JP2623005C - - Google Patents
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Description
【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
本発明は歯車等の機械構造用の強力ショットピ−ニング処理型の高疲労強度歯
車用肌焼鋼に関するものである。 [従来の技術] 従来より、歯車等の機械構造用の肌焼鋼においては、被削性や冷間鍛造性、転
動疲労特性、耐ピッチング性、回転曲げ疲労特性等を向上させるためには、酸素
量の低減が効果あることが知られている。 例えば、特開昭58-45354号、特開昭60-208413号、特公昭61-10028号、特開昭6
1-44159号、特公昭63-32858号、特公昭63-32859号等の公報には、夫々肌焼鋼や 浸炭用鋼に係る発明が開示されている。これら前記の発明鋼には、被削性や冷間
加工時の割れの観点から、鋼中の酸素含有量を0.0015%〜0.0050%以下に制限し
た組成となっている。 また、特開昭62-54064号、特開昭62-274025号、特開昭63-60257号、特開昭63-
118052号等の公報には、転動疲労特性、耐ピッチング性の上から酸素含有量を0.
0010%〜0.0015%以下に制限している。 また、特開昭61-163246号、特開昭62-63653号、特開昭63-137145号等の公報に
は、酸化物系介在物の生成を抑制するためと、耐ピッチング性及び回転曲げ疲労
の観点から、酸素含有量を0.0015%〜0.0030%以下に低減せしめている。 耐ピッチング性や疲労強度を向上させるための方法として、鋼の成分と製造プ
ロセスを組合せたものに、特開昭62-196322号の機械構造用部品の製造方法があ
る。 上記公報には、Mn2.0 〜5.0 %と高Mnの浸炭性焼入れ鋼に残留オ−ステナ
イトを生成させ、その上でショットピ−ニングを施し、疲労強度を向上させるこ
とが開示されている。 尚ショットピ−ニングとは、ショット(鋼粒)を鋼材の表面に噴射して、表面
層に残留圧縮応力を生ぜしめ、かつ加工硬化によってこれを強化する一種の表面
加工硬化法を言い、ショットピ−ニングを施したものは特に疲れ強さが増加する
ので、バネ、シャフト、ピンなどの表面加工に常用される。 またショットには、鋳鉄のチルショット、鋼粒ショット、カットワイヤ−ショ
ット、マルテンショットなどの種類があり、ショットピ−ニングの程度を定量的
に表現するには、アルメンゲ−ジというものを用い、その盛上がり高さ(ア−ク
ハイト)によって行う。 [発明が解決しようとする課題] 以上の従来の機械構造用の肌焼鋼においては、特開昭62-196322号公報以外は
、回転曲げによる疲労強度が1000MPa を越えるものについては開示されていない
。 また、上記特開昭62-196322号公報には、高Mn鋼をショットピ−ニングする
ことにより、疲労強度が1000MPa 以上の高疲労強度が得られているものの、この
ような高Mn鋼は、鋼の製造条件や歯車の浸炭条件や熱処理条件が従来鋼と変わ り、工業的には使用上の新たな問題を招く等の欠点があった。 本発明は、上記の問題点を解消した、強力ショットピ−ニング処理型の高疲労
強度歯車用肌焼鋼を提供することを目的とするものである。 [課題を解決するための手段] 本発明の第1は、 アークハイト値が0.30C以上の強力ショットピーニング処理効果に優れた、重
量%で、C:0.1 〜0.3 %,Si:0.05〜0.5 %,Mn:0.4 〜1.5 %,Cr:
0.2 〜1.5 %,Sol.A1:0.015 〜0.05%,Total N:0.0050〜0.0200%,Total
O:0.0010%以下及び混入するTi、Nb、Zrのいずれも0.005 %以下とし、
残部Fe及び不可避不純物からなり、鋼中の直径20μm以上の酸化物系介在物と
窒化物系介在物を鋼1g当たり14個以下とすることを特徴とする強力ショット
ピーニング処理型の高疲労強度歯車用肌焼鋼である。 また本発明の第2は、 アークハイト値が0.30C以上の強力ショットピーニング処理効果に優れた、重
量%で、C:0.1 〜0.3 %,Si:0.05〜0.5 %,Mn:0.4 〜1.5 %,Cr:
0.2 〜1.5 %,Sol.Al:0.015 〜0.05%,Total N:0.0050〜0.0200%,Total
O:0.0010%以下及び混入するTi、Nb、Zrのいずれも0.005 %以下とし、
さらにCu:0.1 〜0.5 %,Ni:0.2 〜2.5 %,Mo:0.1 〜0.5 %のうちの
1種または2種以上を含有し、残部Fe及び不可避不純物からなり、鋼中の直径
20μm以上の酸化物系介在物と窒化物系介在物を鋼1g当たり14個以下とする
ことを特徴とする強力ショットピーニング処理型の高疲労強度歯車用肌焼鋼であ
る。 [作用] このような強力ショットピ−ニング処理型の高疲労強度歯車用肌焼鋼の成分値
並びに酸化物系及び窒化物系介在物の個数を限定した理由について以下に述べる
。 (1)Cについて、 Cは浸炭焼入れにより芯部の硬さを確保するために必要な元素であり、歯車や
シャフト等に要求される疲労強度を確保するためのHRC25以上を得るためには
少なくとも0.10%以上添加する必要がある。 しかし、多量の添加は浸炭後の衝撃特性や切削性を損なうので上限を0.3 %に
設定しC含有量の範囲を0.10〜0.3 %とした。 (2)Siについて Siは脱酸効果を確保するために必要な元素であり、0.05%を下回るとこの効
果が確保出来なくなるので0.05%を下限とする。また、0.5 %を越えて添加する
と、浸炭時に浸炭異状層の発生を助長するので0.5 %を上限とし、Si含有量の
範囲を0.05〜0.5 %とした。 (3)Mnについて Mnは脱酸効果、脱硫効果、焼入性の向上のために添加する元素である。しか
し0.4 %を下回ると、これらの効果が確保出来なくなるので0.4 %を下限とする
。また、1.5 %を越えて添加すると、浸炭後の衝撃特性や鋼の加工性を損なうの
で、1.5 %を上限とし、Mn含有量の範囲を0.40〜1.5 %とした。 (4)Crについて Crは焼入性及び焼入、焼戻し後の強度を向上させるために必要であり、浸炭
部品に対しては、浸炭層の硬さ及び有効浸炭深さの向上のためには0.2 %以上添
加する必要があるので、0.2 %を下限とした。しかし、添加量が1.5 %を越えて
添加すると、過剰浸炭を招き、焼入性、切削性を劣化させるので、1.5 %を上限
とし、Cr含有量の範囲を0.2 〜1.5 %とした。 (5)Sol.Alについて Alは鋼の溶解時に脱酸材として、また浸炭時には、Nと結合してAlNを生
成し、結晶粒の成長を抑制する。しかし、0.015 %以下では、これらの効果が確
保出来なくなるので0.015 %を下限とした。また0.05%以上を添加すると、酸化
物系の介在物を多量に生成し、疲労強度を劣化させるため0.05%を上限とし、So
l.Al含有量の範囲を0.015 〜0.05%とした。 (6)Total Nについて NはAlと結合してAlNを生成し、浸炭時に結晶粒粗大化を防止する効果が
ある。 しかし、0.0060%以下ではこの効果が少なくので、0.0060%を下限とした。 また0.0200%以上を添加すると、靭性を損なうので、0.0200%を上限とし、To tal N含有量の範囲を0.0060〜0.0200%とした。 (7)Total Oについて Oは酸化物系介在物を生成し、歯車などの歯元疲労強度、転動疲労特性、耐ピ
ッチング特性に悪影響を与えるのでTotal O含有量を0.0010%以下と定めた。 (8)Ti、Nb、Zrについて Tiは鋼中のNと結合し、TiNを生成する。このTiNは酸化物系介在物と
同様に疲労強度に悪影響を与えるので混入するTiの上限を0.005 %以下とした
。 さらにTiの他、Nb、Zrなどの元素も高硬度の介在物を生成する可能性が
あるので、同様にこれらの元素の上限も0.005 %以下とした。 (9)Cuについて Cuは任意添加元素の1種であり、浸炭異状層の生成防止に効果かある。しか
し、0.1 %を下回るとこの効果か少なくなるので、0.1 %を下限とした。また、
0.5 %を越えて添加すると、浸炭性が低下するので、0.5 %を上限とし、Cu含
有量の範囲を0.1 〜0.5 %とした。 (10)Niについて Niも任意添加元素の1種であり、鋼の焼入性、浸炭性を向上させる元素であ
り、また浸炭異状層の発生を抑制する作用がある。 これらの作用を発揮させるため、少なくとも0.2 %の添加が必要であるので、
0.2 %を下限とした。また、Niは高価な元素であるため2.5 %を越えて添加す
ることは得策ではないので、2.5 %を上限とし、Ni含有量の範囲を0.2 〜2.5
%とした。 (11)Moについて Moも任意添加元素の1種であり、Niと同様、鋼の焼入性、浸炭性を向上さ
せる元素であり、また浸炭異状層の発生を抑制する作用がある。 これらの作用を発揮させるため、少なくとも0.1 %の添加が必要であるため、
0.1 %を下限とした。また、Moも高価な元素であるので0.5 %を越えて添加す
ることは得策ではないので、0.5 %を上限とし、Mo含有量の範囲を0.1 〜0.5
%とした。 これらCu,Ni,Moのうち1種または2種以上を夫々含有することが望ま しい。 (12)鋼中の介在物について また鋼中の直径20μm以上の酸化物系介在物及び窒化物系介在物の個数を鋼1g
当り14個以下に限定したのは、後述する実施例にも明らかなように、これら介在
物が鋼1g当り14個を越えた個数を含むと歯車などの曲げ疲労強度が低下するため
であり、さらに転動疲労特性や耐ピッチング特性への効果が期待できるからであ
る。 直径20μm以上の酸化物系介在物と窒化物系介在物が存在しない鋼或いは、よ
り小さな介在物についても存在しない鋼が望ましいが、工業的規模では上記のよ
うな介在物の存在しない鋼を得ることは困難なため、サイズを20μm以下、酸化
物系介在物及び窒化物系介在物の個数を鋼1g当り14個以下に限定した。 以下、本発明の実施例を説明する。 [実施例] 表1は、本実施例に用いた本発明鋼と比較鋼の化学成分値(重量%)であり、
表2は、本実施例において用いたショットピ−ニング条件である。 ます、上記の表1に示す化学成分を有するA〜Kまでの11種類の鋼を溶製し
、造塊した後、曲げ疲労試験片(直径φ6mm)を作成した。 また表1に示す低酸素鋼(O:0.0009%,鋼A)と通常酸素鋼(O:0.0021%,
鋼B)を用いて、表2に示すショットピ−ニング条件により低酸素化の効果を調
べた結果、第1図並びに第2図に示すようなことが判明した。 第1図及び第2図は本発明鋼(低酸素鋼:鋼A)及び通常酸素鋼(鋼B)の場
合の夫々φ6試験片回転曲げ疲労試験結果を示し、応力振幅・MPa と繰り返し数
との関係グラフである。 さらに、表3は本実施例における鋼A〜K鋼の酸溶解法により鋼中の20μm以
上の酸化物系及び窒化物系介在物の鋼1g当りの抽出残渣の換算個数並びにSAE
J 442a基準による各ショットピ−ニング条件でのアークハイト値毎の曲げ疲労
試験による疲労限MPa(kgf/mm2)の疲労試験結果である。 第1図、第2図並びに第3表に示すように、ショットピ−ニングを施さない場
合には、AB両鋼とも637MPaの疲労強度が得られ、Total O含有量0.0021%(鋼
B)から0.0009 %(鋼A)へと低酸素化してもその効果は、全く認められなか
った。 さらに、ショットピ−ニング条件のうち、ア−クハイト値が0.45Aの従来条件
のショットピ−ニングを施した場合には、AB両鋼とも疲労強度の疲労限が1005
MPa となり、ショットピ−ニングの効果は認められるものの、やはり低酸素化し
てもその効果は認められないことを示している。 それに対し、ショットピ−ニング条件のうち、ア−クハイト値が0.30C(1.1A
相当)の強力なショットピ−ニングを施した場合、通常酸素鋼(鋼B)では疲労
強度の疲労限が1005MPa であるのに対し、低酸素鋼(鋼A)の疲労強度の疲労限
は1127MPa と大きく向上していることが判る。 この理由としては、ショットピ−ニング無し材では、疲労破壊の起点が表面異
状層から発生しているのに対し、強力ショットピ−ニングにより表面を強化した
材料では、鋼中の粗大な酸化物系介在物等を起点として内部から破壊が発生して
いることによることを確認した。 破面上の破壊起点としての介在物の平均直径は通常酸素鋼では25μm、低酸素
鋼では17μmであった。 即ち、曲げ疲労試験による疲労強度を1000MPa を大きく越えたレベルにまで向
上させるためには、単に鋼中の酸素量を低減すればよいというものではなく、ア
ークハイトが0.3C以上の強力ショットピ−ニングにより表面を強化し、同時に鋼
中の粗大な硬い介在物低減することが必須条件であることを確認した。 さらに、詳細な検討の結果、鋼の疲労強度は次の実験式で示されることがわか
った。 σw=1.56(Hv+120)/(√area)1/6 +σr/2 σw:疲労強度(MPa) Hv:ビッカース硬度 area:欠陥の最大主応力方向に投影した面積(μm2) σr:残留応力(MPa) この式を用いて、1005MPa 以上の疲労限を得るための、表面からの深さと非金
属介在物の直径を求めると第3図のように、直径20μm以上の介在物が破壊の起
点になりうるといえる。 また、この値は疲労破壊面に認められた介在物のサイズと良い一致があること がわかり、20μm以上の粗大な介在物を減少させることが疲労強度の向上に重要
なことが分かる。 以上より、表1の鋼A及びCからFまでは、いずれも化学成分及び鋼中の介在
物個数が先に限定した範囲を満足せしめる本発明鋼である。 これらの鋼に、ショットピ−ニング条件のうち、ア−クハイト値で0.30C(1.1
A相当)の強力なショットピ−ニングを施すことにより1000MPa を大幅に上回る
疲労強度が得られている。 それに対し、鋼GからJまでの鋼は酸素量あるいはTi量が先に限定した範囲
をはすれており、介在物の個数も多くなっている。また、鋼Kは成分的には限定
範囲内にあるものの大型介在物が存在するのを回避する技術を適用しておらず介
在物個数が多い。 これらの鋼では、第4図に示すように、強力なショットピ−ニングを施しても
、疲労強度は1000MPa 程度のレベルにとどまる。なお、介在物は鋼中のO含有量
を低減しても、その粒径が必ずしも小さくなるものではなく、大型のもの、小型
のものが混在する。特に鋼中に大型の介在物が存在するのを回避する場合には、
加減圧精錬法等を適用することによって達成できる。 [発明の効果] 以上のように、本発明の強力ショットピ−ニング処理型の高疲労強度歯車用肌
焼鋼によれば、鋼の化学成分と同時に、鋼中の介在物のサイズと個数を限定する
ことにより、ショットピ−ニングの効果を著しく増加させることが可能となり、
安価に、より高疲労強度を満足する歯車用の肌焼鋼が得られ、その工業的な価値
は大きいものである。
車用肌焼鋼に関するものである。 [従来の技術] 従来より、歯車等の機械構造用の肌焼鋼においては、被削性や冷間鍛造性、転
動疲労特性、耐ピッチング性、回転曲げ疲労特性等を向上させるためには、酸素
量の低減が効果あることが知られている。 例えば、特開昭58-45354号、特開昭60-208413号、特公昭61-10028号、特開昭6
1-44159号、特公昭63-32858号、特公昭63-32859号等の公報には、夫々肌焼鋼や 浸炭用鋼に係る発明が開示されている。これら前記の発明鋼には、被削性や冷間
加工時の割れの観点から、鋼中の酸素含有量を0.0015%〜0.0050%以下に制限し
た組成となっている。 また、特開昭62-54064号、特開昭62-274025号、特開昭63-60257号、特開昭63-
118052号等の公報には、転動疲労特性、耐ピッチング性の上から酸素含有量を0.
0010%〜0.0015%以下に制限している。 また、特開昭61-163246号、特開昭62-63653号、特開昭63-137145号等の公報に
は、酸化物系介在物の生成を抑制するためと、耐ピッチング性及び回転曲げ疲労
の観点から、酸素含有量を0.0015%〜0.0030%以下に低減せしめている。 耐ピッチング性や疲労強度を向上させるための方法として、鋼の成分と製造プ
ロセスを組合せたものに、特開昭62-196322号の機械構造用部品の製造方法があ
る。 上記公報には、Mn2.0 〜5.0 %と高Mnの浸炭性焼入れ鋼に残留オ−ステナ
イトを生成させ、その上でショットピ−ニングを施し、疲労強度を向上させるこ
とが開示されている。 尚ショットピ−ニングとは、ショット(鋼粒)を鋼材の表面に噴射して、表面
層に残留圧縮応力を生ぜしめ、かつ加工硬化によってこれを強化する一種の表面
加工硬化法を言い、ショットピ−ニングを施したものは特に疲れ強さが増加する
ので、バネ、シャフト、ピンなどの表面加工に常用される。 またショットには、鋳鉄のチルショット、鋼粒ショット、カットワイヤ−ショ
ット、マルテンショットなどの種類があり、ショットピ−ニングの程度を定量的
に表現するには、アルメンゲ−ジというものを用い、その盛上がり高さ(ア−ク
ハイト)によって行う。 [発明が解決しようとする課題] 以上の従来の機械構造用の肌焼鋼においては、特開昭62-196322号公報以外は
、回転曲げによる疲労強度が1000MPa を越えるものについては開示されていない
。 また、上記特開昭62-196322号公報には、高Mn鋼をショットピ−ニングする
ことにより、疲労強度が1000MPa 以上の高疲労強度が得られているものの、この
ような高Mn鋼は、鋼の製造条件や歯車の浸炭条件や熱処理条件が従来鋼と変わ り、工業的には使用上の新たな問題を招く等の欠点があった。 本発明は、上記の問題点を解消した、強力ショットピ−ニング処理型の高疲労
強度歯車用肌焼鋼を提供することを目的とするものである。 [課題を解決するための手段] 本発明の第1は、 アークハイト値が0.30C以上の強力ショットピーニング処理効果に優れた、重
量%で、C:0.1 〜0.3 %,Si:0.05〜0.5 %,Mn:0.4 〜1.5 %,Cr:
0.2 〜1.5 %,Sol.A1:0.015 〜0.05%,Total N:0.0050〜0.0200%,Total
O:0.0010%以下及び混入するTi、Nb、Zrのいずれも0.005 %以下とし、
残部Fe及び不可避不純物からなり、鋼中の直径20μm以上の酸化物系介在物と
窒化物系介在物を鋼1g当たり14個以下とすることを特徴とする強力ショット
ピーニング処理型の高疲労強度歯車用肌焼鋼である。 また本発明の第2は、 アークハイト値が0.30C以上の強力ショットピーニング処理効果に優れた、重
量%で、C:0.1 〜0.3 %,Si:0.05〜0.5 %,Mn:0.4 〜1.5 %,Cr:
0.2 〜1.5 %,Sol.Al:0.015 〜0.05%,Total N:0.0050〜0.0200%,Total
O:0.0010%以下及び混入するTi、Nb、Zrのいずれも0.005 %以下とし、
さらにCu:0.1 〜0.5 %,Ni:0.2 〜2.5 %,Mo:0.1 〜0.5 %のうちの
1種または2種以上を含有し、残部Fe及び不可避不純物からなり、鋼中の直径
20μm以上の酸化物系介在物と窒化物系介在物を鋼1g当たり14個以下とする
ことを特徴とする強力ショットピーニング処理型の高疲労強度歯車用肌焼鋼であ
る。 [作用] このような強力ショットピ−ニング処理型の高疲労強度歯車用肌焼鋼の成分値
並びに酸化物系及び窒化物系介在物の個数を限定した理由について以下に述べる
。 (1)Cについて、 Cは浸炭焼入れにより芯部の硬さを確保するために必要な元素であり、歯車や
シャフト等に要求される疲労強度を確保するためのHRC25以上を得るためには
少なくとも0.10%以上添加する必要がある。 しかし、多量の添加は浸炭後の衝撃特性や切削性を損なうので上限を0.3 %に
設定しC含有量の範囲を0.10〜0.3 %とした。 (2)Siについて Siは脱酸効果を確保するために必要な元素であり、0.05%を下回るとこの効
果が確保出来なくなるので0.05%を下限とする。また、0.5 %を越えて添加する
と、浸炭時に浸炭異状層の発生を助長するので0.5 %を上限とし、Si含有量の
範囲を0.05〜0.5 %とした。 (3)Mnについて Mnは脱酸効果、脱硫効果、焼入性の向上のために添加する元素である。しか
し0.4 %を下回ると、これらの効果が確保出来なくなるので0.4 %を下限とする
。また、1.5 %を越えて添加すると、浸炭後の衝撃特性や鋼の加工性を損なうの
で、1.5 %を上限とし、Mn含有量の範囲を0.40〜1.5 %とした。 (4)Crについて Crは焼入性及び焼入、焼戻し後の強度を向上させるために必要であり、浸炭
部品に対しては、浸炭層の硬さ及び有効浸炭深さの向上のためには0.2 %以上添
加する必要があるので、0.2 %を下限とした。しかし、添加量が1.5 %を越えて
添加すると、過剰浸炭を招き、焼入性、切削性を劣化させるので、1.5 %を上限
とし、Cr含有量の範囲を0.2 〜1.5 %とした。 (5)Sol.Alについて Alは鋼の溶解時に脱酸材として、また浸炭時には、Nと結合してAlNを生
成し、結晶粒の成長を抑制する。しかし、0.015 %以下では、これらの効果が確
保出来なくなるので0.015 %を下限とした。また0.05%以上を添加すると、酸化
物系の介在物を多量に生成し、疲労強度を劣化させるため0.05%を上限とし、So
l.Al含有量の範囲を0.015 〜0.05%とした。 (6)Total Nについて NはAlと結合してAlNを生成し、浸炭時に結晶粒粗大化を防止する効果が
ある。 しかし、0.0060%以下ではこの効果が少なくので、0.0060%を下限とした。 また0.0200%以上を添加すると、靭性を損なうので、0.0200%を上限とし、To tal N含有量の範囲を0.0060〜0.0200%とした。 (7)Total Oについて Oは酸化物系介在物を生成し、歯車などの歯元疲労強度、転動疲労特性、耐ピ
ッチング特性に悪影響を与えるのでTotal O含有量を0.0010%以下と定めた。 (8)Ti、Nb、Zrについて Tiは鋼中のNと結合し、TiNを生成する。このTiNは酸化物系介在物と
同様に疲労強度に悪影響を与えるので混入するTiの上限を0.005 %以下とした
。 さらにTiの他、Nb、Zrなどの元素も高硬度の介在物を生成する可能性が
あるので、同様にこれらの元素の上限も0.005 %以下とした。 (9)Cuについて Cuは任意添加元素の1種であり、浸炭異状層の生成防止に効果かある。しか
し、0.1 %を下回るとこの効果か少なくなるので、0.1 %を下限とした。また、
0.5 %を越えて添加すると、浸炭性が低下するので、0.5 %を上限とし、Cu含
有量の範囲を0.1 〜0.5 %とした。 (10)Niについて Niも任意添加元素の1種であり、鋼の焼入性、浸炭性を向上させる元素であ
り、また浸炭異状層の発生を抑制する作用がある。 これらの作用を発揮させるため、少なくとも0.2 %の添加が必要であるので、
0.2 %を下限とした。また、Niは高価な元素であるため2.5 %を越えて添加す
ることは得策ではないので、2.5 %を上限とし、Ni含有量の範囲を0.2 〜2.5
%とした。 (11)Moについて Moも任意添加元素の1種であり、Niと同様、鋼の焼入性、浸炭性を向上さ
せる元素であり、また浸炭異状層の発生を抑制する作用がある。 これらの作用を発揮させるため、少なくとも0.1 %の添加が必要であるため、
0.1 %を下限とした。また、Moも高価な元素であるので0.5 %を越えて添加す
ることは得策ではないので、0.5 %を上限とし、Mo含有量の範囲を0.1 〜0.5
%とした。 これらCu,Ni,Moのうち1種または2種以上を夫々含有することが望ま しい。 (12)鋼中の介在物について また鋼中の直径20μm以上の酸化物系介在物及び窒化物系介在物の個数を鋼1g
当り14個以下に限定したのは、後述する実施例にも明らかなように、これら介在
物が鋼1g当り14個を越えた個数を含むと歯車などの曲げ疲労強度が低下するため
であり、さらに転動疲労特性や耐ピッチング特性への効果が期待できるからであ
る。 直径20μm以上の酸化物系介在物と窒化物系介在物が存在しない鋼或いは、よ
り小さな介在物についても存在しない鋼が望ましいが、工業的規模では上記のよ
うな介在物の存在しない鋼を得ることは困難なため、サイズを20μm以下、酸化
物系介在物及び窒化物系介在物の個数を鋼1g当り14個以下に限定した。 以下、本発明の実施例を説明する。 [実施例] 表1は、本実施例に用いた本発明鋼と比較鋼の化学成分値(重量%)であり、
表2は、本実施例において用いたショットピ−ニング条件である。 ます、上記の表1に示す化学成分を有するA〜Kまでの11種類の鋼を溶製し
、造塊した後、曲げ疲労試験片(直径φ6mm)を作成した。 また表1に示す低酸素鋼(O:0.0009%,鋼A)と通常酸素鋼(O:0.0021%,
鋼B)を用いて、表2に示すショットピ−ニング条件により低酸素化の効果を調
べた結果、第1図並びに第2図に示すようなことが判明した。 第1図及び第2図は本発明鋼(低酸素鋼:鋼A)及び通常酸素鋼(鋼B)の場
合の夫々φ6試験片回転曲げ疲労試験結果を示し、応力振幅・MPa と繰り返し数
との関係グラフである。 さらに、表3は本実施例における鋼A〜K鋼の酸溶解法により鋼中の20μm以
上の酸化物系及び窒化物系介在物の鋼1g当りの抽出残渣の換算個数並びにSAE
J 442a基準による各ショットピ−ニング条件でのアークハイト値毎の曲げ疲労
試験による疲労限MPa(kgf/mm2)の疲労試験結果である。 第1図、第2図並びに第3表に示すように、ショットピ−ニングを施さない場
合には、AB両鋼とも637MPaの疲労強度が得られ、Total O含有量0.0021%(鋼
B)から0.0009 %(鋼A)へと低酸素化してもその効果は、全く認められなか
った。 さらに、ショットピ−ニング条件のうち、ア−クハイト値が0.45Aの従来条件
のショットピ−ニングを施した場合には、AB両鋼とも疲労強度の疲労限が1005
MPa となり、ショットピ−ニングの効果は認められるものの、やはり低酸素化し
てもその効果は認められないことを示している。 それに対し、ショットピ−ニング条件のうち、ア−クハイト値が0.30C(1.1A
相当)の強力なショットピ−ニングを施した場合、通常酸素鋼(鋼B)では疲労
強度の疲労限が1005MPa であるのに対し、低酸素鋼(鋼A)の疲労強度の疲労限
は1127MPa と大きく向上していることが判る。 この理由としては、ショットピ−ニング無し材では、疲労破壊の起点が表面異
状層から発生しているのに対し、強力ショットピ−ニングにより表面を強化した
材料では、鋼中の粗大な酸化物系介在物等を起点として内部から破壊が発生して
いることによることを確認した。 破面上の破壊起点としての介在物の平均直径は通常酸素鋼では25μm、低酸素
鋼では17μmであった。 即ち、曲げ疲労試験による疲労強度を1000MPa を大きく越えたレベルにまで向
上させるためには、単に鋼中の酸素量を低減すればよいというものではなく、ア
ークハイトが0.3C以上の強力ショットピ−ニングにより表面を強化し、同時に鋼
中の粗大な硬い介在物低減することが必須条件であることを確認した。 さらに、詳細な検討の結果、鋼の疲労強度は次の実験式で示されることがわか
った。 σw=1.56(Hv+120)/(√area)1/6 +σr/2 σw:疲労強度(MPa) Hv:ビッカース硬度 area:欠陥の最大主応力方向に投影した面積(μm2) σr:残留応力(MPa) この式を用いて、1005MPa 以上の疲労限を得るための、表面からの深さと非金
属介在物の直径を求めると第3図のように、直径20μm以上の介在物が破壊の起
点になりうるといえる。 また、この値は疲労破壊面に認められた介在物のサイズと良い一致があること がわかり、20μm以上の粗大な介在物を減少させることが疲労強度の向上に重要
なことが分かる。 以上より、表1の鋼A及びCからFまでは、いずれも化学成分及び鋼中の介在
物個数が先に限定した範囲を満足せしめる本発明鋼である。 これらの鋼に、ショットピ−ニング条件のうち、ア−クハイト値で0.30C(1.1
A相当)の強力なショットピ−ニングを施すことにより1000MPa を大幅に上回る
疲労強度が得られている。 それに対し、鋼GからJまでの鋼は酸素量あるいはTi量が先に限定した範囲
をはすれており、介在物の個数も多くなっている。また、鋼Kは成分的には限定
範囲内にあるものの大型介在物が存在するのを回避する技術を適用しておらず介
在物個数が多い。 これらの鋼では、第4図に示すように、強力なショットピ−ニングを施しても
、疲労強度は1000MPa 程度のレベルにとどまる。なお、介在物は鋼中のO含有量
を低減しても、その粒径が必ずしも小さくなるものではなく、大型のもの、小型
のものが混在する。特に鋼中に大型の介在物が存在するのを回避する場合には、
加減圧精錬法等を適用することによって達成できる。 [発明の効果] 以上のように、本発明の強力ショットピ−ニング処理型の高疲労強度歯車用肌
焼鋼によれば、鋼の化学成分と同時に、鋼中の介在物のサイズと個数を限定する
ことにより、ショットピ−ニングの効果を著しく増加させることが可能となり、
安価に、より高疲労強度を満足する歯車用の肌焼鋼が得られ、その工業的な価値
は大きいものである。
【図面の簡単な説明】
第1図及び第2図は本発明鋼(低酸素鋼)鋼A及び通常酸素鋼(鋼B)の場合
の夫々φ6試験片回転曲げ疲労試験結果を示し、応力振幅(MPa)と繰り返し数
との関係グラフ、第3図は表面からの深さと内部欠陥限界寸法(介在物寸法)の
関係を示すグラフ、第4図は介在物個数と疲労強度の関係を示すグラフである。
の夫々φ6試験片回転曲げ疲労試験結果を示し、応力振幅(MPa)と繰り返し数
との関係グラフ、第3図は表面からの深さと内部欠陥限界寸法(介在物寸法)の
関係を示すグラフ、第4図は介在物個数と疲労強度の関係を示すグラフである。
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 (1)アークハイト値が0.30C以上の強力ショットピーニング処理効果に優れた
、重量%で、C:0.1 〜0.3 %,Si:0.05〜0.5 %,Mn:0.4 〜1.5 %,C
r:0.2 〜1.5 %,Sol.Al:0.015 〜0.05%,Total N:0.0050〜0.0200%,To
tal O:0.0010%以下及び混入するTi、Nb、Zrのいずれも0.005 %以下と
し、残部Fe及び不可避不純物からなり、鋼中の直径20μm以上の酸化物系介在
物と窒化物系介在物を鋼1g当たり14個以下とすることを特徴とする強力ショ
ットピーニング処理型の高疲労強度歯車用肌焼鋼。 (2)アークハイト値が0.30C以上の強力ショットピーニング処理効果に優れた
、重量%で、C:0.1 〜0.3 %,Si:0.05〜0.5 %,Mn:0.4 〜1.5 %,C
r:0.2 〜1.5 %,Sol.Al:0.015 〜0.05%,Total N:0.0050〜0.0200%,To
tal O:0.0010%以下及び混入するTi、Nb、Zrのいずれも0.005 %以下と
し、さらにCu:0.1 〜0.5 %,Ni:0.2 〜2.5 %,Mo:0.1 〜0.5 %のう
ちの1種または2種以上を含有し、残部Fe及び不可避不純物からなり、鋼中の
直径20μm以上の酸化物系介在物と窒化物系介在物を鋼1g当たり14個以下と
することを特徴とする強力ショットピーニング処理型の高疲労強度歯車用肌焼鋼
。
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