JP2573537B2 - 含フッ素樹脂成形品の表面処理方法 - Google Patents

含フッ素樹脂成形品の表面処理方法

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JP2573537B2 JP4200318A JP20031892A JP2573537B2 JP 2573537 B2 JP2573537 B2 JP 2573537B2 JP 4200318 A JP4200318 A JP 4200318A JP 20031892 A JP20031892 A JP 20031892A JP 2573537 B2 JP2573537 B2 JP 2573537B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、含フッ素樹脂成形品の
表面処理方法に関するものであり、特にシリコーンゴム
に対する接着性を含フッ素樹脂成形品表面に安定に付与
するための表面処理方法に関する。
【0002】
【従来技術】含フッ素樹脂は、耐薬品性、耐熱性、離型
性等の特性に極めて優れており、例えば複写機の定着ロ
ールの外装材、その他、多くの用途に広く使用されてい
る。また、上記定着ロールとしての用途からも明らかな
通り、含フッ素樹脂は、一般に他の材料と組み合わされ
て使用される。例えば、複写機の定着ロールに使用され
る場合、通常、下巻き材としてシリコーンゴム弾性体が
使用されており、この下巻き材を介して、含フッ素樹脂
層が金属ロール上に設けられた構造となっている。
【0003】然しながら、含フッ素樹脂は、その化学構
造に起因して、他の材料と非接着性である。従って、含
フッ素樹脂の表面をアルカリ金属の溶液で処理し、表面
のフッ素原子を化学反応で遊離させて極性化する(所謂
エッチング処理)ことにより、その接着性を高めること
が行われている。例えば、上記の定着ロールの用途に使
用される場合には、上記のエッチング処理を施した含フ
ッ素樹脂成形品を使用し、下巻き材であるシリコーンゴ
ム弾性体との一体成形に際して、該表面処理面にシリコ
ーン系のプライマーの塗布が行われ、これにより両者の
接着を行っている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】然るに、含フッ素樹脂
成形品のエッチング処理面は、保存に際しての環境条件
や経時によって、接着性が低下するという問題があり、
例えば、含フッ素樹脂成形品とシリコーンゴム弾性体と
の複合接着体においては、その接着強度、接着耐久性が
不満足であったり或いはばらついたものとなるという問
題があった。従って本発明の目的は、保存条件や経時等
によって接着性が低下せず、他の材料に対して安定した
接着性を確保することが可能な含フッ素樹脂成形品の表
面処理方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、(A) 含
フッ素樹脂成形品を、金属ナトリウムの溶液に浸漬して
第1の表面処理を行う工程、及び、(B) 前記表面処理が
行われた含フッ素樹脂成形品を、下記式(1): (R1 n Si(OR2 4-n (1) 式中、R1 は、同一でも異なっていてもよく、置換もし
くは非置換の一価炭化水素基、または、アクリロキシル
基、メタクリロキシル基、エポキシ基及びアミノ基の少
なくとも1種を含有する有機基であり、R2 は、炭素原
子数1〜4の一価の脂肪族炭化水素基であり、nは、0
〜3の整数である、で表されるアルコキシシラン化合物
を含有する溶液に浸漬して第2の表面処理を行う工程、
とを有する含フッ素樹脂成形品の表面処理方法が提供さ
れる。
【0006】
【作用】一般に、前述したエッチング処理により、含フ
ッ素樹脂成形品表面には、 C−O−(H), C−O−C, O=C−O− 等の活性基が形成され、これらの活性基が接着性の付与
に寄与する。然るに、これらの活性基が、経時ととも
に、その成形品の内部にもぐり込む現象(オーバーター
ン或いはマイグレーションと称されている)が確認され
ている。また上記の活性基は、熱や紫外線の照射によっ
ても消滅する。従って、エッチング処理された含フッ素
樹脂成形品においては、その保存中に活性基が失われ、
この結果、所望の接着性を示さなくなるものと認められ
る。
【0007】これに対して本発明においては、前記(A)
の第1の表面処理工程(エッチング処理)で含フッ素樹
脂成形品表面に形成された活性基が、前記(B) の第2の
表面処理工程で、前記アルコキシシラン化合物によりロ
ックされるために、活性基の消滅が有効に抑制され、安
定した接着力が確保されるものと信じられる。
【0008】含フッ素樹脂成形品 本発明が適用される含フッ素樹脂としては、アルカリエ
ッチングにより接着性の向上が期待される全てのものを
挙げることができるが、好適には、テトラフルオロエチ
レン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体
(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロ
プロピレン共重合体(FEP)、ポリテトラフルオロエ
チレン(TFE)、テトラフルオロエチレン/エチレン
共重合体(ETFE)等を例示することができる。また
成形品の形態は、用途に応じて任意であり、一般的には
フィルム乃至シート等であるが、これらは無端状でも有
端状の何れであってもよい。
【0009】(A) 第1の表面処理工程 この工程の表面処理は、従来公知のアルカリエッチング
であり、前記成形体を、金属ナトリウムの溶液に浸漬す
ることによって行われる。処理液である金属ナトリウム
の溶液は、例えば金属ナトリウムを液体アンモニアもし
くはナフタレンに溶解させた液(Na−NH3 分散体または
Na−ナフタレン分散体)を調製し、これをエーテル系溶
剤或いはグリーコール系溶剤/エーテル系溶剤の混合溶
剤に溶解することによって調製される。例えば、脱湿通
気管付攪拌層をN2 置換し、これに溶剤を入れ、次いで
Na−NH3 またはNa−ナフタレン分散体を少量ずつ徐々に
投入する。この際、液は昇温するので50℃以下に保つよ
うに液温を調整する。全量を投入後、2時間程度攪拌を
続けることにより、処理液が調製される。
【0010】Na−NH3 分散体またはNa−ナフタレン分散
体において、NaとNH3 もしくはナフタレンとは、モル比
で1:0.7 〜1:1.3 の範囲が好ましく、通常、1:1
のものが使用される。またエーテル系溶剤としては、例
えばテトラヒドロフラン(THF)が好適であり、混合
溶剤としては、エチレングリコール/ジメチルエーテ
ル、ブチレングリコール/ジメチルエーテル等が好適で
ある。尚、混合溶剤において、グリーコール系溶剤とエ
ーテル系溶剤とは、その体積比が1:0.2 〜 0.2:1、
特に1:1であるものが好適である。
【0011】これらの溶剤は、例えばNa(1モル)−ナ
フタレン(1モル)分散体 100gに対して、エチレング
リコール/ジメチルエーテル混合溶剤で 400〜1000ml、
特に600〜800 ml程度の使用量である。その使用量は、
上記分散体が均一に溶解乃至分散され、且つ表面処理が
有効に行われるように設定される。
【0012】上述した金属ナトリウムを含有する処理液
中への、含フッ素樹脂成形品の浸漬は、通常、室温で行
われ、また浸漬時間は、十数秒から数分程度でよい。浸
漬終了後は、エチルアルコール、イソプロピルアルコー
ル、ブチルアルコール等のアルコール系溶剤、アセト
ン、エチルメチルケトン等のケトン系溶剤で洗浄し、さ
らに水洗を行って、表面処理に際して生成した塩や塩基
等の水溶性成分が除去される。
【0013】(B) 第2の表面処理工程 前記表面処理が行われた後、連続して前述した式(1) で
表されるアルコキシシラン化合物を用いて、第2の表面
処理が行われる。この場合、第1の表面処理から時間を
置くと、そこで形成した活性基の消滅が進行する。従っ
て、第2の表面処理は、第1の表面処理終了後、時間を
置かず、連続して行われる。この式(1) において、R1
として、具体的には、置換もしくは非置換の一価炭価水
素基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル
基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキ
ル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル
基、トリル基等のアリール基、これらの基の水素原子の
一部もしくは全部をハロゲン等で置換した基、例えばク
ロロメチル基、 3,3,3−トリフルオロプロピル基等の炭
素数1〜10、好適には1〜8のものを挙げることがで
き、またアクリロキシル基等を有する有する有機基とし
て、下記式、
【化1】 で表されるものを挙げることができる。またR2 は、炭
素原子数1〜4の一価の脂肪族炭化水素基、例えばメチ
ル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基
である。
【0014】本発明において使用される上述したアルコ
キシシラン化合物の代表的な例としては、 H−Si−(OCH3 3 , Si−(OC2 5 4 ,
H−Si−(OC2 5 3 , CH3 −Si−(OC
H3 3 ,(CH3 2 −Si−(OCH3 2 , CH2 =CH−Si
−(OCH3 3 ,CH2 =CH−Si−(OC2 5 3 ,H2
N−C2 4 −NH−C3 6 −Si−(OC2 5 3 , 及び、下記式、
【化2】 で表されるものを挙げることができ、これらは1種単
独、または2種以上の組合せで使用することができる。
【0015】これらのアルコキシシランを用いての第2
の表面処理は、該アルコキシシラン溶液、またはこれを
適宜、トルエン、ヘキサン、キシレン等の有機溶剤で希
釈した溶液に、第1の表面処理が行われた含フッ素樹脂
成形品を浸漬することにより行われる。浸漬時間は、通
常、1〜10分間程度であり、浸漬温度は、通常、室温で
よい。この第2の表面処理が終了した後、風乾等により
乾燥を行って、本発明の表面処理は終了する。
【0016】かくして本発明によれば、第1の表面処理
によって形成された活性基が、上記アルコキシシラン化
合物によってブロックされるので、活性基の消滅による
接着性の低下を有効に抑制することが可能となる。本発
明による表面処理が行われた含フッ素樹脂成形品は、各
種樹脂等に対する接着性が著しく向上するが、特に縮合
硬化型、付加硬化型、有機過酸化物硬化型等の各種のシ
リコーンゴムに対する接着性に特に優れ、これらとの接
着複合体において、安定した接着力と接着耐久性を示
す。
【0017】
【実施例】実施例1 金属ナトリウム 23g(1モル) ナフタレン 128g(1モル) THF 1リットル を、脱湿通気管付攪拌層中で室温で2時間反応させ、エ
ッチング処理液を調製した。この処理液に、テトラフル
オロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共
重合体(PFA)のフィルム(80μm 厚)を10分間浸漬
し、第1の表面処理を行った。次いでアセトンを用い
て、フィルム表面に付着している有機物を洗い落とし、
その後水洗を行って付着ナトリウムを除去した。次い
で、メチルトリアルコキシシランの25%トルエン溶液
に、前記の処理が行われたPFAフィルムを室温で1分
間浸漬して第2の表面処理を行った。次いで、風乾して
表面処理PFAフィルムを得た。
【0018】この表面処理フィルムについて、 230℃×
120時間の熱劣化、及び紫外線照射(SWOM)50時間
の紫外線劣化を行い、その表面をESCA(Electron Sp
ec-troscopy for Chemical Analysis) を用いて解析す
ることにより、PFAフィルム表面に形成された活性基
の安定性の確認を行った。結果を表1に示す。
【0019】比較例1 実施例1で用いた表面処理が全く行われていない未処理
のPFAフィルムについて、実施例1と同様に、熱劣化
及び紫外線劣化試験を行い、表面の解析を行った。結果
を表1に示す。
【0020】比較例2 実施例1において、第1の表面処理のみを行ったPFA
フィルムについて、実施例1と同様に、熱劣化及び紫外
線劣化試験を行い、表面の解析を行った。結果を表1に
示す。
【0021】
【表1】
【0022】表1の結果から、実施例1による本発明の
表面処理を行うことにより、アルカリエッチング表面処
理により形成されたPFAフィルムの活性点は固定さ
れ、保存条件下で安定に存在することが理解される。
【0023】実験例 上記の実施例及び各比較例のPFAフィルムについて、
これを直ちに、或いは室温で7日間又は14日間放置した
後、その表面処理面に、付加反応型液状シリコーンゴム
(信越化学工業社製:商品名 KE 1330 A/B)を、プライ
マー(信越化学工業社製:商品名プライマーNo.4)を介
して塗布し、 120℃×10分間、加圧成形し、PFAフィ
ルムと一体化した複合成形体を作成した。これらの複合
成形体について、 230℃× 120時間の熱劣化、紫外線照
射(SWOM)50時間の劣化を行った後、その接着性の評価
を行った。その結果を表2に示す。尚、接着性の評価
は、次の判断基準とした。 ◎:強固に接着している。 ○:強く引っ張ると一部に剥離が認められる。 ×:引っ張ると容易に全体が剥離する。
【0024】
【表2】
【0025】
【発明の効果】本発明にしたがって表面処理された含フ
ッ素樹脂成形品は、従来のアルカリエッチングのみが行
われた成形品と比較して、保存性に優れており、しかも
シリコーンゴム弾性体と強固な接着複合体を形成し得
る。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (A) 含フッ素樹脂成形品を、金属ナト
    リウムの溶液に浸漬して第1の表面処理を行う工程、 及び、 (B) 前記表面処理が行われた含フッ素樹脂成形品を、下
    記式(1): (R1 n Si(OR2 4-n (1) 式中、 R1 は、同一でも異なっていてもよく、置換もしくは非
    置換の一価炭化水素基、または、アクリロキシル基、メ
    タクリロキシル基、エポキシ基及びアミノ基の少なくと
    も1種を含有する有機基であり、 R2 は、炭素原子数1〜4の一価の脂肪族炭化水素基で
    あり、 nは、0〜3の整数である、で表されるアルコキシシラ
    ン化合物を含有する溶液に浸漬して第2の表面処理を行
    う工程、とを有する含フッ素樹脂成形品の表面処理方
    法。
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