JP2605071B2 - 射出成形用樹脂組成物 - Google Patents

射出成形用樹脂組成物

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は熱可塑性樹脂よりなり、射出成形することに
より軽量化成形品が得られる射出成形用樹脂組成物に関
するものである。
[従来の技術] 熱可塑性樹脂において、例えばポリフェニレンサルフ
ァイド樹脂,ポリフェニレンオキサイド樹脂,ポリエー
テルイミド樹脂,ポリエーテルスルホン樹脂,芳香族ポ
リエステル樹脂,ポリカーボネート樹脂等は優れた耐熱
性を有していて、しかも溶融熱安定性,離型性等の成形
性にも優れ、無機質の繊維状物、微粉状等の充填材を配
合した樹脂組成物から電気・電子製品あるいは自動車部
品等が成形されて実用に供されている。しかしながら、
使用目的によっては強度の向上や成形収縮率、線膨張係
数をより低減させた成形品を得ることが必要となり、か
かる場合樹脂組成物における充填材の配合量を増加して
対応しているが、その結果として成形品の比重は高いも
のとなる。この様な比重の大きい成形品は、例えば慣性
力で運動する歯車等においては回転が滑らかになるなど
の長所となりうるが、他方、小動力で稼働させる部品、
あるいは電気信号に厳密な対応が求められる電気部品等
には欠点となる。
上記の如き欠点を解消するために軽量化充填材とし
て、例えばガラスバルーン,シラスバルーン,カーボン
バルーン等の中空球充填材の充填が熱硬化性樹脂である
液状のポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等に
対して行なわれている。このような液状の樹脂組成物は
一般には金型による注型成形もしくは予備成形されたプ
リプレグをプレス成形することによって成形品とされて
いる。
しかしながら、射出成形が可能である熱可塑性樹脂は
熱硬化性樹脂に比較して、はるかに大きい分子量を有し
ていて、それ故に溶融粘度が高く、樹脂に中空球充填材
を充填すると、押出混練時あるいは射出成形時に中空球
は破壊されてしまい、成形品の軽量化という点に関して
は、ほとんど寄与しないという問題点がある。
[発明の解決しようとする問題点] 本発明は、前述の如き問題点を解消しようとするもの
であり、射出成形が可能である熱可塑性樹脂に中空球充
填材が充填された樹脂組成物において、その成形品の軽
量化が達成され得る熱可塑性樹脂組成物を提供すること
を目的とするものである。
[問題点を解決するための手段] 即ち、本発明は、芳香核を有する重縮合系熱可塑性樹
脂,中空球充填剤及びポリエチレン樹脂によりなる、あ
るいは上記の熱可塑性樹脂、中空球充填剤、中空球以外
の充填剤及びポリエチレン樹脂よりなる樹脂組成物であ
って、上記のポリエチレン樹脂が0.1〜5重量%含有さ
れてなる射出成形用樹脂組成物を提供するものである。
本発明において、芳香族を有する重縮合系熱可塑性樹
脂としては、例えばポリカーボネート樹脂,ポリアミド
樹脂,ポリフェニレンオキサイド樹脂,ポリフェニレン
サルファイド樹脂,ポリエーテルスルホン樹脂,ポリエ
ーテルイミド樹脂,ポリアリレート樹脂,芳香族ポリエ
ステル樹脂,ポリアミド樹脂等の重縮合系熱可塑性樹脂
が好適であり、かかる樹脂は通常射出成形され得るが、
射出成形においてシリンダー温度は240℃以上にて好適
に成形されるものである。而して、成形品としての種々
なる用途において精密成形性、耐熱性、機械的強度及び
環境条件の変化に対する寸法安定性などに対処し得る樹
脂としてはポリフェニレンオキサイド樹脂,ポリフェニ
レンサルファイド樹脂,ポリエーテルスルホン樹脂,芳
香族ポリエステル樹脂,ポリエーテルイミド樹脂等の芳
香核を有する重縮合系熱可塑性樹脂が特に好適である。
本発明において上記に例示されるような重縮合系熱可
塑性樹脂が好適であるとする理由は、かかる熱可塑性樹
脂の多くは所謂、耐熱性樹脂と称されるものであり、成
形において、特に射出成形におけるシリンダー温度を高
温としなければならないが、このような高温において、
樹脂組成物に含有される中空球充填剤に対するポリエチ
レン樹脂が後記の如き作用効果を生ずることによるもの
である。
中空球充填剤はその材料に種々なるものが用いられて
中空球とされ実用に供されていて、例えばガラス,シリ
カ,アルミナシリカ,アルミナ,ジルコニア,シラス,
フェノール樹脂,尿素樹脂,塩化ビニリデン−アクリロ
ニトリル共重合樹脂等よりなるものがある。而して、熱
可塑性樹脂としては射出成形においてシリンダー温度は
240℃以上のものであり、溶融温度が高く、しかも溶融
粘度も高いものであることから、中空球充填剤としては
耐熱性に優れていて、しかも耐圧性を有するものである
のが望ましい。したがって、ガラス,シリカ,アルミナ
等の無機質からなる材料であって、入手が容易であり、
コスト的にも有利なガラスバルーン,シリカバルーン,
カーボンバルーン,シラスバルーンなどが好適である。
かかる中空球充填剤としては市販品として、例えばガラ
スバルーンにおいて“グラスバブルス”(住友スリーエ
ム社)、“スリーエム・グラスバブルズ”(米国スリー
エム社)、“ガラス・マイクロバルーン”(米国エマー
ソン・カミング社)を、またカーボンバルーンにおいて
“クレカスフェアー”(呉羽化学社)、“カーボンスフ
ェアー”(米国ゼネラル・テクノロジー社)等を挙げる
ことができる。
また、中空球充填剤はそれが含有される樹脂組成物が
射出成形用であって精密成形品の成形に応用されるとこ
ろから、中空球の粒径としては、平均粒径が200μm以
下であることが好ましく、更に好ましくは100μm以下
のものである。中空球充填剤の配合量は、本発明の射出
成形用樹脂組成物を形成して得られる成形品の目的とす
る軽量化の程度によって適宜決定されるが、樹脂組成物
の成形時の流動性も考慮して芳香核を有する重縮合系熱
可塑性樹脂に対して5〜80重量%であるのが好ましい。
本発明における射出成形用樹脂組成物に含有されるポ
リエチレエン樹脂は特に限定されるものではなく、高密
度あるいは低密度の何れであってもよく、また、メルト
フローレイトの大小にかかわらず使用できる。しかしな
がら、熱可塑性樹脂の射出成形における成形温度が特に
高い温度を要する樹脂である場合は、メルトフローレイ
トの大きいものの方がより望ましい。このポリエチレン
樹脂は樹脂組成物中0.1〜5重量%の範囲で充分効果が
認められる。而して、配合量が0.1重量%未満であると
予備混合時あるいは押出混練時において均一分散性が劣
り、しかも効果の再現性が乏しくなる。一方、5重量%
を越えると混練時あるいは成形時にガスの発生原因とな
る。
ポリエチレン樹脂の配合時の形態としては、特に限定
されるものではないが、作業上の取扱い易さの点で粉体
であるのが好適である。
ポリエチレン樹脂は熱可塑性樹脂としては射出成形が
可能であるが、射出成形におけるシリンダーの好適な温
度は220℃とされている。而して、本発明においては芳
香環を有する重縮合系熱可塑性樹脂は射出成形において
シリンダー温度は240℃以上にて好適に成形されるもの
であることから、ポリエチレン樹脂はかかる高温の成形
温度において溶融状態から、むしろ液化状態になってい
る。この結果、本発明の熱可塑性樹脂の射出成形におけ
る240℃以上の温度でのシリンダー内において溶融状態
の芳香環を有する重縮合系熱可塑性樹脂と中空球充填材
との間でポリエチレン樹脂は液化されて潤滑剤として作
用し、これが中空球の破壊を防ぐ効果を生ずるものと推
測される。ところで、高温時に上記の如く液化状態で潤
滑作用を示すもので、特に240℃以上において分解する
ことのないものは他の材料では見い出せない。
本発明の射出成形用樹脂組成物には芳香核を有する重
縮合系熱可塑性樹脂と中空球充填剤とよりなる樹脂組成
物に、ポリエチレン樹脂が含有されるが、上記の樹脂組
成物に更に中空球以外の充填剤、例えばガラスファイバ
ー、カーボンファイバー、チタン酸カリウム、アスベス
ト、炭化ケイ素、窒化ケイ素などからなる繊維やセラミ
ックス繊維などの繊維状強化材、炭酸カルシウム,ケイ
酸カルシウム,炭酸マグネシウム,酸化マグネシウム,
酸化亜鉛,酸化チタン,三酸化アンチモン,カオリン,
クレー,バイロフィライト,ベントナイト,セリサイ
ト,ゼオライト,マイカ,雲母,ネフェリンシナイト,
タルク,ワラストナイト,フェライト,石コウ,石英
粉,ガラスビーズ,ガラスフレークなどの無機質充填材
も配合され得る。これらの配合量は、樹脂組成物中の中
空球充填材の一部を代替する範囲とされる。また、少量
の離型剤,滑剤,耐熱安定剤,耐候性改良剤等を含有さ
せることもできる。
本発明の射出成形用樹脂組成物において、芳香核を有
する重縮合系熱可塑性樹脂と中空球充填剤及びポリエチ
レン樹脂よりなる樹脂組成物、更に必要によって配合さ
れる充填剤等を配合し混練して樹脂組成物とする方法は
特に限定されることなく、通常粉状物の混合に用いられ
る混合機、例えばヘンシエルミキサー,タンブラーミキ
サー,V型ミキサー等によって機械的に均一混合させる方
法によって行なうことができる。次に、その混合物をス
クリュー式の単軸または二軸の混練押出機に投入し、溶
融混練してストランド状に押出した後、冷却し、ペタレ
イザーによってペレット状の成形材料とすることによっ
て射出成形に好適に使用され、軽量化成形品を得ること
ができる。
[実施例] 実施例及び比較例で使用した原材料をまとめて次に示
す。
ポリフェニレンサルファイド樹脂[PPSと略記]:“ラ
イトンPR−06"(米国フィリップス石油社製) ポリエーテルスルホン樹脂[PESと略記]:“ビフトレ
ックスPES300P"(英国ICI社製) ポリエーテルイミド樹脂[PEIと略記]:“ウルテム100
0"(米国ゼネラル・エレクトリック社製) 芳香族ポリエチレン樹脂[LPCと略記]:“ベクトラA95
0"(米国セラニーズ社製) ポリカーボネート樹脂[PCと略記]:“ノバレックス70
25"(三菱化成社製) ガラスバルーン:“グラスバブルスSSX"(住友スリーエ
ム社製) カーボンバルーン:“クレカスフェアーA−200"(呉羽
化学社製) ポリエチレン樹脂[PEと略記]:“グレードYF−30"
(三菱油化社製) 但し、ペレット状のものを液体窒素で冷凍して粉砕し
た粉体を使用。
ガラス繊維[GFと略記]:“CS−03MA497"(旭ファイバ
ーグラス社製) カーボン繊維[C.C.Fと略記]:“HTA−C6−S"(東邦レ
イヨン社製) 実施例1〜6及び比較例1〜3 前記材料を表1に示す配合割合として所定量を秤取
し、V型ミキサーで予備混合した後、シリンダー温度が
300℃に設定された異方向押出機(中谷機械社製、スク
リュー径30mm)のホッパに投入し、混練押出してペレッ
トを得た。次いで、このペレットをシリンダー温度が32
0℃に設定された3オンス射出成形機(日本製鋼所製)
及び金型温度が135℃に設定された金型を用いて射出成
形することによって25mm×75mm×3mmtの試験片を得た。
このようにして得られた試験片について、水中置換法
(JIS K 6911に準拠)によって比重を測定した。この結
果を表1に示す。
表1より、実施例1〜6は比重が極めて小さく、これ
に比してPEを配合しない他は実施例1〜4と同様にして
得られた比較例1、実施例5と同様にして得られた比較
例2及び実施例6と同様にして得られた比較例3はいず
れも対応する実施例より大きな比重となっていて、PEの
配合による成形品の軽量化効果が認められる。
実施例7〜10及び比較例4〜7 前記原材料を表2に示す配合割合として所定量を秤取
し、V型ミキサーで予備混合した後、異方向押出機のシ
リンダー温度、射出成形機のシリンダー温度及び金型温
度を表2に示す温度に設定した他は実施例1〜6と同様
にして試験片を得た。
この試験片について実施例1〜6と同様に比重を測定
し、その結果を表2に示す。
表2より、PE1%の添加の有無により成形品への比重
の影響が明らかであり、実施例7〜10において成形品の
軽量化効果が認められる。
[発明の効果] 本発明の射出成形用樹脂組成物は、低成形収縮性、溶
融安定性、離型性等の成形性に優れ、特に軽量化される
とともに優れた機械的強度、剛性及び低熱膨張率を有す
る成形品の成形を可能とするという効果を有する。した
がって上記樹脂組成物を、例えば宇宙・航空機器、自動
車、事務機器、情報機器、医療機器さらに電気・電子機
器、一般産業用機器などあらゆる分野の機器、部品類の
成形に応用することによって、所望の軽量化を達成する
ことができる。さらに具体的に、高精密振動部品、例え
ば光ピックアップのアクチュエータ等の成形に応用する
ことによって高い比弾性(弾性率/比重)を充分に発揮
させることができるという効果も認められる。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】芳香核を有する重縮合系熱可塑性樹脂、中
    空球充填剤及びポリエチレン樹脂よりなる樹脂組成物で
    あって、上記ポリエチレン樹脂が0.1〜5重量%含有さ
    れてなる射出成形用樹脂組成物。
  2. 【請求項2】中空球充填剤が芳香核を有する重縮合系熱
    可塑性樹脂に対して5〜80重量%含有されてなる特許請
    求の範囲第1項記載の組成物。
  3. 【請求項3】芳香核を有する重縮合系熱可塑性樹脂、中
    空球充填剤、中空球充填剤以外の充填剤及びポリエチレ
    ン樹脂よりなる樹脂組成物であって、上記ポリエチレン
    樹脂が0.1〜5重量%含有されてなる射出成形用樹脂組
    成物。
  4. 【請求項4】中空球充填剤が芳香核を有する重縮合系熱
    可塑性樹脂に対して5〜80重量%含有されてなる特許請
    求の範囲第3項記載の組成物。
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