JP2546275B2 - 軟磁性薄膜 - Google Patents

軟磁性薄膜

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は軟磁性薄膜に関し、特に高密度記録に好適な
性能を発揮する磁気ヘッド等に使用される軟磁性薄膜に
関する。
〔発明の概要〕
本発明は、磁気ヘッド等に使用されるFe−Ga−Si系あ
るいはFe−Ga−Si−Ru系の軟磁性薄膜において、その形
成時に微量の酸素を混入させることにより、優れた軟磁
気特性を有する軟磁性薄膜の提供を可能とするものであ
る。
〔従来の技術〕
たとえばオーディオテープレコーダやVTR(ビデオテ
ープレコーダ)等の磁気記録再生装置においては、記録
信号の高密度化や高品質化が進行しており、鉄等の強磁
性金属粉末を磁性粉とするいわゆるメタルテープや、強
磁性金属材料を真空薄膜形成技術によりベースフィルム
上に直接被着した、いわゆる蒸着テープ等が実用化され
ている。
ところで、このような高保磁力を有する磁気記録媒体
の特性を十分に活かして良好な記録再生を行うために
は、磁気ヘッド材料の特性として、高い飽和磁束密度を
有するとともに、同一の磁気ヘッドで再生を行おうとす
る場合においては、高透磁率を併せて有することが要求
される。
このような要望に応える軟磁性材料として、これまで
に種々の軟磁性材料が開発されており、本願出願人は先
に特開昭61−234509号公報においてセンダスト合金中の
Alを同族元素のGaに置換えた、Fe−Ga−Si系合金を提案
した。このFe−Ga−Si系合金は、センダスト合金と同程
度の軟磁気特性(透磁率や保磁力等)を有し、飛躍的に
高い飽和磁束密度を有する材料として注目されている。
〔発明が解決しようとする問題点〕
ところで、上述のような軟磁性材料がたとえば複合磁
気ヘッドの磁性膜として使用される場合は、フェライト
等のコア材料と接合される。しかし、磁気ヘッドの製造
工程においては、ガラス融着等の高温の熱処理を経る
と、コア材料に含有されている酸素が磁性膜へ移行し、
両者の間に反応層が形成される虞れがあった。このよう
な反応層は絶縁性の酸化物を主成分としているため、上
記コア材料と磁性膜との間に疑似ギャップを形成し、出
力の周波数特性にいわゆるうねりが生じたり、S/N比を
劣化させる原因となっていた。
そこで本発明は、コア材料と接合される磁性膜として
使用された場合にも酸素の移行を生じず、したがって疑
似ギャップの形成を防止することのできるような軟磁性
薄膜の提供を目的とする。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明者らは、コア材料から磁性膜への酸素の移行を
阻止するためには、予め磁性膜に微量の酸素を混入させ
ておき、該磁性膜の還元力を低下させておくことが有効
であり、さらに酸素を含有することにより磁性膜の軟磁
気特性も向上することを見出し、本発明に至ったもので
ある。
すなわち、本発明にかかる軟磁性薄膜は、上述の目的
を達成すべく提案されたものであり、Fe,Ga,Siを主体と
するとともに、酸素を含有し、その組成が一般式(FeaG
abSic100-xOx(ただし、式中のa,b,c,xは、それぞれ
元素の割合を原子%で表す。)で表され、組成範囲が 68≦a≦84 1≦b≦23 6≦c≦31 a+b+c=100 0.05≦x≦10 であることを特徴とするものである。
さらには、Fe,Ga,Siを主体とするとともに、Ru及び酸
素を含有し、その組成が一般式(FeaGabSic100-x-yRu
yOx(ただし、式中のa,b,c,x,yは、それぞれ原子の割合
を原子%で表す。)で表され、組成範囲が 68≦a≦84 1≦b≦23 6≦c≦31 a+b+c=100 0<y≦12 0.05≦x≦10 であることを特徴とするものである。
ここで、前述のFe,Ga,Siの組成範囲は軟磁性薄膜の磁
気特性の観点から設定されたものであり、この範囲を外
れると高飽和磁束密度、高透磁率等を確保することが難
しくなる。
また上述の酸素の含有量の範囲は、軟磁性薄膜の磁気
特性および反応層抑制効果の観点から設定されたもので
あり、0.05原子%以下では反応層抑制効果が十分に現れ
ず、また10原子%以上では低保磁力、高透磁率等を保持
することが難しくなる。
この酸素の導入方法としては、これら軟磁性薄膜をス
パッタリングにより成膜する際に、スパッタリング雰囲
気中に気体酸素を導入しておけば良い。
スパッタリング法としては、通常行われるものであれ
ばいかなるものであっても良く、二極直流式スパッタリ
ング、三極式スパッタリング、四極式スパッタリング、
マグネトロン式スパッタリング、高周波式(RF)スパッ
タリング、バイアス式スパッタリング、非対称交流式ス
パッタリング、対向ターゲット式スパッタリング、イオ
ンスパッタリング等の手法がいずれも採用できる。
スパッタリングに際してのガス圧は、1×10-4〜2.0
×10-4Torrの範囲であることが好ましい。このガス圧が
2.0×10-4Torrを越えるとスパッタリングの速度が遅く
なり、実用的でない。
また上述の方法において、気体酸素の代わりに水分を
混入するのも良い。水分を混入する方法としては、不活
性ガスを純水を封入した容器内に導入した後、真空室へ
導入する等の方法が挙げられる。
なお、軟磁性薄膜に酸素を導入方法するには、上述の
ようなスパッタリング雰囲気中に酸素あるいは水分を混
入する方法以外に、たとえばあらかじめ酸化シリコン等
の酸化物としてターゲット中に混入させておくことも可
能である。
さらに、薄膜の形成はスパッタリングによらなくと
も、真空蒸着、イオン・プレーティング等によっても可
能である。
また、本発明にかかる軟磁性薄膜には、耐摩耗性を向
上させるために、Ruを全体の12原子%まで添加しても良
い。
また、Feの15原子%までをCoあるいはNiで置換しても
良い。
さらに、また、耐食性および耐摩耗性を向上させるた
めに、GaおよびSiの合計量の6原子%までをTi,Cr,Mn,Z
r,Nb,Mo,Ta,Ra,W,Os,Ir,Re,Ni,Pd,Pt,Hf,Y,B,Inで置換
しても良い。
〔作用〕
本発明においては、Fe−Ga−Si系あるいはFe−Ga−Si
−Ru系の軟磁性材料に所定の範囲で酸素および他の金属
元素を添加して軟磁性薄膜を形成することにより、良好
な透磁率および保磁力を達成することが可能となる。
また、上記軟磁性薄膜は予め酸素が取込まれたことに
より還元力が低減され、たとえば磁気ヘッドの磁性膜と
してフェライト等のコア材料と接合された時にも、該コ
ア材料からの酸素の移行を阻止し、疑似ギャップの形成
を防止することができる。
〔実施例〕
以下、本発明の好適な実施例を、実験結果にもとづい
て説明する。
第1の実施例 本実施例は、Ruを含有するFe−Ga−Si系合金をターゲ
ットとし、アルゴンを主体とするスパッタリング雰囲気
中の酸素量を変化させて種々の組成を有する軟磁性薄膜
を作成した例である。
まず、Fe,Ga,Si,Ruを秤量し、これらを混合した軟磁
性材料を高周波誘導加熱炉を用いて溶解した後、鋳造・
機械加工を行い、Fe71Ga8Si17Ru4(原子%)の組成を有
する直径50mm、厚さ1mmのスパッタリング用合金ターゲ
ットを作成した。
次に、RFスパッタリング装置内に上記合金ターゲット
を載置し、該合金ターゲットと対向するように水冷装置
付きの載置台に結晶化ガラス等の基板を載置した。次い
で、アルゴン雰囲気中の酸素量を変化させながら、ガス
圧4mTorr、投入電力100Wの条件にてRFスパッタリングを
行い、膜厚約4μmの軟磁性薄膜を作成した。
上述のようにして作成された各軟磁性薄膜について55
0℃、1時間の真空アニールを行い、1MHzにおける透磁
率および保磁力を測定した。
この結果を、第1図に示す。図中、左側の縦軸は透磁
率、右側の縦軸は保磁力をそれぞれ表し、黒丸のプロッ
ト(点線のグラフ)は透磁率、白丸のプロット(実線の
グラフ)は保磁力にそれぞれ対応している。また横軸は
スパッタリング雰囲気中の酸素量(体積%)を表す。な
お、この図には、比較のために酸素を全く含まない雰囲
気中で作成された軟磁性薄膜のデータ(点Aおよび点B
参照)も併せて示した。
この図をみると、酸素を全く含まない雰囲気中で作成
された軟磁性薄膜は透磁率が約2,000(点A参照)、保
磁力は約0.4(点B参照)である。しかし、雰囲気中の
酸素量が増加するにしたがって透磁率、保磁力共に改善
される傾向を示し、たとえば、酸素が約7体積%含まれ
た雰囲気中で作成された軟磁性薄膜は、透磁率が約3,80
0に向上し、保磁力は約0.1に低減されていた。
このように、スパッタリング雰囲気中に酸素を少量混
入することにより、良好な軟磁気特性を有する軟磁性薄
膜が得られた。
第2の実施例 本実施例は、Ruを含有する、あるいは含有しないFe−
Ga−Si系合金をターゲットとして、種々の組成を有する
軟磁性薄膜を作成した例である。
まず、Fe,Ga,Siを種々の割合で含む合金ターゲット
を、第1の実施例に記載の方法に準じて作成した。この
とき、合金ターゲットによっては所定量のRuを添加し
た。
次に、これらの各ターゲットについて、酸素を約10体
積%含む雰囲気中で、ガス圧4mTorr、投入電力100Wの条
件にてRFスパッタリングを行った。
これらの軟磁性薄膜について真空アニールを行い、膜
厚約4μmの軟磁性薄膜I,II,III,IV,Vを作成した。こ
こで、軟磁性薄膜IだけはRuを含有していない。
比較例 上述の第2の実施例に対する比較例として、Ruを含
む、あるいは含まない軟磁性薄膜を、酸素を含まない雰
囲気下で作成した例について述べる。
実験は上述の第2の実施例に記載した方法に準じて行
い、酸素を含まないアルゴン雰囲気下で同様にRFスパッ
タリングを行い、Ruを含有しない軟磁性薄膜VI、および
Ruを含有する軟磁性薄膜VIIおよびVIIIを作成した。
上述の第2の実施例および比較例において得られた軟
磁性薄膜の組成、透磁率、保磁力を調べた結果を第1表
にまとめた。
この表をみると、まず軟磁性薄膜Iないし軟磁性薄膜
Vにおいて、酸素は全組成の0.5〜1.5原子%を占めてお
り、いずれも高い透磁率と低い保磁力を示し、良好な軟
磁気特性を有することが明らかとなった。
ここで、まずRuを含まない軟磁性薄膜Iをみると、わ
ずか0.5原子%の酸素の含有により、後述の軟磁性薄膜V
Iと比較して著しく軟磁気特性が改善されていることが
わかる。
また、Fe,Ru,Ga,Siの組成がほぼ等しい軟磁性薄膜II
とIIIを比較すると、この両者には酸素含量が約1.7倍違
うにもかかわらず、軟磁性特性に著しい差異が認められ
ない。したがって、前述の第1図からも予想されるとお
り、酸素含量の増加による軟磁気特性の改善効果は飽和
する傾向にあることがわかる。
また、軟磁性薄膜III,IVおよびVを比較すると、酸素
含量がほぼ等しく、Ru含量が段階的に異なっている。し
かし、これら三者の軟磁気特性には際立った差はみられ
ないことから、Ruの添加は軟磁気特性に悪影響を行ぼさ
ないことがわかる。
また比較例である軟磁性薄膜VI,VII,VIIIについてみ
ると、これらの軟磁気特性は、いずれも上述の軟磁性薄
膜I,II,III,IV,Vの軟磁気特性よりも劣っていることが
わかる。ここで、Ruを含有する軟磁性薄膜VIをRuを含有
しない軟磁性薄膜VIIあるいはVIIと比較しても、Ruを添
加したことによる軟磁気特性の顕著な向上は見られな
い。
以上のことから、Fe−Ga−Si系の軟磁性薄膜への酸素
の添加は、軟磁気特性の改善に極めて有効であることが
わかる。
〔発明の効果〕
以上の説明からも明らかなように、本発明にかかる軟
磁性薄膜においては、Fe−Ga−Si系あるいはFe−Ga−Si
−Ru系の軟磁性材料に微量の酸素が添加されることによ
り、上記軟磁性材料が本来有する高い飽和磁束密度を低
下させることなく、高透磁率化および低保磁力化が達成
された。
このような軟磁性薄膜を磁気ヘッド等に応用すること
により、極めて高品質な信号の記録・再生が可能とな
る。
【図面の簡単な説明】
第1図はFe−Ga−Si系合金を成膜する際のスパッタリン
グ雰囲気中の酸素量と得られる軟磁性薄膜の磁気特性と
の関係を示す特性図である。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Fe,Ga,Siを主体とするとともに、酸素を含
    有し、その組成が一般式(FeaGabSic100-xOx(ただ
    し、式中のa,b,c,xは、それぞれ元素の割合を原子%で
    表す。)で表され、組成範囲が 68≦a≦84 1≦b≦23 6≦c≦31 a+b+c=100 0.05≦x≦10 であることを特徴とする軟磁性薄膜。
  2. 【請求項2】Fe,Ga,Siを主体とするとともに、Ru及び酸
    素を含有し、その組成が一般式(FeaGabSic100-x-yRu
    yOx(ただし、式中のa,b,c,x,yは、それぞれ元素の割合
    を原子%で表す。)で表され、組成範囲が 68≦a≦84 1≦b≦23 6≦c≦31 a+b+c=100 0<y≦12 0.05≦x≦10 であることを特徴とする軟磁性薄膜。
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