JP2583196Y2 - 黒鉛るつぼ - Google Patents

黒鉛るつぼ

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Description

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本考案は金属材料やセラミックス
等の試料中に含まれる成分を定量分析するための分析装
置に用いられる黒鉛るつぼに関する。
【0002】
【従来の技術】金属材料やセラミックス等の試料中に含
まれる成分を定量分析するための分析装置では、通常、
気密状態下の試料抽出炉内に上下に配置されている電極
間に黒鉛るつぼをセットしてその黒鉛るつぼに試料を投
入し、キャリヤガスとしての不活性ガスを供給しつつ両
電極間に大電流を流して黒鉛るつぼを発熱させて試料を
溶融させ、発生した試料ガスを分析計に捕集して成分分
析がおこなわれる。
【0003】このような成分分析に先立ち、試料を投入
せずに黒鉛るつぼのみを高温に加熱して水分を含むガス
等の不純物を除去するための空焼きとも称される脱ガス
処理がおこなわれる。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】しかるに、上述の脱ガ
ス処理時においては、黒鉛るつぼは3000℃程度の高
温に加熱されるが、銅合金よりなる上部電極は強力な水
冷をおこなっているため、その近傍部では温度がそれ程
上昇せず、充分な脱ガスをおこなうことができない。そ
のため、黒鉛るつぼの上部にOやN,H等の測定ガス成
分が残留してしまうことがある。
【0005】このような場合には、黒鉛るつぼ内に試料
を投入し試料ガスを抽出する際に、溶融した試料が黒鉛
るつぼの上部にせり上り、その黒鉛るつぼに滞留してい
る残留ガス成分を浸食してこれをガスとして放出する。
従って、そのガス成分が溶融試料自体から放出された試
料成分とともに分析計に捕集される結果、正確な分析値
が得られず信頼性が低下するという難点があった。
【0006】また、このような難点を解消するために、
試料の間接加熱が可能ないわゆる2重るつぼが用いられ
ることがあるが、使い捨てとして用いられるため、コス
トがかかるという別の難点があった。
【0007】本考案はこのような実情に鑑みてなされ、
高い分析精度が得られる安価な黒鉛るつぼを提供するこ
とを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】本考案は、上述の課題を
解決するための手段を以下のように構成している。すな
わち、金属材料やセラミックス等の試料中に含まれる成
分を定量分析するための分析装置に用いられ、垂直に形
成された内周面を有する有底の円筒容器状で、気密状態
下の試料抽出炉内に上下に配置されている上部、下部電
極間にセットされ、前記試料が投入され、キャリヤガス
としての不活性ガスを供給しつつ前記両電極間に大電流
を流して発熱させて前記試料が溶融され、試料ガスを発
生させる黒鉛るつぼであって、前記上部電極と接する上
部への試料抽出時の溶融試料 のせり上りを防止するよう
前記内周面の中間高さ部位よりも上方の部位に形成さ
れ、それによって、前記上部電極と接する上部に滞留し
ている空焼き時の残留ガス成分が溶融試料によって浸食
されてガス化しこれが試料ガスへ混入するのを防止しう
周状突部を有することを特徴としている。
【0009】
【作用】黒鉛るつぼの内周面の中間高さ部位よりも上方
の部位に形成された周状突部によって、溶融試料のせり
上りが阻止される。よって、空焼き時に上部電極の近傍
にたとえ残留ガスが存在していても、その残留ガスが溶
融試料によって浸食されることがなく、試料自体から抽
出した試料成分のみを分析計に導入させることができ
る。すなわち、試料抽出時の溶融試料のせり上りを効果
的に防止することができ、これにより、空焼き時に上部
電極と接する黒鉛るつぼの上部に残留ガス成分が滞留し
ても、これらが溶融試料によって浸食されてガス化しこ
れが試料ガスへ混入するのを防止でき、試料成分のみを
キャリヤガスに担持させた状態で試料ガスを分析計に捕
集して成分分析がおこなわれる。
【0010】
【実施例】以下に本考案の実施例を図面に基づいて詳細
に説明する。図1は黒鉛るつぼ1の縦断面、図2はその
平面をそれぞれ示し、その黒鉛るつぼ1は、有底の円筒
容器状に形成され、その内周面2の中間高さ部位よりも
方のに周状突部3が形成されている。この周状突
部3により、試料抽出の際に、溶融した試料4のせり上
りを阻止することができ、これにより、たとえ空焼き後
にその黒鉛るつぼ1の上部1aにOやN,H等の
ガス成分が残留していても、これらが溶融した試料4に
よって浸食されてガス化するのが防止され、試料成分の
みをキャリヤガスに担持させて試料ガスとして抽出する
ことができ、高い分析精度を得ることができる。
【0011】より詳しく説明すると、黒鉛るつぼ1は、
図3に示すような試料抽出炉5の上部に固定配置された
上部電極6,6と、その下方に上下可動に設けられた下
部電極7との間にセットされ、まず、試料4を投入せず
に、黒鉛るつぼ1のみを高温に加熱する空焼きがおこな
われ、水分を含むガス等の不純物が除去される。
【0012】その空焼きは、試料抽出炉5内を気密状態
として黒鉛るつぼ1をセットした状態下で両電極6,7
間に大電流を印加して約3000℃程度の高温に黒鉛る
つぼ1のみを加熱するものである。
【0013】ところが、上部電極6は銅合金により形成
されているため、強力な水冷をおこなう必要があり、そ
の内部に形成した水流路6a内に冷却水を流通させてい
る。従って、その上部電極6自体の温度は低く抑えら
れ、その上部電極6と接する黒鉛るつぼ1の上部1a
比較的温度が低くなる傾向があり、充分な脱ガスがおこ
なわれないことがある。一方、下部電極7はタングステ
ン合金で形成されているため、水流路7aにより水冷が
おこなわれるが、上部電極6のような問題はない。
【0014】上述の空焼き後には、まず、気密状態下の
試料抽出炉5の上部から試料4を黒鉛るつぼ1内に投入
し、キャリヤガスとしての不活性ガスを外部から供給し
つつ、試料4を黒鉛るつぼ1とともに加熱してその試料
4を溶融させ、発生した試料ガスを分析計に捕集して成
分分析がおこなわれる。
【0015】上述の試料抽出の際に、溶融した試料4が
黒鉛るつぼ1の内周面2をせり上るいわゆるせり上り現
象が発生するが、この試料4のせり上りが黒鉛るつぼ1
の内周面2の中間高さ部位よりも方のに形成され
た周状突部3によって阻止される。従って、前述のよう
に、たとえ空焼き時の残留ガス成分が黒鉛るつぼ1の上
1aに滞留していても、溶融した試料4によって浸食
されることがなく、精度の高い分析値を得ることができ
るのである。
【0016】黒鉛るつぼ1の周状突部3は、せり上り防
止効果を良好にするために、横突状の断面形状にしてい
る。その周状突部3は、2条、3条に形成されていても
よく、いずれも機械加工により比較的容易に形成するこ
とができ、コスト安に製作することができる。
【0017】図4は異なる実施例を示し、同様の周状突
部3を、底部をツバ状に形成した黒鉛るつぼ1の内周面
2の中間高さ部位よりも方のに形成したものであ
る。
【0018】
【考案の効果】以上説明したように、本考案の黒鉛るつ
ぼによれば、内周面の中間高さ部位よりも上方の部位に
周状突部を形成しているので、試料抽出時の溶融試料の
せり上りを効果的に防止することができ、これにより、
空焼き時の残留ガス成分の浸食による試料ガスへの混入
を防止することができ、分析値の精度が向上し、かつ連
続測定においても安定した信頼性の高い分析測定をおこ
なうことが可能となる。つまり、溶融試料が黒鉛るつぼ
の上部へせり上ると残留ガス成分が溶融試料によって浸
食され、黒鉛るつぼの上部から不要なガスとして放出さ
れて試料自体から放出された前記試料成分とともに分析
計に捕集されるが、特に、黒鉛るつぼの上部に滞留して
いる残留ガス成分が、試料の金属材料やセラミックス等
に含まれる酸素、窒素、水素等の試料成分であると、正
確な分析値が得られないことになり、この問題点を克服
すべく本考案は、黒鉛るつぼの内周面の中間高さ部位よ
りも上方の部位に周状突部を形成することで試料抽出時
の溶融試料のせり上りを防止したものである。また、こ
のような黒鉛るつぼは製作が容易で安価に得ることがで
き、1分析当りのランニングコストを2重るつぼを用い
るよりも安価に抑えることができる利点もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の黒鉛るつぼの一実施例を示す縦断面図
である。
【図2】同平面図である。
【図3】同試料抽出炉の断面図である。
【図4】同異なる実施例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1…黒鉛るつぼ、1a…黒鉛るつぼの上部、2…内周
面、3…周状突部、4…溶融試料、6…上部電極、7…
下部電極
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B01L 3/04 C04B 35/52 G01N 1/00 G01N 1/04 G01N 31/12

Claims (1)

    (57)【実用新案登録請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属材料やセラミックス等の試料中に含
    まれる成分を定量分析するための分析装置に用いられ、
    垂直に形成された内周面を有する有底の円筒容器状で、
    気密状態下の試料抽出炉内に上下に配置されている上
    部、下部電極間にセットされ、前記試料が投入され、キ
    ャリヤガスとしての不活性ガスを供給しつつ前記両電極
    間に大電流を流して発熱させて前記試料が溶融され、試
    料ガスを発生させる黒鉛るつぼであって、前記上部電極
    と接する上部への試料抽出時の溶融試料のせり上りを防
    止するよう前記内周面の中間高さ部位よりも上方の部位
    形成され、それによって、前記上部電極と接する上部
    に滞留している空焼き時の残留ガス成分が溶融試料によ
    って浸食されてガス化しこれが試料ガスへ混入するのを
    防止しうる周状突部を有することを特徴とする黒鉛るつ
    ぼ。
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