JP2575303Y2 - 植物栽培用ベッド - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は養液栽培に用いられる植
物栽培用ベッドに関する。

【０００２】

【従来の技術】養液栽培においては培養液を栽培植物に
供給するに際しては、微細な給液孔を複数有する給液チ
ューブを培地上方に配設して、この給液チューブから培
地に供給するのが一般である。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】しかし、このような給
液方法では、給液孔に目詰まりが生じた場合には必要量
の培養液が供給されず、栽培植物に生育障害を生ずるこ
とがある。また、栽培用ベッドが長い場合には、給液ム
ラが生じる場合もある。

【０００４】一方、培養液を給液チューブから常時又は
頻繁に供給し続けなくてもよういようにするため、例え
ば、実公平２−１６６１２号公報には、保水性培地の周
面の一部を透水性部材で被覆すると共に、培養液の貯液
部を設け、さらに、保水性培地が貯液部と接触しないよ
うに支持するための支持部と貯液部に貯液された培養液
を吸上げる吸上げ部材とから構成される水耕栽培装置が
開示されている。しかしながら、この装置は、貯液部を
形成するための水密シートを設置した後、支持部を設
け、この支持部に沿って吸い上げ部材を配設し、その後
透水性部材を設ける必要があり、現場での設置作業に手
間がかかる。

【０００５】本考案は上記した課題を解消するためにな
されたものであり、目詰まり等により給液チューブから
培養液が供給されない場合にも、栽培用ベッド全体に亘
りムラなく供給することができ、植物の生育障害を招来
することがなく、かつ現場での設置作業を簡易に行うこ
とができる植物栽培用ベッドの提供を目的とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上記した目的を達成する
ため本考案の植物栽培用ベッドは、防水性と遮光性を有
し、断面略凹状となるようにかつ両側端縁付近が内方に
向けて折り返されて該折り返し部分が遮光部として機能
するように配設されるシート状基部材と、栽培植物の根
の貫通を阻止し得る孔隙を有し、該シート状基部材の内
側であって底部に対して適宜の間隔を有して配設され、
該シート状基部材の底部との間に培養液の排水部を形成
し得ると共に上面に培地を配設可能な透水性シートと、
液体吸上げ機能と吸下げ機能を有し、培地と排水部とに
一部が接触して配設される吸上げ・吸下げシートと、を
備え、該シート状基部材、透水性シート及び吸上げ・吸
下げシートが一体的に固着されていることを特徴とす
る。

【０００７】

【実施例】以下、本考案の植物栽培用ベッドを図面に示
した実施例に基づきさらに詳細に説明する。図におい
て、１は本実施例の植物栽培用ベッドであり、シート状
基部材２、透水性シート３、吸上げ・吸下げシート４と
を有して構成されている。

【０００８】シート状基部材２は、防水性と遮光性を有
する素材からなるものであれば特に限定されるものでは
ないが、例えば、ポリエチレンフィルムにアルミ蒸着を
施したものや、ポリエチレンフィルムにアルミ混入フィ
ルムをラミネートしたもののように保温性、遮熱性をも
備えた素材を用いることが好ましい。そして、このシー
ト状基部材２は、断面略凹状となるように、すなわち、
中央部付近が低所に位置するように、両側端縁付近を高
所に支持させて配設される。両側端縁付近の支持手段は
特に限定されるものではなく、任意の長さ、幅、深さで
作地等を掘削して形成した溝の内壁に沿って配設し、こ
の溝と地表との境界部で支持する構成としてもよい。ま
た、図１に示すように、複数本の支柱パイプ７を対面立
設すると共に、この支柱パイプ７の上部に支持パイプ８
を該支柱パイプ７と略直交する方向にかけ渡し配設して
固定し、シート状基部材２の両側端縁付近をこの支持パ
イプ８に係合する断面略半円形のパイプ止め具８ａによ
り固定するものとしてもよい。

【０００９】また、シート状基部材２は、このようにし
て両側端縁付近が支持されると共に、この被支持部２
ａ，２ｂから両側端縁２ｃ，２ｄが接触するように内方
へ折り返されて配設される。そして、この折り返し部分
２ｅ，２ｆが培地５の上方を覆い、太陽熱等による根圏
の温度変化やクロレラの発生等を防止する機能を司る。
また、この折り返し部分２ｅ，２ｆの適宜位置には栽培
植物の苗を定植するためのスリット２ｇ，２ｈが設けら
れている。スリット２ｇ，２ｈの形状は特に限定される
ものではなく、略長孔状に設けてもよいし、図２に示し
たように、両側端縁２ｃ，２ｄから被支持部２ａ，２ｂ
へ向かって切り込みを入れることにより設けてもよい。

【００１０】透水性シート３は、ポリビニルアルコー
ル、ポリエステル、ナイロン等の不織繊維を一または二
以上組み合わせてなる不織シート状体により構成され、
吸水性を有し、栽培植物の根の貫通を阻止し得る微細な
孔隙を有する。この孔隙の大きさは栽培植物の種類によ
って適宜決定し得るものであるが、一般には直径５０μ
ｍ以下とすることが好ましい。この透水性シート３は、
図１及び図２に示すように、その下方に培養液の排水部
１２を形成する空間を有するように、すなわち、シート
状基部材２の略中央部底面との間に適宜の間隔を有する
ように、該シート状基部材２の内面に両側端縁３ａ，３
ｂを固着することにより配設される。固着方法は特に限
定されるものではなく、熱溶着、接着等の手段を用いる
ことができる。

【００１１】なお、排水部１２には排出された培養液が
たまるように、排水部１２の底面（すなわちシート状基
部材２の底面）が長手方向に沿って傾斜しないように、
すなわち、略水平となるように配設される。また、この
透水性シート３上には、ロックウール，れき等から構成
される培地５が充填されて配設される。

【００１２】吸上げ・吸下げシート４は、シート状基部
材２の内面に固着されて配設される。具体的には、一部
（略中央部付近）４ａが排水部１２内に位置し、培地５
を通過した余剰の培養液と接するように、両側縁部４
ｂ，４ｃが培地と接触するように配設される。なお、シ
ート状基部材２への固着方法は特に限定されるものでは
なく、上述した透水性シート３と同様、熱溶着、接着等
の手段を用いることができる。吸上げ・吸下げシート４
は、培地５内の余剰の培養液を速やかに排水部１２へ排
水する機能と共に、逆に培地５内の培養液量が不足した
場合に該排水部１２に貯蔵された培養液を吸い上げて培
地５へ供給する機能を有するものである。このような機
能を果たす素材としては、例えば、ポリビニルアルコー
ル、ポリプロピレン、ポリエステル等の繊維を一または
二以上組み合わせてなる不織シート状体のものを用いる
ことができる。

【００１３】ここで、シート状基部材２、透水性シート
３及び吸上げ・吸下げシート４を固着して一体化する場
合は、図２に示すように、まず、シート状基部材２の略
中央部辺りに吸上げ・吸下げシート４を固着する。次
に、吸上げ・吸下げシート４の略中央部が下方に位置す
るように凹状にし、該凹状に形成した部分の上方を覆う
ように透水性シート３を配置しシート状基部材２に固着
することにより一体化することができる。

【００１４】なお、６は培養液を供給するための給液チ
ューブであり、周壁に給液孔が複数形成され、一端は図
示しない培養液貯蔵層に接続されている。この給液チュ
ーブ６の配設位置は特に限定されるものではないが、図
１に示したように、培地５の上方であって、シート状基
部材２の折り返し部分２ｅ，２ｆの下方に配設すること
ができる。また、９は培地５内に配設した温度調整用の
温水・冷水供給パイプである。

【００１５】次に本実施例にかかる植物栽培用ベッド１
の作用を説明する。まず、この植物栽培用ベッド１を設
置する場合には、作地等を掘削するか、図１に示したよ
うに地面に支柱パイプ７を立設する。植物栽培用ベッド
１は、図２に示したように、シート状基部材２、透水性
シート３及び吸上げ・吸下げシート４が熱溶着、接着等
の手段により固着されて一体的に形成されているため、
シート状基部材２の被支持部２ａ，２ｂを支持パイプ８
にパイプ止め具８ａを用いて固定し、折り返し部分２
ｅ，２ｆで培地５上方を被覆する。そして、培地５を透
水性シート３上に配設した後、シート状基部材２の両側
端縁２ｃ，２ｄをピンチ等のシート止め具１０で挟持す
るだけでよい。なお、栽培しようとする植物の苗１１
は、シート状基部材２の折り返し部分２ｅ，２ｆに形成
したスリット２ｇ，２ｈを介して定植される。

【００１６】通常、栽培植物へ培養液を供給する場合
は、給液チューブ６から供給する。そして、余剰の培養
液は、透水性シート３と吸上げ・吸下げシート４を通じ
て速やかに排水部１２へ排出され、該排水部１２に貯蔵
される。なお、透水性シート３は根の貫通を阻止し得る
程度の孔径で形成されているため、栽培植物の根が伸び
ても、根が排水部１２内の培養液に直接浸漬することが
なく、過剰の培養液供給による過水分、過栄養状態とな
ることがない。

【００１７】給液チューブ６の培養液給液孔が目詰まり
するなどして、培養液の供給が阻害されると、培養液不
足が生じる。しかしながら、本実施例によれば、かかる
場合に、排水部１２内に一部が浸漬するように配設され
ている吸上げ・吸下げシート４の空隙間で起こる毛細管
現象により、該排水部１２から培養液が吸い上げられ、
培地５へ供給される。したがって、給液チューブ６から
の培養液供給がストップした場合にも、該吸上げ・吸下
げシート４を通じて培養液補給がなされる。

【００１８】また、シート状基部材２の折り返し部分２
ｅ，２ｆにより培地５の上方が被覆されているため、太
陽熱等による培養液または根圏の温度変化を防止し得る
と共に、クロレラの発生も防止できる。

【００１９】

【考案の効果】本考案の植物栽培用ベッドは、シート状
基部材、透水性シート及び吸上げ・吸下げシートが一体
的に形成されている。したがって、現場での設置作業が
きわめて容易であり、作業時間も従来と比較して大幅に
短縮することができる。また、培地と排水部とに一部が
接触するように配設された吸上げ・吸下げシートを有す
るため、培養液の過不足を簡易にコントロールし得ると
共に給液ムラもなく、培地の状態を栽培植物にとって常
時好ましいものとすることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】図１は本考案の植物栽培用ベッドの一実施例を
示す断面図である。

【図２】図２は同実施例の植物栽培用ベッドの設置前の
状態を示す斜視図である。

【符号の説明】

１ 植物栽培用ベッド ２ シート状基部材 ３ 透水性シート ４ 吸上げ・吸下げシート ５ 培地 ６ 給液チューブ ７ 支柱パイプ ８ 支持パイプ ９ 温水・冷水供給パイプ １０ シート止め具 １１ 栽培植物 １２ 排水部

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) A01K 31/00

Claims (2)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 防水性と遮光性を有し、断面略凹状とな
   るようにかつ両側端縁付近が内方に向けて折り返されて
   該折り返し部分が遮光部として機能するように配設され
   るシート状基部材と、栽培植物の根の貫通を阻止し得る
   孔隙を有し、該シート状基部材の内側であって底部に対
   して適宜の間隔を有して配設され、該シート状基部材の
   底部との間に培養液の排水部を形成し得ると共に上面に
   培地を配設可能な透水性シートと、液体吸上げ機能と吸
   下げ機能を有し、培地と排水部とに一部が接触して配設
   される吸上げ・吸下げシートと、を備え、該シート状基
   部材、透水性シート及び吸上げ・吸下げシートが一体的
   に固着されていることを特徴とする植物栽培用ベッド。
2. 【請求項２】 前記シート状基部材の折り返し部分に栽
   培植物の苗を定植するためのスリットを有する請求項１
   記載の植物栽培用ベッド。