JP2552981B2 - ガラス用ディスクロール - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、板ガラス製造のレアー
炉の連続処理工程で被熱処理材の搬送ロールとして用い
られるガラス用ディスクロールの改良に関する。

【０００２】

【従来の技術】この種のディスクロールは、厚さ６ｍｍ
程度の石綿板をディスク状に打ち抜いたのち、回転軸に
なる鋼などの金属軸に所定の厚さになるまで重ねて嵌挿
し、これを軸方向に圧縮して緻密組織としてから、その
表面を旋盤などで研削してロール状に仕上げたものであ
って、これが一般的にはディスクロールと呼ばれる形式
のロールである。

【０００３】板ガラス製造のレアー炉に使用されるディ
スクロールは、通常５〜１０年の長期間使用され、温度
は最高６５０℃まで加熱されるため、耐熱性はもちろん
のこと耐摩耗性およびロールの表面平滑性が要求され
る。耐摩耗性が悪いとロールが摩耗してロールの直径が
変わり、ロールの回転でガラスを搬送しているため、搬
送速度が変わり、ロールとガラスが擦れてガラスの傷の
発生原因となる。また、ロール表面の平滑性が不十分で
あると、ロール表面の凸凹がそのままガラスに転写し、
ガラスの品質低下を招く。

【０００４】この点で、一般に使われている石綿ロール
は決して満足できるものではない。その原因は、ディス
クを構成する石綿の熱的特性が悪いことにある。すなわ
ち、石綿は４００℃以上に加熱すると結晶水を放出して
収縮を起こすことから、石綿ロールには軸方向の輪状亀
裂が発生しやすい。

【０００５】また、石綿板と軸との間に隙間を生じて一
部の石綿板の位置がずれる結果、段違いと呼ばれる凸凹
がロール表面に発生する。このような亀裂、段違いは、
板ガラスの品質低下を招き、またガラス板を不均一に押
圧して、しばしばガラス破損の原因となる。また石綿の
粉塵は人体に有害であるから、石綿ロールはその製造お
よび使用に特別の注意を要するという欠点があり、石綿
繊維の代替品の開発が望まれている。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】上述した問題点を解決
するため、石綿板を使用しないディスクロール、例えば
セラミック繊維を石綿の変わりに用いたディスクロール
が提案されている。しかしながら、セラミック繊維は石
綿よりも剛直で脆いから、ディスクを強く締め付けてロ
ールの密度を大きくすることができず、したがってこの
繊維を使用したロールは摩耗し易いという欠点を持つ。
しかもセラミック繊維は一般にショットと呼ばれる粒状
物を含んでおり、これがロール表面に現われる被処理材
を傷つけるという問題もある。

【０００７】また、マイカとセピオライトを主成分と
し、これに無機質繊維を添加して成るディスクロールが
特開昭６４−４６５７１号公報に開示されているが、ガ
ラス用ディスクロールとして多くの欠点を有している。
このディスクロールはセピオライトを多量に使用してい
るため、耐熱性は良好であるが、マイカ特有の滑り性、
潤滑性がセピオライトにはないため、耐摩耗性に劣る。
なお、上記公報に開示された発明は一般のディスクロー
ルを対象としてなされたもので、ステンレス鋼板の連続
熱処理炉で使用されるディスクロールは温度１０００℃
以上と高く、使用期間も約半年間と短いため、耐摩耗性
より耐熱性が重視されるので、ステンレス用ディスクロ
ールでは問題ないと考えられる。

【０００８】

【発明の目的】本発明は、上述のような現状を背景にな
されたものであって、耐摩耗性の欠点を解消し、しかも
ロール表面の平滑性にすぐれ、被処理材のガラスに傷つ
けることのないガラス用ディスクロールを提供すること
を目的とする。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明は、マイカ粒子２
０〜８５重量％、セピオライト１０〜４０重量％、カオ
リン５〜３０重量％および有機質結合材１〜５重量％か
らなる抄造法による薄板状成形物をディスク素材とする
ことを要旨としている。なお、本発明にあっては、前記
成分素材のほかに、必要に応じてパルプ、セラミック繊
維、岩綿等の補強用繊維０〜２０重量％が添加される。

【００１０】本発明のディスクロールの特徴的な素材で
あるマイカは、高弾性、滑り性、耐摩耗性、耐熱性が良
いことで知られて、種々の分野において古くから工業的
に利用されている材料である。ふつう工業的に利用され
ているのは白マイカＫ_２Ａｌ_４（Ｓｉ_３Ａｌ）_２Ｏ_２０
（ＯＨ）_４と金マイカＫ_２Ｍｇ_６（Ｓｉ_３Ａｌ）_２Ｏ
_２０（ＯＨ）_４であり、白マイカは約６００℃から結晶
水を放出し、金マイカは約９００℃から結晶水を放出す
る。結晶水量も１〜４％と石綿よりも少ない、つまり結
晶水放出による収縮が小さい。また他に黒マイカもある
がガラス用として使用されるディスクロールは温度、最
高約６５０℃なので白マイカ、金マイカどちらでも使用
できる。

【００１１】本発明のディスクロールのディスク製造に
用いるマイカ粒子は、マイカ結晶がリン片状にへき開さ
れたもので、望ましくはその６０％以上が粒子径１０〜
１０００μのものである。上記範囲よりも大きいものが
大部分を占めるものを用いるとディスクロール表面の平
滑性が悪くなり、また粒子径が小さすぎるものを用いた
場合はロールの熱収縮が悪くなる傾向がある。

【００１２】抄造されたシートからなるディスク中でリ
ン片状のマイカ粒子は全てディスクの両方向に配向して
いるから、これがディスクロール中ではロールの半径方
向配向している。このような特定の配向とマイカ特有の
高弾性、滑り性の特性とがあいまって柔軟性でしかも耐
摩耗性の良い独特のロール表面が形成されるのである。

【００１３】マイカの添加量の範囲は２０〜８５％であ
り、好ましい範囲は３０〜７０％である。マイカの添加
量が２０％以下だと上述の性能を有するシートを得るこ
とができない。また８５％を越えるとセピオライトの添
加量が少なくなりシート強度が小さくなり望ましくな
い。

【００１４】本発明のディスクロールの特徴的な他の素
材であるセピオライトは、理想科学構造式Ｍｇ_８Ｓｉ
_１２Ｏ_３０（ＯＨ）_４・（ＯＨ_２）_４・８Ｈ_２Ｏで示さ
れる含水マグネシウム珪酸塩に分類される粘土鉱物で繊
維状を有しており、石綿と類似した耐熱性があり、約２
５０℃から結晶水、水酸基が徐々に放出し約８３０℃か
らエンスタタイト（ＭｇＳｉＯ_３）に変化し急激に収縮
する。このセピオライトは抄造時のシートや抄造成形板
の取扱い性や加工性、更には最終的に得られる繊維板の
機械的性質を向上させるために最小限使用される。この
繊維もなるべく繊維長の大なるものが望ましい。

【００１５】セピオライトの添加量は１０〜４０％、セ
ピオライトの添加量が１０％未満であると上述の機械的
特性がなくなり、４０％を越えるとマイカの添加量が少
なくなり、上述のマイカ特有の性能を有するシートを得
ることができない。なお、セピオライトの添加量が多い
とセピオライト自身の水はけ性が悪いため生産性が悪く
なり、抄造法での成形は難しくなる。

【００１６】本発明のディスクロールの特徴的な他の素
材であるカオリンは、陶磁器原料になくてはならないも
ので、水で練ることにより可塑性を生じ乾燥によって適
当な強度を示す（これを乾燥固結性という）。また約４
００℃の低温から徐々に焼結する性質が知られている。
本発明のディスク素材は約２００℃から有機物である、
有機結合材、パルプ等が徐々に飛散し、後はセピオライ
トに繊維が絡まって形状を保っているが、加熱中にロー
ル表面からディスク素材の微粉体（微粉のマイカ、セピ
オライト等）飛散する恐れがある。カオリンを添加する
ことによってディスク素材がある程度、乾燥固結、およ
び焼結してロール表面からの粉落ちを防ぐ効果を持って
いる。ディスク素材からの粉体が被処理物であるガラス
に付着すると傷の発生原因となる。

【００１７】カオリンの添加量の範囲は５〜３０％であ
り、カオリンの添加量を３０％以上にすると焼結が進み
過ぎてロール表面が硬くなり、ガラスに傷をつける原因
となる。ロールが硬いと耐スポーリング性が悪くなり亀
裂の発生原因ともなる。本発明の他の素材である無機質
充填材としては、シリカ、アルミナ、けいそう土、パイ
ロフィライト、ベントナイト、タルク等が使用され、有
機質結合材としては、主として澱粉が使用される。

【００１８】

【作用】上記構成によれば、ディスク素材として充分な
強度、滑り性、耐摩耗性等の機械的性能を有し、特に耐
摩耗性の良いロール性能を有する。つまり耐摩耗性はマ
イカ特有の性能で保持され、セピオライトで抄造時のシ
ート強度や抄造成形板の加工性、機械的性質は保持され
る。またカオリンの添加によって前記性能以外に特にロ
ール表面の粉落ちを防ぎ（粉体がガラスに付着すると傷
の発生原因となる）、被処理材のガラスに傷つけること
のない高性能のディスクロールが得られる。またディス
ク素材は石綿を使用しておらず、故に石綿公害の問題も
ない。

【００１９】

【実施例および比較例】表１に示した原料配合により、
通常の丸網式抄造機で厚さ６ｍｍのシートを製造する。
次にこのシートを外径１３０ｍｍ、内径６０ｍｍのリン
グ状に打ち抜いてディスクを製造し、得られたディスク
を用いて、締付圧２００ｋｇｆ／ｃｍ^２で長さ１５０ｍ
ｍのディスクロールを製造し、これを種々の温度に設定
した電気炉で１００時間加熱する。上記熱処理後のロー
ルについて、亀裂の発生状況および耐摩耗性を調べた結
果は表２に示すとおりであった。

【００２０】なお、上記実施例で行なった試験の方法は
次のとおりである。 （ａ）亀裂 肉眼による外観検査を行ない、次のような判定基準で評
価した。 ◎ 全く異常がない。 ○ 亀裂は僅かで実用上問題がない。 × 大きな亀裂が発生し使用できない。 （ｂ）耐摩耗性 ディスクロールを１０ｒｐｍで回転させながら、ロール
表面にステンレス鋼板で線圧８ｋｇｆ／ｃｍ^２の荷重を
１時間加えた後のロールの摩耗度を肉眼で観察し、次の
ような判定基準で評価した。 ◎ 非常に良好。 ○ 良好で実用上問題ない。 × 悪く使用できない。 ［−］は大きな亀裂が発生したため、耐摩耗性試験を実
施しなかったことを意味する。

【００２１】

【表１】

【表２】

【００２２】

【発明の効果】以上に述べたように、本発明によれば、
耐摩耗性がマイカ特有の性能で保持され、セピオライト
で抄造時のシート強度や抄造時成形板の加工性、機械的
性能が保持され、しかも耐熱性がマイカとセピオライト
の両者で発揮され、さらに、カオリン添加により、前記
性能以外に、特にロール表面の粉落ちを防止できる高性
能のガラス用ディスクロールが得られる。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 マイカ粒子２０〜８５重量％、セピオラ
   イト１０〜４０重量％、カオリン５〜３０重量％および
   有機質結合材１〜５重量％からなる抄造法による薄板状
   成形物をディスク素材とすることを特徴とするガラス用
   ディスクロール。