JP2604372B2 - 軟磁性非晶質合金の製法 - Google Patents

軟磁性非晶質合金の製法

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) この発明は、トランスや磁気ヘッドに使用される軟磁
性材料の製法に関するもので、特にCoとYを主成分とす
る軟磁性非晶質合金の製法にかかわるものである。
(従来の技術) 従来、トランスや磁気ヘッド等に使われる軟磁性体と
してFe−Si合金、Fe−Si−Al合金、Fe−Ni合金等が多用
されて来た。しかし、軟磁性体としての特性は不十分で
ある。このような、材料(結晶質材料)に代り、近年、
非晶質材料が注目されている。特にスパッタ法で作られ
たCoを主成分とする非晶質合金は、高透磁率、高磁束密
度の故に多大の注目を集めているが、この材料を、トラ
ンスや磁気ヘッドに採用しようとするとき、熱的安定性
が問題となって来た。その中で、CoとYとを主成分と
し、スパッタ法で作製された軟磁性非晶質合金膜は、Y.
Shimadaによって、1984年学術雑誌“Physica Status So
lidi(a)”第83巻255頁乃至261頁(以下単に学術雑誌
と略)に報告されたように、結晶化温度Txが高い点で、
他には無い優れた特徴を有している。特に、同学術雑誌
第257頁Fig.2には、Co1-XYx非晶質合金の結晶化温度Tx
がx=0.1位で最大約560℃となる例が示され、x=0.05
でTx=510℃,x=0.17でTx=450℃となることも示されて
いる。この様子を第1図に点線で転記して示す。また、
この時の試料の製法は、同学術雑誌に引用されたY.Shim
adaおよびH.Kojimaによる論文、すなわち、1982年発行
の学術雑誌“Journal of Applied Physics"第53巻3156
頁乃至3160頁の記載(以下単に引用文献と略)、特に第
3156頁左欄下より2行目乃至同頁右欄上より1行目に記
されたごとく、Co板上にY小片を配置したターゲットを
用い、スパッター法により形成されたとされている。
Co1-XYx系非晶質合金のこのような特性と製法は、非
常に有用なものであったが、X≧0.2では、結晶化温度T
xが350℃以下となり、実用に供し得ないという欠点があ
った。何故ならば、結晶化温度Txが350℃以下のものは
トランスや磁気ヘッドに加工する工程での熱処理により
磁気特性が劣化するからであり、また、トランスや磁気
ヘッドに加工後も、徐々にではあるが、磁気特性が劣化
し易い(経時変化)からである。
(発明が解決しようとする問題点) 本発明の目的は、CoとYを主成分とする非晶質合金の
適切な組成と製法を採用することにより、その結晶化温
度を大巾に高くし、磁気特性の安定性を向上させること
にある。
(問題点を解決するための手段) 本発明は、CoとYとを主成分とする軟磁性非晶質合金
の製法であって、Yの含有量が45原子%以下から成る合
金をアーク溶解法により合成し、この合金をターゲット
としてスパッター法により形成された材料が非晶質軟磁
性体であり、その結晶化温度が350℃以上になし得るこ
とを発見したことに由来する。
(作用) 前記学術雑誌に記載されたCoY系非晶質合金の製法と
本発明による非晶質合金の製法とは、主としてターゲッ
トの製法が異なる。現時点では、ターゲットの製法の差
がどのように結晶化温度Txの増大に連なるのか不明であ
るが、非晶質膜を形成する際の素子の配列にミクロな差
を生じていることと、膜中に混入する不純物(主として
酸素)の存在が原因と推定される。
(実施例) 平均粒径が約1mmのCoおよびY粒子を表に示すような
7種の分量で秤量し、直径50mm深さ5mmの凹みを有する
水冷銅板上にほぼ均一となるように並べ、これを陽極
に、タングステン針を陰極にしてアルゴンカス0.7気圧
中でアーク溶解し、CoY合金板を7種作製した。この
際、アーク溶解に先立ち、容器内を10-6Torr以下となる
ように真空に引き、またアーク溶解中は、タングステン
針の移動を各部分3回以上重なるように走査し、全体の
均一化を図った。
前記7種のCoY合金板の表面を研磨し、直径50mm、厚
さ3mmのターゲット(実施例#1,#2,#3,#4,#5,#6
および参照例)を作製した。
これらのターゲットを用いてスパッタ容器内にセット
し、アルゴンガス40mTorr中でDCスパッタ法(電圧1.0K
V、電流60mA)により水冷銅基板上CoY合金を成膜した。
この際、スパッタに先立ち、スパッタ容器内を2×10-7
Torrとなるまで真空に引き、その後3時間のプリスパッ
タ(アルゴン圧40mTorr、電圧1.0KV、電流60mA)を予め
行った後試料を作製した。
それぞれのターゲットから作られた7種の膜はY線回
折および電子線回折により非晶質であることを確認し
た。膜の組成、結晶化温度Txおよび酸素含有量を、それ
ぞれEPMA、示差熱分析、およびSIMSにより分析したとこ
ろ、表のような結果が得られた。なお、SIMSによる酸素
分析は推定値であるが、後述の比較例により半分以下の
示指値であった。
(比較例) 前記引用文献と同様に直径50mm、厚さ3mmのCo円板上
にYの小片(5×5mm,厚さ0.5mm)を32個ほぼ均等に配
置してターゲットとし、アルゴンガス40mmTorr中でDCス
パッタ法(電圧1.0KV,電流60mA)により水冷銅基板上に
CoY合金を成膜した。この際、スパッタに先立ちスパッ
タ容器内の残留ガス圧は10-5Torrに達した時点でプリス
パッタを開始し、前記実施例と同様の条件で3時間のプ
リスパッタ後試料を作製した。
前記実施例と同様の方法で膜の結晶構造、組成、結晶
化温度および、酸素含有量を分析したところ表のように
なった。
表からも明らかなごとく、結晶化温度Txは、Yの含有
量が10.5乃至45原子%の範囲で350℃を越える値となっ
ており、比較例の300℃とは大きな差を有している。こ
の様子を図1に示す。同図には前記学術雑誌のデータも
換算して併記した。Yの含有量が同一であっても、本発
明による実施例の結晶化温度が100℃以上高くなってい
る。
第2図に本発明による実施例と、比較例の各温度にお
ける2時間の熱処理後の保磁力Hcの相対変化ΔHc/Hcを
示す。明らかに本発明による非晶質合金の方が熱的安定
性に優れていることが分かる。このことから、トランス
や磁気ヘッドの加工時の特性劣化や、加工後の経時変化
が大巾に改善される。特に磁気ヘッドについては、薄膜
磁気ヘッド特有の製造プロセス中、有機フォトレジスト
膜の熱処理工程があり、最低限必要な200℃2時間の熱
処理に耐えることが、Yの含有量10.5乃至45原子%で十
分耐え得ることが確認できた。
(発明の効果) 本発明による実施例は明らかに従来法より結晶化温度
Txが高く、保磁力Hcの変化ΔHc/Hcから見た耐熱性も従
来法より格段に優れている。このため、前述のように製
造プロセス中200℃を越える加熱工程を持つ薄膜磁気ヘ
ッドにも採用が可能となったばかりか、完成後の磁気特
性の経路変化も結晶化温度Txの増大と共に改良された。
このように、本発明の産業上の効果は非晶質軟磁性合
金膜の応用分野を一段と広めるものである。
なお、実施例で述べたように、酸素の混入が特性を劣
化させる傾向にあるが、この酸素を除き、不可欠的に入
る少量の不純物の混入があっても、本発明の効果が発揮
されるので、本発明の排除するところではない。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明による実施例と従来例の非晶質合金の結
晶化温度を示した図、第2図は本発明による実施例と従
来例による非晶質合金の保磁力の変化から見た熱的安定
性を示した図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 後藤 恒昭 千葉市弥生町1−170−1−530 (72)発明者 水谷 宇一郎 名古屋市南区外山町2−12−6 (56)参考文献 Physica Status So lidi(a)第83巻、225−261頁 1984年 Journal of Applie d Physics 第53巻、3156− 3160頁 1982年

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】CoとYを主成分とし、Yの含有量が10原子
    %以上45原子%以下からなる合金をアーク溶解法により
    合成し、この合金をターゲットとしてスパッター法によ
    り作製することを特徴とする軟磁性非晶質合金の製法。
JP62108355A 1987-04-30 1987-04-30 軟磁性非晶質合金の製法 Expired - Lifetime JP2604372B2 (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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Journal of Applied Physics 第53巻、3156−3160頁 1982年
Physica Status Solidi(a)第83巻、225−261頁 1984年

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