JP2569838B2 - 二軸配向熱可塑性樹脂フィルムの製造方法 - Google Patents

二軸配向熱可塑性樹脂フィルムの製造方法

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JP2569838B2 JP1289398A JP28939889A JP2569838B2 JP 2569838 B2 JP2569838 B2 JP 2569838B2 JP 1289398 A JP1289398 A JP 1289398A JP 28939889 A JP28939889 A JP 28939889A JP 2569838 B2 JP2569838 B2 JP 2569838B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、二軸配向熱可塑性樹脂フィルムの製造方法
に関するものである。
[従来の技術] 二軸配向熱可塑性樹脂フィルムとしては少なくとも片
面の走行性が改良されたフィルムが知られている(例え
ば、特開昭59−171623号公報等)。
[発明が解決しようとする課題] しかしながら、上記従来の二軸配向熱可塑性樹脂フィ
ルムでは、例えば、磁気媒体用途における磁性層塗布、
カレンダー工程、あるいは、できたビデオテープ等をダ
ビングしてソフトテープ等を製造する工程等の工程速度
の増大に伴い、接触するロールやガイドでフィルム表面
に傷がつくという欠点があった。また、従来のもので
は、上記ダビング時の画質低下のために、ビデオテープ
にした時の画質、すなわち、S/N(シグナル/ノイズ
比)も不十分という欠点があった。本発明はかかる課題
を解決し、特に高速工程でフィルムに傷がつきにくく
(以下耐スクラッチ性に優れるという)、しかもダビン
グ時の画質低下の少ない(以下耐ダビング性に優れると
いう)二軸配向熱可塑性樹脂フィルムの製造方法を提供
することを目的とする。
[課題を解決するための手段] 本発明は、異なる平均粒径を有する不活性粒子を少な
くとも2種類含有する熱可塑性樹脂Aを主成分とするフ
ィルムAを、熱可塑性樹脂Bを主成分とするフィルムB
の少なくとも片面に積層してなる二軸配向熱可塑性樹脂
フィルムの製造方法において、熱可塑性樹脂Aに添加す
る上記不活性粒子のうち最小の平均粒径をd1とすると
き、平均粒径d1を有する不活性粒子を熱可塑性樹脂Aに
対して2〜20重量%添加し、二軸延伸熱処理後の熱可塑
性樹脂Aを主成分とするフィルムAの厚さtとd1の比t/
d1が0.1〜5となるように積層することを特徴とする二
軸配向熱可塑性樹脂フィルムの製造方法に関するもので
ある。
本発明を構成する熱可塑性樹脂Aはポリエステル、ポ
リオレフィン、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド
など特に限定されないが、特にポリエステル、なかでも
エチレンテレフタレート、エチレンα,β−ビス(2−
クロルフェノキシ)エタン−4,4′−ジカルボキシレー
ト、エチレン2,6−ナフタレート単位から選ばれた少な
くとも一種の構造単位を主要構成成分とする場合に耐ス
クラッチ性、耐ダビング性がより一層良好となるので望
ましい。また、本発明を構成する熱可塑性樹脂は結晶
性、あるいは溶融時光学異方性である場合に耐スクラッ
チ性、耐ダビング性がより一層良好となるのできわめて
望ましい。ここでいう結晶性とはいわゆる非晶質でない
ことを示すものであり、定量的には結晶化パラメータに
おける冷結晶化温度Tccが検出され、かつ結晶化パラメ
ータΔTcgが150℃以下のものである。さらに、示差走査
熱量計で測定された融解熱(融解エンタルピー変化)が
7,5cal/g以上の結晶性を示す場合に耐スクラッチ性、耐
ダビング性がより一層良好となるのできわめて望まし
い。また、エチレンテレフタレートを主要構成成分とす
るポリエステルの場合に耐ダビング性、耐スクラッチ性
がより一層良好となるので特に望ましい。なお、本発明
を阻害しない範囲内で、2種以上の熱可塑性樹脂を混合
しても良いし、共重合ポリマを用いても良い。
本発明の熱可塑性樹脂Aに添加する異なる平均粒径を
有する不活性粒子それぞれについて、その粒径比(粒子
の長径/短径)が1.0〜1.3の粒子、特に、球形状の粒子
の場合に耐スクラッチ性がより一層良好となるので望ま
しい。
また、本発明の熱可塑性樹脂Aに添加する異なる平均
粒径を有する不活性粒子それぞれについて、その粒径の
相対標準偏差が0.6以下、好ましくは0.5以下の場合に耐
スクラッチ性、耐ダビング性がより一層良好となるので
望ましい。
不活性粒子の主たる化学組成は特に限定されないが、
上記の好ましい粒子特性を満足するにはアルミナ珪酸
塩、1次粒子が凝集した状態のシリカ、内部析出粒子な
どは好ましくなく、コロイダルシリカに起因する実質的
に球形のシリカ粒子、架橋高分子による粒子(たとえば
架橋ポリスチレン)などがあるが、特に10重量%減量時
温度(窒素中で熱重量分析装置にて測定。昇温速度20℃
/min)が380℃以上になるまで架橋度を高くした架橋高
分子粒子の場合に耐スクラッチ性、耐ダビング性がより
一層良好となるので特に望ましい。なお、コロイダルシ
リカに起因する球形シリカの場合にはアルコキシド法で
製造されたナトリウム含有量が少ない実質的に球形のシ
リカの場合に耐スクラッチ性がより一層良好となるので
特に望ましい。しかしながら、その他の粒子、例えば炭
酸カルシウム、二酸化チタン、アルミナ等の粒子でもフ
イルム厚さを平均粒径の適切なコントロールにより十分
使いこなせるものである。なお、本発明の複数種類の不
活性粒子の化学組成は異なっていても同一でもかまわな
い。
本発明のフィルムの製造方法においては、フィルムA
を構成する熱可塑性樹脂A中に異なる平均粒径を有する
上記不活性粒子を少なくとも2種類以上添加する必要が
ある。ここで、それぞれの平均粒径を有する不活性粒子
は、そのおのおのが上記粒径の相対標準偏差を満足して
いることが特に好ましい。
これら異なる平均粒径を有する不活性粒子のうちで、
0.5重量%以上添加する不活性粒子のなかで最小の平均
粒径をd1、添加する全不活性粒子について最大の平均粒
径をd2とする。このとき、熱可塑性樹脂Aを主成分とす
るフィルムAの厚さtと平均粒径d1の比t/d1は0.1〜
5、好ましくは0.3〜3、さらに好ましくは0.4〜1.0の
範囲であることが必要である。熱可塑性樹脂Aを主成分
とするフィルムAの厚さtと平均粒径d1の比が上記の範
囲より小さいと耐スクラッチ性が不良となり、逆に大き
くても耐スクラッチ性、耐ダビング性が不良となるので
好ましくない。
熱可塑性樹脂Aに添加する不活性粒子の平均粒径d1
特に限定されないが0.01〜1μm、特に0.02〜0.5μm
の範囲である場合に耐スクラッチ性、耐ダビング性がよ
り一層良好となるので望ましい。熱可塑性樹脂Aに添加
する不活性粒子の平均粒径d2は特に限定されないが0.02
〜2μm、特に0.05〜1μmの範囲である場合に耐スク
ラッチ性、耐ダビング性がより一層良好となるので望ま
しい。
さらに、耐スクラッチ性、耐ダビング性の点で、熱可
塑性樹脂Aを主成分とするフィルム厚さtと不活性粒子
の平均粒径d2の比t/d2は0.05〜3、さらに0.1〜2、よ
りさらに0.3〜1.0の範囲であることが望ましい。
本発明の熱可塑性樹脂Aに添加する平均粒径d1を有す
る不活性粒子の添加量は2〜20重量%、好ましくは2〜
10重量%、さらに好ましくは3〜8重量%であることが
必要である。不活性粒子の添加量が上記の範囲より少な
くても、逆に大きくても耐スクラッチ性が不良となるの
で好ましくない。なお本発明の異なる平均粒径を有する
不活性粒子のそれぞれの添加量は異なっていても同一で
もよい。
本発明の製造方法によって得られるフィルムは、粒径
のばらつきの小さい不活性粒子を、平均粒径の異なる2
種類以上の粒子と組合わせて添加し、しかも該粒子を含
有するフィルムAは、d1とほぼ同厚みか好ましくはそれ
より薄い層とする構成を有しているから、フィルムA層
面上には添加した粒径に応じた突起、すなわち、その高
さが2種類以上で、しかもそれぞれの高さのばらつきの
少ない突起が形成されることにより、平均粒径が一種類
だけの粒子を添加したフィルムに比べて本発明の効果が
飛躍的に向上したものである。
本発明でフィルムAは上記熱可塑性樹脂Aと不活性粒
子からなる組成物を主要成分とするが、本発明の目的を
阻害しない範囲内で、他種ポリマをブレンドしてもよい
し、また酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、紫外線吸収剤な
どの有機添加剤が通常添加される程度添加されていても
よい。
本発明により得られるフィルムは上記組成物を二軸配
向せしめたフィルムである。一軸あるいは無配向フィル
ムでは耐スクラッチ性が不良となるので好ましくない。
この配向の程度は特に限定されないが、高分子の分子配
向の程度の目安であるヤング率が長手方向、幅方向とも
に350kg/mm2以上である場合に耐スクラッチ性がより一
層良好となるのできわめて望ましい。分子配向の程度の
目安であるヤング率の上限は特に限定されないが、通常
1,500kg/mm2程度が製造上の限界である。
また、本発明によって得られるフィルムはヤング率が
上記範囲内であってもフィルムの厚さ方向の一部分、例
えば表層付近のポリマ分子の配向が無配向あるいは一軸
配向ではない、すなわち厚さ方向の全部分の分子配向が
二軸配向である場合に耐スクラッチ性、耐ダビング性が
より一層良好となるので特に望ましい。
特にアッベ屈折率計、レーザーを用いた屈折率計、全
反射レーザーラマン法などによって測定される分子配向
が表面、裏面ともに二軸配向である場合に耐スクラッチ
性、耐ダビング性がより一層良好となるので特に望まし
い。
さらに熱可塑性樹脂Aが結晶性ポリエステルであり、
本発明で得られるフィルムのフィルムAの表面の全反射
ラマン結晶化指数が20cm-1以下、好ましくは18cm-1
下、さらに17cm-1以下の場合に耐スクラッチ性、耐ダビ
ング性がより一層良好となるのできわめて望ましい。
本発明で得られるフィルムAの厚さは耐スクラッチ
性、耐ダビング性の点で0.01〜3μm、好ましくは0.02
〜1μm、さらに好ましくは0.03〜0.5μmであること
が望ましい。
本発明で得られるフィルムAの表面の平均突起高さは
5〜500nm、好ましくは0〜300nm、さらに好ましくは15
〜200nmの範囲である場合に耐スクラッチ性、耐ダビン
グ性がより一層良好となるので特に望ましい。
本発明で得られるフィルムAの平均突起間隔は6μm
以下、好ましくは4μm以下である場合に耐スクラッチ
性、耐ダビング性がより一層良好となるので特に望まし
い。
本発明で得られるフィルムは上述したように、構成す
る熱可塑性樹脂が結晶性あるいは溶融光学異方性である
ことがきわめて望ましいが、溶融等方性フィルムの場合
には結晶化パラメータΔTcgが25〜65℃である場合に耐
スクラッチ性がより一層良好となるので特に望ましい。
なお熱可塑性樹脂Aがポリエステルの場合には、フィ
ルムA面の厚さ方向屈折率が1.5以下の場合に耐スクラ
ッチ性、耐ダビング性がより一層良好となるので特に望
ましい。さらにフィルムの固有粘度が0.60以上、特に0.
70以上の場合に耐スクラッチ性がより一層良好となるの
で特に望ましい。
熱可塑性樹脂Bとしては結晶性ポリマが望ましく、特
に結晶性パラメータΔTcgが20〜100℃の範囲である場合
に、耐ダビング性がより一層良好となるので望ましい。
具体例としてポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレ
ンスルフィド、ポリオレフィンが挙げられるが、なかで
もポリエステルの場合に耐ダビング性がより一層良好と
なるので特に望ましい。さらにポリエステルとしては、
エチレンテレフタレート、エチレンα,β−ビス(2−
クロルフェノキシ)エタン−4,4′−ジカルボキシレー
ト、エチレン2,6−ナフタレート単位から選ばれた少な
くとも一種の構造単位を主要構成成分とする場合に、耐
ダビング性が特に良好となるので望ましい。ただし、本
発明を阻害しない範囲内、望ましい結晶性を損なわない
範囲内で、好ましくは5モル%以内であれば他成分が共
重合されていてもよい。また熱可塑性樹脂BとAは同じ
種類であっても異なるものでも良い。
本発明の熱可塑性樹脂Bにも本発明の目的を阻害しな
い範囲内で、他種ポリマをブレンドしてもよいし、また
酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、紫外線吸収剤などの有機
添加剤が通常添加される程度添加されていてもよい。
熱可塑性樹脂Bを主成分とするフィルムB中には不活
性粒子を添加する必要は特にないが、平均粒径が0.01〜
2μm、特に0.02〜0.5μmの不活性粒子を0.001〜0.15
重量%、特に0.005〜0.05重量%添加すると、耐スクラ
ッチ性がより一層良好となるのみならず、フィルムの巻
姿が良好となるのできわめて望ましい。添加する不活性
粒子の種類は熱可塑性樹脂Aに望ましく用いられるもの
を使用することが望ましい。熱可塑性樹脂AとBに添加
する粒子の種類、大きさは同じでも異なっていても良
い。
上記熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bの結晶化パラメ
ータΔTcgの差(A−B)は特に限定されないが、−30
〜+20℃の場合に、耐スクラッチ性、耐ダビング性がよ
り一層良好となるので特に望ましい。
次に本発明のフィルムの製造方法について説明する。
まず、熱可塑性樹脂Aに不活性粒子を添加せしめる方
法としては、熱可塑性樹脂がポリエステルの場合には、
ジオール成分であるエチレングリコールのスラリーの形
で分散せしめ、このエチレングリコールを所定のジカル
ボン酸成分と重合せしめるのが本発明範囲の厚さと平均
粒径の関係、添加量のフィルムを得るのに有効である。
また、不活性粒子を含有するポリエステルの溶融粘度、
共重合成分などを調節して、その結晶化パラメータΔTc
gを40〜65℃の範囲にしておく方法は本発明範囲の厚さ
と平均粒径の関係、添加量のフィルムを得るのに有効で
ある。
また、不活性粒子のエチレングリコールのスラリーを
140〜200℃、特に180〜200℃の温度で30分〜5時間、特
に1〜3時間熱処理する方法は本発明範囲の厚さと平均
粒径の関係、添加量のフィルムを得るのに有効である。
また熱可塑性樹脂に不活性粒子を添加せしめる他の方
法として、粒子をエチレングリコール中で熱処理した
後、溶媒を水に置換したスラリーの形で熱可塑性樹脂と
混合し、ベント方式の2軸押出機を用いて混練して熱可
塑性樹脂に練り込む方法も本発明範囲の厚さと平均粒径
の関係、添加量のフィルムを得るのにきわめて有効であ
る。
粒子の添加量を調節する方法としては、上記方法で高
濃度マスターを作っておき、それを製膜時に不活性粒子
を実質的に含有しない熱可塑性樹脂で希釈して粒子の添
加量を調節する方法が有効である。少なくとも2種類の
不活性粒子を熱可塑性樹脂に添加せしめる方法として、
少なくとも2種類の不活性粒子を上記のように予めジオ
ール成分のスラリーの形で分散させこれを所定のジカル
ボン酸成分と重合せしめる方法、または上記のようにそ
れぞれの不活性粒子を含有する高濃度マスターポリマを
作り製膜時に各不活性粒子の添加量を調節する方法のい
ずれを用いることもできる。
かくして、少なくとも2種類の不活性粒子を所定量含
有するペレットを必要に応じて乾燥する。次に、熱可塑
性樹脂Bを主成分とするフィルムの少なくとも片面に熱
可塑性樹脂Aを主成分とするフィルムを積層する方法と
しては次の方法が有効である。
熱可塑性樹脂A、Bを公知の溶融積層用押出機に供給
し、スリット状のダイからシート状に押出し、キャステ
ィングロール上で冷却固化せしめて未延伸フィルムを作
る。すなわち、2または3台の押出し機、2または3層
のマニホールドまたは合流ブロックを用いて、熱可塑性
樹脂A、Bを積層し、口金から2または3層のシートを
押出し、キャスティングロールで冷却して未延伸フィル
ムを作る。この場合、熱可塑性樹脂Aのポリマ流路に、
スタティックミキサー、ギヤポンプを設置する方法は本
発明範囲の厚さと平均粒径の関係、添加量のフィルムを
得るのに有効である。また、熱可塑性樹脂A側の押し出
し機の溶融温度を熱可塑性樹脂B側より10〜40℃高くす
ることが本発明範囲の厚さと平均粒径の関係、添加量、
望ましい範囲の配向状態のフィルムを得るのに有効であ
る。
次にこの未延伸フィルムを二軸延伸し、二軸配向させ
る。延伸方法としては、逐次二軸延伸法または同時二軸
延伸法を用いることができるが、最初に長手方向、次に
幅方向の延伸を行なう逐次二軸延伸法が好ましく、長手
方向の延伸を3段階以上に分けて、総縦延伸倍率を3.0
〜6.5倍で行なう方法が本発明範囲の厚さと平均粒径の
関係、添加量のフィルムを得るのに有効である。ただ
し、熱可塑性樹脂が溶融光学異方性樹脂である場合は長
手方向延伸倍率は1.0〜1.1倍が適切である。長手方向延
伸温度は熱可塑性樹脂の種類によって異なり一概には言
えないが、通常その1段目を50〜130℃とし、2段目以
降はそれより高くすることが本発明範囲の厚さと平均粒
径の関係、添加量、望ましい範囲の配向状態のフィルム
を得るのに有効である。長手方向延伸速度は5,000〜50,
000%/minの範囲が好適である。幅方向の延伸方法とし
てはステンタを用いる方法が一般的であり、延伸倍率は
3.0〜5.0倍の範囲が適当である。延伸速度は1,000〜20,
000%/min、温度は80〜160℃の範囲が好適である。次に
この延伸フィルムを熱処理する。この場合の熱処理温度
は170〜200℃、特に170〜190℃、時間は0.5〜60秒の範
囲が好適である。
[物性の測定方法ならびに効果の評価方法] 本発明の特性値の測定方法並びに効果の評価方法は次
の通りである。
(1)粒子の平均粒径 不活性粒子をエチレングリコールまたは水スラリーと
して遠心沈降式粒度分布測定装置を用いて測定し平均粒
径で示した。
(2)粒径比 個々の粒子の長径の平均値/短径の平均値の比であ
る。
すなわち、下式で求められる。
長径=ΣD1i/N 短径=ΣD2i/N D1i、D2iはそれぞれ個々の粒子の長径(最大径)、短
径(最短径)、Nは総個数である。
(3)粒径の相対標準偏差 個々の粒子径Di、平均径D、粒子総数Nから計算され
る標準偏差σ(={Σ(Di−D)/N}1/2)を平均径
Dで割った値(σ/D)で表わした。
(4)粒子の添加量 熱可塑性樹脂を溶解し粒子を溶解しない溶媒を選択
し、粒子を熱可塑性樹脂から遠心分離し、粒子の全体重
量に対する比率(重量%)をもって粒子添加量とする。
場合によっては赤外分光法の併用も有効である。
(5)結晶化パラメータΔTcg、融解熱 元差走査熱量計を用いて測定した。測定条件は次の通
りである。すなわち、試料10mgを示差走査熱量計にセッ
トし、300℃の温度で5分間溶融した後、液体窒素中に
急冷する。この急冷試料を10℃/minで昇温し、ガラス転
移点Tgを検知する。さらに昇温を続け、ガラス状態から
の結晶化発熱ピーク温度をもって冷結晶化温度Tccとし
た。さらに昇温を続け、融解ピークから融解熱を求め
た。ここでTccとTgの差(Tcc−Tg)を結晶化パラメータ
ΔTcgと定義した。
(6)表面の分子配向(屈折率)、表面の全反射ラマン
結晶化指数 ナトリウムD線(589nm)を光源として、アッベ屈折
率計を用いて測定した。マウント液にはヨウ化メチレン
を用い、25℃、65%RHにて測定した。ポリマの二軸配向
性は長手方向、幅方向、厚さ方向の屈折率をN1、N2、N3
とした時、(N1−N2)の絶対値が0.07以下、かつ、N3/
{(N1+N2)/2}が0.95以下であることをひとつの基準
とできる。また、レーザー型屈折率計を用いて屈折率を
測定してもよい。さらに、この方法では測定が難しい場
合は全反射レーザーラマン法を用いることもできる。レ
ーザー全反射ラマンの測定は、Jobin−Yvon社製Ramanor
U−1000ラマンシステムにより、全反射ラマンスペクト
ルを測定し、例えばポリエチレンテレフタレートの場合
では、1,615cm-1(ベンゼン環の骨格振動)と1,730cm-1
(カルボニル基の伸縮振動)のバンド強度比の偏光測定
比(YY/XX比など。ここでYY:レーザーの偏光方向をYに
してYに対して平行なラマン光検出、XX:レーザーの偏
光方向をXにしてXに対して平行なラマン光検出)が分
子配向と対応することを利用できる。ポリマの二軸配向
性はラマン測定から得られたパラメータを長手方向、幅
方向の屈折率に換算して、その絶対値、差などから判定
できる。またカルボニル基の伸縮振動である1,730cm-1
の半価幅をもって表面の全反射ラマン結晶化指数とし
た。この場合の測定条件は次のとおりである。
光源 アルゴンイオンレーザー(5,145Å) 試料のセッティング フィルム表面を全反射プリズムに圧着させ、レーザー
のプリズムへの入射角(フィルム厚さ方向との角度)は
60°とした。
検出器 PM:RCA31034/Photon Counting System(Hamamatsu C1
230)(supply 1600V) 測定条件 SLIT 1000μm LASER 100mW GATE TIME 1.0sec SCAN SPEED 12cm-1/min SAMPLING INTERVAL 0.2cm-1 REPEAT TIME 6 (7)表面突起の平均高さ 2検出器方式の走査型電子顕微鏡と断面測定装置にお
いてフィルム表面の平坦面の高さを0として走査した時
の突起の高さ測定値を画像処理装置に送り、画像処理装
置上にフィルム表面突起画像を再構築する。また、この
2値化された個々の突起部分の中で最も高い値をその突
起の高さとし、これを個々の突起について求める。この
測定を場所をかえて500回繰返し、測定された全突起に
ついてその高さの平均値を平均高さとした。走査型電子
顕微鏡の倍率は、1,000〜10,000倍の間の値を選択す
る。
(8)ヤング率 JIS−Z−1702に規定された方法にしたがって、イン
ストロンタイプの引っ張り試験機を用いて、25℃、65%
RHにて測定した。
(9)固有粘度[η](単位はdl/g) オルトクロロフェノール中、25℃で測定した溶液粘度
から下記式から計算される値を用いる。すなわち、 ηsp/C=[η]+K[η]2・C ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)−1、Cは溶媒
100mlあたりの溶解ポリマ重量(g/100ml、通常1.2)、
Kはハギンス定数(0.343とする)。また、溶液粘度、
溶媒粘度はオストワルド粘度計を用いて測定した。
(10)耐スクラッチ性 フィルムを幅1/2インチのテープ状にスリットしたも
のをテープ走行性試験機を使用して、ガイドピン(表面
粗度:Raで100nm)上を走行させる(走行速度1,000m/
分、走行回数10パス、巻き付け角:60°、走行張力:65
g)。この時、フィルムに入った傷を顕微鏡で観察し、
幅2.5μm以上の傷がテープ幅あたり2本未満は優、2
本以上10本未満は良、10本以上は不良と判定した。優が
望ましいが、良でも実用的には使用可能である。
(11)耐ダビング性 フィルムに下記組成の磁性塗料をグラビヤロールによ
り塗布し、磁気配向させ、乾燥させる。さらに、小型テ
ストカレンダー装置(スチールロール/ナイロンロー
ル、5段)で、温度:70℃、線圧:200kg/cmでカレンダー
処理した後、70℃、48時間キュアリングする。上記テー
プ原反を1/2インチにスリットし、パンケーキを作成し
た。このパンケーキから長さ250mの長さをVTRカセット
に組み込みVTRカセットテープとした。
(磁性塗料の組成) ・Co含有酸化鉄 :100重量部 ・塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体 :10重量部 ・ポリウレタンエラストマ :10重量部 ・ポリイソシアネート : 5重量部 ・レシチン : 1重量部 ・メチルエチルケトン :75重量部 ・メチルイソブチルケトン :75重量部 ・トルエン :75重量部 ・カーボンブラック : 2重量部 ・ラウリン酸 :1.5重量部 このテープに家庭用VTRを用いてテレビ試験波形発生
器により100%クロマ信号を記録し、その再生信号から
カラービデオノイズ測定器でクロマS/Nを測定しAとし
た。また上記と同じ信号を記録したマスターテープのパ
ンケーキを磁界転写方式のビデオソフト高速プリントシ
ステム(スプリンタ)を用いてAを測定したのと同じ試
料テープ(未記録)のパンケーキへダビングした後のテ
ープのクロマS/Nを上記と同様にして測定し、Bとし
た。このダビングによるクロマS/Nの低下(A−B)が3
dB未満の場合は耐ダビング性:優、3dB以上5dB未満の場
合は良、5dB以上は不良と判定した。優が望ましいが、
良でも実用的には使用可能である。
[実施例] 本発明を実施例に基づいて説明する。
実施例1〜4、比較例1〜4 まず熱可塑性樹脂Aを作る。平均粒径の異なる架橋ポ
リスチレン粒子,コロイダルシリカに起因するシリカ粒
子,または炭酸カルシウム粒子を含有するエチレングリ
コールスラリーを調製し、このエチレングリコールスラ
リーを190℃で2時間熱処理した後、テレフタル酸ジメ
チルとエステル交換反応させ、重縮合し、該粒子を1〜
10重量%含有するポリエチレンテレフタレートのマスタ
ペレットを作った。この時、重縮合時間を調節し固有粘
度を0.65とした。次に、常法により固有粘度0.62の実質
的に不活性粒子を含有しないポリエチレンテレフタレー
トを製造し、熱可塑性樹脂Bとした。これらのポリマを
それぞれ180℃で6時間減圧乾燥(3Torr)した。平均粒
径の異なる不活性粒子を含有する熱可塑性樹脂を混合
し、1種類または2種類の粒子含有量を調整した熱可塑
性樹脂Aを押出機1に供給し290℃で溶融し、さらに熱
可塑性樹脂Bを押出機2に供給し、280℃で溶融し、こ
れらのポリマを合流ブロック(フィードブロック)で合
流積層し、静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃の
キャスティング・ドラムに巻きつけて冷却固化し、2層
構造の未延伸フィルムを作った。この時、口金スリット
間隙/未延伸フィルムの厚さの比を10として未延伸フィ
ルムを作った。また、それぞれの押出機の吐出量を調節
し総厚さ、熱可塑性樹脂A層の厚さを調節した。この未
延伸フィルムを温度85℃にて長手方向に3.6倍延伸し
た。この延伸は2組ずつのロールの周速差で、4段階で
行なった。この一軸延伸フィルムをステンタを用いて延
伸速度2,000%/分で105℃で幅方向に4.0倍延伸し、定
長下で、210℃にて5秒間熱処理し、総厚さ15μm、熱
可塑性樹脂A層厚さ0.02〜3μmの二軸配向積層フィル
ムを得た。これらのフィルムの本発明のパラメータは第
1表に示したとおりであり、本発明のパラメータが範囲
内の場合は耐スクラッチ性、耐ダビング性は第1表に示
したとおり優または良であったが、そうでない場合は耐
スクラッチ性、耐ダビング性を両立するフィルムは得ら
れなかった。
[発明の効果] 本発明は、製法の工夫により、従来得られなかった特
殊な表面形態のフィルムとしたので、摩擦係数と磁気記
録媒体用に用いたときの出力特性を極めて高い次元で両
立できるフィルムが得られるものであり、今後のビデオ
テープの高画質化に有用である。また、特異な表面のた
め耐摩耗性にも優れた苛酷使用にも耐え得るフィルムと
なり、各用途でのフィルム加工速度の増大に対応できる
ものである。本発明フィルムの用途は特に限定されない
が、上述した磁気記録媒体以外にも摩擦係数に関わるハ
ンドリング性と特殊な表面に起因する透明性の良さを利
用した包装用、さらには特殊な表面に起因する電気絶縁
性の良さを利用したコンデンサー用など広く各用途に展
開できるものである。なお、本発明フィルムのうち2層
構造のものは本発明の範囲内の表面形態を有する面が非
機能面(磁気記録媒体用では磁性層を塗布しない面、そ
の他の用途では印刷やその他塗材の塗布などの処理が施
されていない面)として用いることが望ましい。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】異なる平均粒径を有する不活性粒子を少な
    くとも2種類含有する熱可塑性樹脂Aを主成分とするフ
    ィルムAを、熱可塑性樹脂Bを主成分とするフィルムB
    の少なくとも片面に積層してなる二軸配向熱可塑性樹脂
    フィルムの製造方法において、熱可塑性樹脂Aに添加す
    る上記不活性粒子のうち最小の平均粒径をd1とすると
    き、平均粒径d1を有する不活性粒子を熱可塑性樹脂Aに
    対して2〜20重量%添加し、二軸延伸熱処理後の熱可塑
    性樹脂Aを主成分とするフィルムAの厚さtとd1の比t/
    d1が0.1〜5となるように積層することを特徴とする二
    軸配向熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
  2. 【請求項2】熱可塑性樹脂Aに添加する異なる平均粒径
    を有する不活性粒子のそれぞれについて、その粒径比が
    1.0〜1.3である請求項(1)記載の二軸配向熱可塑性樹
    脂フィルムの製造方法。
  3. 【請求項3】熱可塑性樹脂Aに添加する異なる平均粒径
    を有する不活性粒子のそれぞれについて、その粒径の相
    対標準偏差が0.6以下である請求項(1)または(2)
    記載の二軸配向熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
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