JP2571825B2 - 光ファイバの樹脂被覆方法及び装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〈産業上の利用分野〉 本発明は、光ファイバに樹脂被覆を施す光ファイバの
樹脂被覆方法及び装置に関し、特に、高分子材料の塗布
を均一にして製造性，品質を向上させるようにしたもの
である。

〈従来の技術〉 光伝送用媒体として使用させる光学ガラスファイバ
（以下、光ファイバという）は、通常その直径が150μ
ｍ以下であり、また、材質的にも脆いことから、製造中
あるいはケーブル化の工程において、または保管中にお
いて、その表面に傷が発生し易く、さらに、この傷が応
力集中源となって外部から力が加わった場合に容易に破
断してしまうという欠点を有している。したがって、光
ファイバをそのまま光伝送用媒体として使用するのは極
めて困難であるので、従来から光ファイバの表面に樹脂
被覆を施して被覆光ファイバとし、光ファイバ製造直後
の初期強度の維持を図るとともに長期使用に耐えうるよ
うにしている。

この被覆光ファイバに使用されている樹脂被覆材料
は、例えば、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ
樹脂などの熱硬化型樹脂や、エポキシアクリレート、ウ
レタンアクリレート、ポリエステルアクリレートなどの
紫外線硬化型樹脂、その他、放射線硬化型樹脂などの高
分子材料（以下、単に樹脂という）であるが、この樹脂
を光ファイバに塗布し、硬化させて樹脂被覆を形成する
工程の一例を第４図に示す。

第４図に示すように、光ファイバ母材１の先端を加熱
炉により加熱・溶融しつつ線引きして形成された光ファ
イバ３は、第１の加圧式ダイ（以下、加圧ダイという）
4Aに挿通されることによりその外周表面に被覆材料であ
る樹脂が塗布され、さらに第１の硬化炉5Aに挿通される
ことにより塗布された樹脂が硬化され、１層被覆光ファ
イバ6Aが形成される。この第１層被覆光ファイバ6Aは、
続いて第２の加圧ダイ4Bに挿通されてその外周表面に２
層目の被覆材料である樹脂が塗布され、さらに第２の硬
化炉5Bに挿通されることにより２層目の樹脂が硬化さ
れ、２層被覆光ファイバ6Bが形成される。そして、２層
被覆ファイバ6Bはキャプスタン７を介して巻取機８に巻
取られる。

ここで、加圧ダイ4A,4Bに対して、ある圧力により樹
脂を供給している樹脂圧力供給装置９の一例を示す。同
図に示すように、樹脂圧力供給装置９は樹脂10を貯留す
る加圧タンク9aと、この加圧タンク9a内の圧力を調整す
る例えば、減圧弁からなる圧力調整器9bと、加圧タンク
9a中の樹脂10を加圧ダイ4A（又は4B）に送る樹脂供給管
9cとを有しており、圧力調整器9bを介して加圧タンク9a
に導入される高圧ガスにより、加圧タンク9a内の樹脂は
樹脂供給管9cを通して加圧ダイ4A（又は4B）に供給され
ている。

かかる被覆光ファイバ製造工程においては、被覆材と
しての樹脂の塗布は、線引速度（以下、線速という）が
変化しても常に均一な塗布径を保持することが要求され
ているので、加圧ダイ4A,4B内の樹脂圧力を最適値にす
る必要がある。したがって、従来においては、予め実験
により最適圧力値を求めておき、加圧ダイ4A（又は4B）
内に設けた圧力センサにより加圧ダイ4A（又は4B）内の
圧力をモニタしながら圧力調整器9bによって設定される
供給圧力を制御するか、又は、この供給圧力を簡易的に
製造予定線速における最適値に固定する方法が採られて
いる。

〈発明が解決しようとする課題〉 しかしながら、前述したように、加圧ダイへの樹脂の
供給圧力をダイ内の樹脂圧力を圧力センサによりモニタ
しながら制御する場合には、ダイ内の圧力センサを直接
樹脂と接触させなければならないのでその保守が大変で
あり、また、塗布状態そのものではなく単にダイ内の圧
力をモニタしているのみなので、例えば樹脂の物性が当
初の実験時と変化したような場合には塗布状態が良好に
保てないという問題がある。一方、加圧ダイへの樹脂の
供給圧力を簡易的に固定した場合には、設備は単純とな
るので保守が大変であるという問題は生じないが、やは
り、線速、樹脂の物性等が変化した場合には良好な塗布
状態が保持できないという問題がある。

本発明はこのような事情に鑑み、線速、樹脂の物性等
が変化した場合にも良好な塗布状態を保持することがで
きる光ファイバの樹脂被覆方法及び装置を提供すること
を目的とする。

〈課題を解決するための手段〉 前記目的を達成する本発明にかかる光ファイバの製造
方法は、光ファイバ母材を加熱線引きして得た光ファイ
バの外周表面に高分子材料を加圧式ダイより塗布し、続
いて硬化炉により当該高分子材料を硬化することにより
被覆光ファイバを製造する光ファイバの樹脂被覆方法に
おいて、上記加圧式ダイの直下にて高分子材料塗布直後
の光ファイバの輝度を測定し、この輝度の測定値に応じ
て上記加圧式ダイの圧力を制御することを特徴とし、ま
た、光ファイバの樹脂被覆装置は、光ファイバ母材を加
熱線引きして得た光ファイバの外周表面に高分子材料を
塗布する加圧式ダイと、この加圧式ダイにより塗布され
た高分子材料を硬化する硬化炉とを有する光ファイバの
樹脂被覆装置において、上記加圧式ダイの直下にて高分
子材料塗布直後の光ファイバの輝度を測定する輝度セン
サと、この輝度センサによる測定値に応じて上記加圧式
ダイの圧力を制御する制御手段とを設けたことを特徴と
する。

本発明は、加圧ダイへの樹脂の供給圧力が線引中に変
化して高すぎたり低すぎたりして塗布状態が不良になる
と、加圧ダイ直下の光ファイバの輝度が高くなるという
新たな知見に基づいてなされたものである。このよう
に、塗布状態が不良になった場合に光ファイバの輝度が
変化するのは、次の原理によるものと推定される。

第２図に示すように、光ファイバ母材１は加熱炉２で
加熱線引きされるときに炉内のヒータから光を受け、こ
の光の一部は線引きされた光ファイバ３中を伝播する。

一方、光ファイバ３が加圧ダイ４において樹脂10が塗
布される場合において、良好な塗布状態、具体的には均
一な塗布径が維持され塗布された樹脂被覆の偏心が小さ
い状態ではダイ出口部Ｅ付近における光ファイバの振動
は非常に小さいが、加圧ダイ内の樹脂圧力が適切でなく
なって樹脂10の塗布が不良になる場合には、樹脂10の流
れが不安定になっており、ダイ出口部Ｅにおける光ファ
イバ３に振動が生じる。

このように光ファイバ３に振動が生じると、上述した
ように加熱炉２から光ファイバ３内を伝播されてきた光
の一部が散乱し、この結果光ファイバの輝度が高まるこ
とになると予想される。

すなわち、第３図に示すように、加圧ダイ４内の樹脂
圧力が最適範囲ａにあって塗布状態が良好に保たれる場
合には、加圧ダイ直下の光ファイバの輝度は安定してほ
ぼ一定となるが、樹脂圧力が低い範囲ｂあるいは高い範
囲ｃにあって塗布状態が不良になると、加圧ダイ直下の
光ファイバの輝度が高くなる。

〈実 施 例〉 以下、本発明の好適な実施例を図面を参照しながら説
明する。

第１図には本発明方法を実施するための樹脂被覆装置
を備えた被覆光ファイバの製造工程を示す、なお、第４
図と同一部材には同一符号を付して重複した説明は省略
する。

第１図に示すように、本実施例においては、加圧ダイ
4A,4Bの直下に輝度センサ11をそれぞれ設けてこれら輝
度センサ11によりダイ直下のファイバの輝度を測定する
とともに、この測定値に応じて樹脂圧力供給装置９を制
御する演算器12を配設している。

このような本実施例の樹脂被覆装置においては、樹脂
塗布直後の光ファイバの輝度を測定することにより、塗
布状態が良好か不良かの判断を行い、良好な塗布状態を
維持することができるように樹脂の供給圧力を適正に保
つことができる。すなわち、輝度の測定値及び圧力の変
化より、第３図に示す最適範囲ａからｂあるいはｃにず
れたと判断された場合に、樹脂圧力供給装置９の圧力調
整器（第５図参照）を制御して圧力が最適範囲ａに入る
ようにしている。

このように加圧ダイ内の樹脂圧力が最適範囲に保たれ
ると、被覆偏心の小さい均一径の塗布が行われるように
なり、被覆光ファイバの品質が著しく向上する。

上記構成の装置により、直径35mmの光ファイバ母材を
用いて直径125μｍの光ファイバに線引し、２層樹脂被
覆を行った。この際、線引速度を50〜300m/minに亘って
変化させたが、光ファイバの径が125±0.3μｍ、１層目
樹脂塗布径が200±１μｍ、２層目樹脂塗布径が250±１
μｍと非常に良好な塗布状態の被覆光ファイバを得るこ
とができた。

〈発明の効果〉 以上説明したように、本発明によると、加圧ダイ直下
の光ファイバの輝度の変化を測定することにより塗布状
態が良好かどうかを判断し、これに応じて樹脂の供給圧
力を適正に制御するようにしているので、線速が変化し
たり、樹脂の物性が変化したりした場合にも常に良好な
塗布状態が保たれ、光ファイバの製造性及び品質を著し
く向上することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の実施例の被覆光ファイバの製造工程を
示す説明図、第２図は本発明の原理を示す説明図、第３
図は加圧ダイ圧力とダイ直下のファイバの輝度との関係
を示すグラフ、第４図は従来技術にかかる被覆光ファイ
バの製造工程を示す説明図、第５図はその樹脂圧力供給
装置の構成の一例を示す構成図である。 図面中、 １は光ファイバ母材、 ２は加熱炉、 ３は光ファイバ、 4A,4Bは加圧ダイ、 5A,5Bは硬化炉、 6Aは１層被覆光ファイバ、 6Bは２層被覆光ファイバ、 ９は樹脂圧力供給装置、 11は輝度センサ、 12は演算器である。

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】光ファイバ母材を加熱線引きして得た光フ
   ァイバの外周表面に高分子材料を加圧式ダイにより塗布
   し、続いて硬化炉により当該高分子材料を硬化すること
   により被覆光ファイバを製造する光ファイバの樹脂被覆
   方法において、上記加圧式ダイと直下にて高分子材料塗
   布直後の光ファイバの輝度を測定し、この輝度の測定値
   に応じて上記加圧式ダイの圧力を制御することを特徴と
   する光ファイバの樹脂被覆方法。
2. 【請求項２】光ファイバ母材を加熱線引きして得た光フ
   ァイバの外周表面に高分子材料を塗布する加圧式ダイ
   と、この加圧式ダイにより塗布された高分子材料を硬化
   する硬化炉とを有する光ファイバの樹脂被覆装置におい
   て、上記加圧式ダイの直下にて高分子材料塗布直後の光
   ファイバの輝度を測定する輝度センサと、この輝度セン
   サによる測定値に応じて上記加圧式ダイの圧力を制御す
   る制御手段とを設けたことを特徴とする光ファイバの樹
   脂被覆装置。