JP2605392Y2 - サーマルヘッド - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、ワードプロセッサやフ
ァクシミリ等のプリンタ機構に組み込まれるサーマルヘ
ッドの改良に関するものである。

【０００２】

【従来技術】従来、ワードプロセッサ等のプリンタ機構
に組み込まれるサーマルヘッドは、図３に示す如く、ア
ルミナセラミックス製のヘッド基板１１と、該ヘッド基
板１１の上面に被着され、窒化タンタル等から成る発熱
抵抗体１２と、該発熱抵抗体１２に接続され、アルミニ
ウム等から成る一対の導電層１３と、導電層１３の一方
に接続される駆動用ＩＣ１４と、該駆動用ＩＣ１４を被
覆するとともに先端側が発熱抵抗体１２の近傍にまで延
出されている金属製のカバー部材１６と、前記ヘッド基
板１１及びカバー部材１６が取着される金属製の放熱板
１５とから構成されており、前記一対の導電層１３間に
駆動用ＩＣ１４の駆動に伴って所定の電力を印加し、発
熱抵抗体１２を選択的にジュール発熱させるとともに、
該発熱した熱をヘッド基板１１上を摺接する感熱紙１７
等に伝導させ、感熱紙１７等に所定の印字画像を形成す
ることによってサーマルヘッドとして機能する。

【０００３】尚、前記カバー部材１６は、駆動用ＩＣ１
４に外力が印加され、該外力によって駆動用ＩＣ１４に
破損が発生するのを有効に防止するとともに、感熱紙１
７等を発熱抵抗体１２上に案内する案内部材として作用
する。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】しかしながら、この従
来のサーマルヘッドにおいては、カバー部材１６は駆動
用ＩＣ１４を外力印加から保護するとともに感熱紙１７
等を発熱抵抗体１２上に案内するためのものであること
から駆動用ＩＣ１４を覆うように配されているもののそ
の端部はヘッド基板１１に密着せず、カバー部材１６の
先端部とヘッド基板１１との間には間隙が形成されてい
る。そのため、このサーマルヘッドを使用して感熱紙１
７等に印字を行うと感熱紙１７等がヘッド基板１１に摺
接することによって塩素イオン、ナトリウムイオン等の
汚染物質を含む紙カスを発生すれば、この紙カスがその
ままカバー部材１６の先端部とヘッド基板１１との間に
形成されている間隙を通して駆動用ＩＣ１４に浸入接触
し、駆動用ＩＣ１４の電気回路が前記汚染物質により腐
食されて駆動用ＩＣ１４の特性が損なわれ、サーマルヘ
ッドとしての機能が喪失するという欠点を有していた。

【０００５】そこで上記欠点を解消するためにカバー部
材１６の先端部をヘッド基板１１の表面に当接させ、汚
染物質を含む紙カスが駆動用ＩＣ１４に接触するのを防
止することが考えられる。

【０００６】しかしながら、カバー部材１６は一般にプ
レス加工法により形成されており、端部にバリを有する
ことから、カバー部材１６の先端部をヘッド基板１１の
表面に当接させると前記バリがヘッド基板１１上に被覆
形成した導電層１３を傷付けたり、或いは断線させたり
してしまうという欠点が誘発される。

【０００７】

【考案の目的】本考案は上記欠点に鑑み案出されたもの
で、本考案の目的は駆動用ＩＣの特性喪失及び導電層の
断線等を皆無として長期にわたり所定の印字画像を形成
することができるサーマルヘッドを提供することにあ
る。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本考案のサーマルヘッド
は、上面に複数個の発熱部及び導電層と該導電層に電気
的に接続された駆動用ＩＣとを有するヘッド基板と、前
記駆動用ＩＣを被覆し、先端側が発熱抵抗体の近傍にま
で延出されている金属製カバー部材とから成り、前記発
熱抵抗体上に搬送される感熱紙等を加熱することによっ
て印字を行なうサーマルヘッドにおいて、前記金属製カ
バー部材は、その先端側が前記駆動用ＩＣの収納空間側
に折り曲げられるとともに該折り曲げた部分を前記ヘッ
ド基板の表面に当接させ、印字される感熱紙等を発熱部
に接触すべく前記折り曲げ部を含む金属製カバー部材の
外表面で感熱紙等を案内するようにしたことを特徴とす
るものである。

【０００９】

【実施例】以下、本考案の実施例を添付した図面に基づ
いて説明する。

【００１０】図１は本考案のサーマルヘッドの一実施例
を示し、１はヘッド基板、２は発熱抵抗体、３は一対の
導電層、４は駆動用ＩＣ、６はカバー部材である。

【００１１】前記ヘッド基板１はアルミナセラミックス
等の電気絶縁材料から成り、その上面にガラス等から成
る蓄熱層１ａを介し複数個の発熱抵抗体２と、該発熱抵
抗体２の両端に接続される一対の導電層３が被着されて
いる。

【００１２】前記ヘッド基板１は、例えばアルミナセラ
ミックスから成る場合、アルミナ、シリカ、マグネシア
等のセラミックス原料粉末に適当な有機溶剤、溶媒を添
加混合して泥漿状と成すとともにこれを従来周知のドク
ターブレード法やカレンダーロール法等を採用すること
によってセラミックグリーンシートを形成し、しかる
後、前記セラミックグリーンシートを所定形状に打ち抜
き加工するとともに高温（約１６００℃）で焼成するこ
とによって製作される。

【００１３】また前記ヘッド基板１の上面にはガラス等
から成る蓄熱層１ａが被着されており、該蓄熱層１ａは
発熱抵抗体２が発する熱を蓄積し、サーマルヘッドの温
度を短時間で感熱紙７等に印字画像を形成するに必要な
温度とする作用を為す。

【００１４】前記蓄熱層１ａは、ガラス粉末に適当な有
機溶剤を添加混合して得たガラスペーストをヘッド基板
１上面の所定領域に従来周知のスクリーン印刷法等を採
用することによって印刷塗布し、しかる後、これを高
温、例えば約７００℃の温度で焼き付けることによって
ヘッド基板１の上面に被着される。

【００１５】また蓄熱層１ａの上面には複数個の発熱抵
抗体２が被着配列されており、更に各発熱抵抗体２には
一対の導電層３が接続されている。

【００１６】前記発熱抵抗体２は例えば窒化タンタル等
から成り、それ自体が所定の電気抵抗率を有しているた
め、一対の導電層３を介して電力が印加されるとジュー
ル発熱を起こし、印字画像を形成するのに必要な温度、
例えば２５０〜４００℃の温度に発熱する。

【００１７】また前記発熱抵抗体２に接続されている一
対の導電層３はアルミニウム等の金属から成り、発熱抵
抗体２にジュール発熱を起こさせるために必要な所定の
電力を印加する作用を為す。

【００１８】尚、前記発熱抵抗体２及び一対の導電層３
は、従来周知のスパッタリング法等を採用することによ
りヘッド基板１上に所定の厚みをもって被着され、更に
フォトリソグラフィー技術を採用することによって所定
パターンに加工される。

【００１９】前記発熱抵抗体２及び一対の導電層３の上
面にはまた、保護層８が被着されており、該保護層は発
熱抵抗体２、一対の導電層３を感熱紙７等の摺接による
摩耗や感熱紙７に含まれる塩素イオン、ナトリウムイオ
ン等の汚染物質の接触による腐食から保護する作用を為
す。

【００２０】前記保護層８は例えば窒化珪素、サイアロ
ン等から成り、従来周知のスパッタリング法等を採用す
ることによって発熱抵抗体２等の上面に所定の厚みをも
って被着される。

【００２１】また前記導電層３上には駆動用ＩＣ４が半
田等のロウ材を介して載置固定されており、これによっ
て駆動用ＩＣ４は導電層３と電気的に接続される。

【００２２】前記駆動用ＩＣ４は外部電気信号を制御し
発熱抵抗体２を選択的にジュール発熱させる作用を為
し、例えばフリップチップタイプの駆動用ＩＣ４を従来
周知のフェイスダウンボンディング法を採用しヘッド基
板１上の所定位置に実装することによって導電層３と接
続される。

【００２３】前記発熱抵抗体２等を上面に被着させたヘ
ッド基板１は、その下面がアルミニウム等から成る放熱
板５の上面に当接され、これによってヘッド基板１は放
熱板５上に支持される。

【００２４】前記放熱板５はヘッド基板１の熱の一部を
伝導吸収し、ヘッド基板１が発熱抵抗体２の発する熱に
より過度に高温となるのを有効に防止する作用を為す。

【００２５】尚、前記放熱板５は、アルミニウム等から
成るインゴット（塊）を、従来周知の金属加工法を採用
し、所定形状となすことによって製作される。

【００２６】また前記放熱板５には、金属製のカバー部
材６が、駆動用ＩＣ４を被覆し、かつ先端側を発熱抵抗
体２の近傍にまで延出させた状態で取着されており、該
金属製カバー部材６は、駆動用ＩＣ４を外力印加から保
護するとともに、印字に際して感熱紙７等を発熱抵抗体
２上の保護膜表面に接触させるべくその外表面で感熱紙
７等を発熱抵抗体２上に案内する案内部材として作用す
る。

【００２７】更に前記金属製カバー部材６はその先端側
が駆動用ＩＣ４の収納空間側に折り曲げられるとともに
該折り曲げた部分を前記ヘッド基板１の表面に当接させ
ており、これによってカバー部材６の先端がヘッド基板
１の表面に完全に密着されるようになっている。

【００２８】このため、印字に際して感熱紙７等がヘッ
ド基板１に摺接することにより塩素イオン、ナトリウム
イオン等の汚染物質を含む紙カスを発生したとしても、
該紙カスはヘッド基板１に密着されたカバー部材６によ
って駆動用ＩＣ４に浸入接触するのが有効に防止され、
駆動用ＩＣ４の電気回路が紙カスに含まれる汚染物質の
接触により腐食されることは皆無となる。従って、駆動
用ＩＣ４はその特性を損なうことなくサーマルヘッドを
長期にわたり良好に機能させることが可能となる。

【００２９】また前記金属製カバー部材６はその外表面
で感熱紙７等を案内するようになしてあることから、ヘ
ッド基板１の熱は金属製カバー部材６を介して印字前の
感熱紙７等に良好に伝導され、かかる予熱作用によりサ
ーマルヘッドの熱効率を向上させることも可能になる。

【００３０】しかもこの場合、前記カバー部材６はその
先端側が駆動用ＩＣ４側に折り曲げられ、丸みを帯びて
いるため、該丸みを帯びたカバー部材６の先端をヘッド
基板１表面に当接させてもヘッド基板１上に被着形成さ
れている導電層３を傷付けたり、或いは断線させたりす
ることが一切無い。

【００３１】尚、前記カバー部材６はアルミニウム等の
金属材料から成り、該金属材料から成る板体を従来周知
のプレス加工法等によって所定形状に成形するとともに
その先端側を折り曲げ、該折り曲げた部位がヘッド基板
１の表面に当接されるよう放熱板５にネジ止め固定する
ことによって放熱板５に取着される。

【００３２】かくして、本考案のサーマルヘッドは、一
対の導電層３間に駆動用ＩＣ４の駆動に伴って所定の電
力を印加し、発熱抵抗体２を外部電気信号に対応させて
選択的にジュール発熱させるとともに該発熱した熱をヘ
ッド基板１上を摺接する感熱紙７等に伝導させ、感熱紙
７等に印字画像を形成することによってサーマルヘッド
として機能する。

【００３３】尚、本考案は上述した実施例に限定される
ものでは無く、本考案の要旨を逸脱しない範囲において
種々の変更、改良等が可能である。

【００３４】

【考案の効果】本考案のサーマルヘッドによれば、金属
製カバー部材の先端側を駆動用ＩＣ側に折り曲げるとと
もにヘッド基板の表面に当接させたことから、カバー部
材の先端はヘッド基板表面に完全に密着され、印字に際
して感熱紙等がヘッド基板に摺接することにより汚染物
質を含む紙カスを発生したとしても、該紙カスはヘッド
基板と密着するカバー部材によって駆動用ＩＣに浸入接
触するのが有効に防止され、駆動用ＩＣの電気回路が紙
カスに含まれる汚染物質の接触により腐食されることは
皆無となる。従って、駆動用ＩＣはその特性を一切損な
うことなくサーマルヘッドを長期にわたり良好に機能さ
せることが可能となる。

【００３５】また本考案のサーマルヘッドによれば、前
記金属製カバー部材はその外表面で感熱紙等を案内する
ようになしてあることから、ヘッド基板の熱は金属製カ
バー部材を介して印字前の感熱紙等に良好に伝導され、
かかる予熱作用によりサーマルヘッドの熱効率を向上さ
せることも可能になる。

【００３６】更に本考案のサーマルヘッドによれば、前
記カバー部材はその先端側が駆動用ＩＣ側に折り曲げら
れ、丸みを帯びているため、該カバー部材の先端をヘッ
ド基板表面に当接させてもヘッド基板上に被着形成され
ている導電層を傷付けたり、或いは断線させたりするこ
とが一切無い。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案のサーマルヘッドの一実施例を示す斜視
図である。

【図２】図１のＸ−Ｘ線断面図である。

【図３】従来のサーマルヘッドの断面図である。

【符号の説明】

１・・・ヘッド基板、２・・・発熱抵抗体、３・・・一
対の導電層、４・・・駆動用ＩＣ、５・・・放熱板、６
・・・カバー部材、７・・・感熱紙、８・・・保護層

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】上面に複数個の発熱部及び導電層と該導電
   層に電気的に接続された駆動用ＩＣとを有するヘッド基
   板と、前記駆動用ＩＣを被覆し、先端側が発熱抵抗体の
   近傍にまで延出されている金属製カバー部材とから成
   り、前記発熱抵抗体上に搬送される感熱紙等を加熱する
   ことによって印字を行なうサーマルヘッドにおいて、 前記金属製カバー部材は、その先端側が前記駆動用ＩＣ
   の収納空間側に折り曲げられるとともに該折り曲げた部
   分を前記ヘッド基板の表面に当接させ、印字される感熱
   紙等を発熱部に接触すべく前記折り曲げ部を含む金属製
   カバー部材の外表面で感熱紙等を案内するようにしたこ
   とを特徴とするサーマルヘッド。