剤)を塗布し、テフロンブッシ
ュを介して、チタン製ボルト・ナットで締め付けること
により作製した。このすき間腐食試験片対を材質毎に3
個ずつ用意し、150 ℃の25%NaCl水溶液(pH2) に50
0 時間浸漬して、すき間腐食状況を観察することによ
り、耐すき間腐食性を評価した。
【0042】耐硫化腐食試験片は、採取した厚み2mm×
幅10mm×長さ75mmの短冊状の平板の中央部に、0.25mmR
で0.25mmの深さの半円状溝を幅方向に設けることで製作
した。図1に示すように、この小型切欠付4点曲げ試験
片1は、4点曲げ治具2により、4箇所のガラス丸棒で
構成する支点3によって支持される。試験に際しては応
力付加ボルト4によってこの試験片に、100 %降伏応力
に相当する応力を付加しつつ、下記の条件下でオートク
レーブ中に保持した。所定の時間が経過した後、試験片
を取り出し、腐食速度と、応力腐食割れ発生の有無をし
らべ、耐硫化腐食性を評価した。結果は表4にまとめて
示す。
【0043】[腐食条件] 液温 : 250 ℃ 試験液組成 : 25%NaCl+1(g/l)S水溶液 気相中ガス分圧: 10kgf/cm2 H2S +10kgf/cm2 CO2 試験時間 : 720 hr 付加応力 : 1 ×σ0.2 ドリル穿孔性は、実施例1と同様の方法で試験し、評価
した。
【0044】表4から明らかなように、本発明に係るN
o.51 〜No.58 のTi合金は従来例のTi合金であるNo.59
〜No.60 のTi合金に比べ、ドリル穿孔性に優れる。さら
に、各耐食性も従来のTi合金に劣っておらず、本発明
は、白金族元素を含有するTi合金にも適用できること
は、明らかである。
【0045】
【表4】
【0046】
【発明の効果】本発明の快削性Ti合金は、純TiおよびTi
合金の本来有する軽量性と強度あるいは耐食性を有し、
しかも快削性においては従来の純TiおよびTi合金よりも
優れているため、機械加工コストが非常に低くなり、自
動車部品等の輸送用材器に適用可能であり、純チタンお
よびチタン合金の部材の製造コスト低減に大きく寄与で
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】耐硫化腐食試験での小型切欠付4点曲げ試験片
への応力付加手段を説明した概略模式図である。
【符号の説明】
1 : 小型切欠付4点曲げ試験片 2 : 4点曲げ治具 3 : 支点 (ガラス丸棒) 4 : 応力付加ボルト
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 北山 司郎 大阪市中央区北浜4丁目5番33号 住友 金属工業株式会社内 (72)発明者 杉本 由仁 大阪市中央区北浜4丁目5番33号 住友 金属工業株式会社内 (56)参考文献 特開 昭62−185848(JP,A) 特開 昭61−153247(JP,A)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 TiまたはTi合金に、重量%で、下記群
    〜のいずれかの快削成分を添加することを特徴とする
    TiまたはTi合金の快削性改善方法。 P: 0.01〜1.0 %およびS: 0.01〜1.0 %、 P: 0.01〜1.0 %およびNi: 0.01〜2.0 %、 P: 0.01〜1.0 %、S: 0.01〜1.0 %およびNi: 0.01
    〜2.0 %、 P: 0.01〜1.0 %、S: 0.01〜1.0 %、Ni: 0.01〜2.
    0 %およびREM:0.01〜5.0 %。
  2. 【請求項2】 重量%で、下記群〜のいずれかの快
    削成分、および残部TiまたはTi合金からなる快削性Ti合
    金。 P: 0.01〜1.0 %およびS: 0.01〜1.0 %、 P: 0.01〜1.0 %およびNi: 0.01〜2.0 %、 P: 0.01〜1.0 %、S: 0.01〜1.0 %およびNi: 0.01
    〜2.0 %、 P: 0.01〜1.0 %、S: 0.01〜1.0 %、Ni: 0.01〜2.
    0 %およびREM:0.01〜5.0 %。
  3. 【請求項3】 請求項2記載の快削性Ti合金の製造に際
    して、SまたはPの供給源として、硫化鉄、硫化アルミ
    ニウム、硫化チタン、リン化鉄およびリン化チタンから
    成る群から選んだ1種または2種以上を使うことを特徴
    とする快削性Ti合金の製造方法。
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