JP4402194B2 - 耐熱ロール - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミニウム板や銅板等のような軟質非鉄金属板の熱処理工程及び熱処理工程後の搬送ロールとして使用される耐熱ロールに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から軟質非鉄金属板の熱処理工程及び熱処理工程後の搬送ロールとしてゴムロールや、実開昭52−49377号公報に開示されているような環状の全芳香族ポリアミド系紙状物を多数枚積層して圧着一体化せしめてなる耐熱弾性ロールが使用されている。また、特開昭64−46571号公報には、セピオライトとマイカを主成分とするローラーハース型加熱炉ハースロール用シート材が開示されている。更に、特許第2585663号には、芳香族ポリアミドからなる合成パルプ及び一般式(I):2CaO・3SiO2・mSiO2・nH2O(式中、mは0.1〜10、nは0.1〜10を示す)で表わされる花弁状ケイ酸カルシウムを含有したシートからなる耐熱性弾性ロールが開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
軟質非鉄金属板のような被処理材の熱処理工程等の巻き取り工程にゴムロールを使用すると、耐熱性に乏しいために、使用中にゴムロール表面が硬化してヒビ割れが発生し、被処理材の表面性状を悪化して商品価値が低下する。また、ゴムロール表面が硬化するためたに耐摩耗性も低下する。また、実開昭52−49377号公報に開示されている耐熱弾性ロールは、アラミド繊維のみのペーパー若しくはフェルトをディスク素材としており、上述のようなロール表面粒子の付着はないが、ロール加工時の研磨工程での加工性及び焼き付きによるロール表面の平滑性が劣化するという問題がある。更に、特開昭64−46571号公報に開示されているディスクロールは、耐熱性には問題がないものの、ロール表面粒子の被処理材への付着が問題となることがあった。
【0004】
従って、本発明の目的は、耐熱性及び耐摩耗性に優れ、且つロール表面粒子の付着がない表面平滑性の良い耐熱ロールを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、薄板状成形体をディスク状に打ち抜いたディスク素材を金属軸の外周上に所定枚数積層、圧縮することにより得られた耐熱ロールにおいて、薄板状成形物がアラミド繊維及び非晶質シリカを主成分とし、アラミド繊維40〜80重量%、非晶質シリカ20〜60重量%、有機結合材1〜5重量%(外割)及び凝集材0.1〜3重量%(外割)の配合割合を有する材料から抄造法により得られたものであることを特徴とする耐熱ロールに係る。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の耐熱ロールを構成するディスク素材である薄板状成形物の主成分であるアラミド繊維は、ゴムロールでは対応できないような高温域でも寸法安定性に優れており、分解温度も500℃と高温である。また、他の有機繊維と比べて格段に高い強度を有しており、繊維長も長く、且つフィブリル化しているため非晶質シリカを充分に包含せしめる物理化学的性質を有している。更に、アラミド繊維は、無機繊維にはない柔軟性があるため、折れ等による粉体の発生がない特徴を有している。
【0007】
また、前記薄板状成形物のもう一つの主成分である非晶質シリカは、1000℃程度の高温域においても優れた耐熱性を有し、化学的に非常に活性な表面を持っているため、包含され易い性質を有している。また、熱的に不良導体であるため、優れた断熱性を示す特徴を有している。
【0008】
アラミド繊維の配合割合は40〜80重量%が好適である。アラミド繊維の配合割合が40重量%未満では、抄造法により薄板状に成形する場合に、成形物の強度が著しく低下し、取り扱い性が悪化すると共に、耐熱ロールへ加工する際に、非晶質シリカを包含しきれなくなり、ロール表面粒子の飛散性が増大するために好ましくない。また、アラミド繊維の配合割合が80重量%を超えると、同様に耐熱ロールへ加工する際に、耐熱ロールへの成形が困難となり、また、相対的に非晶質シリカの割合が低下するため、耐摩耗性が低下するために好ましくない。
【0009】
アラミド繊維は高温域でも寸法安定性に優れており、耐熱ロールへ成形する場合にも優れた耐熱性を付与することができる。また、繊維長が長く、且つフィブリル化が進んでいるため、非晶質シリカを充分に包含せしめ、ロール表面粒子の飛散性を抑制する働きを有しており、被処理材への表面粒子の付着がない。また、非晶質シリカは化学的に非常に活性な表面をもっているため、アラミド繊維に包含され易い性質を有している。更に、耐熱性に富み、充填材として耐熱ロールに耐摩耗性を付与し、熱的に不良導体であることにより優れた断熱性を付与する働きをもつ。
【0010】
また、薄板状成形物を作製する際に、アラミド繊維及び非晶質シリカを懸濁液中で結合させるために、有機結合材を1〜5重量%並びに抄造性を良好にするために凝集材を0.1〜3重量%添加する。なお、有機結合材としては、例えば澱粉等を使用することができる。また、凝集材としては、例えば硫酸アルミニウム等を使用することができる。
【0011】
これらの材料の配合割合を下記に示す:
アラミド繊維 40〜80重量%
非晶質シリカ 20〜60重量%
有機結合材(外割) 1〜5重量%
凝集材(外割) 0.1〜3重量%
【0012】
これらの材料を水中において、叩解、混合し、所定量の有機結合材を添加、沈着させた後、薄板状成形物へ成形し、乾燥後、得られた薄板状成形物をディスク状に打ち抜き、金属軸の外周上へディスク素材を所定枚数積層し、圧縮、研磨することにより本発明の耐熱ロールを得ることができる。なお、積層するディスク素材の間に補強の目的で金属箔等を適当な間隔毎に挿入しても良い。
【0013】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明の耐熱ロールを更に説明する。
実施例1〜3
8リットルビーターを用い、アラミド繊維A(デュポン社製、商品名ケプラー)を所定量水中へ添加、叩解した後、非晶質シリカを添加、混合した。得られた懸濁液を容器に移し、有機結合材[澱粉=松谷化学工業(株)社製、ネオポジパリン]及び凝集材[大朋化学(株)、粉末硫酸アルミニウム]を添加、混合して抄造懸濁液とした。得られた抄造懸濁液を試験用手抄き機(TAPPI標準法)を用いて抄造し、乾燥することにより縦215mm×横250mm×厚さ1〜2mmの薄板状成形物を得た。
得られた薄板状成形物を外径49mm×内径22mmのディスク状に打ち抜き、金属軸の外周上へ得られたディスクを20〜30枚積層し、圧縮及び研磨することにより外径45mm×面長80mmの耐熱ロールを得た。
【0014】
実施例4
実施例3において、アラミド繊維Aの代わりにアラミド繊維B(アラミ社製、商品名トワロン)を使用した以外は、実施例3と同様の方法にて薄板状成形物を得、実施例3と同様の操作にて耐熱ロールを得た。
【0015】
実施例5
1200リットルビーターを用い、アラミド繊維B及び非晶質シリカを添加、叩解して懸濁液を得た。更に、1200リットルビーターを用い、有機結合材有機結合材[澱粉=松谷化学工業(株)社製、ネオポジパリン]及び凝集材[大朋化学(株)、粉末硫酸アルミニウム]を添加、混合して抄造懸濁液を得た。得られた抄造懸濁液を丸網式抄造機を用いて抄造し、乾燥することにより縦1000mm×横500mm×厚さ2〜5mmの薄板状成形物を得た。
得られた薄板状成形物を外径49mm×内径22mmのディスク状に打ち抜き、金属軸の外周上へ得られたディスクを20〜30枚積層し、圧縮及び研磨することにより外径45mm×面長80mmの耐熱ロールを得た。
【0016】
比較例1
非晶質シリカを用いない以外は、実施例5と同様の方法により薄板状成形物を作製し、耐熱ロールを得た。
【0017】
上述のようにして得られた薄板状成形物及び耐熱ロールについて下記のような項目につき評価した。得られた結果を表1に併記する。
(1)引張強度
JIS R3454に準じ、得られた薄板状成形物を所定形状に切り出して試験片とし、予め幅及び厚さをノギスを用いて測定し、荷重速度200mm/分にて荷重を加え、算出した。
(2)加工性
耐熱ロールの研磨工程において、所定条件下(旋盤回転数210回転/分、送り速度0.38mm/分、砥石周速1885m/分、研磨量1.0mm)での加工性を目視により評価した:
◎:全く問題なく加工が行える。
○:加工は行えるが、表面温度が上昇し、若干焼け色が付き、加工には余り適さない。
×:粉っぽさを感じ、更に粉体が付着しているのを目視でも確認できる。
【0018】
【表1】
Figure 0004402194
【0019】
実施例6及び比較例2
実施例5及び比較例1で得られた薄板状成形物を外径115mm×内径49mmのディスク状に打ち抜くことによってディスク素材を得、金属軸の外周上に該ディスク素材を60〜100枚積層し、圧縮、研磨することによって外径110mm×面長250mmの耐熱ロールを得た。
得られた耐熱ロールを図1に示すような試験炉を用いて、所定条件(試験ロール密度0.5g/cm3、試験雰囲気温度200〜350℃、試験時間6〜168時間、試験ロール回転数40回転/分、荷重ロール線圧0.7kgf/cm、荷重ロール材質5056)にて加熱試験を行い、耐熱性及び耐摩耗性の確認を行った。なお、図1に示す試験炉において、1は耐熱ロール、2は荷重ロール、3は発熱体、4は炉壁をそれぞれ示す。また、評価は次に示す評価方法に基づいて行われた。得られた結果を表2に記載する。
【0020】
(1)硬度
得られた耐熱ロールの試験前後のロール表面硬度をShore Type D硬度計(ASTM D2240)を用いて評価した。
(2)摩耗量
得られた耐熱ロールの直径を試験前に予めノギスを用いて測定しておき、試験後に荷重部位を同様に測定し、試験前後の差より摩耗量を算出した。
(3)径収縮率
得られた耐熱ロールの直径をした前に予めノギスを用いて測定しておき、試験後に非荷重部位を同様に測定し、試験前後の差より径収縮率を算出した。
【0021】
【表2】
Figure 0004402194
【0022】
【発明の効果】
本発明の耐熱ロールは、耐熱性及び耐摩耗性に優れ、ロール表面粒子の付着がなく、表面平滑性が良好であるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、実施例6及び比較例2で得られた耐熱ロールを評価するために用いた試験炉の概略正面図であり、(b)は、側面図である。
【符号の説明】
1 耐熱ロール
2 荷重ロール
3 発熱体
4 炉壁

Claims (1)

  1. 薄板状成形体をディスク状に打ち抜いたディスク素材を金属軸の外周上に所定枚数積層、圧縮することにより得られた耐熱ロールにおいて、薄板状成形物がアラミド繊維及び非晶質シリカを主成分とし、アラミド繊維40〜80重量%、非晶質シリカ20〜60重量%、有機結合材1〜5重量%(外割)及び凝集材0.1〜3重量%(外割)の配合割合を有する材料から抄造法により得られたものであることを特徴とする耐熱ロール。
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