JP2605175B2 - 改良便槽 - Google Patents

改良便槽

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JP2605175B2 JP2300619A JP30061990A JP2605175B2 JP 2605175 B2 JP2605175 B2 JP 2605175B2 JP 2300619 A JP2300619 A JP 2300619A JP 30061990 A JP30061990 A JP 30061990A JP 2605175 B2 JP2605175 B2 JP 2605175B2
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【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、水洗便所の汚水処理に用いる改良便槽に関
し、特に家庭用便所、公衆便所や公共施設、キャンプ
場、海水浴場、スキー場、別荘などの便所の汚水処理に
適した改良便槽に関するものである。
[従来の技術] 従来の水洗便所の汚水処理に用いられている便槽は、
し尿浄化槽、貯溜槽及びくみ取槽を組み合わせたもので
ある。しかしながら、かかる従来の便槽では、バキュー
ム車によるくみ取り処理、汚泥処理が必要で、維持管理
が大変であり、しかも、一時的に利用者が増大するよう
な場合は、最大利用者に見合った容積の便槽を設置して
おかなければならず(従来は、100日分以上貯留できる
容積が必要であると、法により定められている)、設備
費が高くなり不経済であるという問題がある。
また、従来のくみ取り処理を必要とする便槽では、便
所で最も嫌われる臭気の問題を解決することができな
い。
一方、特開昭52−70568号公報には、腐敗室、濾過
室、膨張頁岩、パーライト等の人工骨材を充填し、その
上を土壌で被覆した酸化濾過槽及び貯溜槽をこの順に配
設した汚水浄化処理装置が記載されている。この装置の
酸化濾過槽では、人工骨材を充填したものであるから、
粒径が大きく、処理水の毛管上昇が期待できない。その
結果、酸化濾過槽内が水の飽和状態となり、不飽和状態
を維持することができず、空気(酸素)の供給が困難に
なると共に、嫌気性菌の分泌する硫化物粘液によって目
詰まりが生じ、浄化機能を果たすことができなくなる。
しかも、酸化濾過槽の空間上部に、不透水性部材の外側
にわたって盛土していないので、土壌(人工骨材)内に
動水勾配線A、A′が形成されず、好気性菌による酸化
と嫌気性菌による還元を行うことができない。また、雨
水の装置内への侵入を防ぐことができず、酸化濾過槽が
雨水によって一旦飽和状態になると、不飽和状態を保つ
ことができず、その結果、空気(酸素)が供給されなく
なり、嫌気性菌による目詰まりが進行し、腐敗臭を伴っ
て、浄化機能が失われることになる。
また、特開昭59−82994号公報には、土壌を充填した
蒸発散槽を用いて、微生物による汚水浄化と蒸発散を行
うことが記載されているが、これは、予め、浄化槽で活
性汚泥法により処理したものを、供給層に充填した濾材
で更に高度処理した後、蒸発散槽で蒸発散させる構成を
とっており、蒸発散槽に供給される処理水は、BOD濃度
が極めて低く、有機物をほとんど含まないものであるか
ら、微生物の呼吸作用と代謝活動を活発化して酸化反応
を促進することも、嫌気性菌による還元作用に必要な炭
素源を供給して亜硝酸性、硝酸性窒素の還元、分解を促
進することもできない。更に、蒸発散槽の空間上部に、
不透水性部材の外側にわたって盛土していないので、土
壌内に動水勾配線A、A′が形成されず、好気性菌によ
る酸化と嫌気性菌による還元を行うことができず、しか
も、雨水の装置内への侵入を防ぐこともできないことか
ら、土壌内の不飽和状態を保つことが困難となり、浄化
機能が失われてしまう。
[発明が解決しようとする課題] 本発明の目的は、かかる従来技術の問題点を解消し、
維持管理が容易で、臭気の問題が無く、利用者数の変動
にも対応することのできる、水洗が可能で、容積が小さ
くてすみ、十分な浄化処理が行える改良便槽を提供する
ことにある。
[課題を解決するための手段] 本発明者は、上記目的を達成すべく、鋭意検討を重ね
た結果、腐敗室、濾過室、土壌処理槽及び貯溜槽を組み
合わせ、しかも土壌処理槽を特殊な構成にすればよいこ
とを見出し、本発明を完成するに到った。
即ち、本発明は、腐敗室、濾過室、土壌処理槽及び貯
溜槽をこの順に配設した改良便槽において、該土壌処理
槽が、不透水性部材により、上部が解放された空間を土
中に形成して、該空間内に通気性土壌を充填し、その底
部に集水管を敷設すると共に、該集水管の上方に浸潤部
材を設け、かつ該空間上部に、該不透水性部材の外側に
わたって盛土したものであることを特徴とする改良便槽
である。
[作用] 本発明の改良便槽においては、水洗便所からの流入汚
水を腐敗室にて固液分離機能と微生物の作用により浮上
物、沈澱物、上澄液に分離し、濾過室で上澄液に含まれ
ている浮遊物を濾過し、この上澄液を土壌処理槽に供給
して、土壌中に含まれる微生物の作用により有機物を分
解、脱窒した後、貯溜槽に溜めて汲み取る。
特に、腐敗室を第1腐敗室と第2腐敗室とで構成する
ことにより、浮上物、沈澱物の除去をより完全なものと
することができる。
また、土壌処理槽が、不透水性部材により、上部が開
放された空間を土中に形成して、該空間内に通気性土壌
を充填し、その底部に集水管を敷設すると共に、該集水
管の上方に浸潤部材を設けたものであり、有効に有機物
を分解、脱窒することができる。特に、該空間上部に、
該不透水性部材の外側にわたって盛土したものであるか
ら、上澄液を浸潤部材に供給すると、上澄液は該浸潤部
材から土壌内へ浸潤し、第2図に示すように、集水管の
左右に放物線状に動水勾配線A,A′が形成される。この
動水勾配線の上側は毛管不飽和水帯となり、土壌の間隙
水の負圧が高く、好気性が保持され、好気性菌によって
上澄液中の窒素化合物が酸化されて、亜硝酸性、硝酸性
窒素となる。特に、腐敗室から供給されてくる上澄液
は、溶存酸素が零に近いものであるが、浸潤部材からサ
イホン現象と不飽和の流れで土壌中に浸潤する際に、極
めて効率よく酸素を取り込むことができる。また、この
上澄液は、BOD濃度が高く、土壌微生物にとって餌とな
る有機物を多量に含んでいる。これらによって、微生物
の呼吸作用と代謝活動を活発化し、酸化反応を促進する
ことができる。
一方、動水勾配線の下側は毛管飽和水帯となり、時間
の経過と共に土壌の間隙水の負圧が低くなって、酸欠状
態となる。従って、この帯域では、上記毛管不飽和水帯
で酸化されて生じた亜硝酸性、硝酸性窒素が、通性嫌気
性菌によって還元され、窒素ガスと水に分解される。こ
の際、上澄液に含まれている有機物が、嫌気性菌による
還元作用に必要な炭素源として、亜硝酸性、硝酸性窒素
の還元、分解を促進する。
かくして、一つの処理槽で、酸化と還元とを連続して
行うことができる。
なお、不透水性部材によって形成される空間上部に、
不透水性部材の外側にわたって盛土し、不透水性部材の
内側と外側とを連通させることにより、サイホン現象で
不透水性部材の内側を負圧に保つことができ、動水勾配
線によって区分された毛管不飽和水帯と毛管飽和水帯を
形成することが可能となる。不透水性部材の内側と外側
が連通されていない場合は、内側が正圧となって、内側
全体が嫌気性となり、毛管不飽和水帯と毛管飽和水帯の
両帯域の形成が困難となり、長期間にわたっての使用が
難しくなる。また、この盛土は、雨水を表面流として流
し、装置内に浸入して上記不飽和水帯が飽和状態になる
のを防ぎ、不飽和状態を一層確実に維持する働きもす
る。
かかる本発明の改良便槽は、自然の微生物の浄化作用
を利用するものであるから、利用者数が大きく変動して
も十分に対応することができ、貯溜槽に溜る排水は、極
めてきれいで再腐敗の恐れがなく、また、腐敗室に溜っ
た汚泥は、肥料として処理できるので、バキューム車に
よる汲み取りの必要は全くなく、維持管理が極めて容易
である。
[実施例] 以下、図面により本発明の実施例を説明する。
第1図は、本発明の改良便槽の一例を示す概略縦断面
図、第2図は本発明で用いる土壌処理槽の一例を示す横
断面図である。第1図及び第2図において、1は水洗便
所、2は汚水供給パイプ、は第1腐敗室3aと第2腐敗
室3bとからなる腐敗室、4は濾過室、5はポンプ、6は
ポンプ室である。は土壌処理槽であり、土9中に上部
が開放された空間を形成する不透水性部材8、外空間内
に充填された通気性土壌10、該空間の底部に敷設した集
水管11、集水管11の上方に設けた浸潤部材12、空間上部
に、不透水性部材8の外側、即ち土9の側にわたって形
成した盛土13で構成されている。14は貯溜槽である。な
お、集水管11の排出端部11aは、所定の動水勾配線A,A′
を維持するために、一定の静水頭長さを有するように上
方へ屈曲されている。
土9中に上部が開放された空間を形成する不透水性部
材8としては、合成樹脂製シート、繊維補強プラスチッ
ク、補強コンクリート等を例示することができる。この
不透水性部材8で形成される空間の幅Wは、前記動水勾
配線A,A′を形成し、一つの処理槽で酸化と還元とを連
続して行ううえで、60cm〜4m、特に1m〜3mであることが
好ましい。
また、集水管11としては、例えば、適当数の通水孔を
穿設した合成樹脂パイプや合成樹脂製モノフィラメント
を筒状に編組した直径5〜10mmのパイプを不織布で包ん
だものなどを挙げることができる。
更に、浸潤部材12としては、処理水を土壌中に均等に
不飽和の状態で浸潤させることのできるものであれば如
何なるものてもよいが、例えば、第3図に示すごとき構
造体が好適に用いられる。第3図に示した浸潤部材12に
おいては、吸水性シートからなる管状体21の側面に同じ
く吸水性シートからなる複数個の翼片22,22′を突出形
成させており、管状体21内には剛毛状繊維23が充填さ
れ、その中央部に透水性パイプ24が配線されている。管
状体21の下面外側は、不透水性シート25で覆われてい
る。管状体21及び翼片22,22′を構成する吸水性シート
としては、厚さ1〜10mm程度のポリエステル繊維不織布
が好適に用いられる。
不透水性部材8で形成された空間上部に、不透水性部
材8の外側の土9にわたって設ける盛土13は、通常、土
9の表面から10cm以上の厚さとなるように形成すればよ
い。また、集水管11と浸潤部材12との間隔は、通常、20
〜30cmあれば十分である。
いま、水洗便所1から汚水供給パイプ2を経由して供
給された汚水は、第1腐敗室3a及び第2腐敗室3bにおい
て、微生物の作用により浮上物、沈澱物、上澄液に分離
され、そのうちの上澄液が濾過室4で吸着濾過される。
このように濾過された高BOD濃度の上澄液が、ポンプ室
6内のポンプ5で土壌処理槽に送られる。即ち、濾過
された上澄液は、ポンプ5によって浸潤部材12に送ら
れ、土壌10中に均等に不飽和の状態で浸潤させられる。
なお、山間地等で、濾過室4と土壌処理槽との間に勾
配をつけることができる場合は、ポンプ5及びポンプ室
6を省略して、自然の勾配により上澄液を濾過室4から
土壌処理槽へ送ることができる。
土壌10内では、第2図に示すように、集水管11の左右
に放物線状に動水勾配線A,A′が形成され、この動水勾
配線A,A′の上側は毛管不飽和水帯となり、土壌の間隙
水の負圧が高く、好気性が保持されている。BOD濃度の
高い上澄液が土壌10中に浸潤する際に効率よく酸素を取
り込み、この帯域において、好気性菌による活発な酸化
が行われ、上澄液中の有機性、アンモニア性窒素が酸化
されて、亜硝酸性、硝酸性窒素となる。
このように酸化処理を受けた上澄液は、動水勾配線A,
A′の下側の毛管飽和水帯(嫌気性帯域)に浸み込み、
上記毛管不飽和水帯で酸化されて生じた亜硝酸性、硝酸
性窒素が、通性嫌気性菌によって還元され、窒素ガスと
水に分解される。
かくして、脱窒処理を施された上澄液は、集水管11か
ら貯溜槽14へ排出される。
なお、盛土13で不透水性部材8の内側と外側とを連通
させることにより、サイホン現象で不透水性部材8の内
側を負圧に保つことができ、動水勾配線A,A′によって
区分された毛管不飽和水帯と毛管飽和水帯を形成し、酸
化処理と還元処理とを順次施すことが可能となるが、集
水管11の排出端部11aを左右に回動自在とするかあるい
は上下に伸縮自在とする等により、その静水長さを変更
可能にしておくと、不透水性部材8の内側と外側の負圧
差を調節して、動水勾配線A,A′の位置を上下に移動制
御することができるので望ましい。
[発明の効果] 本発明の効果は次の通りである。
(1)本発明の改良便槽で処理されて貯溜槽に溜った排
水は、BOD、CODが共に3ppm以下、大腸菌が30個/ml以
下、全窒素が20ppm以下、硝酸性窒素が10ppm以下であ
り、草花、樹木への散水、雑用水として使用することが
でき、また、腐敗室に溜った汚泥は肥料として処理でき
るので、バキューム車による汲み取りの必要はない。従
って、臭気が発生するという問題もない。
(2)従来の便槽では、沈殿汚泥は一貫して増量傾向を
たどるが、本発明の改良便槽では、沈殿汚泥は一貫して
減少するので、社会的に問題となっている汚泥処理にお
いて、汚泥処理に要する作業量、費用を軽減することが
できる。
(3)駆動装置を全く必要としないか、あるいは駆動装
置を使うとしても上澄液を送るためのポンプだけであ
り、特別な運転操作を必要とせず、設備費、維持管理費
も高い。
(4)自然の微生物による浄化を利用するものであるか
ら、流入汚水量の変動による影響は直接的に受けにく
く、水洗便所の利用者数の大きな変動にも十分対処する
ことができ、貯留容積も7日分以下と大幅に低減するこ
とができる。
従って、本発明の改良便槽は、家庭用便所、公衆便所
や公共施設、キャンプ場、海水浴場、スキー場、別荘な
どの便所の汚水処理に極めて適しており、環境汚染を防
ぐうえで非常に有意義な発明である。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の改良便槽の一例を示す概略縦断面図、
第2図は本発明の改良便槽に使用する土壌処理槽の一例
を示す横断面図、第3図は本発明の改良便槽に使用する
土壌処理槽で用いる浸潤部材の一例を示す横断面図であ
る。 ……腐敗室 3a……第1腐敗室 3b……第2腐敗室 4……濾過室 ……土壌処理槽 8……不透水性部材 9……土 10……通気性土壌 11……集水管 11a……集水管排出端部 12……浸潤部材 13……盛土 21……管状体 22、22′……翼片

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】腐敗室、濾過室、土壌処理槽及び貯溜槽を
    この順に配設した改良便槽において、該土壌処理槽が、
    不透水性部材により、上部が解放された空間を土中に形
    成して、該空間内に通気性土壌を充填し、その底部に集
    水管を敷設すると共に、該集水管の上方に浸潤部材を設
    け、かつ該空間上部に、該不透水性部材の外側にわたっ
    て盛土したものであることを特徴とする改良便槽。
  2. 【請求項2】前記浸潤部材が、吸水性シートの管状体側
    面に、吸水性シートからなる複数個の翼片を突出形成せ
    しめたものである請求項1記載の改良便槽。
  3. 【請求項3】前記集水管の排出端部の静水頭長さを変更
    可能とした請求項1又は2記載の改良便槽。
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