JP2613805B2 - 直流アーク炉 - Google Patents

直流アーク炉

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、直流アーク放電によって、金属等の導電材
料を加熱、溶解、精錬等を行う直流アーク炉、特に、該
炉に外部より磁場を与えるものに関するものである。
[従来の技術] 一般にアーク炉は、金属例えばスクラップ等を加熱、
溶解、精錬する場合に用いられている。
従来から、例えば製鉄用の大容量アーク炉は、電源か
らの給電が容易で、かつ電圧の制御が容易であることか
ら、交流式アーク炉が主力となっていた。
一方、近年では、半導体技術の進歩によって電力用半
導体素子も大容量化が可能となり、これに伴ってアーク
炉も交流式アーク炉から直流式アーク炉に移行しつつあ
る。
この直流式アーク炉は、炉用変圧器までの経路及び設
備は交流式のものと同様であるが、炉用変圧器で炉用電
圧に降圧した後、サイリスタ装置等の整流装置により交
流を直流に変換する。
そしてサイリスタ方式の場合には、直流回路に炉内短
絡時の過大な電流増加を抑制するための直流リアクトル
が挿入されている。
また直流回路は、炉底電極に至るまでの導体(陽極
側)とカーボン電極からなる可動電極に至るまでの導体
(陰極側)とから給電用導体が構成されている。
従来の交流式アーク炉は、必ず3本の可動電極により
構成されていたが、直流式アーク炉の場合は必ずしも3
本ではなく少なくとも1本の可動電極を用いればよい。
即ち、直流アーク炉の場合、容量150n炉位までは1本
の可動電極で構成することが可能であり、電極の周囲が
シンプルとなるが、炉底電極が必要となる。
第4図は、従来の直流アーク炉の給電回路の構成例を
示す説明図である。
第4図において、1は炉用変圧器,2はサイリスタ変換
器,3及び3aは給電用の導体,4は直流リアクトル,5は直流
アーク炉,6は可動電極,7は炉底電極,8はホルダーアー
ム,9はスクラップなどの被溶解物である。
第4図において、一次側が図示しない交流電源に接続
された炉用変圧器1の二次側には、位相制御可能なサイ
リスタ変換器2の交流側入力端が接続されている。
またサイリスタ変換器2の直流側出力端の負極側
(−)は、給電用の導体3により直流リアクトル4を介
して、直流アーク炉5の可動電極6に接続され、さらに
サイリスタ変換器2の直流側出力端の正極側(+)は、
給電用の導体3aにより、直流アーク炉5の炉底電極7に
接続され、直流電流Iの給電回路A−B−C−D−Aが
構成されている。
[発明が解決しようとする課題] 以上のような、従来の直流アーク炉の給電回路では、
次のような問題がある。
即ち、従来は、特に考慮せずに給電用の導体3を配置
するか、或いは炉底電極7に出来るだけ均一に通流され
るように、炉底電極7の給電点を炉心を中心に対称点に
配置するようにしている。
このため、電源から直流アーク炉5に至るまでの給電
回路が作る磁場と、アーク自身の電流による電磁力によ
って、アークが一方向に振られてしまい、均等溶解を実
現する上での妨げになっている。
即ち、第4図に示すように給電回路C−D−A−Bの
作る磁場Bによる電磁力Fによって、給電回路ループA
−B−C−D−Aの外側(図では右側)にアークが振ら
れてしまい、アークが向かう側の溶解が促進され、反対
側は遅れるので不均等な溶解となる。
また、炉底電極7の給電点を炉心に対して対称に配置
しても、給電回路C−D−A−Bの作る磁場Bを打消す
ことは出来ず、上述のような問題は依然として残る。上
記問題点を解決するべく例えば特開昭51−35606号公報
においては、磁化巻線を設けた凹状鉄心を炉底等に置
き、磁界が炉内に導入されるようにして、アークの傾斜
を中和することができない(磁界はアークの方向に対し
て垂直な方向に発生する)が傾斜方向を変えるようにし
ている。そして実開昭60−163697号公報において、前記
特開昭51−35606号公報でのアークの傾斜方向を検出し
て磁化巻線に所望の電流を供給し該アークの方向を制御
するための装置が記載されている。さらに、実公昭62−
41188号公報においては、直流または低周波交流を流し
て、磁界がアークに対して垂直であり且つアークの方向
を制御するが、アークの方向制御の一態様として、アー
クを円錐形状に回転掃引させるようにしており、実公昭
57−52623号公報においては、傾斜角度を付けてアーク
発生させ、回転磁界を発生させてアークを回転させるよ
うにしている。しかしながら、上記従来技術は、アーク
が垂直な方向に補正されることはなく、その指向する方
向を移動して特定の箇所にとどまるのを回避するにした
ものであるから、何れにおいて制御手段が必要であり、
設備費、電力原単位等の改善すべき課題を有している。
本発明は、上記のような問題点を解決する被溶解物の
均等溶解を実現して、電力原単位や耐火物原単位の低減
を可能とする直流アーク炉を提供することを目的とする
ものである。
[課題を解決するための手段] 上記の目的を達成するために、本願発明は、 アーク発生部に垂直な軸線に対して傾斜した方向に発
生するアーク電流と鎖交して、アークを炉の中心軸(可
動電極の中心軸)のまわりに回転するような、θ方向の
電磁力を発生させるような磁界を発生させる直流磁場発
生装置を付加した直流アーク炉である。即ち、 直流アーク炉において、該アーク炉の炉底電極の周囲
に、磁場発生用コイルを付加して設け、前記磁巻線が周
回する磁場発生用コイルに直流電流を流し、該アーク炉
の1本の垂直な方向のアーク発生電極軸に回転対称なZ
(Z軸方向)−R(半径方向)成分を有する直流磁場を
発生させることを特徴とする直流アーク炉である。
また前記磁場発生用コイルに、前記アーク炉の直流ア
ーク発生用電源とは別に、コイル用電源を設けた直流ア
ーク炉であり、 前記磁場発生用コイルとして、前記アーク炉の炉底電
極に至る給電導体又は該給電導体の1部を前記炉底電極
の周囲に巻線が周回するように巻き、コイル機能を形成
した直流アーク炉である。
[作用] 本発明の直流アーク炉における直流磁場発生装置は、
炉心について回転対称形な直流磁場を作り、炉の垂直な
方向の電極軸方向をZ,水平の半径方向をR、前記電極軸
を中心とする回転方向をθとすると、ZとR成分をもつ
回転対称形な直流磁場をアーク発生部に作る。
第3図に基づいて、アークの旋回力について説明す
る。
直流アーク13は、炉中心に位置し、上下する可動電極
6の先端からZ方向に対し30゜ほどの広がりをもった領
域で発生し、溶鋼に向かってジェットが形成されている
ことが観察される。
従って、アークが偏向せず真直ぐに電極軸方向に発生
している場合には、直流磁場はアークと平行となり、電
磁力はアークに対して働かない。しかし、直流磁場発生
装置によるZ−R成分の直流磁場発生装置によるZ−R
成分を磁場12と直流アーク13のアーク電流と鎖交すると
θ方向の電磁力が発生する。
従ってアーク13は、可動電極6の先端周上を回転運動
し、先の給電回路の磁場による偏向に打ち勝つことが出
来る。すなわち、本願発明ではコイルの形成する直流磁
場は、垂直方向のアーク発生電極軸に回転対称であり、
電極軸の何れの方向にアークが偏向しても有効に働き、
さらに偏向が大きくなって電極軸からの偏向角度が大き
い程コイルの直流磁場と強く交叉するので、アークを旋
回させる電磁力も強まり、偏向をより大きく矯正する働
きがある。この結果、アーク13は垂直な方向の炉心を軸
として回転するので、どの方向への熱負荷も均一化でき
均等溶解を実現することができる。
この結果、電力原単位や耐火物原単位を低減させるこ
とが可能となる。
次に本発明の実施例について述べる。
[実施例] 第1図は本発明の実施態様例である直流アーク炉の構
成を示した説明図である。
第1図において、10は磁場発生コイル,11はコイル用
直流電源,12は直流磁場である。
尚、図中第4図と同符号は、同一または同じ機能を示
すので、説明を省略する。
第1図において、第4図と同様に、一次側が図示しな
い交流電源に接続された炉用変圧器1の二次側には、位
相制御可能なサイリスタ変換器2の交流側入力端が接続
されている。
また、サイリスタ変換器2の直流側出力端の負荷側
(−)は、給電用の導体3により直流リアクトル4を介
して、直流アーク炉5の黒鉛製の可動電極6に接続さ
れ、さらに、サイリスタ変換器2の直流側出力端の正極
側(+)は、給電用の導体3aにより、直流アーク炉5の
炉底電極7に接続され、直流電流Iの給電回路A−B−
C−D−Aが構成されている。なお黒鉛製の可動電極6
はホルダーアーム8により支持され、スクラップ等の被
溶解物9を溶解可能に上下に可動するようになってい
る。
本発明の直流アーク炉5は、第1図に示す如く、第4
図の従来の直流アーク炉5の炉底電極7の周囲に巻線が
周回するように、炉心を中心とするコイルを巻き、これ
に直流電流を流して、回転対称な磁場12を形成するよう
にしているものである。
即ち、炉底電極7の周囲に巻線が周回する磁場発生用
コイル10及び直流アーク発生用電源とは別にコイル用電
源11とを設け、このコイル用直流電源11から磁場発生用
コイル10に直流電流を流し、炉心を中心とする回転対称
な直流磁場12を形成するようにしている。前記磁場発生
用コイル10は例えば溶解容量が100t炉ではコイル径を3m
以上とする。
そして、この時アーク発生部に、直流アーク炉の導体
が形成する半径方向の磁場成分(Br)が30ガウス程度の
時に、アークからの入熱が、この磁場成分の方向からほ
ぼ90゜偏向する。
本発明によるコイルを用いて、アーク発生部に20ガウ
スの電極軸方向の磁場(Bz)を発生させると、入熱の偏
向方向が120゜に振られ、さらに50ガウス以上でアーク
が完全に旋回し、熱負荷の均一化に効果がある。
この第1図の直流アーク炉と、異なる別な実施態様例
である第2図の直流アーク炉について述べる。
第2図の直流アーク炉は、第1図の直流磁場発生用コ
イル10として、直流アーク炉5の炉底電極7に至る給電
導体3aあるいはその1部を炉底電極7の周囲に周回し
て、炉心を中心とするコイル10aを形成するように巻
き、炉心を中心とする回転対称な直流磁場12を形成する
ことを可能としたものである。
この第2図の場合には、直流磁場12の強さを変えるこ
とは出来ないが、1回巻きでも、コイル部10a以外の導
体が作る磁場より大きい磁場(1.5〜2倍)を形成する
ことができ、第1図の実施例と同様の効果が得られる。
このように第2図の直流アーク炉の場合、別にコイル
用電源11を設ける必要がないので経済的に優れている。
[発明の効果] 本発明の直流アーク炉によれば、アーク発生領域に、
回転対称なR(軸方向)−Z(半径方向)成分を持つ直
流磁場を発生させるように、磁場発生コイルを設けてい
るので、直流アークのアーク電流とこの磁場発生コイル
の作る直流磁場が鎖交して、θ方向の電磁力をアークに
働かせるので、アーク炉は可動電極先端周上を旋回する
ことになる。このためアークは一方向に偏向することな
く被溶解物の均等溶解を実現できる。
この結果、電力原単位や耐火物単位の低減を図ること
が出来る。
また付随して、印加磁場を直流としたので、溶鋼中の
電流と直流磁場が鎖交して電磁力が発生し、溶鋼の撹拌
が促進され、溶鋼温度や成分の均一化等の効果も得られ
る。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の実施態様例である直流アーク炉の構成
を示した説明図、第2図は本発明の別な実施態様例であ
る直流アーク炉の構成を示した説明図,第3図は本発明
の作用の説明図、第4図は従来の直流アーク炉の構成を
示した説明図である。 図において、1:炉用変圧器,2:サイリスタ変換器,3,3a:
給電用の導体,4:直流リアクトル,5:直流アーク炉,6:可
動電極,7:炉底電極,8:ホルダーアーム,9:被溶解物,10:
磁場発生コイル,10a:コイル,11:コイル用電源,12:直流
磁場,13:直流アーク。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 青 範夫 東京都千代田区丸の内1丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 松尾 貴人 東京都千代田区丸の内1丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (56)参考文献 特開 昭51−35606(JP,A) 実開 昭60−163697(JP,U) 特公 昭56−14231(JP,B2) 実公 昭62−41188(JP,Y2) 実公 昭57−52623(JP,Y2)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】直流アーク炉において、該アーク炉の炉底
    電極の周囲に、巻線が周回する磁場発生用コイルを付加
    して設け、前記磁場発生用コイルに直流電流を流し、該
    アーク炉の1本の垂直な方向のアーク発生電極軸に、回
    転対称なZ(軸方向)−R(半径方向)成分を有する直
    流磁場を発生させることを特徴とする直流アーク炉。
  2. 【請求項2】前記磁場発生用コイルに、前記アーク炉の
    直流アーク発生用電源とは別に、コイル用電源を設ける
    ことを特徴とする請求項1記載の直流アーク炉。
  3. 【請求項3】前記磁場発生用コイルとして、前記アーク
    炉の炉底電極に至る給電導体又は該給電導体の1部を前
    記炉底電極の周囲に巻線が周回するように巻き、コイル
    機能を形成することを特徴とする請求項1記載の直流ア
    ーク炉。
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