JP2584052Y2 - 打込み型枠の孔開きパネルにおけるレベル調整治具 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、打込み型枠の孔開きパ
ネルにおけるレベル調整治具に係るものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、コンクリート壁体の打込み型枠を
組み立てる際には、その組み立てに先立ち、型枠の足元
に根巻きモルタルを盛り上げ、その上に打込み型枠のパ
ネルを起立させている。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】しかし、この場合、次
のような欠点がある。 根巻きモルタルでは、パネルのレベルを微細に調整
することができず、複数のパネルを配列すると不揃いに
なって、甚だ見映えが悪くなる。 根巻きモルタルが定規であり、かなりの精度が要求
されるので、その盛り上げには、手数と時間がかかり、
また、熟練した作業員を要し、人手不足のおり施工に支
障を来すことがある。 根巻きモルタルの盛り上げに時間がかかるだけでな
く、盛り上げた根巻きモルタルが硬化した後でなければ
本格的にパネルを建込みできないため、工期が長くな
る。 コンクリート打込み後に、根巻きモルタルの研り作
業を要し、甚だ手数がかかる。 出来上がりの品質、コスト等に問題が残る。

【０００４】ところで、実願平１−４７９１８号（実開
平２−１３９２６４号）のマイクロフィルム、実願昭６
１−１２３４８６号（実開昭６３−２８７４２号）のマ
イクロフィルムには、施工後に解体撒去する仮設型枠に
おけるパネルのレベル調整手段が示されている。

【０００５】前者のレベル調整手段は、型枠の外側で下
部構造体上にノロ止めアングルを釘止めし、該ノロ止め
アングルの上に、ナットを溶接した支持アングルを上下
動可能に配し、そのナットに高さ調整ボルトを上方から
貫通螺装させてノロ止めアングル上面へ当接させ、か
つ、その支持アングル上にパネル受けを設けて成り、仮
設型枠のパネルをそのパネル受けに載せて建込み、上記
高さ調整ボルトを螺動させることでそのパネルのレベル
を昇降調整するようにしており、そして、そのノロ止め
アングルと支持アングルとでパネル下の隙間を閉じてい
る。

【０００６】また、後者のレベル調整手段は、型枠の外
側で下部構造体上に水平基板を釘止めし、該水平基板の
前端部からは螺子杆を立設し、該螺子杆にはナットを螺
合させ、該ナット上にパネル受けを配して成り、仮設型
枠のパネルをそのパネル受けに載せて建込み、上記ナッ
トを螺動させることでそのパネルのレベルを昇降調整す
るようにしており、そして、その水平基板前部の下面と
パネルの下端内縁とで断面Ｌ字状のシール板をおさえ
て、パネル下の隙間を閉じるようにしている。

【０００７】これらの仮設型枠用のレベル調整手段を打
込み型枠の孔開きパネル（打込みパネル）にも利用でき
ればよいが、コンクリート打設後に、打設コンクリート
に打込みした孔開きパネルを残したまま、それらのレベ
ル調整手段やノロ止めアングル、シール板等を撒去する
ことはほとんど不可能である。たとえ撒去できたとして
も、打込みパネル等の損傷は避けられず、しかも、打込
みパネルの下に凹溝が生じるため、後の補修作業が不可
欠であり、工期、コストが増し、見映えが悪くなる。と
きにはその凹溝が構造断面の欠損となることもある。勿
論、撒去不可能であるからといって、その後もそれらの
レベル調整手段やノロ止めアングル、シール板等の邪魔
な仮設部材をそのままに放置することは到底許されず、
これらをコンクリート等で埋めることにすれば、埋める
だけのための余計な資材、作業、工期を要し、上記補修
よりもむしろコスト高となり、外観にも悪影響すること
となる。また、それらのレベル調整手段では、構造が複
雑となる上に、打込みパネルの安定な支持が困難であ
り、殊に、前者のレベル調整手段では、自立させること
すら困難で、他に何らかの補助的支持手段を要する。

【０００８】本考案は、それらの欠点、問題点を解決
し、打込み型枠の孔開きパネルに最適なレベル調整治具
を提供しようとするものである。

【０００９】

【課題を解決するための手段】上記目的達成のため、本
考案は、両端部に竪孔１１を穿設した打込み型枠の孔開
きパネルＢに対応させて、その孔開きパネルＢの下面域
に納まるベース１を設け、該ベース１から上記竪孔１１
に嵌挿させる螺子棒２を起立させ、該螺子棒にその孔開
きパネルＢの下面を直下で受けるナット状の受け金物３
を昇降調整自在に螺合させたことを特徴とする。

【００１０】

【作用】如上の構成であるから、使用に当たっては、そ
のレベル調整治具Ａの受け金物３の高さをあらかじめあ
る程度調整しておき、ベース１にて所定の箇所に設置
し、建込みした孔開きパネルＢの竪孔１１を螺子棒２に
嵌合させるとともに、その孔開きパネルＢの下面を受け
金物３上に載置させ、かつ、所要に応じ、受け金物３を
螺動させて適宜にレベル調整し、更に、孔開きパネルＢ
の下の隙間を桟木Ｃで閉じ、また、所要の支保工を施し
て、型枠を適正に組み立てる。隙間を閉じる桟木Ｃを先
行施工して、該桟木Ｃを、設置するレベル調整治具Ａ及
び孔開きパネルＢのための定規に利用してもよい。

【００１１】その後、孔開きパネルＢの内側にコンクリ
ートＤを打設して、レベル調整治具Ａを孔開きパネルＢ
共々打設コンクリートＤに打込みし、該打設コンクリー
トＤに所定強度発現後、孔開きパネルＢ及びレベル調整
治具Ａを残して、その桟木Ｃと支保工等を撒去する。

【００１２】

【実施例】図面は、本考案の実施例を示している。図に
おいて、Ａは、本考案に係るレベル調整治具、Ｂは、該
レベル調整治具を用いて建込みした本考案に係る打込み
型枠の孔開きパネル、Ｃは、該孔開きパネルの下の隙間
を閉じた桟木、Ｄは、孔開きパネル及び桟木の内側に打
設したコンクリートである。

【００１３】レベル調整治具Ａは、孔開きパネルＢの下
面域すなわち厚さの範囲内に納まる幅の鋼製六角プレー
トから成るベース１を設け、該ベースから孔開きパネル
Ｂの竪孔１１に嵌挿させる適宜長さの螺子棒２を起立さ
せ、該螺子棒にその孔開きパネルＢの下面を受ける鍔付
き六角ナット状の受け金物３を昇降調整自在に螺合させ
ている。なお、ベース１には、板ナットを利用してもよ
い。

【００１４】孔開きパネルＢは、打込み型枠をなすもの
であり、表面材を兼ねて打設コンクリートの表面に打込
み一体化させることにより、表面下地作業乃至仕上げ作
業を省略するとともに、撒去作業を排し、廃材を極力少
なくして、捨場が問題となっている産業廃棄物を低減
し、世界的に無秩序な森林の伐採が問題となっている木
材の使用を減らそうとするものである。而して、孔開き
パネルＢは、両端部に前記螺子棒２が嵌まる竪孔１１を
穿設し、内面に打込み接合させる蟻・蟻溝状等の凹凸条
を備えた押出成形セメント板であり、素材としては、水
硬性無機質バインダーと無機あるいは有機繊維とその他
の骨材及び水を混合したものを用い、これを押出成形機
に送り込んで高圧にて押出成形して成る。なお、かかる
ものに限るものではなく、他の材質、形成手段によるも
のでもよいことは勿論である。

【００１５】如上の構成であり、レベル調整治具Ａは、
受け金物３の高さをあらかじめある程度調整しておき、
図２、図３に示すように、所要数をベース１にて所定の
箇所に一列に配列して設置し、建込みした複数の孔開き
パネルＢの各竪孔１１をそれぞれ螺子棒２に嵌合させる
とともに、各孔開きパネルＢの下面をそれぞれ受け金物
３上に載置させ、かつ、所要に応じ、各受け金物３を螺
動させて適宜にレベル調整し、更に、各孔開きパネルＢ
の下端の隙間を、外側にてそれぞれ釘Ｅで仮固定した桟
木Ｃで閉じ、また、所要の支保工を施して、型枠を適正
に組み立てる。なお、桟木Ｃの仮固定を先行させて、該
桟木Ｃを、設置するレベル調整治具Ａ及び孔開きパネル
Ｂのための定規に利用してもよい。この場合の桟木Ｃの
仮固定には墨出しするとよい。

【００１６】その後、各孔開きパネルＢの内側にコンク
リートＤを打設し、該コンクリートに所定強度発現後、
それらの孔開きパネルＢとレベル調整治具Ａとを残し
て、その他を解体撤去する。

【００１７】

【考案の効果】本考案によれば、打込み型枠の孔開きパ
ネルＢに対応させて、該孔開きパネルＢの下面域に納ま
るベース１を設け、該ベース１からその孔開きパネルＢ
の両端部に穿設した竪孔１１へと嵌挿させる螺子棒２を
起立させ、該螺子棒にその孔開きパネルＢの下面を直下
で受けるナット状の受け金物３を昇降調整自在に螺合さ
せているので、 （ａ）レベル調整治具Ａをベース１にて所定の箇所に設
置し、建込みした孔開きパネルＢを竪孔１１にて螺子棒
２に嵌合させて受け金物３上に載置させることができ、
したがって、このレベル調整治具Ａによりその孔開きパ
ネルＢを下面直下で安定に、強力に、他の補助手段の必
要もなく的確に支持できる。 （ｂ）レベル調整治具Ａを簡潔にコンパクトに形成で
き、そして、孔開きパネルＢの下面域からはみ出ること
なく設置させることができて、孔開きパネルＢの下の隙
間を打込み型枠外側で桟木Ｃの釘打ちにより何らの支障
もなく極めて簡単かつ容易に閉じることができ、この孔
開きパネルＢの下にも打設コンクリートＤを十分に充填
できて、該コンクリート中にレベル調整治具Ａを支障な
く的確に埋設させることができ、したがって、レベル調
整治具Ａの撒去は一切必要なく、また、桟木Ｃは極めて
簡単に撤去できて、手数を大幅に削減でき、工期を短縮
でき、コストを低減できる。 （ｃ）上述のようにレベル調整治具Ａを撒去する必要が
ないので、孔開きパネルＢ等の損傷は生じず、また、そ
のようにして孔開きパネルＢの下に打設コンクリートＤ
を十分に充填できるから、孔開きパネルＢの下に凹溝が
生じるようなことはなく、後の補修作業は不要であり、
勿論、邪魔な仮設部材を別途コンクリートで埋める必要
もなく、資材、作業、工期を削減でき、コストを低減で
き、見映えのよい美麗な外観に仕上げることができ、し
かも、構造断面の欠損を生じることはない。等々の優れ
た効果を奏する。

【００１８】その上、あらかじめ受け金物３の高さをあ
る程度調整してベース１にて所定の箇所に設置し、建込
みした孔開きパネルＢの竪孔１１を螺子棒２に嵌合させ
て受け金物３上に載置させることができ、もって、所要
に応じ、受け金物３を螺動させて適宜にレベル調整で
き、そして、孔開きパネルＢの下の隙間を外側にて桟木
Ｃで閉じることができるので、 根巻きモルタルでは不可能なパネルの微細なレベル
調整を、支障なく、簡単に、容易に、スムーズに、迅速
に、的確に、行うことができ、施工能率を向上させるこ
とができる。また、これにより、複数のパネルを、不揃
いなく、見映えよく、配列することができる。 盛り上げに精度、手数、時間、熟練作業員を要する
根巻きモルタルが不要となり、人手不足の不都合を低減
できる。 作業に根巻きモルタルの場合のような待ち時間を要
せず、工期を大幅に短縮できる。 コンクリート打込み後の根巻きモルタルの研り作業
を要せず、研り作業の手数がかからない。 出来上がりの品質を向上でき、コストを低減でき
る。 等々の効果を奏し、実用上頗る有益である。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本考案の打込み型枠の孔開きパネルにおける
レベル調整治具に係る実施例を示す使用状態截断側面図
である。

【図２】 同例の平面図である。

【図３】 同例の使用状態説明図である。

【符号の説明】

Ａ…レベル調整治具 Ｂ…孔開きパネル Ｃ…桟木 Ｄ…コンクリート Ｅ…釘 １…ベース ２…螺子棒 ３…受け金物 １１…竪孔

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)考案者 木谷 宗一 東京都中央区銀座八丁目21番１号 株式 会社 竹中工務店 東京本店内 (72)考案者 田口 興一郎 東京都中央区銀座八丁目21番１号 株式 会社 竹中工務店 東京本店内 (72)考案者 小桧山 善則 東京都中央区銀座八丁目21番１号 株式 会社 竹中工務店 東京本店内 (72)考案者 中村 豊 東京都中央区銀座八丁目21番１号 株式 会社 竹中工務店 東京本店内 (72)考案者 浮穴 幸治 東京都中央区銀座八丁目21番１号 株式 会社 竹中工務店 東京本店内 (72)考案者 梅国 章 東京都江東区南砂二丁目５番14号 株式 会社 竹中工務店 技術研究所内 (72)考案者 鎌崎 宣好 東京都中央区日本橋３丁目６番２号 朝 日機材株式会社内 (72)考案者 門野 徹 東京都港区高輪四丁目24番44号 三菱セ メント建材株式会社内 (72)考案者 森 巖 東京都墨田区押上２丁目８番２号 岡部 株式会社内 (56)参考文献 実開 平２−139264（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭63−28742（ＪＰ，Ｕ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) E04B 2/86 E04G 17/00

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 両端部に竪孔１１を穿設した打込み型枠
   の孔開きパネルＢに対応させて、その孔開きパネルＢの
   下面域に納まるベース１を設け、該ベース１から上記竪
   孔１１に嵌挿させる螺子棒２を起立させ、該螺子棒にそ
   の孔開きパネルＢの下面を直下で受けるナット状の受け
   金物３を昇降調整自在に螺合させたことを特徴とする打
   込み型枠の孔開きパネルにおけるレベル調整治具。