JP2623280B2 - 抗腫瘍剤 - Google Patents

抗腫瘍剤

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紀子 田中
和泓 井上
博 是永
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第一製薬株式会社
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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は抗腫瘍剤、更に詳しくは、硫酸化多糖体と非
ステロイド性抗エストロジエン剤を有効成分とする抗腫
瘍剤に関する。
〔従来の技術およびその課題〕
非ステロイド性抗エストロジエン剤は副作用が少ない
ことから、乳癌、なかでも再発進行癌に対する長期内分
泌療法剤として広く用いられている。
斯かる内分泌療法は、化学療法に比べて緩解期間が長
く、副作用が少なく、手術侵襲もなく、しかも患者は在
宅治療が受けられるという利点があり、近年脚光をあび
ている。
しかしながら、非ステロイド性抗エストロジエン剤の
適用はホルモン受容体を有するホルモン依存性癌に限ら
れており、当該癌に対する有効率は50〜60%であると報
告されているが、ホルモン非依存性癌に対する有効率は
10%程度と極めて低い。しかも、ホルモン依存性癌であ
る乳癌細胞であつても、そのホルモン依存性は同一腫瘍
内でも不均一であり、また治療期間中に当該依存性の変
化消失が生じ易いという問題があり、これらが内分泌療
法による治療を複雑にしていた。
〔課題を解決するための手段〕
斯かる実状において、本発明者らは、非ステロイド性
抗エストロジエン剤の有する利点をいかし、その有効性
を高め、更にその適応範囲を拡大すべく鋭意研究を行つ
た結果、これに硫酸化多糖体を併用すると血管新生抑制
活性が発現し、抗エストロジエン剤の抗腫瘍作用が著し
く増強されると共に、ホルモン非依存性固形腫瘍にも優
れた効果を示すことを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、硫酸化多糖体及び非ステロイド
性抗エストロジエン剤を有効成分とする抗腫瘍剤を提供
するものである。
本発明において、非ステロイド性抗エストロジエン剤
としては、例えばクロミフエン(clomiphen)、ナフオ
キシジン(nafoxidine)、タモキシフエン(tamoxife
n)、さらに4−ヒドロキシタモキシフエン、N−デス
メチルタモキシフエン等のタモキシフエン代謝物及びこ
れらの生理学的に許容される塩、例えばクエン酸等の有
機酸塩、塩酸等の無機酸塩等が挙げられる。
また、硫酸化多糖体としては、例えばヘパリン、低分
子ヘパリン及び本発明者によつて製造されたDS4152等が
挙げられる。
硫酸化多糖体DS4152は、アルスロバクター(Arthroba
cter)sp.AT−25(工業技術院微生物工業技術研究所
に、微工研条寄第1357号として、また、同所にMicrococ
cus sp.AT−25なる名称で、微工研菌寄第5255号として
寄託されている)の培養物から分離されるDF4639(特開
昭56−67301号参照)から、その中に含まれる分子量約1
5×104以上の発熱性物質を適当な分子量分画法、例えば
ゲル過法、現外過法やアルコール沈澱法で除くこと
によつて得られる。
すなわち、ゲル過法によればDF4639を適当なゲル
過担体、例えば、セフアクリル〔Sephacryl S−300(フ
アルマシア製)〕を用いてゲル過を行い、得られるフ
ラクシヨンについて高速ゲル過クロマトグラフイー
(東洋ソーダ製G3000 SW カラム使用)を行い、排除
限界(ボイド・ボリユーム、void volum)にピークを
示すクラクシヨン(H画分)とボイド・ボリユームにピ
ークを与えず分子量約2×104〜8×104の範囲に溶出さ
れるフラクシヨン(L画分)を各々集め、透析する。
また、限外過は適当な膜(例えばMillipore社製のP
THK、Amicon社製のYM10、YM30、XM50、PM30やFiltron社
製のNOVA100、OMEGA100、NOVA50、OMEGA50等特にYM10)
を用い、窒素ガスによる加圧またはペリスタルチツク
(peristaltic)ポンプによつて加圧(0.5〜5Kg/cm2
度)し、透過液をDS4152として集めればよい。使用溶楳
は、水−エタノール(10:2〜3)または水が適当であ
り、4℃乃至室温で行うのが一般的である。
得られた各透析内液を濃縮後過し、液を数倍量の
エタノール中に撹拌下注ぐことにより生成する白色沈澱
を集め、90%エタノール、エタノール、アセトンの順に
洗つた後、減圧乾燥すれば、目的とする硫酸化多糖体DS
4152(L画分)と発熱性物質(H画分)が各々得られ
る。
こうして得られる硫酸化多糖体DS4152は以化に述べる
物理化学的諸性質を示す。下記の物性はそのナトリウム
塩についてのものである。
1) 分子量(ゲル過法による主ピーク) 29,000±3,000 2) 元素分析値(5ロツトの巾を示す) C 24.42〜25.76% H 3.34〜 3.98% N 0.51〜 0.89% S 10.6 〜11.7 % P 0.77〜 1.06% 3) 糖および蛋白質の含量 糖含量(%):56±2(フエノール−硫酸法、ガラクト
ース標準) 蛋白含量(%):1±0.5(ローリー・フオリン法、牛血
清アルブミン標準) 4) 比旋光度 ▲〔α〕25 D▼−37゜±1゜(0.5%水溶液) 5) 赤外線吸収スペクトルにおける主要吸収帯 1240,840(肩),810(cm-1;KBr) 6) 溶解性 水に易溶。エーテル、ベンゼン、クロロホルム、メタ
ノール、エタノール等の有機溶楳には殆ど不溶。
7) 呈色反応 フエノール硫酸、アンスロン−硫酸、ビユレツト反応
およびローリー・フオリン反応は陽性。水解液のエルソ
ン・モルガン反応およびニンヒドリン反応も陽性。カル
バゾール反応および坂口反応は陰性。
8) 塩基性、中性、酸性の区別 pH6〜8(3%濃度水溶液) 9) 構成糖および硫酸基、燐の含量 D−グルコース、D−ガラクトース、SO3NaおよびP
(燐)の含有モル比はD−グルコースを10としてそれぞ
れ約10:63:73:6である。
10) 構成アミノ酸およびアミノ糖 酸化水分解物のアミノ酸分析計による分析で、アラニ
ン、グリシン、グルタミン酸、ジアミノピメリン酸、グ
ルコサミンおよびムラミン酸の存在を認める。
本発明の抗腫瘍剤は、硫酸化多糖体と非ステロイド性
抗エストロジエン剤をそれぞれの単剤に調製して組合せ
剤とするか、あるいは両成分を含む合剤とすることがで
きる。剤形は、医学的に許容される担体、賦形剤を含有
する種々の形態、例えば水または各種の輸液用製剤に溶
解させた液剤、散剤、顆粒剤、錠剤等とすることができ
る。
本発明の抗腫瘍剤は、静脈内、動脈内、経口、皮下、
直腸内、粘膜内または腫瘍局所内に投与することができ
る。その投与量は、非ステロイド性抗エストロジエン剤
は一般に癌の治療に使用されている量、すなわち成人に
対し20〜40mg/日が、また硫酸化多糖体は1〜10mg/日が
好ましい。硫酸化多糖体及び非ステロイド性抗エストロ
ジエン剤はそれぞれ別個に投与しても、また一緒に投与
してもよい。
〔作用および効果〕 硫酸化多糖体と非ステロイド性抗エストロジエン剤を
併用した本発明抗腫瘍剤は、腫瘍血管の新生抑制作用、
癌の増殖抑制作用を有するので、広範囲の腫瘍に対して
優れた効果を奏する。
〔実施例〕
次に参考例及び実施例を挙げて更に詳細に説明する。
参考例1 DF4639(5.0g)を15mlの0.1M NaClに溶解し、これを
0.1M NaClで平衡化したカラム(5.0×80cm;セフアクリ
ルS−300)にかけて同用溶媒に溶出し、18mlずつ溶出
液を集めた。得られたフラクシヨンについて高速ゲル
過クロマトグラフイー(東洋ソーダ製 G3000 SW カ
ラム、溶媒0.1M酢酸カリウム緩衝液pH6.5)を行い、ボ
イド・ボリユームにピークを与えず、分子量(デキスト
ラン標準)が約2×104〜8×104の範囲に溶出されるフ
ラクシヨンを集め(約700ml)、脱イオン水に対して透
析した。透析内液を約50mlまで濃縮後過した。液を
約400mlのエタノール中へ撹拌下滴下して、生成した沈
澱を集め、これを90%エタノール、エタノール、アセト
ンの順に洗つた後、減圧乾燥(50℃、6時間)してDS41
52の白色粉末3.8gを得た。斯くして得られたDS4152は前
記した通りの物理学的性質を有し、その急性毒性(マウ
ス、静注)は、LD50が2000mg/Kg以上であつた。
参考例2 DF4639(6.0g)を300mlの水−エタノール(10:3)溶
媒に溶解し、YM10膜(41.8cm2、アミコン社製)を用い
て、窒素で加圧(1.5Kg/cm2)下、室温で限外過し
た。上記溶媒を追加しながら透過液量が約3となるま
で実施した。透過液の濃縮液(約50ml)に100mgの酢酸
ナトリウムを加えて溶解した後、遠心分離により得られ
る上清を約500mlのエタノール中へ撹拌下滴下した。生
成した沈澱を集め、90%エタノール、エタノール、アセ
トンの順に洗つた後、減圧乾燥(55℃、5時間)してDS
4152の白色粉末3.3gを得た。
このものの物理化学的性質は、参考例1で得たDS4152
と同一であり、その糖、蛋白、S及びPの含量は次の通
りであつた。
通含量 58% S含量 11.3% 蛋白含量 0.9% P含量 0.92% 実施例1 鶏胚漿尿膜血管新生阻止試験: a) 直接法 鶏胚を用いる血管新生阻止試験はテイラーとフオーク
マン(Nature 297:307,(1982))の方法を一部改良し
た以下の方法で行つた。
鶏(ノーリンクロス)の4〜5日齢受精卵の漿尿膜
に、生理食塩水に懸濁もしくは溶解させた抗エストロジ
エン剤を単独で、または硫酸化多糖体と同時に添加し、
37℃で培養した。薬物添加2日後に、漿尿膜血管の発達
度を、生理食塩水のみを添加した対照と比較した。
抗エストロジエン剤単独では血管新生に影響のない
1又は10μgをDS4152の0.01μgと併用したときの結果
は第1表のとおりであり、血管新生は27.4〜67.6%抑制
された。
血管新生に影響のないクエン酸タモキシフエン1μ
gと硫酸化多糖体を併用したときの50%血管新生阻止量
は第2表のとおりである。
b) ex vivo法 生理食塩水に懸濁した抗エストロジエン剤(100mg/K
g)に硫酸化多糖体を30mg/Kgとなる様調整して加え、IC
R系雄マウスに皮下もしくは経口で投与し、6時間後に
血液を採取した。0.313%クエン酸ナトリウムで凝固を
阻止し、前記直接法と同様に5日齢受精卵漿尿膜に採血
した血液を添加し、2日後に血管新生に及ぼす効果を判
定した。生理食塩水を同量投与した対照マウスより採取
した血液を添加した漿尿膜血管の発達度を100%とした
時の値を第3表に示す。
第3表から明らかなように、クエン酸タモキシフエン
単独投与では血管新生に何ら影響を与えなかつたが、DS
−4152を30mg/Kg皮下もしくは経口で併用したマウスの
血液はCAM血管の新生を著明に抑制し、その効果は皮下
投与の方が大であつた。
実施例2 抗腫瘍試験: C3H/He雄マウス(5週齢)にマウス乳癌MM46を4×10
6個皮下接種し7日目に腫瘍径を計測後ランダマイズし
た。一方ICR系雄マウス(5週齢)にはザルコーマ180
(S180)を1×106個皮下接種し、3日目にマウスをラ
ンダマイズした。MM46担癌7日目のマウスおよびS180担
癌3日目のマウスにクエン酸タモキシフエンの生理食塩
水懸濁液を1日1回4日間投与した。硫酸化多糖体は生
理食塩水に溶解し、30mg/Kg/日もしくは300mg/Kg/日と
なる様1日1回、4日間経口もしくは皮下投与し、投与
開始5日目に動物を屠殺し、腫瘍重量を生理食塩水投与
対照群と比較した。その結果を第4表に示す。
第4表に示す如く、クエン酸タモキシフエンを単独で
投与した場合、MM46乳癌の増殖は軽度ながら抑制された
が、S180肉腫の増殖には影響がなかつた。ついでクエン
酸タモキシフエンを硫酸化多糖体と併用したところ、ク
エン酸タモキシフエン感受性のMM46乳癌の増殖抑制作用
が著明に促進されたのみならず、クエン酸タモキシフエ
ン非感受性のS180に対しても有意な腫瘍増殖抑制効果が
得られた。併用した硫酸化多糖体のなかでは、DS−4152
の投与量が他の薬物の1/10であつたにもかかわらず最も
著効を示した。
実施例3 DS−4152 6mg、クエン酸タモキシフエン20mg、乳糖5
0mg、トウモロコシデンプン15.5mg、カルボキシメチル
セルロースカルシウム5mg、ヒドロキシプロピルセルロ
ース3mg及びステアリン酸マグネシウム0.5mgを定法に従
つて1錠とする。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小河 秀正 東京都江戸川区北葛西1丁目16番13号 第一製薬中央研究所内 (56)参考文献 特開 昭59−176213(JP,A) 特開 昭57−99527(JP,A) Jounal of Biochem istry

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】硫酸化多糖体及び非ステロイド性抗エスト
    ロジエン剤を有効成分とする抗腫瘍剤。
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