JP2578639B2 - シートベルトのプリローダ装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［発明の目的］ 〈産業上の利用分野〉 本発明は、車輌の衝突に際してシートベルトを緊張さ
せるプリローダ装置に関し、特に、位置調節を行う操作
手段を備えたシートに付設されるプリローダ装置に関す
る。

〈従来の技術〉 車輌の衝突時に乗員の受ける損傷としては、路上構築
物或いは他の車輌に衝突して受ける一次的な衝撃による
ものと共に、乗員が車室内の構造物に衝突して受ける二
次的な衝撃によるものがある。この二次的な衝突を防止
すべく、乗員の前方への移動を拘束する装置として、例
えば、西ドイツ国特許3,215,926号などに於て、衝突時
の減速度を検知するセンサの信号に応動してシリンダ内
のピストンに推力を与え、この推力をもってシートベル
トを急速に巻込むことにより、乗員に対するシートベル
トの拘束力を高めるようにしたプリローダ装置が種々提
案されている。

一方、シートは、乗員の体格に対応させて前後方向に
移動可能なようにするために、シートスライドレールを
介して車体に固着されることが通例であるが、シートを
移動した際のシートベルトの装着状態を変化させないよ
うにするうえに、前記したプリローダ装置は、シートに
一体的に設けることが好ましい。

また、組立て工程を簡略化するうえには、取扱い重量
が所定の限度を越えない範囲でサブアッセンブリ化を推
進することが好ましい。

〈発明が解決しようとする問題点〉 ところで、シートの前後位置を調節する時、あるいは
リクライニング操作を行う時、あるいはウォークイン機
構が作動した時などに、シートが急激に動きかつ急激に
停止することがあり、特に、ロック装置が急激に噛合う
と、衝撃的な減速度がシートに作用することが考えられ
る。そのため、減速度センサを備えたプリローダ装置が
シートに一体的に組付けられていると、このシートロッ
ク時の減速度を減速度センサが車輌の衝突と誤認して、
その結果、プリローダ装置が作動してしまう虞れがあ
る。

本発明は、このような従来技術の問題点を解消すべく
なされたものであり、その主な目的は、シートロック時
などに生ずるショックによる誤作動を招く虞れのないシ
ートベルトのプリローダ装置を提供することにある。

［発明の構成］ 〈問題点を解決するための手段〉 このような目的は、本発明によれば、車輌の減速を検
知する減速度センサと、該減速度センサの信号に応動し
て乗員の身体に掛渡された状態のシートベルトに対して
緊張を加えるための駆動装置とを有し、位置調節を行う
操作手段を備えるシートに付設されたプリローダ装置で
あって、前記減速度センサの不働状態を選択的に設定す
る設定手段を有し、かつ該設定手段と前記操作手段とが
互いに連動することを特徴とするシートベルトのプリロ
ーダ装置を提供することにより達成される。

〈作用〉 このようにすれば、シート位置を調節する際には、そ
の操作レバーに連動させて減速度センサの作動をキャン
セルすることができる。従って、シートロック時の衝撃
によりプリローダ装置が誤作動する虞れを好適に回避す
ることができる。

〈実施例〉 以下に添付の図面を参照して本発明を特定の実施例に
ついて詳細に説明する。

第１図は、本発明が適用された車輌の車室内を示して
いる。この車輌の前部座席は、運転席と助手席とに分離
した一対のシート１からなり、これらシート１の内側下
部には、それぞれのシートに対応して一対のプリローダ
装置２が設けられている。このプリローダ装置２は、公
知形式の緊急時ロック装置付きリトラクタを内蔵してお
り、通常は運転者の動作に応じてシートベルト３の巻取
り・繰出しが比較的抵抗なく行なわれ、急制動時にのみ
巻取軸をロックしてシートベルト３の繰出しを停止する
ようにされている。

車体の前部サイドウインドーの上部には、フロントピ
ラー４からセンタピラー５にかけて、ガイドレール６が
付設されている。そしてこのガイドレーラ６に沿って滑
動自在なように、スライドアンカ７が設けられており、
このスライドアンカ７には、プリローダ装置２から引出
されたシートベルト３の一端が固着されている。

スライドアンカ７は、例えば電動モータにより駆動さ
れ、ドアを開放したとき、即ち乗員の乗降時には、想像
線にて示すように、シートベルト３を伴ってフロントピ
ラー４側に移動して乗員の拘束を解き、ドアを閉鎖する
とセンタピラー５の適当な高さ位置に移動して、乗員の
腰から肩にかけてシートベルト３を自動的に掛け渡すも
のである。

尚、これらシート１には、前後位置の調節を行うため
のスライド操作レバー８、及びバックレストの角度調節
を行うためのリクライニング操作レバー９がそれぞれ設
けられている。

第２図に良く示すように、プリローダ装置２は、瞬間
的に燃焼して膨脹する推薬を内蔵した駆動装置10と、ば
ね手段をもって浮動的に支持された慣性ウエートの変位
により、衝突による衝撃的な減速度のみを弁別して信号
を発する減速度センサ11とからなっている。

駆動装置10は、ピストン12が摺合したシリンダ13と、
ピストン12に連結されたワイヤ14が巻回されると共にプ
リローダ装置２の巻込軸と一体をなすプーリ15とからな
っている。そしてシリンダ13の基端部に内装された推薬
16を減速度センサ11の信号にて発火させ、このときの膨
脹圧力により変位するピストン12にてワイヤ14を牽引
し、これによって回動するプーリ15と一体をなす巻込軸
にてシートベルト３を巻込むものとされており、衝突な
ど、通常の制動装置による減速度以上の衝撃的な減速度
が車輌に作用した際には、シートベルト３を瞬時に緊張
させて乗員の拘束力をより一層高めるようにしてある。

一方、シート１は、車体前後方向に沿って延設された
一対のシートスライドレール17を介して車体床面に形成
されたメンバ18上に取付けるようにされている。これら
一対のシートスライドレール17のうち一方は、公知形式
のロック機構（図示せず）を備えており、前方に延出さ
れた操作レバー８の回動位置により、シート１が前後移
動可能となるフリー状態と、シート１が所定位置に固定
されるロック状態と選択的に設定し得るようにされてい
る。

操作レバー８の適所には、突片19が突設されている。
この突片19の遊端部は、シート１の下面に固設されたり
リミットスイッチ20のプランジャ20aに当接しており、
操作レバー８を回動することによりプランジャ20aが出
没し、操作レバー８の回動位置に応じてリミットスイッ
チ20内部の接点が断続するものとされている。

第３図及び第４図は、減速度センサ11を詳細に示して
いる。減速度センサ11のケーシング31の内部には、慣性
ウェイトとしての振り子32が、その上端を支点として揺
動自在なように吊下げられている。この振り子32は、そ
の上下位置に配された一対の連結部材33・34にて所定の
間隔をあけて連結された同一形状をなす一対の板材から
なっている。

振り子32の対向面の間には、シリンダ状をなすガイド
孔35がケーシング31と一体的に形成されており、その内
部には、撃針36が挿着されている。この撃針36は、尖端
37と、ガイド孔35に摺合する拡径部38と、後端に形成さ
れたばね受け39とを有しており、ばね受け39とガイド孔
35の底壁との間に縮設されたコイルばね40により、常時
突出方向に弾発付勢されている。

ガイド孔35の下方には、概ね逆Ｔ字形をなすトリガア
ーム41が、その一端をもって揺動自在なように枢支され
ている。このトリガアーム41の枢支端に相対する遊端部
には、振り子32の下端側の連結部材34の係合する係合部
42が形成され、また中間部には、ガイド孔35の下面に設
けられたスリット43からガイド孔35内に突入して撃針36
の後端のばね受け39に係合し得るように、突起44が上向
きに形成されている。

ここでコイルばね40を押縮めながら撃針36をガイド孔
35内に押し込み、ばね受け39のコイルばね40との当接面
の反対側の面にトリガアーム41の突起44を係合させた上
でトリガアーム41の係合部42を振り子32の下端側の連結
部材34に係合させることにより、ガイド孔35内に撃針36
が保持される。

振り子32の上側の連結部材33と、これに対向するケー
シング31の内壁との間には、一対のバイアスばね45が縮
設されている。これにより振り子32は、常時後方に向け
て、即ち、下端側の連結部材34と係合部42との係合を保
持する向きに弾発付勢されている。

振り子32の下端側の連結部材34の中央部には、垂下片
46が形成されている。そしてこの垂下片46の直前を横切
るようにして、ピン47がケーシング31内に突入してい
る。このピン47は、ケーシング31の側部に固設されたソ
レノイド48のプランジャ49の一端に一体的に連結されて
いる。

プランジャ49は、ソレノイド48に内設されたコイルば
ね50によりケーシング31に近接する向きに常時弾発付勢
されており、通常はピン47を垂下片46の直前に突出させ
て振り子32の揺動運動を阻止するものとされている。

ソレノイド49のコイル51は、制御回路52に接続されて
いる。この制御回路52には、前記したシートスライド操
作レバー８にて断続するリミットスイッチ20の接点C1、
あるいはリクライニング操作レバー９に設けられたリミ
ットスイッチの接点C2、あるいは、図示されていないウ
ォークイン機構に設けられたリミットスイッチの接点C3
などの接点信号が入力され、これらの接点信号の状態に
応じてコイル51への電流を制御するようにされている。
そして、ソレノイド48のコイル51を励磁すると、前記し
たコイルばね50の付勢力に抗してプランジャ49と共にピ
ン47が没入し、振り子32の揺動運動が可能な状態となる
ものとされている。

また、ガイド孔35の開口端近傍には、駆動装置10に内
装された推薬16に着火すべぬ雷管53が設けられている。

次に上記実施例の作動要領について説明する。

車輌が衝突して、進行方向に所定値以上の減速度が作
用すると、その慣性力により、バイアスばね45の付勢力
に打勝ってその下端部を前方に向けて振出すように振り
子32が傾動する。これにより、トリガアーム41の係合部
42が振り子32の下端側の連結部材34から外れると、コイ
ルばね40に作用していた拘束力が解放され、コイルばね
40から与えられた弾発力により雷管53に向けて撃針36が
反射される。

撃針36の尖端37が雷管53に衝当すると、推薬16に着火
し、このときの爆発圧力により駆動装置10に組込まれた
ピストン12に推力が与えられ、ワイヤ14を第２図に示す
矢印Ａの方向に索引する。ワイヤ14が牽引されると、プ
ーリ15が矢印Ｂの方向に回動し、シートベルト３が矢印
Ｃの方向に引込まれる。

さて、シートスライド動作などを急激に行うと、シー
トスライドレールのロック機構が噛合った時、あるいは
シートの移動限度にてストッパが衝当した時など、過大
な衝撃がシートに作用する場合がある。この衝撃を減速
度センサ11が感知すると、衝突と誤認して駆動装置10が
作動する虞れがある。そこで本発明に於ては、スライド
操作レバー８などの動きをリミットスイッチ20などによ
り検出し、制御回路52を介してソレノイド48のコイル51
の励磁・消磁を選択的に設定し、これにより、ピン47を
垂下片46の直前に対して出没させ、振り子32が変位し得
ないロック状態と、慣性力に応じて前方に振り子32が傾
動し得るフリー状態とを選択的に設定し得るようにして
いる。

一般的にリクライニング操作などは、ラチェット歯車
のピッチにより、操作レバーを戻す動作とシートバック
がロックする時期とが必ずしも一致しない場合があり、
単に操作レバーの動作と減速度センサとを連動するのみ
では減速度センサの誤作動を防止する上に不十分なこと
がある。このようなことに対処するためには、制御回路
52にディレー回路を設けておき、減速度センサ11をロッ
クする動作は操作レバー８（９）の動作に応じて直ちに
行われるが、ロック状態の解除動作は所定時間を経た後
に行うものとすれば良い。

尚、上記実施例に於ては、操作レバー８（９）と減速
度センサ11との間を電気的な手段をもって連動させるも
のとしたが、これは機械的な手段をもって連結するもの
であっても同様に実施することが可能である。また上記
したディレー動作に相当するものとしては、流体抵抗な
どによるダンパ手段を介設すれば良い。

［発明の効果］ このように本発明によれば、シートの移動操作あるい
はリクライニング操作などを行う際には、減速度センサ
を不働状態に設定することが可能となり、プリローダ装
置が誤差働を引起こす可能性を効果的に排除することが
できる。従って、プリローダ装置の使用性、及び作動信
頼性を向上するうえに大きな効果がある。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明が適用された車輌の前席側を示す斜視図
である。 第２図は第１図に於けるII−II線に沿う部分的な断面図
である。 第３図は減速度センサの一例を一部切除して示す側面図
であり、第４図は第３図のIV−IV線に沿う断面図であ
る。 １……シート、２……プリローダ装置 ３……シートベルト、４……フロントピラー ５……センタピラー、６……ガイドレール、 ７……スライドアンカ、８……スライド操作レバー ９……リクライニング操作レバー 10……駆動装置、11……減速度センサ 12……ピストン、13……シリンダ 14……ワイヤ、15……プーリ 16……推薬 17……シートスライドレール 18……メンバ、19……突片 20……リミットスイッチ 20a……プランジャ、31……ケーシング 32……振り子、33・34……連結部材 35……ガイド孔、36……撃針 37……尖端、38……拡径部 39……ばね受け、40……コイルばね 41……トリガアーム、42……係合部 43……スリット、44……突起 45……バイアスばね、46……垂下片 47……ピン、47……ソレノイド 49……プランジャ、50……コイルばね 51……コイル、52……制御回路 53……雷管

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】車輌の減速を検知する減速度センサと、該
   減速度センサの信号に応動して乗員の身体に掛渡された
   状態のシートベルトに対して緊張を加えるための駆動装
   置とを有し、位置調節を行う操作手段を備えるシートに
   付設されたプリローダ装置であって、 前記減速度センサの不働状態を選択的に設定する設定手
   段を有し、 かつ該設定手段と前記操作手段とが互いに連動すること
   を特徴とするシートベルトのプリローダ装置。