JP2614795B2 - ディスクロール - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、ステンレス鋼板、板ガ
ラス等の連続熱処理工程等で使用されるディスクロール
の改良に関する。

【０００２】

【従来の技術】この種のディスクロールは、厚さ６mm程
度の石綿板をディスク状に打ち抜いたのち、回転軸とな
る鋼などの金属軸に所定の厚さになるまで重ねて嵌挿
し、これを軸方向に圧縮して緻密組織化してから、その
表面を旋盤などで研削してロール状に仕上げたものであ
って、これが一般的にはディスクロールと呼ばれる型式
のロールである。上記用途におけるディスクロールは、
常時、数百度から１０００℃以上に加熱されるという過
酷な温度条件下に置かれるため、高度の耐熱性が要求さ
れる。

【０００３】この点で、一般に使われている石綿ロール
は決して満足できるものではない。その原因は、ディス
クを構成する石綿の熱的特性が悪いことにある。すなわ
ち、石綿は４００〜８００℃またはそれ以上に加熱する
と結晶水を放出して収縮を起こすことから、中心部の回
転軸が熱膨張することもあって、石綿ロールには軸方向
の軸状亀裂が発生しやすい。そして、これらの亀裂がい
ちど発生すると、高温の炉内ガスが亀裂内部に侵入する
ため、亀裂は加速度的に成長し、ついには石綿板が剥離
し、脱落するに至る。また石綿板と軸との間に隙間が生
じて一部の石綿板の位置が径方向にずれる結果、段違い
と呼ばれる凹凸がロール表面に発生する。このような亀
裂、脱落および段違いは、製品たとえば板ガラスの品質
低下を招き、またガラス板を不均一に押圧して、しばし
ばガラス破損の原因となり、金属薄板の熱処理において
は、亀裂や段違いを生じたロール表面が被処理材の軟化
した表面にプリントされて、製品の表面性状を著しく悪
化させる。また、石綿の粉塵は人体に有害であるから、
石綿ロールはその製造工程および使用に特別の注意を要
するという欠点がある。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】上述した石綿ロールの
問題点を解消するため、石綿繊維の代替品の開発が盛ん
に進められている。その代表的なものとして、石綿の代
りにセラミック繊維を用いたディスクロールが提案され
ている。しかしながら、セラミック繊維は石綿よりも剛
直で脆いから、ディスクを強く圧縮してロール密度を大
きくすることができず、したがってこの繊維を使用した
ロールは摩耗し易いという欠点を持つ。しかも、セラミ
ック繊維は一般にショットと呼ばれる粒状物を含んでお
り、これがロール表面に現われて被処理材表面を傷つけ
るという問題がある。

【０００５】

【発明の目的】本発明は、上述した現状を背景になされ
たものであって、耐熱性および耐摩耗性に優れ、しかも
被処理材表面を傷つけるおそれのない高性能のディスク
ロールを提供することを目的とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明者等は、石綿材を
使用しないディスクロールの研究開発を進めた結果、石
綿繊維の代替品としてウオラストナイトとセピオライト
に着目し、両者をロールの主成分として使用することに
より、上述した目的のディスクロールが得られることを
知見し、この知見に基づいて本発明を完成したものであ
る。すなわち、本発明は、ウオラストナイトとセピオラ
イトを主成分とする抄造法による薄板状成形物をディス
ク素材とすることを要旨としている。

【０００７】上記ウオラストナイトは天然の無機質繊維
で、結晶水や一酸化鉄（ＦｅＯ）を含まないＣａＳｉＯ
₃の安定した結晶から成るため、１０００℃以上になっ
ても石綿繊維のように脱水、酸化、結晶化などの構造変
化を起こすことがなく、高温雰囲気においても収縮を起
こしたり繊維強度を失ったりすることはない優れた特性
をもっている。しかしながら、この繊維は繊維というも
のの、非常に短く（２〜３mm以下）、また柔軟性がない
から、単なる集合物は粉末に近い性状を持つ。

【０００８】本発明で用いられるウオラストナイト繊維
としては、なるべく繊維長の大なもの（具体的には沈降
法による粒度分布測定で５０％粒度中央値が１９μ以上
であるもの）が好ましく、例えば米国インターペース社
のナイヤードＧのものが適当である。

【０００９】一方、セピオライトは理想化学構造式Ｍｇ
₈Ｓｉ₁₂Ｏ₃₀（ＯＨ）₄・（ＯＨ₂）₄・８Ｈ₂Ｏで示され
る含水マグネシウム珪酸塩に分類される粘土鉱物で、繊
維状を有しており、石綿と類似した耐熱性、耐久性、柔
軟性がある。このセピオライトは抄造時のシートや抄造
成形板の取り扱い性や加工性、更には最終的に得られる
繊維板の機械的性質を向上させるために最小限度使用さ
れる。この繊維もなるべく繊維長の大なるものが好まし
い。

【００１０】上記ウオラストナイトおよびセピオライト
を配合する場合、ウオラストナイトの添加量は１５〜８
０wt％、好ましくは３０〜７５wt％である。ウオラスト
ナイトの添加量が１５wt％未満であると、上述の耐熱性
を有する繊維板ができない。また、８０wt％を越えると
セピオライトの添加量が少なくなり、抄造成形板の機械
的特性がなくなるので、好ましくない。

【００１１】セピオライトの添加量は１５〜５０wt％、
好ましくは３０〜４５wt％である。セピオライトの添加
量が１５wt％未満であると、上述の機械的特性がなくな
り、５０wt％を越えると耐熱性がなくなるので、好まし
くない。

【００１２】上記のように本発明ではウオラストナイト
およびセピオライトが主成分とされるが、これに充填材
としてシリカ、アルミナ、カオリン、ケイソウ土、ベン
トナイト、マイカ等が、また補強繊維としてパルプ、セ
ラミックファイバー、ガラスアルミナ繊維、岩綿、ナイ
ロン、ポリプロピレン繊維等が、有機結合材として澱
粉、ゴムラテックス、酢酸ビニル、アクリル樹脂ラテッ
クス等が添加される。それらの添加量の好ましい範囲を
ウオラストナイトおよびセピオライトと共に下記に示
す。

【００１３】ウオラストナイト……１５〜８０wt％ セピオライト ……１５〜５０wt％ 充填材 …… ３〜４０wt％ 補強繊維 …… １〜２０wt％ 有機結合材 …… １〜１０wt％

【００１４】

【作用】上記構成のディスクロールにおいては、耐熱性
はウオラストナイトで発揮され、抄造時のシート強度や
抄造成形板の加工性、機械的性質はセピオライトで発揮
される。

【００１５】

【実施例】表１に示した原料配合により、通常の丸網式
抄造機で厚さ６mmのシートを製造する。得られたシート
の特性（残存収縮率）を表２に示す。次に、このシート
を外径１３０mm、内径６０mmのリング状に打ち抜いてデ
ィスクを製作し、得られたディスクを用いて、締付け圧
２００kgf/cm²で長さ１５０mmのディスクロールを製作
し、これを種々の温度で設定した電気炉で１００時間加
熱する。この熱処理後のロールについて、亀裂の発生状
況および耐摩耗を調べた結果は表３に示す通りであっ
た。

【００１６】なお、上記実施例で行った試験の方法は次
の通りである。 （ａ）亀裂 肉眼による外観検査を行い、次のような判定基準で評価
した。 ◎……全く異常がない。 ○……亀裂は僅かで実用上問題がない。 ×……大きな亀裂が発生し、使用できない。

【００１７】（ｂ）耐摩耗性 ディスクロールを１０rpmで回転させながら、ロール表
面にステンレス鋼板で線圧８kgf/cm²の荷重を１時間加
えたあと、ロールの摩耗度を肉眼で観察し、次のような
判定基準で評価した。 ◎……非常に良好。 ○……良好で実用上問題がない。 ×……悪く、使用できない。 なお、「−」は大きな亀裂が発生いていたため、耐摩耗
性試験を実施しなかったことを意味する。

【００１８】

【表１】

【００１９】

【表２】

【００２０】

【表３】

【００２１】

【発明の効果】以上に述べたように、本発明によれば、
ウオラストナイトとセピオライトを主成分とし、抄造法
によって薄板状に成形したものをディスク素材としてい
るので、このディスク素材は充分な強度、耐衝撃性、耐
摩耗性等の機械的性能を有し、かつ繊維板でありがら１
０００〜１２００℃の高温でも長時間使用可能という高
度の耐熱性が得られる。またディスク素材は石綿を使用
していないので、石綿公害の問題もない。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平２−54716（ＪＰ，Ａ) 特開 平２−204351（ＪＰ，Ａ) 特開 平２−160502（ＪＰ，Ａ) 特開 平３−13319（ＪＰ，Ａ) 特開 平２−212369（ＪＰ，Ａ) 実公 平２−40291（ＪＰ，Ｙ２)

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ウオラストナイトとセピオライトを主成
   分とする抄造法による薄板状成形物がディスク素材とさ
   れていることを特徴とするディスクロール。