JP2571071B2 - X線用ガス比例計数管 - Google Patents

X線用ガス比例計数管

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JP2571071B2
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学 船橋
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理学電機工業株式会社
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、X線検出用のガス比例計数管に関し、特
に、検出X線の波長が変化しても検出効率を最適化でき
るように構成したX線用ガス比例計数管に関する。
(従来の技術) X線用のガス比例計数管は、検出用ガスを封入した管
内に電子集電極を配置したもので、放射線の入射により
ガスから電離した電子を正の高電圧により集電極にあつ
め、電気パルスあるいは電流としてX線を検出するもの
で、電気パルスで検出する場合は、波高分析器と組み合
わせてX線の波長選別能力を有するものである。
(発明が解決しようとする問題点) このような機構をもたない1つの計数管を広範囲の波
長のX線に対して使用すると、短波長のX線ではガスに
対するX線の透過力が大きいため、電離電子の生成効率
が悪く検出感度が落ちるし、また、長波長のX線では検
出器の窓付近でX線のほとんどの吸収が起こるため、電
子が集電極まで到達する量が少なくなり、感度が低下し
たり検出器の波長選別能力が低下する。実際には、使用
するX線の波長に応じて、検出用ガスの種類や封入圧力
を変えた複数の計数管を用意しておき、目的に応じて検
出器を使い分けている。
したがって、本発明の目的は、このような従来技術の
欠点をなくし、1つの計数管だけで広い波長範囲のX線
を最適の検出効率で、かつ、高い波長選別能力で検出す
ることができるX線用ガス比例計数管を提供することで
ある。
(問題点を解決するための手段) 本発明のX線用ガス比例計数管は、検出しようとする
X線の波長に応じて、検出用ガスの有効体積を連続的に
変化させるように構成したものである。
(作用) このように構成すると、いずれの波長のX線について
も、計数管内の検出用ガスによる吸収を充分に起こさ
せ、検出効率をあげることができる。そして、X線入射
方向の集電極の位置も変化させて、集電極をX線による
電離範囲中の最適な位置に移動させ、波長選別能力も最
高の性能を発揮させることができる。
(実施例) 第1図、第2図は本発明の1実施例のX線用ガス比例
計数管本体の断面図を示す。計数管は、アースされた金
属性の外筒1と、外筒1の内側に軸方向にスライド可能
に嵌め込まれている内筒2とからなる。外筒1と内筒2
のスライド面はOリング等のシール部材3によりシール
されていて、外筒1と内筒2の間に形成される管室5内
の検出ガス中へ不純物等が混入するのを防いでいる。内
筒2の端部4を貫通して、管室5内に集電極6が支持さ
れるとともに、検出ガス導入パイプ7、検出ガス排出パ
イプ8が開口している。第1図はこの集電極6が管室5
内にU字状に張り渡されている例を示すものであり、第
2図は集電極6が外筒1の中心軸に沿って直線状に突出
している例を示すものである。外筒1の端面にはベリリ
ウム、高分子膜、その他適当な物質の薄い膜からなる窓
9が設けられている。なを、図中符号10は集電極6から
電気パルスを取り出す端子を示している。
さて、この検出器の検出効率は、 (X線入射窓のX線透過率) ×(検出ガスのX線吸収率) ……(a) で表わされる。上記X線透過率は波長が長くなると減少
し、逆に、上記X線吸収率は波長が短くなると減少する
ので、検出効率は第4図に点線で示したような波長依存
性を示す。したがって、検出しようとするX線の波長が
異なると検出効率が変化してしまう。この変化をX線吸
収率を変えることによって補うことができる。
ところで、X線吸収率は、 1−I/I0={1−exp(−μ/ρ・ρ・T)} ……(b) ここで、I :透過X線量 I0 :入射X線量 μ/ρ:質量吸収係数 ρ :ガスの密度 T :X線経路長 と表わされる。したがって、波長に依存する検出ガスの
X線吸収率の変化を補うためには、X線経路長Tを変化
させるか、ガスの密度ρを変化させればよい。例えば、
検出ガスに1気圧のArを使用した場合、長波長のSiKα
X線では、上記(b)式により、約1.7センチメート
ルのガス厚で90%が吸収されるので、第1図の集電極6
の先端を検出器窓9から約0.8センチメートル程度の所
に位置するように内筒2をスライドさせると、検出効
率、波長選別性能とも良好となった。これに対して、比
較的短波長のCuKα X線では、同じく(b)式によ
り、約10.9センチメートルのガス厚で90%が吸収される
ため、集電極6の先端を窓9から約5センチメートル程
度の位置にすると、良好な結果が得られた。
上記の(b)式中質量吸収係数は、 μ/ρ=k・λ・Z ここで、k:定数 λ:波長 Z:吸収体の原子番号 で近似的に表わされているので、T=K′/λ(K′:
定数)に従って内筒2の位置を目的のX線波長に合わせ
て移動させればよい。また、妨害X線がある時には、妨
害X線の波長に応じて、上記T値を基準として内筒2を
多少前後させれば、妨害の影響を小さくできる。
なお、内筒2の端部4を貫通する集電極6の端部4に
対する軸方向の位置も調節可能に構成し、検出効率をよ
り最適に調節できるようにすることも可能である。
第3図に模式的に示した別の実施例のものは、(b)
式のρを変化させて上記第1図、第2図のものと同様の
効果を得るようにしたものである。一般に、検出ガスと
しては、Ar、Heなどの稀ガスが多く用いられるが、X線
の吸収率はガスの原子番号とともに増加するので、ガス
の種類をその他の稀ガスに切り換えるようにすることに
よっても同様の効果を得ることができる。この場合は、
ガスの導入、排出経路7、8にガス圧調整弁11を設け
て、短波長X線に対してはガス圧は高め、長波長のX線
に対してはガス圧を低くし、また、必要に応じて、差動
排気を用いて大気圧以下で使用することができる。
第5〜第7図は、本発明の計数管を固体表面研究用な
どの超高真空装置に組み込むための薄膜の窓材のシール
部を示すものである。超高真空仕様では、リーク量、材
料の放出ガス量の低減、及び、排気中の装置のベーキン
グのために、金属シールを用いる。特に、25μmBeのよ
うな薄膜の窓材のシール部には特別の配慮を要する。以
下に実施例を示す。
第5図は、InやAu等の柔らかい金属のシート13をシー
ル部材として用いた例を示すものである。計数管本体1
と窓薄膜12の間でつぶされたIn等は、真空シールの役目
を果たすとともに薄膜12の破れを防ぐ。なお図中、14は
窓押え金具である。
第6図は、本体1側にAuシール線15のための溝16を設
け、シール材の使用量の低減を図った例を示すものであ
る。溝16の断面積はシール線15の断面積の70〜90%程度
である。
第7図は、薄膜材12の周辺に補強板17による補強を施
したもので、薄膜12と補強板17とは電子ビーム溶接など
で接着18する。
第8図は、本発明の計数管を更に超軟X線波長領域で
使用するための構造を示す。超軟X線(C−KXなど)領
域では、X線の透過率のために、0.5〜5μm厚程度の
高分子膜12を使用する。このような膜材12の場合、材料
単独での機械的強度が不足するので、第8図(a)に示
したような中心にメッシュ部分20を有するサポート19を
用いて窓材の損傷を防ぐ。シール部材としては第8図
(b)に示したような平パッキン21、又は第8図(c)
に示したようなOリングシール22を用いる。
超高真空装置でこの膜材やシール部からのリークが問
題と成る場合には、第9図に示したように窓部を二重構
造9、9′とする。リーク量が大きい場合は、二重窓部
9、9′間を1Pa以下に差動排気して、測定装置側の真
空度への悪影響を防ぐ。また、窓材の強度に問題がある
場合には、二重窓部9、9′間を排気し、1/2〜1/3気圧
程度のHeガスで置換すれば、窓材にかかる圧力を小さく
でき、膜サポート用メッシュの目開きを大きくすること
ができるので、X線の透過量も十分となる。なお、図中
の符号7′、8′は二重窓9、9′間を低圧に保持する
ためのガス導入パイプ、ガス排出パイプを示す。
(発明の効果) 本発明のガス比例計数管は、扱うX線の波長領域が広
い蛍光X線分析や、超高真空仕様として固体表面軟X線
吸収端微細構造分析などに利用する場合に大きな効果が
あるものである。特に、超高真空装置でガス比例計数管
を用いる際、従来の検出器においては、目的とする波長
に応じて検出器の交換が必要であり、そのために一旦大
気圧に戻し、再度真空排気を行っていたが、本発明の検
出器を用いれば、真空外から検出波長に適合するように
検出器を調整できるため、装置の真空再排気は不要とな
り、実験の能率は大幅に向上する。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明のX線用ガス比例計数管の1実施例の本
体の断面図、第2図は集電極を変形した他の実施例の本
体断面図、第3図はガスの種類とその圧力の調整装置の
模式図、第4図は検出効率の波長依存性を示すグラフ、
第5図〜第7図は本発明の計数管の薄膜窓のシール部の
構造を示す断面図及び斜視図、第8図は本発明の計数管
を超軟X線波長領域で使用するための構造を説明するた
めの説明図、第9図は二重窓構造とした実施例の断面図
である。 1:外筒、2:内筒 3、13、15、21、22:シール部材 4:内筒の端部、5:管室、6:集電極 7:検出ガス導入パイプ、8:排出パイプ 9:窓、10:端子、11:ガス圧調整弁 12:窓膜、19:膜サポート

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ガス比例計数管において、検出しようとす
    るX線の波長に応じて、検出用ガスが封入された管室の
    X線入射方向長を変化させるように構成して、X線波長
    選別能力とX線検出効率を最適にできるようにしたこと
    を特徴とするX線用ガス比例計数管
  2. 【請求項2】集電極のX線入射方向の位置を可変にした
    ことを特徴とする特許請求の範囲第1項記載のX線用ガ
    ス比例計数管
  3. 【請求項3】端面にX線入射窓を設けた外筒と、この外
    筒の内側に軸方向にスライド可能にかつ気密に嵌め込ま
    れている内筒とからなり、この内筒の端部を貫通して集
    電極、検出用ガス導入パイプおよび検出用ガス排出パイ
    プが取り付けられていて、集電極は外筒の端面と内筒の
    端部の間に形成された管室内に延びるように支持されて
    いることを特徴とするX線用ガス比例計数管
  4. 【請求項4】一端面にX線入射窓を設けた外筒と、この
    外筒の内側に軸方向にスライド可能にかつ気密に嵌め込
    まれている内筒とからなり、この内筒の端部を貫通して
    集電極、検出用ガス導入パイプおよび検出用ガス排出パ
    イプが取り付けられており、該検出用ガス導入パイプお
    よび検出用ガス排出パイプそれぞれにガス圧調整弁を設
    けたことを特徴とするX線用ガス比例計数管
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