JP2598061B2 - シグナルペプチドをコードしているdna - Google Patents

シグナルペプチドをコードしているdna

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JP2598061B2 JP1558788A JP1558788A JP2598061B2 JP 2598061 B2 JP2598061 B2 JP 2598061B2 JP 1558788 A JP1558788 A JP 1558788A JP 1558788 A JP1558788 A JP 1558788A JP 2598061 B2 JP2598061 B2 JP 2598061B2
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Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、改良されたタンパク質分泌促進能を有する
シグナルペプチド、およびそれをコードしているDNAに
関する。
周知の如く、動物細胞のある種の分泌タンパク質は、
そのアミノ末端に、細胞膜を通過する機構に関与する約
15〜30個のペプチド、即ちシグナルペプチドを伴った形
で生合成される。このシグナルペプチドが、どの様な機
構で分泌タンパク質の膜通過を可能ならしめているかは
未だ完全には解明されていないが、信頼するに足る種々
の仮説が提出されている。それらによれば、シグナルペ
プチド中に含まれている極く少数の非疎水性アミノ酸が
まず細胞膜に付着し、残余の疎水性アミノ酸で構成され
るペプチド鎖が細胞膜内に侵入し、次いで膜を通過して
突出し、次いでその突出部に連結している分泌タンパク
質が順次膜を通過するものと考えられている。全ての分
泌タンパク質が膜を通過した後、膜内に存在する酵素に
よってシグナルペプチドと分泌タンパク質の結合部が切
断され、成熟タンパク質が完成する。
遺伝子操作により、所望のタンパク質を細胞培養で製
造しようとする場合、シグナルペプチドが欠失していた
り、その機能が十分でないと、発現されたタンパク質が
細胞内に蓄積し、細胞内酵素で分解を受けたり、不溶化
したりして、これを純粋な形で回収することが極めて困
難になることがある。
この様に、生体内においても、また細胞培養によって
所望のタンパク質を生産する生命工学の分野において
も、シグナルペプチドは極めて重要な役割を果たしてい
ることが理解されよう。
一方、遺伝子工学の進歩によって、所望のタンパク質
を微生物を使って製造することが可能となってから、各
種の関連技術に著しい発展があり、初期の技術に全ゆる
面からの改良が加えられている。しかしながら、新たに
デザインしたシグナルペプチドを使用して分泌効率を高
め、所望のタンパク質の回収率を改善しようとする試み
はほとんどなされていない。本発明者らは、卵白リゾチ
ームのシグナルペプチドをコードしているDNAとヒトリ
ゾチームをコードしているDNAを連結し、これを適当な
プラスミドに組み込んだ後、このプラストミドを酵母に
導入してヒトリゾチームを発現させる研究を行っている
過程で、18個のアミノ酸配列からなる卵白リゾチームの
シグナルペプチドの内、特定のアミノ酸を除いた残りの
大部分を他の疎水性アミノ酸、特にロイシン(L)に変
換したものが、ヒトリゾチームの分泌を著しく促進する
ことを発見し、これを特許出願した(特願昭62−069764
号、昭和62年3月23日出願)。さらにシグナルペプチド
のアミノ酸配列の長さ自体を減らしたものが更に強力な
分泌促進作用を有することを見い出し、これを特許出願
した(特願昭62−181780号、昭和62年7月21日出願)。
本発明者らは、上記の知見に基づき、更に研究を進め
た結果、18個のアミノ酸配列の大部分を疎水性アミノ酸
に変換するばかりではなく、シグナルペプチドのアミノ
酸配列の長さ自体を18個から15個に減らしたものが更に
強力な分泌促進作用を有することを見いだした。本発明
はかかる知見に基づいて完成されたものである。
本発明をより具体的に説明するために、卵白リゾチー
ムの天然のシグナルペプチドを構成している18個のアミ
ノ酸配列を以下に示し、分泌を促進させるための本発明
に係るアミノ酸配列のデザインについてより詳細に説明
する。
上記のアミノ酸配列式で理解される様に、本明細書に
おいては、アミノ酸は、主としてIUPAC−IUB生化学命名
委員会確認規則に基づく一文字記号による表記法に従っ
て記載した。以下にこの表記法によって表わされる代表
的アミノ酸を例示する。
M…メチオニン R…アルギニン S…セリン L…ロイシン I…イソロイシン V…バリン C…システイン P…プロリン A…アラニン G…グリシン F…フェニルアラニン T…スレオニン 上記のアミノ酸配列に基づき新たなシグナル配列をデ
ザインするに当り、第1および第2番目のアミノ酸(M
およびR)並びに第16〜18番目のアミノ酸(A、Lおよ
びG)は、それぞれ細胞膜への付着およびタンパク質分
泌後の切断(プロセシング)に必要と思われるので、こ
れらを改変することは望ましくないと考えられる。13番
目のアミノ酸(P)を他の疎水性アミノ酸で置換するこ
とについては多少疑問点があり、かかる置換が望ましい
とは断言できない。しかしながら、以上の2点を除け
ば、このシグナルペプチドのアミノ酸配列の少なくとも
大部分を1種の疎水性アミノ酸、特にロイシンで置換し
たものが著しい分泌促進作用を有することが、既述した
先の発明によってわかった。この事実に基づき本発明者
らは、この疎水性領域の長さを短縮することにより、す
なわちロイシンの数を2個減らすことによって作製した
シグナルペプチドの分泌促進活性が、極めて強力である
ことを見いだした。ところがさらに、該改良型のシグナ
ルペプチドからアラニンをさらに減らすことによって、
より強力なシグナルペプチドをデザインできることを見
い出した。従って、この様なシグナルペプチドをコード
する様にDNAを合成し、これを所望のタンパク質、特に
分泌タンパク質をコードしている遺伝子に連結し、適当
な発現ベクターに組み込んで宿主を形質転換すれば、極
めて回収の容易なタンパク質を得ることができる。本発
明は、かかる知見に基づき完成されたものであり、15個
のアミノ酸からなるシグナルペプチドであって、第1、
第2、第13および第15番目のアミノ酸M、R、Aおよび
Gを除く全て、または少なくとも大部分のアミノ酸が1
種の疎水性アミノ酸で構成されているシグナルペプチド
を提供するものである。なおこのシグナルペプチドにお
いて13番目のアミノ酸はセリン、バリン、システイン、
スレオニン、また15番目のアミノ酸はアラニン、セリ
ン、システインであってもよい。本発明はまた、かかる
シグナルペプチドをコードしているDNAを提供するもの
である。本発明はさらに、かかるシグナルペプチドを利
用して、目的とするタンパク質を効率よく培養細胞外に
分泌させる方法を提供するものである。
本発明に係るシグナルペプチドのアミノ酸配列の一例
を以下に示す: 上に示したシグナルペプチドを、簡略化のため、以下
「短縮L−変換体2」という。
以下に、分泌されるタンパク質をヒトリゾチームと
し、そのシグナルペプチドとして、上記の短縮L−変換
体2を用いた場合を例にとって本発明を更に詳細に説明
する。
上記の改良されたシグナルペプチドをコードするDNA
は、化学合成したヌクレオチド断片を連結することによ
り得ることができる。このDNAは、酵母内で機能するシ
グナルペプチドとして発現されるものであればいかなる
DNAでもよいが、酵母を用いた発現では、酵母において
高頻度で使用されるコドンを使用するのが好ましい。な
お、コドンの使用頻度については「ザ・ジャーナル・オ
ブ・バイオロジカル・ケミストリィ(The Journal of B
iological Chemistry)、257、3026〜3031(1982)」に
報告されている。
ヒトリゾチーム遺伝子の合成はすでに公表されており
[ケミカル・アンド・ファーマシューティカル・ブリテ
ン(Chem.Pharm.Bull)、34、2202(1986)]、それに
従ってヒトリゾチーム合成遺伝子を得た。ただし、本発
明者等は、シグナルペプチドとの連結を考えて、ヒトリ
ゾチームの3番目のアミノ酸Fの位置にTaq Iサイト
を、また、終止コドンのうしろにXho Iサイトをもっ
た、N末端を一部欠いたヒトリゾチームをコードするDN
A(Taq I−Xho I)を合成した。このようにして得られ
た合成遺伝子を量的に増やすためには、まず適当なベク
ターに組み込みサブクローニングする必要がある。クロ
ーニングベクターとしては、該遺伝子を組み込むことが
できればいかなるものであってもよいが、具体的には大
腸菌ベクターpBR322のBal IサイトをXho Iサイトに変換
したpBR322Xを使用した。
常法に従い、合成リゾチーム遺伝子をpBR322Xに組み
込む。このようにして得られた合成遺伝子含有ベクター
を用いて大腸菌を形質転換する。大腸菌の形質転換の方
法それ自体は公知であり、例えばCohenらの方法[Cohe
n,S.N.ら、プロシージング・オブ・ザ・ナショナル・ア
カデミー・オブ・サイエンス(Proc.Nat1.Acad.Sci.US
A)、69、2110(1972)]によって行うことができる。
宿主としてはE.coli294、E.coli DH1、E.coli W311
0、E.coli C600などを用いることができる。
次に、該遺伝子が挿入されたプラスミドDNAをたとえ
ばアルカリ抽出法[Birnboim,H.C.およびDoly,J.、ヌク
レイック・アシッズ・リサーチ(Nucleic Acids Re
s.)、、1513(1979)]によって形質転換体から単離
する。得られるプラスミドDNAを適当な制限酵素で処理
することによって、挿入された該遺伝子を切り出し、例
えばアガロースゲル電気泳動あるいはポリアクリルアミ
ド電気泳動によってこれを単離することができる。これ
ら一連の操作は公知であり、文献、例えば「モレキュラ
ー・クローニング(Molecular Cloning)(1982)、Col
d Spring Harbor Laboratoy」に詳しく記載されてい
る。単離された該遺伝子を適当な発現ベクターのプロモ
ーターおよびシグナルペプチドコード領域の下流にプロ
モーターと順方向に連結し、発現プラスミドを構築す
る。
シグナルペプチドおよびヒトリゾチームをコードする
DNAの合成には、酵母のコドン使用頻度の高いものを用
いればよいが、制限酵素認識部位などの作成のため、後
順位のコドンを使用してもよい。
またDNAの化学合成は、たとえばCreaらの方法[Crea,
R.ら、プロシージング・オブ・ザ・ナショナル・アカデ
ミー・オブ・サイエンス(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)、
75、5765(1978)]などに従って行うことができる。
発現ベクターとしてはすでに多くのものが知られてお
り、該遺伝子の発現に実際に利用できるものであればい
かなるものであってもよい。具体的にはpPHO17、pGLD90
6−1、pcDX[Okayama,HおよびBerg,P、モレキュラー・
アンド・セルラー・バイオロジー(Mol.Cell.Biol)、
、280(1983)]、およびpKSV−10(ファルマシア社
製)などが挙げられる。
すなわち、宿主として酵母を用いた場合には、プロモ
ーターとして例えばPHO5プロモーター、GLDプロモータ
ー、PGKプロモーター、ADHプロモーター、PHO18プロモ
ーター、GAL10プロモーターなどが、宿主として動物細
胞を用いた場合には、プロモーターとして例えばSV40初
期遺伝子プロモーター、メタロチオネインプロモータ
ー、ヒートショックプロモーターなどがそれぞれ利用で
きる。
なお、発現にエンハンサーを利用することも効果的で
ある。
なお、発現に利用される宿主としては、サッカロマイ
セス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)のよ
うな酵母、およびマウスL細胞、チャイニーズハムスタ
ー卵母細胞(CHO)などが挙げられるが、他の真核生物
細胞も利用することができる。
宿主として酵母を用いる場合には、例えばHinnenらの
方法[プロシージング・オブ・ザ・ナショナル・アカデ
ミー・オブ・サイエンス(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)、
75、1927(1978)]によって形質転換を行うことができ
る。
動物細胞などの真核細胞の形質転換法はそれ自体公知
であり、例えば「蛋白質・核酸・酸素、28巻、1983年、
“組換え遺伝子の細胞への導入と発現”(共立出版)」
の記載に従って行われる。
得られた分泌発現プラスミドで宿主細胞を形質転換
し、目的とする組み換え体を得る。このようにして得ら
れた形質転換体を自体公知の方法で培養する。
酵母を使用する場合、倍地としては、例えばBurkhold
er最小培地[Bostian,K.L.ら、プロシージング・オブ・
ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Pro
c.Natl.Acad.Sci.USA)、77、4505(1980)]が挙げら
れる。培養は通常15℃〜40℃、好ましくは24℃〜37℃で
10〜144時間、好ましくは24〜96時間行い、必要に応じ
て通気や撹拌を加えることもできる。
動物細胞などの真核生物細胞を宿主とした形質転換体
を使用する場合には、培地として例えばEagleのMEM[H.
Eagle、サイエンス(Science)、130、432(1959)]、
DulbeccoのModified Eagle's Medium[Orgad Laubおよ
びWilliam J.Rutter、ジャーナル・オブ・バイオロジカ
ル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)、258、6043(198
3)]などが挙げられる。培養は通常30〜42℃、好まし
くは35℃〜37℃で約1〜10日間行う。
培養終了後、自体公知の方法で細胞と上清とを分離す
る。細胞内に残存するヒトリゾチームは、当分野におけ
る通常の方法、例えば超音波破砕法、フレンチプレスな
どを利用した破砕法、摩砕などの機械的破砕法、細胞溶
解酵素による破砕法などにより細胞を破砕した後抽出す
る。さらに必要ならば、トリトン−X100、デオキシコー
レートなどの海面活性剤を加え、産生されたヒトリゾチ
ームを抽出する。このようにして得られた培養上清およ
び細胞内に含まれるヒトリゾチームを別々に定量し、両
者の比率を比較する。なお、得られたヒトリゾチーム
は、通常のタンパク質精製法、例えば塩析、等電点沈
澱、ゲル過、イオン交換クロマトグラフィー、高速液
体クロマトグラフィー(HPLC、FPLC等)などに従って精
製することができる。
以下に実施例を示して本発明を具体的に例示するが、
実施例に示したシグナル配列はきわめて一般化されてい
るため、分泌の対象となる蛋白質は単にヒトリゾチーム
に限られるものではない。
実施例1 クローニングベクターpBR322Xの作製 大腸菌ベクターpBR322(5μg)に制限酵素Bal I
(1.5ユニット)を加え、40μの反応液[10mM Tris−
HCl(pH7.5)、10mM MgCl2、1mM dithiothreitol]中
で37℃、5時間反応させた後、常法通りフェノール抽出
し、次いでDNAをエタノール沈澱させた。このDNAにリン
酸化したXho Iリンカーd[pCCTCGAGG](New England
Biolads製)50ngを加え、常法にしたがってT4DNAリガー
ゼで両者を結合させた。
この反応液で大腸菌DH1株を形質転換し、得られたア
ンピシリン耐性、テトラサイクリン耐性のコロニーから
アルカリ抽出法(前出)でプラスミドを抽出し、Bal I
サイトがXho Iサイトに変換されたプラスイドpBR322Xを
得た。
実施例2 ヒトリゾチームのN末端近傍にTaq Iサイトを有するヒ
トリゾチーム遺伝子断片の作製 遺伝子の合成はI keharaらの報告(前出)に従った。
ただし、I keharaらの報告におけるヌクレオチド断片、
U2(TTGAGAGATGCGAAT)の代わりにU2′(CGAGAGATGCGAA
T)を、L2(TCTGGCTAATTCGCATC)の代わりにL2′(TCTG
GCTAATTCGCATCTCT)を合成してU2′,U3〜U26,L2′,L3〜
L26のフラグメントを連結させた。
その結果、3番目のアミノ酸であるフェニルアラニン
(F)に対するコドンTTTがTTCになり、I keharaらの報
告とは違って、その部分に新しくTaq Iサイトを有し
た、5′末端の一部欠けた遺伝子が得られた(第1
図)。
実施例3 Taq Iサイトを有するヒトリゾチーム遺伝子断片のサブ
クローニング 実施例1で構築したプラスミドpBR322X2.6μgに6ユ
ニットの制限酵素Xho Iと6ユニットの制限酵素Cla Iと
を35μの反応液[33mM酢酸緩衝液、pH7.9、66mM酢酸
カリウム、10mM酢酸マグネシウム、0.5mMジチオトレイ
トール、0.01%BSA]中で37℃、1時間作用させた後、
フェノールで除蛋白し、冷エタノールで沈澱させた。該
DNA(200ng)を実施例2で調整したヒトリゾチーム遺伝
子断片100ngと混合し、10μの反応液[66mM Tris−HC
l(pH7.6)、10mM ATP、10mMスペルメジン、100mM MgCl
2、150mM DTT、2mg/mlBSA、5ユニットのT4DNAリガー
ゼ]中、14℃で一夜作用させてDNAを結合させた。この
反応液を用いて大腸菌DH1株を前記Cohenらの方法にした
がって形質転換した。得られた形質転換体からアルカリ
抽出法(前出)によってプラスミドを単離し、分子量お
よび制限酵素による分解パターンを調べ、ヒトリゾチー
ム遺伝子断片が挿入されたpLYS221を得た。pLYS221のEc
oR I−Xho I断片を分離し、ジオキシヌクレオチド合成
鎖停止法によってその塩基配列を決定したところ、第1
図に示したように、予想通りヒトリゾチーム遺伝子Taq
I−Xho I断片が得られた。
この配列はヒトリゾチームのアミノ酸配列のうち4番
目のGluから130番目のValまでをコードしている。
実施例4 短縮L−変換体2をコードするDNAの調製 ヒトリゾチームを培地中へ分泌させるためのシグナル
配列として、前記短縮L−変換体2をコードするDNAを
調製した。合成したヌクレオチド配列を第2図に示した
が、5′末端にXho Iサイトが、3′末端にはヒトリゾ
チームのコード領域を含むTaqIサイトがそれぞれ設けら
れている。全配列は8個のオリゴヌクレオチド(#1〜
#8)から成り、それらの合成はホスファアミダイド法
[Caruthers,M.Hら、テトラヘドロン・レターズ(Tetra
hedron Letters)、22、1859(1981)]に従って行っ
た。
まず、第2図に示したフラグメント#2〜#7をそれ
ぞれ10μ(5μg)づつ混合し、これに10倍濃度のキ
ナーゼ緩衝液[0.5M Tris−HCl、0.1M MgCl2、0.1Mメル
カプトエタノールpH7.6]20μ、10mM ATP20μ、Ts
ポリヌクレオチドキナーゼ(宝酒造社製)20μ(50
u)、蒸留水80μを加えて37℃で2時間反応させた
後、65℃で20分間処理して反応をとめた。この反応液に
フラグメント#1と#8をそれぞれ10μ(5μg)づ
つ加え、T4リガーゼ(NEB社製)10μを加えて14℃で
一夜反応させた。反応液を10%ポリアクリルアミド電気
泳動にかけ、67bpのフラグメントを切り出したのち、電
気泳動溶出によってゲルから抽出した。これを45μの
蒸留水に溶解し、これに10倍濃度のキナーゼ緩衝液(前
出)6μ、10mM ATP6μ、T4ポリヌクレオチドキナ
ーゼ(前出)2μ(5u)を加え、37℃で1時間反応さ
せた後、−20℃で保存した。
実施例5 分泌発現プラスミドの構築 実施例3で得たpLYS221(236μg)をEcoR I(ニツポ
ンジーン社製)120uおよびXho I(ニツポンジーン社
製)120uで37℃、2時間処理し、ヒトリゾチームコード
領域を切り出した。このフラグメントをさらにTaq I
(ニツポンジーン社製)26uで65℃、1時間処理し、N
末端を一部欠いたヒトリゾチームコード領域を切り出し
た。
このフラグメント約1μgに実施例4で得た短縮L−
変換体2シグナル配列をコードするDNA0.5μgを混合
し、T4−リガーゼ(前出)800uの存在下で16℃、16時間
反応させたのち、Xho I(42u)処理した。
得られたXho Iフラグメント10ngと、酵母の発現ベク
ターpGLD906−1(特開昭61−43991)をXho Iで処理し
たベクター1ngとを混合し、この両者をT4リガーゼの存
在下で結合させた。
この反応液でE.coli DH1を前述の方法で形質転換し、
GLDプロモーターの下流にシグナル配列コード領域およ
びヒトリゾチーム遺伝子がプロモーターと同一方向に挿
入されたプラスミドを多数得た。そのうちの1つをpER
I 8732(第3図参照)と命名して以下の実験に供した。
実施例6 酵母形質転換体の調製 実施例5で得た発現プラスミドpER I 8732でSaccharo
myces cerevisiae AH22R-をHinnenらの方法(前出)で
形質転換させ、形質転換体Saccharomyces cerevisiae A
H22R-/pER I 8732を得た。この菌株は、工業技術院微生
物工業技術研究所に受託番号FERM P−9815で寄託されて
いる(寄託日:昭和63年1月14日)。
実施例7 形質転換体の培養 実施例6で得た形質変換体Saccharomyces cerevisiae
AH22R-/pER I 8732をBurkholder[アメリカン・ジャー
ナル・オブ・ボタニー(Amer.J.Bot.)、30、206(194
3)]の改変倍地III(1当たりKH2PO40.4g、グルコー
ス10g、アスパラギン5g、シュークロース80gとした)5m
lを含む試験管に接種し、30℃で3日間振盪培養した。
得られた培養液の1mlをそれぞれ上記倍地III4mlを含む
試験管へ移し、30℃で1日振盪培養した。この培養液2m
lを上記倍地III18mlを含む200ml容三角フラスコに移
し、30℃で振盪培養し、48、72、96および120時間後に
アッセイ用試料を調製した。
実施例8 アッセイ試料の調製 実施例7で得た培養液を遠心分離機にかけ、上清と菌
体を分離した。上清はアッセイに供し、菌体は1.2Mシュ
ークロースを含む50mMリン酸バッファー(pH7.0)で洗
浄した後、菌体を、Zymolyase[生化学工業(株)製]
を0.5mg/mlになるように加えた同バッファーに懸濁と、
室温で2時間反応させた。この反応液に4倍量の50mMリ
ン酸バッファー(pH7.0)[10mM EDTA、1mM PMSFを含
む]を加え、室温で1時間反応させたのち、上清を集め
て菌体抽出液とした。
実施例9 ヒトリゾチーム産生量の測定 実施例8で得た上清と菌体抽体液とをヒトリゾチーム
のアッセイに供した。
ヒトリゾチーム活性の測定は、ほぼワーシントン・エ
ンザイム・マニュアル(Worthigton Enzyme Manual、p1
00、Worthigton Biochemical Corporation,USA、1972)
によった。標準ヒトリゾチームとしてはSigma社製を使
用した。1単位は、0.1Mリン酸バッファー(pH6.9)中
でマイクロコッカス・ルテウス(Micrococcuslutels)
(生化学工業社製)を基質として25℃で1分間反応さ
せ、450mμの吸収を0.001減少させるに必要な酵素量と
した。同様の実験を3回行って得たヒトリゾチームの産
生量は、以下の表1に示す通りであった。なお、卵白リ
ゾチームのシグナル配列を使用して上記と同様の実験を
行った結果を対象として示した。
表1から明らかな様に、短縮L−変換体2を使用した
場合、卵白リゾチームのシグナル配列を使用した場合に
比べて著しく多量のヒトリゾチームが菌体外に分泌され
た。菌体内および菌体外のリゾチーム総生産量において
も顕著な差がみられた。
実施例10 分泌されたリゾチームの精製 実施例6で得た形質転換体Saccharomyces cerevisiae
AH22R-/pER I 8732を実施例7に示した培地5mlを含む
試験管3本に接種し、30℃で3日間振盪培養した。上記
培地18mlを含む200ml容三角フラスコを5本用意し、そ
の各々に、上の培養液2mlを移し、30℃で1日振盪培養
した。次に上記培地200mlを含む1容三角フラスコを
5本用意し、その各々にこの培養液20mlを移し、30℃で
4日間培養した。この培養液を遠心分離機にかけ、上清
と菌体を分離した。この上清(約1)を50mMリン酸ナ
トリウム緩衝液(pH6.5)で平衡化した陽イオン交換樹
脂(CM−Toyopearl 650C)カラム(1.6cm×36cm)に吸
着させ、同緩衝液500mlで洗浄後、0.5M NaClを含む同緩
衝液で溶出した。溶出液は5mlずつ分取し、各フラクシ
ョンについて実施例9に従ってリゾチーム活性を測定し
た。リゾチーム活性が最大となるフラクションより200
μを取り、逆相高速液体クロマトグラフィー(TSKgel
ODS120Tカラム)により、さらに精製した。このとき溶
出は、0.1%トリフルオロ酢酸を含むアセトニトリルの
0〜100%の30分間の直線濃度勾配により行い、280nmの
吸収ピークを分取した。この分取液の溶媒を減圧により
蒸発させ、乾燥粉末としてヒトリゾチームの精製標品を
得た。
実施例11 精製リゾチームの分析 上の方法で精製したヒトリゾチーム精製標品について
N末端10残基のアミノ酸配列の決定、及びアミノ酸分析
を行った。N末端配列の決定は、精製標品7μgを用
い、プロテイン・シーケンサー(Applied Biosystems
社、477A)により自動的に行った。アミノ酸分析は精製
標品20μgを0.2mlの6N HClで110℃、24時間処理し加水
分解した後、反応液を減圧乾固し、これを0.5mlの0.02N
CHlに溶解して自動アミノ酸分析計(日立・835)によ
り行った。またシステイン残基の定量をするために、別
に精製標品20μgを過ギ酸0.1ml中で0℃、2.5時間処理
し、減圧乾固後上と同様に処理してアミノ酸分析を行っ
た。
(A)N末端配列の決定 以下の表2に示す様な結果を得た。
(B)アミノ酸の組成分析 以下の表3に示す様な結果を得た。
以上の結果から、短縮L−変換体2が正常に機能して
成熟型ヒトリゾチームが分泌されていることが明らかに
なった。
【図面の簡単な説明】
第1図は、ヒトリゾチームをコードしているDNA配列の
5′末端を一部欠失させた配列を示す模式図であり、第
2図は短縮L−変換体2シグナルペプチドと、対応する
DNA配列を示す模式図であり、第3図はヒトリゾチーム
分泌発現プラスミドpER I 8732の構築図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12R 1:865) (C12P 21/02 C12R 1:91)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】15個のアミノ酸からなり、第1、第2、第
    13および第15番目のアミノ酸M、R、AおよびGを除く
    全て、または少なくとも大部分のアミノ酸がLで構成さ
    れているシグナルペプチド(ただし第13番目のアミノ酸
    はS、V、CまたはTであってもよく、第15番目のアミ
    ノ酸はA、SまたはCであってもよい)。
  2. 【請求項2】式: M−R−L−L−L−L−L−L−L−L−P−L−A
    −L−G で示されるアミノ酸配列からなる第1項に記載のシグナ
    ルペプチド。
  3. 【請求項3】15個のアミノ酸からなり、第1、第2、第
    13および第15番目のアミノ酸M、R、AおよびGを除く
    全て、または少なくとも大部分のアミノ酸がLで構成さ
    れているシグナルペプチド(ただし第13番目のアミノ酸
    はS、V、CまたはTであってもよく、第15番目のアミ
    ノ酸はA、SまたはCであってもよい)をコードしてい
    るDNA。
  4. 【請求項4】式: M−R−L−L−L−L−L−L−L−L−P−L−A
    −L−G で示されるアミノ酸配列をコードしている第3項に記載
    のDNA。
  5. 【請求項5】式: で示される第4項に記載のDNA。
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