JP2602892B2 - ポリエステルの製造方法 - Google Patents

ポリエステルの製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は,塗料,接着剤,コーテイング剤,さらには
成形材料等の用途に有利に用いることができる高重合度
のポリエステルの製造方法に関するものである。
(従来の技術) 従来,上記用途に用いられるポリエステルとしては,
ジカルボン酸と炭素数2〜6の低分子量のジオールと炭
素数8以上の高分子量ジオールとからなり,炭素数8以
上の高分子量ジオールを95モル%以下で含む共重合ポリ
エステルが知られている(例えば,特公昭62−5467号公
報参照)。
(発明が解決しようとする課題) 近年,種々の用途においてポリエステルに対する要求
性能が拡大され,特定の性能が要求されている。かかる
ポリエステルとして,上記のようなジカルボン酸と主と
して炭素数8以上の高分子量ジオールとからなるポリエ
ステルが挙げられる。特に前記のような塗料,接着剤等
の用途においては,高重合度であって,高結晶性又は高
ガラス転移点等の特性が要求される。しかしながら,か
かる要求に応えることができるポリエステルを高分子量
ジオールを主たるジオール成分として製造する場合に
は,高分子量ジオールは,高沸点にすぎるため,重縮合
反応において,反応系外への除去が実質的にされなかっ
たり,されたとしても除去速度が遅いため,高分子量の
ジオールを用いて高重合度であって,高結晶性又は高ガ
ラス転移点のポリエステルを調製することは極めて困難
であった。
本発明は,上記のような問題点を解決するものであっ
て,その目的は高重合度であって,しかも高結晶性又は
高ガラス転移点を有するポリエステルを容易に製造する
ことができる製造方法を提供することにある。
(課題を解決するための手段) 本発明者等は,ジカルボン酸(A)と主として炭素数
8以上のジオール(B)とからなる高重合度のポリエス
テルを工業的に安定して製造するべく鋭意検討の結果,
ジオール(B)及び炭素数3以下のジオール(C)を特
定のモル比を満足する量で用いてジカルボン酸(A)を
エステル化することにより,上記の問題点が解決される
ことを見出し,本発明に達成した。
すなわち,本発明は,ジカルボン酸(A)と炭素数8
以上のジオール(B)を主たるジオールとする下記
(1)式を満足するモル比で構成されていて,相対粘度
1.3以上であり,かつガラス転移点が115℃以上及び/又
は観測され得る融点を有するポリエステルを製造するに
あたり,上記ジオール(B)及び炭素数3以下のジオー
ル(C)を下記(2),(3)式を満足するモル比で用
いてジカルボン酸(A)をエステル化し,続いて重縮合
反応することを特徴とするポリエステルの製造方法を要
旨のするものである。
ただし,相対粘度は,フェノールとテトラクロルエタ
ンの等重量混合溶媒に0.5g/dlの濃度で溶解し,20℃で測
定した値であり,(1)〜(3)式において,a,b,cは,
それぞれ(A),(B),(C)のモル数を示す。
以下,本発明を詳細に説明する。
まず,本発明の方法を実施するにあたり用いられるジ
カルボン酸としては,テレフタル酸,イソフタル酸,フ
タル酸,2,6−ナフタレンジカルボン酸,2,7−ナフタレン
ジカルホン酸,1,4−ナフタレンジカルボン酸,4,4′−ビ
フエニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸,コハク
酸,アジピン酸,アゼライン酸,セバシン酸,デカン二
酸,ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸,1,2−シクロ
ヘキサンジカルボン酸,1,3−シクロヘキサンジカルボン
酸,1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカル
ボン酸,さらにはP−オキシ安息香酸,P−オキシエトキ
シ安息香酸等のオキシ酸が挙げられる。これらは,単独
で又は必要に応じて2種以上用いてもよい。
次に,炭素数8以上の高分子量ジオールとしては,オ
クタンジオール,ノナンジオール,デカンジオール,ド
デカンジオール等の脂肪族ジオール,水添ポリブタジエ
ングリコール,ポリエチレングリコール,ポリテトラメ
チレングリコール,さらにはキシレングリコール,ビス
フエノールAのエチレンオキサイド付加物,ビスフエノ
ールAのプロピレンオキサイド付加物,ビスフエノール
Sのエチレンオキサイド付加物,ビスフエノールSのプ
ロピレンオキサイド付加物,水添ビスフエノールAのエ
チレンオキサイド付加物,水添ビスフエノールAのプロ
ピレンオキサイド付加物,水添ビスフエノールSのエチ
レンオキサイド付加物,水添ビスフエノールSのプロピ
レンオキサイド付加物等が挙げられる。これらは,単独
又は2種以上を併せて用いる。
さらに,炭素数3以下の低分子量ジオールとしては,
エチレングリコール,1,2−プロパンジオール,1,3−プロ
パンジオール,等が挙げられ,これらのうちエチレング
リコールが好ましい。
上記ジカルボン酸,ジオール以外に,トリメリツト
酸,ピロメリツト酸のごとき多価カルボン酸,トリメチ
ロールエタン,トリメチロールプロパン,ペンタエリス
リトールのごとき多価アルコールを必要に応じて用いる
ことができ,これらは5モル%以下の量で用いることは
無論差し支えない。
本発明の製造方法においては,上記のようなジカルボ
酸とジオールを特定の割合で用いて,常圧下または加圧
下,150〜250℃でエステル化反応させ,エステル化反応
によって生成する所定量の水を反応系外に除いて低重合
度ポリエステルを調製する。次いで,n−ブチルチタネー
ト,三酸化アンチモン,二酸化ゲルマニウムのごとき重
縮合触媒の存在下,減圧下で190〜290℃で重縮合を行っ
て,高重合度のポリエステルを調製することができる。
上記ジカルボン酸に代えて,ジカルボン酸低級アルキ
ルエステルを用い,ジオールとの間でエステル交換反応
によって調製される低重合度ポリエステルを中間体とし
て,高重合度のポリエステルを調製しても無論差し支え
ない。
本発明の方法においては,上記(1)式を満足するモ
ル比の高重合度のポリエステルを製造するにあたり,モ
ル比b/aが(3)式を満足することが必要である。b/aが
0.96未満の場合は,高結晶性又は高ガラス転移点を有す
る高重合度のポリエステルの製造が困難になる。特に,
高結晶性でシヤープな融点を示す高重合度のポリエステ
ルを脂肪族ジカルボン酸と高分子量脂肪族ジオールとか
ら調製しようとする際に,10モル%以上の第3の共重合
成分を導入した場合,高結晶性が大幅に阻害される。一
方,前記のモル比b/aが1.10を超えると,重縮合反応に
あたり,高分子量ジオールの反応系外への除去が遅くな
り,経済的な速度で高重合度ポリエステルが製造できに
くくなる。なお,高分子量ジオールが実質的に不揮発性
の場合,b/aのを1.0以下にしなくてはならないこともあ
る。
次に,本発明においては,モル比(b+c)/aが上記
(2)式を満足することが必要である。(b+c)/aが
1.5未満では,経済的な速度でエステル化が困難であ
る。一方,1.6を越えると,経済的に不利であるばかりで
なく,相対的に低分子量ジオールの共重合比率が高くな
ることがあり,本発明の目的とするポリエステルが得に
くくなる。
本発明において製造しようとする高重合度のポリエス
テルは1.3以上の相対粘度を有するものである。
ここで,相対粘度は,フエノールとテトラクロルエタ
ンの等量量混合溶媒に0.5g/dlの濃度で溶解し、20℃で
測定する。
(実施例) 次に,実施例と比較例とを示して本発明を具体的に説
明する。
以下において,ポリエステルの融点又はガラス転移点
のごとき熱特性は,パーキンエルマー社製DSC II型デイ
フアレンシヤルスキヤンニングカロリーメーターを用
い,20℃/分の昇温速度で測定する。
実施例1,2及び比較例1〜3 テレフタル酸(以下TPAと略す。)とビスフエノール
Aのエチレンオキサイド(2分子)付加物(炭素数19の
ジオールで,以下BADEOと略す。)からなる,高ガラス
転移点で高重合度のポリエステルを調製すべく,第1表
に示す量で原料をエステル化反応缶に採り,240℃で4時
間エステル化反応を行って低重合度ポリエステルを調製
した後,2×10-4モル/TPAモルの量で三級化アンチモンを
投入し,0.5mmHgの減圧下,275℃で重縮合反応を6時間行
って,第1表に示す特性値のポリエステルを調製した。
なお,表中EGはエチレングリコール(炭素数2のジオ
ール)である。
実施例3,4及び比較例4〜6 セバシン酸(以下SEAと略す。)と1,10−デカンジオ
ール(炭素数10のジオールで,以下DOと略す。)とから
なる高結晶性ポリエステルを調製するべく,第2表に示
す原料をエステル化反応缶に採り,実施例1と同様にエ
ステル化反応を行った後,触媒としてn−ブチルチタネ
ートを2×10-4モル/SEAモル加え,0.5mmHgの減圧下,245
℃で重縮合反応を6時間行って,第2表に示す特性値の
ポリエステルを調製した。
実施例1,2と比較例1〜3と比較する。実施例1,2は,
高重合度(高い相対粘度)で,かつ高いガラス転移点を
有するポリエステルを容易に製造し得ることを示す。比
較例1は,高重合度化は可能であるものの,高いガラス
転移点のポリエステルを調製する目的にそぐわない。ま
た,比較例2,3のごとく,低分子量のジオールを併用し
ない系では,ほとんど重合度の上昇は期待できない。
また,実施例3,4と比較例4〜6を比較すると,実施
例3,4は,結晶性(シヤープな融点を示す。)で高重合
度(高い相対粘度)のポリエステルが容易に製造できる
ことを示す。比較例4は,低分子量ジオールを併用しな
いと,高重合度化が困難なことを示す。なお,比較例4
のポリエステルを調製するにあたり,重縮合で生成する
DOが減圧ラインで凝固し,閉塞したため,重縮合反応を
中断し,閉塞DOを除去した後,再開した。比較例5は,
低分子量ジオールを過剰に用い,ジカルボン酸に対する
ジオールの比を過大にしたため,高重合度化は容易であ
るものの,目的とする高結晶性を示さない(融点を示さ
ない。)。比較例6は,ジカルボン酸に対するジオール
の比が過小なため,エステル化が不十分となり,高重合
度のポリエステルが調製できなかったことを示す。
(発明の効果) 本発明の方法は,ジカルボン酸と高分子量ジオールを
主たるジオール成分とする高重合度のポリエステルを容
易に製造することができ,高分子量ジオールの選択によ
って,相対的に高いガラス転移点あるいは高い結晶性等
の特徴を有するポリエステルを容易に製造することがで
きる。
かかるポリエステルは,塗料,接着剤,コーテイング
剤,さらには成形材料等として好適に用いることができ
る。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ジカルボン酸(A)と炭素数8以上のジオ
    ール(B)を主たるジオールとする下記(1)式を満足
    するモル比で構成されていて,相対粘度1.3以上であ
    り,かつガラス転移点が115℃以上及び/又は観測され
    得る融点を有するポリエステルを製造するにあたり,上
    記ジオール(B)及び炭素数3以下のジオール(C)を
    下記(2),(3)式を満足するモル比で用いてジカル
    ボン酸(A)をエステル化し,続いて重縮合反応するこ
    とを特徴とするポリエステルの製造方法。 ただし,相対粘度は,フェノールとテトラクロルエタン
    の等重量混合溶媒に0.5g/dlの濃度で溶解し,20℃で測定
    した値であり,(1)〜(3)式において,a,b,cはそれ
    ぞれ(A),(B),(C)のモル数を示す。
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