JP2593089Y2 - 合成樹脂スラスト軸受 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は相対回転する二つの物体
間に配されて当該回転を円滑に許容する合成樹脂スラス
ト軸受、具体的には四輪自動車のストラット型サスペン
ション（マクファーソン式）に組込まれて好適な合成樹
脂スラスト軸受に関するものである。

【０００２】

【従来技術】一般にストラット型サスペンションは、主
として四輪自動車の前輪に用いられ、主軸と一体となっ
た外筒の中に油圧式ショックアブソーバを内蔵したスト
ラットアッセンブリにコイルバネを組合せたサスペンシ
ョンである。上記サスペンションには、ステアリング操
作によりストラットアッセンブリがコイルバネとともに
回るさい、該アッセンブリのピストンロッドが回るもの
と、該ピストンロッドが回らない型式のものとがある
が、いずれの型式においてもストラットアッセンブリの
回転を円滑に許容するべく車体の取付部材とコイルバネ
の上部バネ座シートとの間に軸受が必要とされる。

【０００３】そして、従来よりこの個所の軸受にはボー
ルあるいはニードルを使用した転がり軸受あるいは合成
樹脂製すべり軸受が使用されている。しかるに、従来使
用されている合成樹脂製すべり軸受においては摺動面へ
の塵埃等の侵入を防止する目的で、該すべり軸受の外周
面にゴム弾性体からなるダストシールが装着されてお
り、このダストシールは回転する摺動面間に密に摺接さ
せて配されるため、ステアリング操作時にはその摺動摩
擦力が高く操舵力を増大させるという欠点がある。上記
従来技術における合成樹脂製すべり軸受の欠点を解決す
るべく、本出願人は先に実願昭６１−１９６８０３号
（実公平２−１５３２号：以下「先行技術」という）に
おいて、ゴム弾性体からなるダストシールを使用するこ
となく摺動面への塵埃等の侵入を防止し、ステアリング
操作時の操舵力の増大を防止できる合成樹脂スラスト軸
受を提案した。この先行技術の合成樹脂スラスト軸受は
合成樹脂製上、下部ケースと該上、下部ケース内に配さ
れる合成樹脂軸受片から成り、該上部ケースの下面に形
成された環状上リップ部と該下部ケースの上面に形成さ
れた環状下リップ部とを径方向に重畳させると共に該上
部ケースを下部ケースの外周面に弾性装着させ、該環状
上、下リップ部の重畳部および弾性装着部にラビリンス
作用による密封部を形成して組合わされているものであ
る。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】上述した先行技術から
成る合成樹脂スラスト軸受は、上記従来の合成樹脂製す
べり軸受の欠点であったステアリング操作時の操舵力の
増大を防止し、かつラビリンス作用による密封部により
摺動面への塵埃等の侵入を防止し、円滑な操舵力を長期
間にわたって維持することができるものであった。しか
しながら、当該スラスト軸受が組込まれるストラット型
サスペンションを構成するコイルバネのバネ力等は車種
によって異なるため、該スラスト軸受が組込まれる車種
によっては該スラスト軸受の上、下部ケースを構成する
合成樹脂と該上、下部ケース内に配される軸受片を構成
する合成樹脂との組合せにおいて、該上部ケースと軸受
片との間あるいは下部ケースと軸受片との間で摩擦変動
を惹起し、当該摩擦変動に伴い操舵感（フィーリング）
に変化をきたすという問題が提起された。そこで、本考
案者らはこの摩擦変動を惹起させる原因について、さら
に実験を試みた結果、軸受片に上、下部ケースを構成す
る合成樹脂よりも剛性の低い合成樹脂を使用することに
より、摩擦変動をきたすことなく円滑な操舵感を維持で
きることを知見した。しかし、剛性の低い合成樹脂で軸
受片を形成したものは上、下部ケースと軸受片との間に
優れた摩擦摩耗特性を発揮するものの軸受片自体は耐ク
リープ性に劣るため、時間の経過とともに軸受片にクリ
ープを生じ、上、下部ケース間の相対回転を円滑に許容
し難いという新たな問題が提起された。 本考案者らは
先行技術の利点に鑑み、かつ上記知見に基づきクリープ
の発生を極力抑えることのできる構成を採ることにより
上述した問題を解決することを見出し、本考案をなすに
至ったもので、本考案は上記先行技術の改良に係わり、
摩擦変動を惹起させることなく円滑な操舵力を維持する
ことのできる合成樹脂スラスト軸受を得ることを目的と
するものである。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本考案によれば上記目的
は、内面に挿通孔を有する円筒部と該円筒部の下端外周
面に径方向外方に延設された幅広の環状鍔部と該環状鍔
部の上面に該円筒部と径方向外方に間隔を隔てて形成さ
れ、該円筒部外周面と環状鍔部の上面とで環状凹部を画
定する環状突起部と該環状鍔部の外周縁に上方に突設さ
れ、該環状突起部の外周面と環状鍔部の上面とで環状係
合溝を画定する環状突出部と該環状突出部の外周面に形
成された係合部と該環状凹部の底面に形成された環状凹
溝とを備えた合成樹脂製下部軸受ケースと、前記環状凹
溝に一方の端面を該環状凹溝の開口部より突出させて埋
設された合成樹脂製軸受体と、円筒ブロック部と該円筒
ブロック部の上端内周面に径方向に延設された内側環状
鍔部と該円筒ブロック部の上端外周面に径方向に延設さ
れた外側環状鍔部と該外側環状鍔部の下面に形成され、
該円筒ブロック部の外周面と該外側環状鍔部の下面とで
環状第一係合溝を画定する環状係合突起部と該外側環状
鍔部の外周縁に下方に延設され、該環状係合突起部の外
周面と該外側環状鍔部の下面とで環状第二係合溝を画定
する環状垂下部と該環状垂下部の内周面に形成された係
合フック部とを備えた合成樹脂製上部軸受ケースと、か
ら成り、該上部軸受ケースは該円筒ブロック部の下面を
該下部軸受ケースの環状凹溝に埋設された該軸受体の突
出端面に摺接させて該環状凹部内に位置せしめると共に
環状係合突起部の端部を該下部軸受ケースの環状突起部
の端部外周面とその径方向に重畳させて環状係合溝に位
置せしめ、かつ環状第二係合溝を環状突出部に係合せし
めると共に環状垂下部の係合フック部を該下部軸受ケー
スの環状突出部の係合部に弾性装着せしめ、該弾性装着
部および環状係合突起部と環状突起部の重畳部にラビリ
ンス作用による密封部を形成して組合されており、該軸
受体は該上、下部軸受ケースを形成する合成樹脂よりも
剛性の低い合成樹脂で形成されてなる合成樹脂スラスト
軸受によって達成される。

【０００６】また、本考案によれば上記目的は、内面に
挿通孔を有する円筒部と該円筒部の下端外周面に径方向
外方に延設された幅広の環状鍔部と該環状鍔部の上面に
該円筒部と径方向外方に所定の間隔を隔てて形成され、
該円筒部外周面と環状鍔部の上面とで環状凹部を画定す
る環状突起部と該環状鍔部の外周縁に上方に突設され、
該環状突起部の外周面と環状鍔部の上面とで環状係合溝
を画定する環状突出部と該環状突出部の外周面に形成さ
れた係合部とを備えた合成樹脂製下部軸受ケースと、円
筒ブロック部と該円筒ブロック部の上端内周面に径方向
に延設された内側環状鍔部と該円筒ブロック部の上端外
周面に径方向に延設された外側環状鍔部と該外側環状鍔
部の下面に形成され、該円筒ブロック部の外周面と該外
側環状鍔部の下面とで環状第一係合溝を画定する環状係
合突起部と該外側環状鍔部の外周縁に下方に延設され、
該環状係合突起部の外周面と該外側環状鍔部の下面とで
環状第二係合溝を画定する環状垂下部と該環状垂下部の
内周面に形成された係合フック部と該円筒ブロック部の
下面に形成された環状凹溝とを備えた合成樹脂製上部軸
受ケースと、前記円筒ブロック部の下面に形成された環
状凹溝に一方の端面を該環状凹溝の開口部より突出させ
て埋設され、該上、下部軸受ケースを形成する合成樹脂
よりも剛性の低い合成樹脂で形成された合成樹脂製軸受
体と、から成り、該上部軸受ケースは該円筒ブロック部
の下面に埋設された該軸受体の突出端面を該下部軸受ケ
ースの環状凹部の底面に摺接させて該軸受体を該環状凹
部内に位置せしめると共に環状係合突起部の端部を該下
部軸受ケースの環状突起部の端部外周面とその径方向に
重畳させて環状係合溝に位置せしめ、かつ環状第二係合
溝を環状突出部に係合せしめると共に環状垂下部の係合
フック部を該下部軸受ケースの環状突出部の係合部に弾
性装着せしめ、該弾性装着部および環状係合突起部と環
状突起部の重畳部にラビリンス作用による密封部を形成
して組合されてなる合成樹脂スラスト軸受によっても達
成される。

【０００７】上述した構成からなる合成樹脂スラスト軸
受において、合成樹脂製軸受体は中央部に円孔を有する
円板からなり、該円板の一方の端面を環状凹溝の開口部
より突出させて該環状凹溝に埋設されている。また、他
の態様において合成樹脂製軸受体は、中央部に円孔を有
する円板状部と該円板状部の一方の端部の内、外周面に
それぞれ延設された環状鍔部とを備え、該環状鍔部を環
状凹溝より突出させ、該円板状部を該環状凹溝に埋設さ
せて配されている。さらに、合成樹脂スラスト軸受にお
いて、上、下部軸受ケースを形成する合成樹脂として
は、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂が推奨され、
また軸受体を形成する合成樹脂としては上記上、下部軸
受ケースを形成する合成樹脂よりも剛性の低い合成樹脂
で形成され、ポリオレフィン樹脂、例えば高分子量また
は超高分子量ポリエチレン樹脂、ふっ素樹脂、例えば四
ふっ化エチレン樹脂または四ふっ化エチレン・六ふっ化
プロピレン共重合体などが推奨される。

【０００８】

【作用】合成樹脂製軸受体は該上、下部軸受ケースを形
成する合成樹脂よりも剛性の低い合成樹脂で形成されて
おり、該軸受体はその一方の端面を合成樹脂製下部軸受
ケースの環状凹部に形成された環状凹溝あるいは合成樹
脂製上部軸受ケースの円筒ブロック部下面に形成された
環状凹溝に埋設し、その他方の端面を該環状凹溝の開口
部より突出させて配されているため、該軸受体の開放
面、換言すれば該環状凹溝の開口部より突出した突出部
分の外周面、を極力小さくでき、結果として該軸受体の
耐クリープ性が高められる。したがって、耐クリープ性
が高められた該軸受体を介しての該上部軸受ケースと下
部軸受ケースとの相対回転は、該軸受体と該上部軸受ケ
ースあるいは該軸受体と該下部軸受ケースとの摩擦摩耗
特性に優れた合成樹脂同志の組合せにより、両者間に摩
擦変動を惹起することなく円滑に許容され、長期間にわ
たって円滑な操舵力が維持される。また、合成樹脂製
上、下部軸受ケースの弾性装着部および該上部軸受ケー
スの環状係合突起部と該下部軸受ケースの環状突起部の
重畳部に形成されたラビリンス作用による密封部によ
り、軸受摺動面への塵埃等の侵入が防止される。

【０００９】

【実施例】以下、本考案をその実施例を示す添付図面に
よって説明する。図１乃至第３図は第一の実施例を示
す。合成樹脂スラスト軸受１は、合成樹脂製下部軸受ケ
ース２と合成樹脂製上部軸受ケース３と該下部軸受ケー
ス２に埋設された合成樹脂製軸受体４から構成されてい
る。該下部軸受ケース２は、内面に挿通孔２０を有する
円筒部２１と該円筒部２１の下端外周面に径方向外方に
延設された幅広の環状鍔部２２と該環状鍔部２２の上面
に前記円筒部２１と径方向外方に間隔を隔てて形成され
該円筒部外周面と環状鍔部２２の上面とで環状凹部２３
を画定する環状突起部２４と該環状鍔部２２の外周縁に
上方に突設され該環状突起部の外周面と環状鍔部２２の
上面とで環状係合溝２５を画定する環状突出部２６と該
環状突出部２６の外周面に形成された係合部２７と該環
状凹部２３の底面に形成された環状凹溝２８とを備えて
いる。該環状鍔部２２の下面には径方向に相対向して突
起２９が形成されており、該突起２９は後述する合成樹
脂スラスト軸受１をストラットアッセンブリーに組込み
固定するさいの位置決めの役割を果たす。該環状突出部
２６の外周面に形成された係合部２７は、該環状突出部
２６の外周上端部から外方に向けて拡がるテーパー面部
２７ａと該テーパー面部２７ａと連続し、内方に向けて
収束して該環状鍔部２２の外周円筒面に連なるテーパー
面部２７ｂとからなる。

【００１０】該上部軸受ケース３は、円筒ブロック部３
０と該円筒ブロック部３０の上端内周面に径方向に延設
された内側環状鍔部３１と該円筒ブロック部３０の上端
外周面に径方向に延設された外側環状鍔部３２と該外側
環状鍔部３２の下面に形成され該円筒ブロック部３０の
外周面と該外側環状鍔部３２の下面とで環状第一係合溝
３３を画定する環状係合突起部３４と該外側環状鍔部３
２の外周縁に下方に延設され該環状係合突起部３４の外
周面と外側環状鍔部３２の下面とで環状第二係合溝３５
を画定する環状垂下部３６と該環状垂下部３６の内周面
に形成された係合フック部３７とを備えている。該内側
環状鍔部３１の内面は前記下部軸受ケース２の円筒部２
１の挿通孔２０と同径に形成されている。該環状垂下部
３６の内周面に形成された係合フック部３７は、環状第
二係合溝３５の外周上端から外方に向けて拡がるテーパ
ー面部３７ａと該テーパー面部３７ａと連続し内方に向
けて収束するテーパー面部３７ｂと該テーパー面部３７
ｂと連続する円筒面部３７ｃとからなる。

【００１１】合成樹脂製軸受体4は、前記上、下部軸受
ケース3、2を形成する合成樹脂よりも剛性の低い合成樹
脂で形成された中央部に円孔41を有する円板からなり、
その一方の端面には該円孔41の周縁部から外周面に貫通
する複数個の溝42が円周方向に等間隔に形成されてい
る。該溝42はグリース等の潤滑剤の溜まり部となる。そ
して、該軸受体4は前記下部軸受ケース2の環状凹部23に
形成された環状凹溝28に埋設され、該溝42が形成された
側の端面を該環状凹溝28の開口部より突出させて配され
ている。

【００１２】上記構成から成る合成樹脂製上部軸受ケー
ス3は円筒ブロック部30の下面を該下部軸受ケース2の環
状凹溝28に一方の端面を該環状凹溝の開口部より突出さ
せて埋設された該軸受体4の突出端面に摺接させて該環
状凹部23内に位置せしめると共に該環状係合突起部34の
端部を該下部軸受ケース2の環状突起部24の端部外周面
とその径方向に重畳させて環状係合溝25に位置せしめ、
かつ環状第二係合溝35を環状突出部26に係合せしめると
共に環状垂下部36の係合フック部37を該下部軸受ケース
2の環状突出部26の係合部27に弾性装着せしめ、該弾性
装着部および環状係合突起部34と環状突起部24の重畳部
にラビリンス作用による密封部を形成して該下部軸受ケ
ース2に組合され、合成樹脂スラスト軸受1が構成され
る。

【００１３】図３は上述した構成から成る合成樹脂スラ
スト軸受１をストラットアッセンブリーＡに組み込んだ
状態を示すものである。下部軸受ケース２の円筒部２１
の挿通孔２０と上部軸受ケース３の内側環状鍔部３１の
内面とをストラット５の上部バネ座シート７の平面部７
１中央に形成された挿通孔７２を挿通して配されたピス
トンロッド６の外周面に挿通し、該下部軸受ケース２の
環状鍔部２２の下面に相対向して形成された突起２９を
該上部バネ座シート７の平面部７１に形成された孔７３
に嵌合させるとともに該環状鍔部２２の下面を該平面部
７１に当接させ、該上部軸受ケース３の上面を車体側取
付部材８に当接させて合成樹脂スラスト軸受１を上部バ
ネ座シート７と車体側取付部材８との間に配置するもの
である。このように合成樹脂スラスト軸受１を組込んだ
ストラットアッセンブリーＡにおいて、ステアリング操
作により車体側取付部材８と上部バネ座シート７との間
に相対回転が生じた場合、合成樹脂スラスト軸受１の下
部軸受ケース２に埋設された軸受体４と上部軸受ケース
３の円筒ブロック部３０下面との摺接により、当該回転
は許容される。

【００１４】合成樹脂製軸受体4は該下部軸受ケース2の
環状凹部23に形成された環状凹溝28にその一方の端面を
該環状凹溝の開口部より突出させて埋設されているた
め、該軸受体4の耐クリープ性が高められている。その
ため、摩擦抵抗の小さな合成樹脂材料の組合せにより、
該軸受体4と上部軸受ケース3の円筒ブロック部30下面と
は小さな摩擦抵抗（低摩擦係数）で摺接し、上部軸受ケ
ース3と下部軸受ケース2との相対回転は円滑に許容さ
れ、摩擦変動を惹起することなく円滑な操舵力が長期間
にわたって維持される。

【００１５】図４は上述した構成から成る合成樹脂スラ
スト軸受１の他の実施例を示すもので、この実施例は前
記スラスト軸受１における下部軸受ケース２の環状鍔部
２２下面に形成された相手取付部への位置決め用の突起
２９に代えて、該下部軸受ケース２の環状鍔部２２の下
面に、該円筒部２１の挿通孔２０と連通して円筒突出部
２９ａを形成したものである。この実施例から成る合成
樹脂スラスト軸受１は、該円筒突出部２９ａを前記上部
バネ座シート７の平面部７１中央に形成された孔７２に
圧入固定される。

【００１６】図5はさらに他の実施例を示すもので、こ
の実施例は該下部軸受ケース2の環状凹部23に形成され
た環状凹溝28に、一方の端面を該環状凹溝28の開口部よ
り突出させて埋設された合成樹脂製軸受体4の他の実施
例を示すものである。すなわち、該軸受体4は該上、下
部軸受ケース3、2を形成する合成樹脂よりも剛性の低い
合成樹脂で形成された中央部に円孔41を有する円板状部
43と該円板状部43の一方の端部の内、外周面にそれぞれ
延設された環状鍔部44、45と該環状鍔部44、45の上面を
含む該円板状部43の上面に内側環状鍔部44の周縁から外
側環状鍔部45の周縁を貫通して円周方向に等間隔に形成
された複数個の溝（図示せず）を備えているもので、該
軸受体4は該環状鍔部44、45を下部軸受ケース2の環状凹
部23に形成された環状凹溝28より突出させ、該円板状部
43を該環状凹溝28に埋設させて配されている。なお、図
中のその他の構成は前述した実施例と同様の符号をもっ
て示している。

【００１７】図６はさらに他の実施例を示すもので、こ
の実施例は前述した構成から成る合成樹脂スラスト軸受
1における合成樹脂製軸受体4を上部軸受ケース3の円筒
ブロック部30の下面に埋設したものである。すなわち、
前述した合成樹脂製下部軸受ケース2の環状凹部23の底
面に形成された環状凹溝28に代えて、該環状凹部23の底
面に相対向する合成樹脂製上部軸受ケース3の円筒ブロ
ック部30の下面に環状凹溝38を形成し、該環状凹溝38に
合成樹脂製軸受体4を、その一方の端面を該環状凹溝38
の開口部より突出させて埋設し、該軸受体4の突出端面
を該下部軸受ケース2の環状凹部23の底面と摺接させる
ようにしたもので、図中のその他の構成は前述した実施
例と同様で同一の符号をもって示している。

【００１８】図7は上記図６に示した構成から成る合成
樹脂スラスト軸受1において、該上部軸受ケース3の円筒
ブロック部30の下面に形成された環状凹溝38に、一方の
端面を該環状凹溝38の開口部より突出させて埋設された
合成樹脂製軸受体4の他の実施例を示すものである。す
なわち、該軸受体4は該上、下部軸受ケース3、2を形成
する合成樹脂よりも剛性の低い合成樹脂で形成された中
央部に円孔41を有する円板状部43と該円板状部43の一方
の端部の内、外周面にそれぞれ延設された環状鍔部44、
45と該環状鍔部44、45の上面を含む該円板状部43の上面
に内側環状鍔部44の周縁から外側環状鍔部45の周縁を貫
通して円周方向に等間隔に形成された複数個の溝（図示
せず）を備えているもので、該軸受体4は該環状鍔部4
4、45を上部軸受ケース3の円筒ブロック部30の下面に形
成された環状凹溝38より突出させ、該円板状部43を該環
状凹溝38に埋設させて配されている。なお、図中のその
他の構成は前述した実施例と同様で同一の符号をもって
示している。

【００１９】上述した図５乃至図７に示す実施例におい
ても、前記図４に示すように下部軸受ケース２の環状鍔
部２２下面に形成された相手取付部への位置決め用の突
起２９に代えて、該下部軸受ケース２の環状鍔部２２の
下面に、該円筒部２１の挿通孔２０と連通する円筒突出
部を形成することもできる。

【００２０】

【考案の効果】以上のように本考案の合成樹脂スラスト
軸受によれば、合成樹脂製上、下部軸受ケース間に配さ
れる合成樹脂製軸受体は、合成樹脂製下部軸受ケースの
環状凹部に形成された環状凹溝あるいは合成樹脂製上部
軸受ケースの円筒ブロック部の下面に形成された環状凹
溝に埋設され、その一方の端面を該環状凹溝の開口部よ
り突出させて配されているため、該軸受体の開放面、換
言すれば該環状凹溝の開口部より突出した突出部分の外
周面を極力小さくでき、結果として該軸受体の耐クリー
プ性が高められるので、該軸受体を形成する合成樹脂と
して該上、下部軸受ケースを形成する合成樹脂よりも剛
性の低い合成樹脂の使用が可能となる。その結果、該軸
受体を介する上、下部軸受ケースの相対回転は、両者間
に摩擦変動を惹起することなく円滑に許容され、長期間
にわたって円滑な操舵力が維持される。また、合成樹脂
製上、下部軸受ケースの弾性装着部および上部軸受ケー
スの環状係合突起部と下部軸受ケースの環状突起部の重
畳部に形成されたラビリンス作用による密封部により、
軸受摺動面への塵埃等の侵入が防止される。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案による合成樹脂スラスト軸受の好ましい
実施例を示す縦断面図である。

【図２】図１の合成樹脂製下部軸受ケースと合成樹脂製
軸受体を示す平面図である。

【図３】図１に示す合成樹脂スラスト軸受をストラット
アッセンブリに組込んだ状態を示す縦断面図である。

【図４】図１に示す合成樹脂スラスト軸受の他の実施例
を示す縦断面図である。

【図５】図１に示す合成樹脂スラスト軸受の他の実施例
を示す縦断面図である。

【図６】本考案による合成樹脂スラスト軸受の他の実施
例を示す縦断面図である。

【図７】図６に示す合成樹脂スラスト軸受の他の実施例
を示す縦断面図である。

【符号の説明】

１ 合成樹脂スラスト軸受 ２ 合成樹脂製下部軸受ケース ２１ 円筒部 ２２ 環状鍔部 ２３ 環状凹部 ２４ 環状突起部 ２５ 環状係合溝 ２６ 環状突出部 ２７ 係合部 ２８ 環状凹溝 ３ 合成樹脂製上部軸受ケース ３０ 円筒ブロック部 ３３ 環状第一係合溝 ３４ 環状係合突起部 ３５ 環状第二係合溝 ３６ 環状垂下部 ３７ 係合フック部 ３８ 環状凹溝 ４ 合成樹脂製軸受体

フロントページの続き (56)参考文献 実開 昭63−101326（ＪＰ，Ｕ) 実開 平１−141926（ＪＰ，Ｕ) 実開 平２−107823（ＪＰ，Ｕ) 実開 平４−105218（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭63−115916（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭63−115917（ＪＰ，Ｕ) 実開 平７−22124（ＪＰ，Ｕ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) F16C 17/04 F16C 33/20 B60G 15/06

Claims (6)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 内面に挿通孔（20）を有する円筒部（2
   1）と該円筒部の下端外周面に径方向外方に延設された
   幅広の環状鍔部（22）と該環状鍔部の上面に該円筒部
   （21）と径方向外方に間隔を隔てて形成され、該円筒部
   外周面と環状鍔部（22）の上面とで環状凹部（23）を画
   定する環状突起部（24）と該環状鍔部（22）の外周縁に
   上方に突設され、該環状突起部の外周面と環状鍔部の上
   面とで環状係合溝（25）を画定する環状突出部（26）と
   該環状突出部の外周面に形成された係合部（27）と該環
   状凹部（23）の底面に形成された環状凹溝（28）とを備
   えた合成樹脂製下部軸受ケース（2）と、 前記環状凹溝（28）に一方の端面を該環状凹溝（28）の
   開口部より突出させて埋設された合成樹脂製軸受体
   （4）と、 円筒ブロック部（30）と該円筒ブロック部の上端内周面
   に径方向に延設された内側環状鍔部（31）と該円筒ブロ
   ック部の上端外周面に径方向に延設された外側環状鍔部
   （32）と該外側環状鍔部の下面に形成され、該円筒ブロ
   ック部の外周面と該外側環状鍔部の下面とで環状第一係
   合溝（33）を画定する環状係合突起部（34）と該外側環
   状鍔部（32）の外周縁に下方に延設され、該環状係合突
   起部の外周面と該外側環状鍔部の下面とで環状第二係合
   溝（35）を画定する環状垂下部（36）と該環状垂下部の
   内周面に形成された係合フック部（37）とを備えた合成
   樹脂製上部軸受ケース（3）と、 から成り、該上部軸受ケース（3）は該円筒ブロック部
   （30）の下面を該下部軸受ケース（2）の環状凹溝（2
   8）に埋設された該軸受体（4）の突出端面に摺接させて
   該環状凹部（23）内に位置せしめると共に環状係合突起
   部（34）の端部を該下部軸受ケース（2）の環状突起部
   （24）の端部外周面とその径方向に重畳させて環状係合
   溝（25）に位置せしめ、かつ環状第二係合溝（35）を環
   状突出部（26）に係合せしめると共に環状垂下部（36）
   の係合フック部（37）を該下部軸受ケース（2）の環状
   突出部（26）の係合部（27）に弾性装着せしめ、該弾性
   装着部および環状係合突起部（34）と環状突起部（24）
   の重畳部にラビリンス作用による密封部を形成して組合
   されており、該軸受体（4）は該上、下部軸受ケース
   （3）、（2）を形成する合成樹脂よりも剛性の低い合成
   樹脂で形成されていることを特徴とする合成樹脂スラス
   ト軸受。
2. 【請求項２】 合成樹脂製軸受体（4）は、中央部に円
   孔（41）を有する円板からなり、該円板の一方の端面を
   環状凹溝（28）の開口部より突出させて該環状凹溝に埋
   設されている請求項１に記載の合成樹脂スラスト軸受。
3. 【請求項３】 合成樹脂製軸受体（4）は、中央部に円
   孔（41）を有する円板状部（43）と該円板状部の一方の
   端部の内、外周面にそれぞれ延設された環状鍔部（4
   4）、（45）とを備え、該環状鍔部を環状凹溝（28）よ
   り突出させ、該円板状部（43）を該環状凹溝（28）に埋
   設させて配されている請求項１に記載の合成樹脂スラス
   ト軸受。
4. 【請求項４】 内面に挿通孔（20）を有する円筒部（2
   1）と該円筒部の下端外周面に径方向外方に延設された
   幅広の環状鍔部（22）と該環状鍔部の上面に該円筒部
   （21）と径方向外方に間隔を隔てて形成され、該円筒部
   外周面と環状鍔部の上面とで環状凹部（23）を画定する
   環状突起部（24）と該環状鍔部（22）の外周縁に上方に
   突設され、該環状突起部（24）の外周面と環状鍔部（2
   2）の上面とで環状係合溝（25）を画定する環状突出部
   （26）と該環状突出部の外周面に形成された係合部（2
   7）とを備えた合成樹脂製下部軸受ケース（2）と、 円筒ブロック部（30）と該円筒ブロック部の上端内周面
   に径方向に延設された内側環状鍔部（31）と該円筒ブロ
   ック部の上端外周面に径方向に延設された外側環状鍔部
   （32）と該外側環状鍔部の下面に形成され、該円筒ブロ
   ック部の外周面と該外側環状鍔部の下面とで環状第一係
   合溝（33）を画定する環状係合突起部（34）と該外側環
   状鍔部の外周縁に下方に延設され、該環状係合突起部の
   外周面と該外側環状鍔部の下面とで環状第二係合溝（3
   5）を画定する環状垂下部（36）と該環状垂下部の内周
   面に形成された係合フック部（37）と該円筒ブロック部
   （30）の下面に形成された環状凹溝（38）とを備えた合
   成樹脂製上部軸受ケース（3）と、 前記円筒ブロック部（30）の下面に形成された環状凹溝
   （38）に一方の端面を該環状凹溝の開口部より突出させ
   て埋設され、該上、下部軸受ケースを形成する合成樹脂
   よりも剛性の低い合成樹脂で形成された合成樹脂製軸受
   体（4）と、 から成り、該上部軸受ケース（3）は該円筒ブロック部
   （30）の下面に埋設された該軸受体（4）の突出端面を
   該下部軸受ケース（2）の環状凹部（23）の底面に摺接
   させて該軸受体を該環状凹部内に位置せしめると共に環
   状係合突起部（34）の端部を該下部軸受ケースの環状突
   起部（24）の端部外周面とその径方向に重畳させて環状
   係合溝（25）に位置せしめ、かつ環状第二係合溝（35）
   を環状突出部（26）に係合せしめると共に環状垂下部
   （36）の係合フック部（37）を該下部軸受ケース（2）
   の環状突出部（26）の係合部（27）に弾性装着せしめ、
   該弾性装着部および環状係合突起部（34）と環状突起部
   （24）の重畳部にラビリンス作用による密封部を形成し
   て組合されていることを特徴とする合成樹脂スラスト軸
   受。
5. 【請求項５】 合成樹脂製軸受体（4）は、中央部に円
   孔（41）を有する円板からなり、該円板の一方の端面を
   環状凹溝（38）の開口部より突出させて該環状凹溝に埋
   設されている請求項４に記載の合成樹脂スラスト軸受。
6. 【請求項６】 合成樹脂製軸受体（4）は、中央部に円
   孔（41）を有する円板状部（43）と該円板状部の一方の
   端部の内、外周面にそれぞれ延設された環状鍔部（4
   4）、（45）とを備え、該環状鍔部を環状凹溝（38）よ
   り突出させ、該円板状部（43）を該環状凹溝（38）に埋
   設させて配されている請求項４に記載の合成樹脂スラス
   ト軸受。