JP2576066B2 - 半導電性重合体組成物 - Google Patents

半導電性重合体組成物

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【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、ゾル・ゲル法によって作成された半導電性
重合体組成物に関する。
従来の技術 従来より、半導電性材料としては、SiやGeを中心とす
るいわゆる化合物半導体が数多く知られている。一方、
ある種の金属酸化物が半導電性を示すことも公知であ
る。しかしながら、これ等の材料は、一般にドライの成
膜方法によって作成されるため、大面積のデバイスを得
ることが難しく、またコストも高いものあった。
一方、有機材料による半導電性材料の開発も近年活発
に進られ、一部の分野では実用に供されるまで進歩して
いる。特に、高分子ポリマー中に低分子の化合物、例え
ば電荷輸送物質をドープして有機電子写真感光体を得る
など、優れた成果を産んでいる。有機材料を用いた半導
電性材料は、大面積化が容易であり、コストも安価であ
るなど、多くの利点を有している。しかしながら、導電
性が吸湿した水分や高分子ポリマー中の不純物イオンに
よって影響を受けやすく、また、耐候性に劣り、また硬
度及び耐摩耗性にも劣るという欠点があった。
発明が解決しようとする課題 ところで、近年、ゾル・ゲル法により、金属酸化物半
導体を作成する方法が提案され、大面積デバイスを低コ
ストで得ることが可能になった。しかしながら、半導電
性を示す金属酸化物に均一な膜を形成し難く、逆に均一
な膜を形成しやすい金属酸化物は絶縁性であるなど、未
だ実用に供することはできなかった。
一方、均一な膜が形成されやすい金属酸化物に有機分
子をドープして半導体電性材料を得ることも提案されて
いるが、(J.Appl.Phy.,58,9,1,p3559(1985))、ドー
プする有機分子としては、アルコール可溶性又は水溶性
のものしか使用することができず、その応用も限られた
ものであった。
本発明は、上記のような実状に鑑みてなされたもので
ある。
したがって、本発明の目的は、ゾル・ゲル法によって
作成された、有機化合物を安定に含有する半導電性重合
組成物を提供することにある。
課題を解決するための手段及び作用 本発明者等は、検討の結果、金属アルコキシドのアル
コキシ基の一部を分散させる有機化合物と親和性を有す
る疎水性置換基に置換することにより、その疎水性置換
基がミセル状に集合したゲル体を形成して、有機化合物
分子に対して親和性を有するようになり、種々の有機化
合物分子をゲル中に相溶させることが可能になることを
見出だし、そして、含有させる有機化合物を選択するこ
とにより、金属酸化物の導電性を自由にコントロールす
ることが可能であることを見出だし、本発明を完成する
に至った。
本発明の半導電性重合体組成物の第1のものは、下記
一般式(I)、(II)及び(III) (式中、M1は3価の金属原子を表わし、M2は4価の金属
原子又は炭素原子を表わし、R1、R2及びR3はそれぞれ水
素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表わすが、R1
R2及びR3の少なくとも一つは炭素数1〜6のアルキル基
を表わし、X1及びX2はそれぞれ置換基を有してもよい炭
素数5以上のアルキル基、アリール基、アラルキル基、
アシル基、複素環基、又は不飽和炭化水素基を表わす
か、又はX1とX2は互いに結合して環構造を形成する基を
表わす)で示される群から選択された金属アルコキシド
の少なくとも1種の縮重合により形成されたマトリック
ス、及び該金属アルコキシドに含まれる基X1又はX2と親
和性を有する電荷輸送物質を含むことを特徴とする。
また、第2のものは、上記一般式(I)、(II)及び
(III)で示される群から選択された金属アルコキシド
の少なくとも1種と、下記一般式(IV)及び(V) (式中、M3は3価の金属原子を表わし、M4は4価の金属
原子又は炭素原子を表わし、R4、R5及びR6は、それぞれ
水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基を表わし、Y
は水酸基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原
子、アミノ基、置換基を有してもよい炭素数1〜4のア
ルキル基、置換基を有してよりアリール基、アシル基、
複素環基、又は不飽和炭化水素基を表わす) で示される群から選択された金属アルコキシドの少なく
とも1種との縮重合により形成されたマトリックス、及
び該金属アルコキシドに含まれる基X1又はX2と親和性を
有する電荷輸送物質を含むことを特徴とする。なお、本
明細書において、「金属アルコキシド」とは、上記一般
式(II)、(III)及び(V)中のM2及びM4が炭素原子
を表わす場合も意味するものと定義する。
本発明において、原料物質として使用される上記一般
式(I)ないし(V)における金属アルコキシドの金属
原子としては、Al、B、Ga、Y、Fe、Si、Ge、Sn、Ti及
びZrから選択されたものが好ましい。
本発明の半導電性重合体組成物の作成に好適に使用で
きる金属アルコキシドとしては、次のものが例示され
る。
一般式(I)で示される金属アルコキシド: C5H11O−Al(OCH32,C6H13O−Al(OCH3 C7H15O−Al(OCH32,C10H21O−Al(OCH3 C15H31O−Al(OCH32,C20H41O−Al(OCH3 C10H21O−Al(OC2H52,C10H21O−Al(OC3H7 C10H21O−Al(OC4H92,C20H41O−Al(OC6H13 C5H11O−B(OCH32,C20H41O−B(OCH3 C5H11O−Ga(OCH3 C20H41O−Ga(OCH32, C5H11O−Y(OCH32, C20H41O−Fe(OCH32, 一般式(II)で示される金属アルコキシド: C5H11O−Si(OCH33,C10H21O−Si(OCH3 C20H41O−Si(OCH33,C10H21O−Si(OC2H5 C10H21O−Si(OC3H73, CH2=CHCH2CH=CHO−Si(OCH3 NH2(CH210O−Si(OCH3 C15H31O−C(OCH3 C15H31O−Ge(OCH33, C15H31O−Sn(OCH3 C15H31O−Ti(OCH33, C15H31O−Zr(OCH3 一般式(III)で示される金属アルコキシド: 一般式(IV)及び(V)で示される金属アルコキシド
が使用される場合には、上記一般式(I)ないし(II
I)で示される金属アルコキシドに対して0〜98モル%
の範囲で使用される。
また、上記一般式(I)ないし(III)で示される金
属アルコキシドと共に使用される一般式(IV)及び
(V)で示される金属アルコキシドとしては、次のもの
が例示される。
一般式(IV)で示される金属アルコキシド: Al(OCH33,Al(OC2H5 Al(OC3H73,Al(OC4H9 B(OCH33,B(OC4H93, Ga(OCH33,Ga(OC4H93, Y(OCH33,Y(OC4H93, Fe(OCH33,Fe(OC4H93, 一般式(V)で示される金属アルコキシド: Si(OCH34,Si(OC2H5 Si(OC3H74,Si(OC4H9 C(OCH34,C(OC4H9 Ge(OCH34,Ge(OC4H9 Sn(OCH34,Sn(OC4H9 Ti(OCH34,Ti(OC4H9 Zr(OCH34,Zr(OC4H9 本発明において使用される電荷輸送物質は、金属アル
コキシドの基X1(又はX2)と親和性を有するものであっ
て、形成される被膜に半導電性を与えるものであれば、
如何なるものでも使用することができる。例えば、オキ
サジアゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、芳香族第3級
アミン化合物、トリアジン誘導体、ヒドラゾン誘導体、
キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、スチルベン誘
導体、エナミン誘導体、カルバゾール誘導体、ピレン系
化合物、シアノビニル系化合物、キノン系化合物、ケト
ン系化合物、フルオレノン化合物、キノジメタン系化合
物等があげられる。これ等の材料は、金属アルコキシド
に対して0.1〜99容量%の範囲の含有量で含有させるこ
とができる。
本発明の半導電性重合体組成物を形成させる為には、
上記の金属アルコキシドを、含有させるべき電荷輸送物
質の所定量と共に、適当な溶媒、例えば、水、アルコー
ル、あるいはトルエン、キシレン、ハロゲン化炭化水素
等の有機溶媒の中に添加し、ゲル化させることで行われ
るか、又は、上記の金属アルコキシドを適当な方法でゲ
ル化させた後、含有すべき電荷輸送物質の所定量を適当
な溶媒に溶解し、ゲルを浸漬することにより、電荷輸送
物質をゲル中に含浸させることで行われる。また、ゲル
化の反応を促進させるために、必要に応じて、酸等の触
媒を用いることも可能である。更に所望により、30℃〜
1500℃の加熱処理を施してもよい。
上記のようにして形成された本発明の半導電性重合体
組成物は、電荷輸送物質が、金属アルコキシドの縮重合
によって形成されたマトリックス中に分散された状態に
なっている。その分散状態は、第1図に示されるように
(第1図はケイ素の場合のモデル)、金属アルコキシド
の縮重合体よりなるマトリックス中に形成される基X
1(又はX2)が集合したミセル構造に、基X1と親和性の
ある電荷輸送物質Aが取り込まれた形になっている。し
たがって、電荷輸送物質は、安定化された状態でマトリ
ックス中に含有されている。
実施例 以下、実施例によって本発明を説明する。
実施例1 テトラメトキシシラン(Si(OCH3)10重量部、下
記構造式で示されるアルコキシシラン10重量部、 CH3(CH27CH=CH(CH2−COO−Si(OC2H5 下記構造式で示される電荷輸送物質10重量部、 をシクロヘキサノン200重量部に溶解し、Si基板上にチ
ップ塗布法により塗布し、150℃で90分間乾燥を行い、
膜厚1.6μmの膜を形成した。
次に、形成された膜上に真空蒸着によりAuよりなる電
極を形成し、Si/SiO2(表面酸化膜)/半導電性重合体
組成物/Auの構造を有するサンプルを作成した。
このサンプルに対して、エレクトロメーター(Keithk
ey社製、617型)を用いて、電流−電圧特性の測定を実
施した。その結果を第2図に示す。第2図から明らかな
ように、上記の半導電性重合体組成物よりなる膜は、整
流作用を示し、n型半導体として作用した。
実施例2 実施例1の電荷輸送物質の代わりに、下記構造式で示
される電荷輸送物質を用いる以外は、全く同様にして半
導電性重合体組成物よりなる膜を作製した。膜厚は1.3
μmであった。このサンプルについて、実施例1と全く
同様にして電流−電圧特性の測定を実施した。このサン
プルも実施例1と同様に整流作用を示し、n型半導体と
して作用した。
比較例1 実施例1のうち、アルコキシシランとして、テトラメ
トキシシランのみを用いたものを除いては、実施例1の
全く同様にして半導電性重合体組成物よりなる膜を作製
した。しかし、乾燥後、添加したシアノ化合物が折出を
起こし均一な膜を得ることができなかった。
実施例3 実施例1の電荷輸送物質の代わりに、下記構造式で示
される電荷輸送物質を用いる以外は、全く同様にして半
導電性重合体組成物よりなる膜を作製した。膜圧は1.5
μmであった。このサンプルについて、実施例1と全く
同様にして電流−電圧特性の測定を実施した。このサン
プルも実施例1と同様に整流作用を示し、p型半導体と
して作用した。
実施例4 導電性基材として、アルミニウムパイプを用い、実施
例1で示された半導電性重合体組成物よりなる膜を同様
にして形成した。膜厚は1.0μmであった。これを下引
き層とし、その上に電荷発生層を形成した。即ち、三方
晶形セレン(米国ゼロックス社製)90重量部、ポリビニ
ルブチラール樹脂10重量部、n−ブタノール300重量部
からなる混合物を、アトライターを用いて分散させ、得
られた分散液1重量部に対してn−ブタノール2重量部
を加えて希釈した液を、上記引引き層の上に引き抜き塗
布し、乾燥させて0.3μmの膜を形成した。次に、N,N′
−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)
[1,1′−ビフェニル]−4,4′−ジアミン4重量部、ポ
リカーボネート樹脂6重量部をトルエン40重量部に溶解
させて塗布液を得、上記電荷発生層上に、引き抜き塗布
し、120℃で60分の乾燥を行って、膜厚21μmの電荷輸
送層を形成した。
このようにして得られた電子写真感光体について、種
々の電子写真特性の評価を実施した。電子写真特性の測
定は、富士ゼロックス(株)製の電子写真特性評価装置
を用い、以下の評価を行った。
感光体流入電流が−10μAになるように帯電し、帯電
後1秒後の感光帯表面電位を測定し、VDDP(0)とした。
その後タングステンランプで除電を行い、除電後の電位
を測定し、これを残流電位VRP(0)とした。次に、感光
体流入電流を調整し、VDDPが−500Vになるように調整
し、帯電後0.3秒後に550nmの単色光を光量を変化させな
がら露光し、露光後0.7秒後(帯電後1秒)での電位が
−250Vとなる光量を求めて、光感度E1/2(0)とした。
次いで、感光体流入電流が−10μAになるように保持
し、帯電・除電を1万回繰り返し、その時の感光体表面
電位:VDDP(10000)、残留電位:VRP(1000)、光感度:E1/2
(10000)を測定した。
得られた結果を第1表に示す。
比較例2 アルミニウムパイプ上のポリアミド樹脂:10重量部、
メタノール:150重量部、水:40重量部からなる塗布液、
引き抜き塗布法を用いて、乾燥後の膜厚が1μmになる
ように塗布して下引き層を形成し、電荷発生層及び電荷
輸送層は実施例4と全く同様にして電子写真感光体を作
製した。得られた電子写真感光体に就いて、実施例4と
同様にして電子写真特性を評価した。結果を第1表に示
す。
実施例1〜3及び比較例1の比較から分かるように、
本発明によれば、金属酸化物の整流性のコントロールが
可能であり、機能性の重合体組成物を容易に作製するこ
とができる。
更に、実施例4及び比較例2の比較から分かるよう
に、本発明の重合体組成物を電子写真感光体の下引き層
に応用した場合、繰り返し使用により残留電位の上昇/
光感度の低下のない電子写真感光体を提供することが可
能になる。これは、残留電位の上昇/光感度の低下を引
き起こす空間電荷の蓄積を、本発明の下引き層が起こさ
ないためであると考えられる。
発明の効果 本発明の半導電性重合体組成物においては、疎水性基
を有する電荷輸送物質が、金属アルコキシドの重縮合体
のマトリックス中に安定して含有させた状態のものにな
っており、吸湿した水分や高分子ポリマー中の不純物イ
オンによる影響を受けがたい材料を提供することが可能
になる。また、大面積のものが容易に得られ、コストの
点でも有利であると共に、耐候性、硬度、耐摩耗性等の
点でも優れたものである。
したがって、本発明の半導電性重合体組成物は、例え
ば、半導体トランジスタ素子、スイッチング素子、電子
写真用材料等として有用である。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の半導電性重合体組成物の構造のモデ
ルを示す説明図であり、第2図は、実施例1の半導体素
子の電流−電圧特性を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−310705(JP,A) 特開 昭63−165436(JP,A) 特開 昭61−192735(JP,A) 特開 昭62−270628(JP,A) 特開 平1−129032(JP,A) 特開 平2−1778(JP,A)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記一般式(I)、(II)及び(III) (式中、M1は3価の金属原子を表わし、M2は4価の金属
    原子又は炭素原子を表わし、R1、R2及びR3はそれぞれ水
    素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表わすが、R1
    R2及びR3の少なくとも一つは炭素数1〜6のアルキル基
    を表わし、X1及びX2はそれぞれ置換基を有してもよい炭
    素数5以上のアルキル基、アリール基、アラルキル基、
    アシル基、複素環基、又は不飽和炭化水素基を表わす
    か、又はX1とX2は互いに結合して環構造を形成する基を
    表わす) で示される群から選択された金属アルコキシドの少なく
    とも1種の縮重合により形成されたマトリックス、及び
    該金属アルコキシドに含まれる基X1又はX2と親和性を有
    する電荷輸送物質を含むことを特徴とする半導電性重合
    体組成物。
  2. 【請求項2】下記一般式(I)、(II)及び(III) (式中、M1、M2、R1、R2、X1及びX2はそれぞれ前記と同
    一の意味を有する) で示される群から選択された金属アルコキシドの少なく
    とも1種と、下記一般式(IV)及び(V) (式中、M3は3価の金属原子を表わし、M4は4価の金属
    原子又は炭素原子を表わし、R4、R5及びR6は、それぞれ
    水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基を表わし、Y
    は水酸基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原
    子、アミノ基、置換基を有してもよい炭素数1〜4のア
    ルキル基、置換基を有してよいアリール基、アシル基、
    複素環基、又は不飽和炭化水素基を表わす) で示される群から選択された金属アルコキシドの少なく
    とも1種との縮重合により形成されたマトリックス、及
    び該金属アルコキシドに含まれる基X1又はX2と親和性を
    有する電荷輸送物質を含むことを特徴とする半導電性重
    合体組成物。
  3. 【請求項3】前記金属アルコキシドの金属原子が、Al、
    B、Ga、Y、Fe、Si、Ge、Sn、Ti及びZiから選択された
    ものである特許請求の範囲第1項又は第2項に記載の半
    導電性重合体組成物。
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