JP2590728C - - Google Patents
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Description
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はHCl添加の有機金属気相成長法(以下、MOVPE法と略す)によ
り、少なくともAlとInを含んだIII−V族化合物半導体を、表面の一部を
絶縁膜で覆った半導体基板上に選択結晶成長させる方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】 半導体表面の一剖を窒化シリコンや酸化シリコンなどの絶縁膜で覆い、覆われ
ていない部分にのみ半導体結晶を成長させる選択成長技術は、レーザダイオード
などの光デバイスや、発光素子と電気回路を同一基板上に集積する光集積素子の
作製上非常に有効な技術である。GaAsやInP等のAlを含まない半導体の
場合、通常のMOVPE法で容易に絶縁膜で覆っていない基板表面のみに選択的
に結晶成長できる。例えば、エレクトロニクス・レターズ(Electroni
cs Letters)Vol.28(1992)p153。一方、Alを含ん
だ半導体(AlAsや高Al組成のAlZGa1-ZAs)は、Al成長種が揮発性
に乏しいために通常のMOVPE法による選択成長は非常に難しいとされている
。従って、成長中にHClやAsCl3等のClを含む物質を添加して揮発性 の高い塩化Alを形成することにより選択成長を実現している。従来、AlAs
や高Al組成のAlZGa1-ZAsの選択成長は、十分な選択性を得るために、I
II族有機金属原料の全供給量に対するHCl供給量の比率([HCl供給量]/
[III族供給量])が0.4〜1.0の範囲で行われている。また、図4に示し
たようにAlZGa1-ZAsではHClを添加した場合と添加しない場合でAl組
成が異なることがジャーナル・オブ・クリスタル・グロウス(Journal
of Crystal Growth)Vol.124(1992)p235−
242に報告されている。図4はHClを添加しない場合と添加した場合で成長
した(成長温度800℃)AlZGa1-ZAsの4.2Kフォトルミネセンス・ス
ペクトルである。HClを添加すると発光波長が短波長化し、Al組成が増加し
ていることがわかる。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】 AlZGa1-ZAsは格子定数のAl組成依存性が無視できるほど小さく、デバ
イス作製上問題となる格子不整を考慮する必要がない。従って、HCl添加によ
って選択成長したAlZGa1-ZAsの組成が変化しても、特に問題は生じなかっ
た。 【0004】 一方、少なくともAlとInを含むIII−V族化合物半導体(例えばAlX
In1-XP)は格子定数のAl組成依存性が大きい。そのため、HCl添加して
格子定数がずれれば、結晶に歪が入り応力の限界を超えると欠陥が導入され、デ
バイスに適用した場合を想定すると、デバイスの動作やその動作信頼性を悪化さ
せる。 【0005】 従来には、AlとInを含むIII−V族化合物半導体において、HClを添
加して選択成長をした報告例はないが、上述の問題は当然予想される。このとき
、その対処として、格子がずれる量を把握して結晶成長時にAlとInの有機原
料供給量を補正すれば良いことになる。しかしながら、GaAs基板に格子整合
可能なAlInPとAlGaInP及びInP基板に格子整合可能なAlInA
s に対し、AlGaAsに関する前述の報告例を参照して選択成長を実施したとこ
ろ、基板に格子整合した選択成長を2インチウエハ全体でかつ試行回毎に再現性
良く得ることができないという問題に遭遇した。 【0006】 本発明の目的は、上述の問題を取り除き、少なくともAlとInを含むIII
−V化合物半導体をHCl添加のMOVPE法で選択成長する場合、再現性良く
かつ大面積の基板に格子整合した選択成長結晶層を容易に得る方法を提供するこ
とにある。 【0007】 【課題を解決するための手段】 本発明は、表面の一部を絶縁膜で覆った半導体基板上にHClとIII族有機
金属原料とV族原料を供給し、前記半導体基板と格子整合する少なくともAlと
Inを含むIII−V族化合物半導体を結晶成長する方法において、前記III
族有機金属原料の全供給量に対するHCl供給量の比率([HCl供給量]/[I
II族供給量])が0.01以上0.3以下として前記III−V族化合物半導
体を絶縁膜で覆われていない基板表面だけに選択的に成長する。 【0008】 【作用】 本発明の結晶成長方法の作用について詳しく説明する。図1はGaAsに格子
整合可能なAlXIn1-XP混晶においてHCl添加による選択成長を行ったとき
、[HCl供給量]/[III族供給量]の値を0〜1.0まで変化させた場合
におけるAlXIn1-XP成長膜のAl組成(Al固相比)とIII族有機金属原
料の全供給量に対するトリメチルアルミニウム(TMA1)供給量の比率([TMA
l供給量]/[III族供給量]:Al気相比)の関係を示したものである。この時
のAlXIn1-XP膜の成長温度は660℃である。この図から明らかなように[
HCl供給量]/[III族供給量]が0の場合、つまりHClを添加しない場
合Al組成はAl気相比に比例して直線的に増加し、組成の制御が容易であるこ
とがわかる。しかし、[HCl供給量]/[III族供給量]を増加させるとグ
ラフは大きく湾曲してAl過剰になる。AlXIn1-XPは組成比x(固 相比)が0.5でGaAsに格子整合するが、その近傍では上述の湾曲のため固
相比は気相比に対して敏感に変化する。 【0009】 従来AlGaAsの選択成長で充分な選択性を得るための条件として開示され
ている[HCl供給量]/[III族供給量]が0.4〜1.0の範囲では、A
l気相比のふらつきが15倍以上になって固相比に現れる。現状原料供給量を制
御するマスフローコントローラの精度とInの有機原料(トリメチルインジウム
)は固体からの昇華によりキャリアガスに載せて供給していることを考えるとA
l気相比の制御には1%のふらつきがあると想定される。この1%のふらつきは
固相比では15%のふらつきに対応する。格子整合条件から組成が15%もずれ
ると格子欠陥の少ない1μm 以上の成長層を得ることは難しく、デバイスを作製
できるレベルではない。逆に言えば気相比を非常に高い精度で制御しなければな
らないと考えられる。 【0010】 次にAl気相比の制御が0.1%に制御できたと仮定する。この場合でも、一
般に通常のMOVPE装置は反応管の形状等により2インチウエハでは1%程度
の組成分布があるとみるのが妥当と考えられる。この分布も15倍以上になって
現れると考えなければならない。これらは、組成によらずGaAs基板にほぼ格
子整合するAlGaAsでは問題にならなかったことであり、AlGaAsから
の転用がAlInPに対して行えなかった理由である。しかしながら、[HCl
供給量]/[III族供給量]の値が0.3以下にすれば、上述の湾曲も比較的
小さく、組成制御が容易である。[HCl供給量]/[III族供給量]の値が
0.3のとき、Al気相比のふらつきは固相比にして2.5倍のふらつき以内に
とどめることができ、2インチウエハの面内分布も含めて格子欠陥の少ない1μ
m 以上の成長層を容易に得ることができ、デバイスへの適用が可能になる。従っ
て、AlXIn1-XPの組成の制御性を考えた場合、[HCl供給量]/[III
族供給量]を0.3以下にして、はじめて実用的なAlInP選択成長膜を得る
ことができる。 【0011】 [HCl供給量]/[III族供給量]の下限は、当然、選択性によって決め
られる。図2はHCl添加AIX In1-X Pの選択成長において、幅5μm 長さ
500μm の窒化シリコンマスク上に析出したAlInP多結晶の密度と[HC
l供給量]/[III族供給量]の関係を示したものである。マスクの大きさは
レーザのストライプを想定した。平均多結晶数が1以下であるときレーザストラ
イプが形成可能と判断できる。AlXIn1-XP成長ではHClをわずかに供給す
ることにより多結晶の密度が急激に低下し、選択性が向上する。この結果から[
HCl供給量]/[III族供給量]が0.01以上で十分に選択性が得られる
ことがわかる。 【0012】 以上の結果からAlXIn1-XPの選択成長では[HCl供給量]/[III族
供給量]を選択性を考えて0.01以上で、組成の制御性を考えて0.3以下で
行なうことによりデバイスに適用可能な選択成長層を初めて得ることができる。 【0013】 【実施例】 以下に本発明によるAlInP、AlInAs選択成長の実施例を記載する。 【0014】 AlInP、AlInAsの選択成長は減圧(70torr)のMOVPE法
で行った。III族原料としてはTMAl、トリメチルインジウム(TMIn)
を用い、TMInの供給量を1.92×10-5mol/minで固定し、TMA
lの供給量を0.03〜1.80×10-5mol/minと変えることによりA
l組成を変化させた。V族原料としては100%フォスフィン(PH3)とH2希
釈の10%アルシン(AsH3)を、HClは水素希釈10%HClを用いた。
PH3、AsH3の流量はそれぞれ150sccm、50sccmである。HCl
の供給量は、III族原料の全供給量に対するHCl供給量の比([HCl供給
量]/[III族供給量])が0.01〜1.0になるように変化させた。原料の
キャリアガスにはH2を用い、反応管中の総流量は14.5リットル/min であ
る。基板はGaAs(001)2°off to [110]を用い、プラズマ
化学堆積法で堆積させた厚さ300nm の窒化シリコンをマスクに用いた。 成長層の膜厚は1μm とした。また、成長層の組成はX線回折ピークとAlの特
性X線による組成分析(EPMA)から求めた。 【0015】 図1はAl組成比x(固相比)とAl気相比の関係を[HCl供給量]/[I
II族供給量]に対してグラフ化したものである。この内容については「作用」
の説明の際に詳しくのべた。 【0016】 【表1】 【0017】 表1は[HCl供給量]/[III族供給量]が0.1である本発明と0.4
である従来報告の値でGaAs(001)面に格子整合するAl0.5In0.5Pの
成長を試みた詳細な結果である。組成の制御性を検討するためにIII族有機金
属原料の全供給量に対するTMAl供給量の比率(Al気相比)をわずかに変化
させた場合における組成の変化を検討した。同一気相比の成長を複数回行ったと きの組成制御の安定性をも検討した。表1から明らかなように[HCl供給量]
/[III族供給量]が0.1の場合は、Al気相比を0.23から0.25ま
で変化させてもAl組成の変化は0.486から0.508と小さい。また、A
l気相比が0.24で繰り返し成長を行った結果からもAl組成の変動は小さい
。 【0018】 一方、[HCl供給量]/[III族供給量]が0.4の場合、Al気相比を
0.02から0.04まで変化させるとAl組成は0.372から0.575ま
で大きく変化する。この場合、TMAlの供給量を厳密に制御しなければならな
いことがわかる。また、Al気相比0.03での成長回毎のAl組成も変動が大
きく、再現性に問題がある。2インチウエハの中央部以外では格子の歪に起因す
ると考えられるクロスハッチ状のモホロジーが観測される。従って、デバイス作
製上必要となる格子整合を行う場合、[HCl供給量]/[III族供給量]が
0.4におけるAlInPの組成制御は難しい。 【0019】 以上の実施例から本発明の成長方法がAlXIn1-XPの選択成長を行う上で組
成制御に優れていることがわかる。 【0020】 本実施例はAlInPについて述べたが、AlとGaの組成比が0.7対0.
3以上の高Al組成のAlGaInPに対してもほぼ同様の傾向にあり、本発明
は高Al組成のAlGaInPにも適用できる。また、本発明はAlGaInP
,AlInPが一般に結晶成長される温度630℃から720℃の範囲で適用で
きるものと考えられる。 【0021】 図3は、HCl添加MOVPE法により成長したAlX In1-X AsのAl組
成とIII族有機金属原料の全供給量に対するトリメチルアルミニウム(TMA
l)供給量の比率([TMAl供給量]/[III族供給量]:Al気相比)の関係
を示したものである。成長温度は700℃である。図1で示したAlInPの結
果に比べて多少の違いがあるがほぼ同様の傾向を示している。従って、AlIn
Pのときと同様に、[HCl供給量]/[III族供給量]を0.3以下にす ることにより、実用的な選択成長層を得ることができると考えられる。これにつ
いては、表2に示した各III−V族化合物半導体の標準生成エンタルピー(結
合エネルギー)から次のように推測できる。AlPとInPの結合エネルギーの
差は21.3kcal/molと大きく、HClを添加すると組成ずれが起こり
やすい。従って、[HCl供給量]/[III族供給量]を0.3以下に抑制す
れば21.3kcal/mol差以下の化合物については組成制御が可能である
と考えられる。AlInAsの場合、AlAsとInAsの結合エネルギー差は
15.5kcal/molでその範囲にはいるため、本発明が適用できると考え
られる。 【0022】 本実施例ではAlInPとAlInAsの場合について述べたが、表2に示し
た結合エネルギーの値から各化合物間のエネルギー差を計算すると、先にも触れ
たAlGaInPだけでなく、AlInAsP等についても本発明によって実用
的な選択成長層を得ることが可能である考えられる。 【0023】 【表2】 【0024】 【発明の効果】 以上のように本発明によるIII−V族化合物半導体の選択成長では、[HC
l供給量]/[III族供給量]を0.01V以上にして選択性を向上させ、[
HCl供給量]/[III族供給量]を0.3以下にすることによって組成の制
御性を高められる。その結果が組成制御が良く、大面積の基板上に選択成長でき
るという利点を有している。
り、少なくともAlとInを含んだIII−V族化合物半導体を、表面の一部を
絶縁膜で覆った半導体基板上に選択結晶成長させる方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】 半導体表面の一剖を窒化シリコンや酸化シリコンなどの絶縁膜で覆い、覆われ
ていない部分にのみ半導体結晶を成長させる選択成長技術は、レーザダイオード
などの光デバイスや、発光素子と電気回路を同一基板上に集積する光集積素子の
作製上非常に有効な技術である。GaAsやInP等のAlを含まない半導体の
場合、通常のMOVPE法で容易に絶縁膜で覆っていない基板表面のみに選択的
に結晶成長できる。例えば、エレクトロニクス・レターズ(Electroni
cs Letters)Vol.28(1992)p153。一方、Alを含ん
だ半導体(AlAsや高Al組成のAlZGa1-ZAs)は、Al成長種が揮発性
に乏しいために通常のMOVPE法による選択成長は非常に難しいとされている
。従って、成長中にHClやAsCl3等のClを含む物質を添加して揮発性 の高い塩化Alを形成することにより選択成長を実現している。従来、AlAs
や高Al組成のAlZGa1-ZAsの選択成長は、十分な選択性を得るために、I
II族有機金属原料の全供給量に対するHCl供給量の比率([HCl供給量]/
[III族供給量])が0.4〜1.0の範囲で行われている。また、図4に示し
たようにAlZGa1-ZAsではHClを添加した場合と添加しない場合でAl組
成が異なることがジャーナル・オブ・クリスタル・グロウス(Journal
of Crystal Growth)Vol.124(1992)p235−
242に報告されている。図4はHClを添加しない場合と添加した場合で成長
した(成長温度800℃)AlZGa1-ZAsの4.2Kフォトルミネセンス・ス
ペクトルである。HClを添加すると発光波長が短波長化し、Al組成が増加し
ていることがわかる。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】 AlZGa1-ZAsは格子定数のAl組成依存性が無視できるほど小さく、デバ
イス作製上問題となる格子不整を考慮する必要がない。従って、HCl添加によ
って選択成長したAlZGa1-ZAsの組成が変化しても、特に問題は生じなかっ
た。 【0004】 一方、少なくともAlとInを含むIII−V族化合物半導体(例えばAlX
In1-XP)は格子定数のAl組成依存性が大きい。そのため、HCl添加して
格子定数がずれれば、結晶に歪が入り応力の限界を超えると欠陥が導入され、デ
バイスに適用した場合を想定すると、デバイスの動作やその動作信頼性を悪化さ
せる。 【0005】 従来には、AlとInを含むIII−V族化合物半導体において、HClを添
加して選択成長をした報告例はないが、上述の問題は当然予想される。このとき
、その対処として、格子がずれる量を把握して結晶成長時にAlとInの有機原
料供給量を補正すれば良いことになる。しかしながら、GaAs基板に格子整合
可能なAlInPとAlGaInP及びInP基板に格子整合可能なAlInA
s に対し、AlGaAsに関する前述の報告例を参照して選択成長を実施したとこ
ろ、基板に格子整合した選択成長を2インチウエハ全体でかつ試行回毎に再現性
良く得ることができないという問題に遭遇した。 【0006】 本発明の目的は、上述の問題を取り除き、少なくともAlとInを含むIII
−V化合物半導体をHCl添加のMOVPE法で選択成長する場合、再現性良く
かつ大面積の基板に格子整合した選択成長結晶層を容易に得る方法を提供するこ
とにある。 【0007】 【課題を解決するための手段】 本発明は、表面の一部を絶縁膜で覆った半導体基板上にHClとIII族有機
金属原料とV族原料を供給し、前記半導体基板と格子整合する少なくともAlと
Inを含むIII−V族化合物半導体を結晶成長する方法において、前記III
族有機金属原料の全供給量に対するHCl供給量の比率([HCl供給量]/[I
II族供給量])が0.01以上0.3以下として前記III−V族化合物半導
体を絶縁膜で覆われていない基板表面だけに選択的に成長する。 【0008】 【作用】 本発明の結晶成長方法の作用について詳しく説明する。図1はGaAsに格子
整合可能なAlXIn1-XP混晶においてHCl添加による選択成長を行ったとき
、[HCl供給量]/[III族供給量]の値を0〜1.0まで変化させた場合
におけるAlXIn1-XP成長膜のAl組成(Al固相比)とIII族有機金属原
料の全供給量に対するトリメチルアルミニウム(TMA1)供給量の比率([TMA
l供給量]/[III族供給量]:Al気相比)の関係を示したものである。この時
のAlXIn1-XP膜の成長温度は660℃である。この図から明らかなように[
HCl供給量]/[III族供給量]が0の場合、つまりHClを添加しない場
合Al組成はAl気相比に比例して直線的に増加し、組成の制御が容易であるこ
とがわかる。しかし、[HCl供給量]/[III族供給量]を増加させるとグ
ラフは大きく湾曲してAl過剰になる。AlXIn1-XPは組成比x(固 相比)が0.5でGaAsに格子整合するが、その近傍では上述の湾曲のため固
相比は気相比に対して敏感に変化する。 【0009】 従来AlGaAsの選択成長で充分な選択性を得るための条件として開示され
ている[HCl供給量]/[III族供給量]が0.4〜1.0の範囲では、A
l気相比のふらつきが15倍以上になって固相比に現れる。現状原料供給量を制
御するマスフローコントローラの精度とInの有機原料(トリメチルインジウム
)は固体からの昇華によりキャリアガスに載せて供給していることを考えるとA
l気相比の制御には1%のふらつきがあると想定される。この1%のふらつきは
固相比では15%のふらつきに対応する。格子整合条件から組成が15%もずれ
ると格子欠陥の少ない1μm 以上の成長層を得ることは難しく、デバイスを作製
できるレベルではない。逆に言えば気相比を非常に高い精度で制御しなければな
らないと考えられる。 【0010】 次にAl気相比の制御が0.1%に制御できたと仮定する。この場合でも、一
般に通常のMOVPE装置は反応管の形状等により2インチウエハでは1%程度
の組成分布があるとみるのが妥当と考えられる。この分布も15倍以上になって
現れると考えなければならない。これらは、組成によらずGaAs基板にほぼ格
子整合するAlGaAsでは問題にならなかったことであり、AlGaAsから
の転用がAlInPに対して行えなかった理由である。しかしながら、[HCl
供給量]/[III族供給量]の値が0.3以下にすれば、上述の湾曲も比較的
小さく、組成制御が容易である。[HCl供給量]/[III族供給量]の値が
0.3のとき、Al気相比のふらつきは固相比にして2.5倍のふらつき以内に
とどめることができ、2インチウエハの面内分布も含めて格子欠陥の少ない1μ
m 以上の成長層を容易に得ることができ、デバイスへの適用が可能になる。従っ
て、AlXIn1-XPの組成の制御性を考えた場合、[HCl供給量]/[III
族供給量]を0.3以下にして、はじめて実用的なAlInP選択成長膜を得る
ことができる。 【0011】 [HCl供給量]/[III族供給量]の下限は、当然、選択性によって決め
られる。図2はHCl添加AIX In1-X Pの選択成長において、幅5μm 長さ
500μm の窒化シリコンマスク上に析出したAlInP多結晶の密度と[HC
l供給量]/[III族供給量]の関係を示したものである。マスクの大きさは
レーザのストライプを想定した。平均多結晶数が1以下であるときレーザストラ
イプが形成可能と判断できる。AlXIn1-XP成長ではHClをわずかに供給す
ることにより多結晶の密度が急激に低下し、選択性が向上する。この結果から[
HCl供給量]/[III族供給量]が0.01以上で十分に選択性が得られる
ことがわかる。 【0012】 以上の結果からAlXIn1-XPの選択成長では[HCl供給量]/[III族
供給量]を選択性を考えて0.01以上で、組成の制御性を考えて0.3以下で
行なうことによりデバイスに適用可能な選択成長層を初めて得ることができる。 【0013】 【実施例】 以下に本発明によるAlInP、AlInAs選択成長の実施例を記載する。 【0014】 AlInP、AlInAsの選択成長は減圧(70torr)のMOVPE法
で行った。III族原料としてはTMAl、トリメチルインジウム(TMIn)
を用い、TMInの供給量を1.92×10-5mol/minで固定し、TMA
lの供給量を0.03〜1.80×10-5mol/minと変えることによりA
l組成を変化させた。V族原料としては100%フォスフィン(PH3)とH2希
釈の10%アルシン(AsH3)を、HClは水素希釈10%HClを用いた。
PH3、AsH3の流量はそれぞれ150sccm、50sccmである。HCl
の供給量は、III族原料の全供給量に対するHCl供給量の比([HCl供給
量]/[III族供給量])が0.01〜1.0になるように変化させた。原料の
キャリアガスにはH2を用い、反応管中の総流量は14.5リットル/min であ
る。基板はGaAs(001)2°off to [110]を用い、プラズマ
化学堆積法で堆積させた厚さ300nm の窒化シリコンをマスクに用いた。 成長層の膜厚は1μm とした。また、成長層の組成はX線回折ピークとAlの特
性X線による組成分析(EPMA)から求めた。 【0015】 図1はAl組成比x(固相比)とAl気相比の関係を[HCl供給量]/[I
II族供給量]に対してグラフ化したものである。この内容については「作用」
の説明の際に詳しくのべた。 【0016】 【表1】 【0017】 表1は[HCl供給量]/[III族供給量]が0.1である本発明と0.4
である従来報告の値でGaAs(001)面に格子整合するAl0.5In0.5Pの
成長を試みた詳細な結果である。組成の制御性を検討するためにIII族有機金
属原料の全供給量に対するTMAl供給量の比率(Al気相比)をわずかに変化
させた場合における組成の変化を検討した。同一気相比の成長を複数回行ったと きの組成制御の安定性をも検討した。表1から明らかなように[HCl供給量]
/[III族供給量]が0.1の場合は、Al気相比を0.23から0.25ま
で変化させてもAl組成の変化は0.486から0.508と小さい。また、A
l気相比が0.24で繰り返し成長を行った結果からもAl組成の変動は小さい
。 【0018】 一方、[HCl供給量]/[III族供給量]が0.4の場合、Al気相比を
0.02から0.04まで変化させるとAl組成は0.372から0.575ま
で大きく変化する。この場合、TMAlの供給量を厳密に制御しなければならな
いことがわかる。また、Al気相比0.03での成長回毎のAl組成も変動が大
きく、再現性に問題がある。2インチウエハの中央部以外では格子の歪に起因す
ると考えられるクロスハッチ状のモホロジーが観測される。従って、デバイス作
製上必要となる格子整合を行う場合、[HCl供給量]/[III族供給量]が
0.4におけるAlInPの組成制御は難しい。 【0019】 以上の実施例から本発明の成長方法がAlXIn1-XPの選択成長を行う上で組
成制御に優れていることがわかる。 【0020】 本実施例はAlInPについて述べたが、AlとGaの組成比が0.7対0.
3以上の高Al組成のAlGaInPに対してもほぼ同様の傾向にあり、本発明
は高Al組成のAlGaInPにも適用できる。また、本発明はAlGaInP
,AlInPが一般に結晶成長される温度630℃から720℃の範囲で適用で
きるものと考えられる。 【0021】 図3は、HCl添加MOVPE法により成長したAlX In1-X AsのAl組
成とIII族有機金属原料の全供給量に対するトリメチルアルミニウム(TMA
l)供給量の比率([TMAl供給量]/[III族供給量]:Al気相比)の関係
を示したものである。成長温度は700℃である。図1で示したAlInPの結
果に比べて多少の違いがあるがほぼ同様の傾向を示している。従って、AlIn
Pのときと同様に、[HCl供給量]/[III族供給量]を0.3以下にす ることにより、実用的な選択成長層を得ることができると考えられる。これにつ
いては、表2に示した各III−V族化合物半導体の標準生成エンタルピー(結
合エネルギー)から次のように推測できる。AlPとInPの結合エネルギーの
差は21.3kcal/molと大きく、HClを添加すると組成ずれが起こり
やすい。従って、[HCl供給量]/[III族供給量]を0.3以下に抑制す
れば21.3kcal/mol差以下の化合物については組成制御が可能である
と考えられる。AlInAsの場合、AlAsとInAsの結合エネルギー差は
15.5kcal/molでその範囲にはいるため、本発明が適用できると考え
られる。 【0022】 本実施例ではAlInPとAlInAsの場合について述べたが、表2に示し
た結合エネルギーの値から各化合物間のエネルギー差を計算すると、先にも触れ
たAlGaInPだけでなく、AlInAsP等についても本発明によって実用
的な選択成長層を得ることが可能である考えられる。 【0023】 【表2】 【0024】 【発明の効果】 以上のように本発明によるIII−V族化合物半導体の選択成長では、[HC
l供給量]/[III族供給量]を0.01V以上にして選択性を向上させ、[
HCl供給量]/[III族供給量]を0.3以下にすることによって組成の制
御性を高められる。その結果が組成制御が良く、大面積の基板上に選択成長でき
るという利点を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】
基板温度660℃で選択成長したAlXIn1-XP膜におけるAl組成とIII
族有機金属原料の全供給量に対するTMAl供給量の比率の関係をIII族有機
金属原料の全供給量に対するHCl供給量の比率を変えて示した図である。 【図2】 AlXIn1-XP選択成長において窒化シリコンマスク(5μm 幅)上に堆積し
た平均多結晶個数(マスク長500μm 換算)とIII族有機金属原料の全供給
量に対するHCl供給量の比率の関係を示した図である。 【図3】 基板温度700℃で選択成長したAlXIn1-XAs膜におけるAl組成とII
I族有機金属原料の全供給量に対するTMAl供給量の比率の関係をIII族有
機金属原料の全供給量に対するHCl供給量の比率を変えて示した図である。 【図4】 従来文献による、HClを添加しない場合と添加した場合で成長した(成長温
度800℃)AlZGa1-ZAsの4.2Kフォトルミネセンス・スペクトル図で
ある。 【符号の説明】 なし
族有機金属原料の全供給量に対するTMAl供給量の比率の関係をIII族有機
金属原料の全供給量に対するHCl供給量の比率を変えて示した図である。 【図2】 AlXIn1-XP選択成長において窒化シリコンマスク(5μm 幅)上に堆積し
た平均多結晶個数(マスク長500μm 換算)とIII族有機金属原料の全供給
量に対するHCl供給量の比率の関係を示した図である。 【図3】 基板温度700℃で選択成長したAlXIn1-XAs膜におけるAl組成とII
I族有機金属原料の全供給量に対するTMAl供給量の比率の関係をIII族有
機金属原料の全供給量に対するHCl供給量の比率を変えて示した図である。 【図4】 従来文献による、HClを添加しない場合と添加した場合で成長した(成長温
度800℃)AlZGa1-ZAsの4.2Kフォトルミネセンス・スペクトル図で
ある。 【符号の説明】 なし
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 【請求項1】 表面の一部を絶縁膜で覆った半導体基板上にHClとIII族
有機金属原料とV族原料を供給して、前記半導体基板と格子整合する少なくとも
AlとInを含むIII−V族化合物半導体を結晶成長する方法において、前記
III族有機金属原料の全供給量に対するHCl供給量の比率([HCl供給量]
/[III族供給量])を0.01以上0.3以下として、前記絶縁膜で覆われて
いない基板表面だけに選択的に成長させることを特徴とする化合物半導体の選択
成長方法。
Family
ID=
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