JP2583066B2 - Ara−C誘導体の新規な医療用製剤 - Google Patents

Ara−C誘導体の新規な医療用製剤

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JP2583066B2
JP2583066B2 JP62171092A JP17109287A JP2583066B2 JP 2583066 B2 JP2583066 B2 JP 2583066B2 JP 62171092 A JP62171092 A JP 62171092A JP 17109287 A JP17109287 A JP 17109287A JP 2583066 B2 JP2583066 B2 JP 2583066B2
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智和 杉
伸幸 鈴木
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【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、難溶性薬物を封入したエマルジヨンからな
る医薬用製剤に関する。さらに詳しくは、一般式(I) で表わされるAra−C誘導体から選ばれた少なくとも一
種の化合物を油成分中に封入した水中油型エマルジヨン
からなる医療用製剤に関するものである。
(従来の技術と問題点) Ara−Cのアシル誘導体は、優れたDNAの合成阻害活性
を示す制癌剤として知られている。しかし、Ara−Cの
アシル誘導体は、水のみでなく油成分に対しても極めて
溶けにくい難溶性薬物であるため、十分な薬効を発揮で
きず、その使用が制限されている。
従来、Ara−Cのアシル誘導体などの難溶性薬物は、
可溶化剤として非イオン性界面活性剤を添加することに
よつて製剤化されてきたが、その可溶化効果は十分でな
く、さらには、界面活性剤自身の毒性が問題となつてい
る。特に、ポリオキシエチレン(60)硬度ヒマシ油誘導
体(HCO−60)は唯一、静脈注射可能な合成界面活性剤
として臨床使用されてきたが、近年、シヨツク現象を誘
発するとして、その毒性や安全性が大きな問題となつて
いる。
(問題点を解決するための手段) そこで、本発明者らは、Ara−C誘導体を安全に、か
つ簡便に静脈内に投与できる新剤形の開発を目的として
製剤化検討を行ない、上記の問題点を解決する新剤形と
してエマルジヨン製剤に着目し、鋭意検討を重ねた結
果、本発明製剤を完成するに至つた。
すなわち、本発明は、一般式(I)で表わされるAra
−C誘導体から選ばれた少なくとも一種類の化合物とリ
ン脂質を含む平均粒子径が0.5μm以下で、1μm以上
の粒子を含まない油滴粒子を主成分としたエマルジヨン
からなる医療用製剤である。さらに具体的には、一般式
(I)で表わされるアシルAra−C誘導体を油成分中に
封入し、その平均粒子径が0.5μm以下で、1μm以上
の粒子を含まない極めて微細な油滴粒子からなる水中油
型のエマルジヨン製剤である。ここで、封入とは添加薬
物のほぼ全量が油滴粒子中に存在し、連続相である水溶
液中にはほとんど存在しないことを示している。また、
油成分中の薬物の一部が固体または半固体状態(ゲル
状)で油成分中に存在する場合を含む。
本発明製剤は、アシルAra−C誘導体、油成分および
乳化剤(リン脂質)を主成分として含むが、これら主成
分の他、乳化補助剤、安定化剤、抗酸化剤および等張化
剤等を適宜配合することができ、乳化補助剤を添加する
ことによつて、油滴粒子の微細化を図ることができる。
本発明製剤は0.001〜5%(w/v)、好ましくは0.01〜
1%(w/v)のAra−Cのアシル誘導体を配合する。前記
一般式(I)において、−CO(CH2nCH3で表わされる
側鎖は、例えば、n=14のパルミチル酸、n=16のステ
アリン酸、n=18のアラキン酸、n=20のベヘン酸等の
アシル基が代表として上げられる。
本発明製剤は2〜50%(w/v)、好ましくは5〜20%
(w/v)の油成分を含むが、油成分としては、植物由来
の油を高純度に精製した例えば、大豆油、サフラワー
油、綿実油、ゴマ油、コーン油、ヤシ油等を用いること
ができる。
乳化剤として、油成分100部に対し1〜50部、好まし
くは3〜20部のリン脂質を配合する。リン脂質として
は、例えば、ホスフアチジルセリン、ホスフアチジルグ
リセリン、ホスフアチジルコリン、ホスフアチジルエタ
ノールアミン、ホスフアチジルイノシトール、スフイン
ゴミエリン等が挙げられ、これらの混合物や水素添加物
も用いることができる。さらには、これらリン脂質は精
製したものが好適である。
乳化補助剤としては、低毒性の非イオン性界面活性
剤、例えば、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共
重合体(ブルロニツクF−68:旭電化製)等を0.1〜10%
(w/v)、好ましくは5%以下を配合することができ
る。
等張化剤としては、例えば、グリセリン、ブドウ糖、
マンニトールなどが用いられる。
本発明製剤は、リン脂質の酸化変化を防ぐ目的で、抗
酸化剤の配合や窒素置換を行なうことができる。
本発明製剤は、予め主薬であるアシルAra−C誘導体
をリン脂質の共存下で混練することによつて、油成分中
に封入した後、通常のホモジナイザー、加圧噴射型ホモ
ジナイザー、または超音波ホモジナイザー等の乳化機を
用いて乳化することによつて調製されるが、例えば、以
下の製造手順によつて調製することができる。
(1)所定量のアシルAra−C誘導体と適量の油成分お
よびリン脂質を乳鉢上にとり、十分に混練、混和する。
この時、リン脂質は少なくともAra−C誘導体と同量も
しくはそれ以上加えることが望ましい。この混練、混和
操作によつて、Ara−C誘導体、リン脂質および油成分
を均一分散系とする。
(2)一方、残りのリン脂質は、残りの油成分中に加熱
(85℃以下、好ましくは70℃以下)して溶解させる。
(3)両者を混合し、ホモミキサーを用いて均質化す
る。
(4)必要な乳化補助剤、等張化剤および抗酸化剤など
の添加剤を溶かした水溶液を適当量加え、ホモミキサー
を用いて粗乳化を行なう。
(5)次いで、加圧噴射型ホモジナイザーを用いて乳化
することによつて、目的のエマルジヨン製剤を得ること
ができる。
(作用) 水に不溶で油成分に溶けやすい薬物のエマルジヨン製
剤については、以前より知られていたが、油にも溶け難
い薬物のエマルジヨン化は困難であるとされてきた。ま
た、従来の調製法では、薬物を油成分へ溶解する段階で
加熱を必要とする場合が多く、加熱によつて分解する薬
物についても同様に困難であつた。特に、アシルAra−
C誘導体は水および油に溶け難いだけでなく、加熱によ
つて分解するため、エマルジヨン化は不可能であると考
えられていた。ところが、驚くべきことに、予め薬物を
リン脂質の共存下で油成分と共に混練した後、通常の方
法で乳化することによつて、目的のエマルジヨン製剤を
調製することができるようになつた。
これは、混練操作によつて油成分中でのリン脂質のミ
セル形成が促進され、薬物がミセル中に取り込まれやす
くなつたため、加熱操作を必要とすることなく薬物を油
成分中へ封入することができ、エマルジヨン化が可能に
なつたと考えられる。
(発明の効果) かくして得られたエマルジヨン製剤は極めて微細で、
その平均粒子径は0.5μm以下で、1μm以上の粒子を
含まず、その保存安定性は極めて良好である。また、本
エマルジヨン製剤の調製に当つては、乳化剤および乳化
補助剤として、それぞれ、天然のリン脂質、エチレンオ
キシド/プロピレンオキシド共重合体系の非イオン性界
面活性剤(プルロニツクF−68)を用いることができ、
これらは、両者とも極めて低毒性で静脈内投与が可能で
あることが知られている。すなわち、本発明エマルジヨ
ン製剤によつて、アシルAra−C誘導体を静脈内注射な
ど非経口的に、かつ安全に投与することが可能となつ
た。
(実施例) 以下に本発明のエマルジヨン製剤の調製実施例を挙げ
て本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実
施例に限定されるものではない。
実施例1 精製大豆油5gに卵黄レシチン5g、N4−ベヘノイル(1
−β−D−アラビノフラノシル)シトシン(略名:BH−A
C)5gを加え、乳鉢上で混練、混和する。一方、残りの
精製大豆油95gには卵黄レシチン7gを加え、70℃に加熱
して溶解させる。これに精製大豆油および卵黄レシチン
と共に混練したBH−ACを加え、ホモミキサーで均質化す
る。次いで、注射用蒸留水900mlおよび日本薬局方グリ
セリン25gを加え、粗乳化を行なつた。
これを加圧噴射型ホモジナイザーを用い、1段目100k
g/cm3、合計圧500kg/cm3の加圧下で20分間連続的に乳化
した。
得られたBH−ACエマルジヨン製剤は、均質化された極
めて微細な粒子径を有しており、1μm以上の粒子は認
められなかつた。
実施例2 精製大豆油5gに卵黄レシチン3g、N4−パルミトイル
(1−β−D−アラビノフラノシル)シトシン(略名:P
L−AC)2gを加え、乳鉢上で混練、混和する。一方、残
りの精製大豆油95gには卵黄レシチン9gを加え、70℃に
加熱して溶解させる。これに精製大豆油および卵黄レシ
チンと共に混練したPL−ACを加え、ホモミキサーで均質
化する。次いで、20gのプルロニツクF−68を溶かした
注射用蒸留水900mlを加え、粗乳化を行なつた。
これを加圧噴射型ホモジナイザーを用い、1段目100k
g/cm3、合計圧500kg/cm3の加圧下で、20分間連続的に乳
化した。これにより均質化された極めて微細なPL−AC含
有エマルジヨン製剤を得ることができた。その平均粒子
径は0.5μm以下であり、1μm以上の粒子を含まなか
つた。
実施例 本発明製剤の静脈注射用製剤としての可能性およびそ
の安定性を検討する目的で、実施例1および実施例2で
調製したエマルジヨン製剤の平均粒子径とその経時的変
化を測定した。
その結果、表1に示すように各エマルジヨンの平均粒
子径は、BH−ACエマルジヨンで144.2nm、PL−ACエマル
ジヨンで133.5nmであり、極めて微細な粒子径であるこ
とが明らかとなつた。また、これらのエマルジヨン製剤
の粒度分布は非常に狭く、静脈内投与した場合、強い毒
性を示すといわれる1μm以上の大きな粒子は含まれて
いなかつた。さらには、3ケ月保存後においても、その
粒子径および粒度分布はほとんど変化しておらず、良い
保存安定性を示した。これは、本発明エマルジヨン製剤
が難溶性薬物であるアシルAra−C誘導体を配合してい
るにもかかわらず、静脈内投与の可能な注射剤であるこ
とを示唆するものである。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式(I) で表わされるAra−C誘導体から選ばれた少なくとも一
    種類の化合物とリン脂質を含む平均粒子径が0.5μm以
    下で、1μm以上の粒子を含まない油滴粒子を主成分と
    したエマルジヨンからなる医療製剤。
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