JP2566135B2 - 磁気記録媒体 - Google Patents

磁気記録媒体

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JP2566135B2
JP2566135B2 JP61224681A JP22468186A JP2566135B2 JP 2566135 B2 JP2566135 B2 JP 2566135B2 JP 61224681 A JP61224681 A JP 61224681A JP 22468186 A JP22468186 A JP 22468186A JP 2566135 B2 JP2566135 B2 JP 2566135B2
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Description

【発明の詳細な説明】 I 発明の背景 技術分野 本発明は、磁気記録媒体、特に金属薄膜型の磁気記録
媒体に関する。
先行技術とその問題点 ビデオ用、オーディオ用等の磁気記録媒体として、テ
ープ化して巻回したときのコンパクト性から、金属薄膜
型の磁性層を有するものの開発が活発に行われている。
このような金属薄膜型の媒体の磁性層としては、特性
上、基体法線に対し所定の傾斜角にて蒸着を行う、いわ
ゆる斜め蒸着法によって形成したCo系、Co−Ni系等から
なる蒸着膜が好適である。
しかし、このような磁性層は、走行摩擦が大きく、膜
強度が低く、ヘッドタッチも悪く、特に走行耐久性が低
く、くりかえし走行によって出力が低下してしまう。
また、ビデオ用の媒体では、スチルと称される静止画
像モードでの耐久時間が小さい。
さらに、いわゆるトロップアウトも多い。
このような実状から、従来、斜め蒸着膜磁性層のトッ
プコート膜が種々提案されている。
そして、トップコート膜の1例として、炭化水素系の
プラズマ重合膜が知られている(特開昭59−72653号、
同59−154641号、同59−160828号等)。
しかし、通常の方法で得られた炭化水素系のプラズマ
重合膜トップコートでは、耐食性の点で不十分であり、
さらには走行耐久性に劣り再生出力が低下したり、ある
いは強度の点で不十分である等の不都合がある。
また、耐久性や電磁変換特性を向上させるために、強
磁性金属薄膜層を2層以上の多層構成とする旨の提案も
種々行われている(特開昭54−141608号、特公昭56−26
892号、特開昭57−130228号等)。
しかし、現状では、走行性、耐久性、強磁性薄膜強度
が良好でかつ電磁変換特性の面でも不都合の生じない技
術は未だ実現していない。
II 発明の目的 本発明の目的は、このような不都合を解消し、耐食
性、耐久性が良好で、電磁変換特性の良好な金属薄膜型
の磁気記録媒体を提供することにある。
III 発明の開示 このような目的は、以下の本発明によって達成され
る。
すなわち、本発明は、プラスチックフィルム基体上に
Coを主成分とする強磁性金属薄膜層を有し、 この強磁性金属薄膜層が2層以上の層からなる多層構
造を有し、 前記強磁性金属薄膜層被着時の基体法線に対する被着
物質の最小入射角が基体側の最下層設層時は50゜以下、
基体と反対側の最上層設層時は20゜〜90゜であり、 最下層の基体側界面近傍の酸素濃度C2を最上層の基体
と反対側表面近傍の酸素濃度C1で除した値が0.3以下で
あり、 最上層に隣接する層の最上層との界面近傍での酸素濃
度C3を最上層の基体と反対側表面近傍での酸素濃度C1
除した値C3/C1が0.2〜0.92であり、 C1が0.2〜0.7であり、 最上層および全層の平均酸素濃度がそれぞれ0.1〜0.5
であり、 前記強磁性金属薄膜層上にトップコート膜を有し、 このトップコート膜が、炭素およびフッ素または炭
素、フッ素および水素を含有するプラズマ重合膜である
磁気記録媒体である。
IV 発明の具体的構成 以下、本発明の具体的構成について詳細に説明する。
第1図および第2図には本発明の磁気記録媒体の実施例
が示される。
本発明の磁気記録媒体1は、基体2上に下層結晶粒6
を有する強磁性金属薄膜下層部3、上層結晶粒7を有す
る強磁性金属薄膜上層部4を有し、この強磁性金属薄膜
上層部の基体反対側表面にトップコート膜5を有するも
のである。
本発明における磁性層としての強磁性金属薄膜層は少
なくとも2層からなる多層構造を有するものである。そ
して、本発明に用いる強磁性金属薄膜層は、Coを主成分
とし、これにOを含み、さらに必要に応じNiおよび/ま
たはCrが含有される組成を有する。
すなわち、好ましい態様においては、Co単独からなっ
てもよく、CoとNiからなってもよい。Niが含まれる場
合、Co/Niの重量比は、1.5以上であることが好ましい。
さらに、強磁性金属薄膜層中には、Crが含有されてい
てもよい。
このような場合、Cr/CoあるいはCr/(Co+Ni)の重量
比は、0.1以下、特に0.001〜0.1、より好ましくは、0.0
05〜0.05であることが好ましい。
さらに、本発明の強磁性金属薄膜中にはOが含有され
るものである。
強磁性金属薄膜中の層全体の平均酸素量および最上層
における平均酸素量C1 は、原子比、特にO/(Coまたは
Co+Ni)の原子比で、それぞれ0.1〜0.5、好ましくは0.
1〜0.4程度である。
平均酸素量C1 が、0.1未満では耐食性、走行性、磁
性層のクラック、ケズレ等の点で不十分であり、0.5を
こえると表面酸化物層が増大し、ヘッドとのスペーシン
グによる出力の低下等の問題を生じる。
そして、最下層のプラスチックフィルムとの界面近傍
の酸素濃度C2、特にO/(CoまたはCo+Ni)原子比を最上
層のプラスチックフィルムと反対側の表面近傍での酸素
濃度C1、特にO/(CoまたはCo+Ni)原子比で除した値C2
/C1は0.3以下より好ましくは0.15以下である。
この場合、これら酸素濃度は、強磁性金属薄膜をAr等
がイオンミリングないしイオンエッチングしながら、オ
ージェ分光分析、SIMS(2次イオン質量分析)等を行
い、測定することができる。
すなわち、イオンエッチングを行いながらO、Co、Ni
等をカウントし、その膜厚方向のプロファイルを比較す
る。
そしてプラスチックフィルムと反対側の強磁性金属薄
膜表面のO/(CoまたはCo+Ni)をC1とする。また、最下
層については、プラスチックフィルムまでエッチングが
行なわれ、Cがカウントされる直前のO/(CoまたはCo+
Ni)をC2とする。
イオンエッチングおよびオージェ分光分析ないしSIMS
の測定法は常法に従えばよい。
このように最上層表面の酸素濃度を相対的に高くする
ことにより、保磁力Hcが高くなり、また最下層の酸素濃
度を相対的に低くすることにより、最大残留磁束φ
よび角形比SQが高くなり、電磁変換特性がきわめて良好
な磁性層となる。
また、本発明の磁性層としての強磁性金属薄膜層で
は、最上層と隣接する層の最上層との界面近傍の酸素濃
度C3、特にO/(CoまたはCo+Ni)原子比を最上層のプラ
スチックフィルムと反対側の表面近傍での酸素濃度C1
特にO/(CoまたはCo+Ni)原子比で除した値C3/C1は0.2
〜0.92である。
この場合、プラスチックフィルムと反対側の強磁性金
属薄膜表面のO/(CoまたはCo+Ni)C1は前述と同様に測
定することができる。また、最上層に隣接する層の最上
層との界面近傍での酸素濃度C3については、最上層の膜
厚に対応するエッチング時のカウントからO/(Coまたは
Co+Ni)を算出し、これをC3とすればよい。ただ、各層
においては、通常の成膜条件下ではそのフィルム基体反
対面で酸素濃度が最大となる。このため、通常は、イオ
ンエッチングを行いながらOをカウントしたとき、膜内
での極大値をC3とすればよい。
このように最上層表面の酸素濃度C1を相対的に高くす
ることにより、保磁力Hcが高くなり、また最上層の表面
より下の最上層に隣接する層との近傍までの部分の酸素
濃度を上記C1より相対的に低くすることにより、最大残
留磁束φr、および角形比SQが高くなり、電磁変換特性
がきわめて良好な磁性層となる。したがって中心周波数
5MHz程度の比較的磁界の浅い信号は、最上層で有効に保
持されるものとなる。
また、最上層に隣接する層の最上層との界面近傍での
酸素濃度C3を、上記C1との関係が前述のようにC3/C1
0.2〜0.92とすることにより、この部分での保磁力Hcが
高くなり、また最上層に隣接する層の最上層との界面近
傍から下の部分の酸素濃度を上記C3より相対的に低くす
ることにより、最大残留磁束φrおよび、角形比SQが高
くなり、電磁変換特性がきわめて良好な磁性層となる。
したがって、中心周波数0.7MHz程度の比較的磁界の深い
信号は、最上層に隣接する層以下で有効に保持されるも
のとなる。
そして、上記C1とC3との関係が前述のようにC3/C1
0.2〜0.92となるときに、磁性層の電磁変換特性、耐食
性等が最もバランスの良い優れた磁性層となる。
なお、表面近傍のO/(CoまたはCo+Ni)C1は、0.2〜
0.7、好ましくは0.3〜0.6である。
従って、フィルム界面近傍のO′(CoまたはCo+Ni)
C2は、好ましくは0.06〜0.21、より好ましくは0.09〜0.
18である。また、最上層の隣接する層の最上層近傍のO/
(CoまたはCo+Ni)C3は、好ましくは0.07〜0.6、より
好ましくは0.1〜0.5である。
さらに、最上層の層全体でのO/(CoまたはCo+Ni)C1
は、0.1〜0.5、より好ましくは0.1〜0.4である。
また、最下層の層全体でのO/(CoまたはCo+Ni)C2
は、0.1〜0.5、好ましくは0.1〜0.3である。また最上層
に隣接する層全体でのO/(CoまたはCo+Ni)は、0.5以
下より好ましくは0.3以下であることが好ましい。
このとき、電磁変換特性、耐食性、走行耐久性、磁性
膜強度等はきわめて良好となる。
この場合、3層以上の多層構造の場合、それらの各層
の層全体でのO/(CoまたはCo+Ni)は、一般に0.5以
下、好ましくは0.3以下とする。
なお、この場合、強磁性金属薄膜層の各層の表面で
は、酸素が強磁性金属(Co、Ni)と酸化物を形成してい
る。
すなわち、各層の表面から100Å〜2000Å、より好ま
しくは500Å〜1000Åの厚さの範囲には、オージェ分光
分析により、酸化物を示すピークが認められるものであ
る。
本発明では、強磁性金属薄膜層表面とフィルム側界面
との酸素濃度を規制するものであり、また、強磁性金属
薄膜層表面と、最上層に隣接する層の最上層近傍との酸
素濃度を規制するものであり、そのとき本発明所定の効
果が実現するものである。
このため、強磁性金属薄膜の膜厚方向の酸素濃度プロ
ファイルについては、通常、少なくとも最上層と最上層
に隣接する層との界面に酸素分布のピークが存在するも
のである。
なお、通常、強磁性金属薄膜は2層とすればよいが、
必要に応じ3層以上、特に3〜5層とすることもでき
る。
なお、このような強磁性金属薄膜中には、さらに他の
微量成分、特に遷移元素、例えばFe、Mn、V、Zr、Nb、
Ta、Ti、Zn、Mo、W、Cu等が含まれていてもよい。
このような強磁性金属薄膜層は、好ましい態様におい
て、上記したCoを主成分とする柱状結晶粒の集合体から
なる。
この場合、強磁性金属薄膜層の厚さは、総計で0.05〜
0.5μm、好ましくは、0.07〜0.3μmとされる。
そして、このような強磁性金属薄膜層の各層の厚さの
比は特に制限はないが例えば2層構成の場合、上層と下
層の厚さの比は好ましくは0.1〜10程度、より好ましく
は0.2〜0.9、さらに好ましくは0.4〜0.9が好ましい。
そして、柱状の結晶粒は各層の厚さ方向のほぼ全域に
亘る長さをもち、その長手方向は、基体の主面の法線に
対する最小角度が、最上層では20゜〜90゜より好ましく
は20゜〜50゜の範囲、最下層では50゜以下、より好まし
くは0〜40゜の範囲にて傾斜していることが好ましい。
この場合、3層以上の構成における中間に位置する各
層では、柱状結晶粒の基体主面法線に対する傾斜角度
は、通常、最上層と最下層における傾斜角度域内にあれ
ばよく、特に制限はない。
そして、この場合、相隣接する各磁性層の結晶粒の基
体主面法線に対する傾斜の向きは、媒体の長さ方向で同
方向であってよいが、好ましくは相対向する向きである
ことが好ましい。
このような、結晶粒の傾斜の向きを第1図および第2
図を用い模式的に説明する。
第1図および第2図において、磁気記録媒体1は、基
体2上に強磁性金属薄膜下層部3および強磁性金属薄膜
上層部4とを有する。そして、強磁性金属薄膜下層部3
内の下層結晶粒6の傾斜の向き、強磁性金属薄膜上層部
4内の上層結晶粒7の傾斜の向きは第1図では媒体の長
さ方向aで相対向する向きであり、第2図では媒体の長
さ方向aで同方向ある。
本発明では、第1図あるいは第2図のいずれの結晶粒
傾斜を有するものであってよいが、好ましくは、第1図
に示される結晶粒傾斜を有するものが好ましい。
なお、酸素は、表面部の柱状の結晶粒の表面に前記の
とおり化合物の形で存在するものである。
また、強磁性金属薄膜層の酸素の濃度勾配の如何には
特に制限はない。
また、結晶粒の短径は、50〜500Å程度の長さをもつ
ことが好ましい。
このように、強磁性金属薄膜層が多層構成をなすこと
により、柱状結晶粒の長さが小さいものとなるため強磁
性金属薄膜層の膜強度が向上する。また、最上層の柱状
結晶粒が基体主面法線に対し20゜〜90゜の傾きを有し、
特に50゜以上の傾きを有するものがあるため、例えば比
較的浅い磁界を有する中心周波数5MHz程度の信号は最上
層にて有効に保持され得るものとなる。
また、最上層の柱状結晶粒が基体主面法線に対し50゜
以下の傾きを有し、基体に対し立っている状態を呈して
いるため、例えば比較的深い磁界を有する中心周波数0.
75MHz程度の信号は最下層等の下層域にて有効に保持さ
れ得るものとなる。
また、さらに前述のように最上層の酸素濃度を高くす
ることにより、耐摩耗性に優れたCo、Ni、等の酸化物が
最上層に形成されるため、多層構造との相乗効果によ
り、強磁性金属薄膜層の膜強度がより高いものとなる。
本発明の磁気記録媒体に用いられる基体の材質として
は、非磁性プラスチックであれば特に制限はないが、通
常は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン2、
6−ナフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリ
イミド、ポリフェニレンサルファイド、ポルサルフォ
ン、全芳香族ポリエステル、ポリエーテルエーテルケト
ン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミド等を
用いる。
基体の厚さは特に制限はないが、好ましくは8μm以
下、特に5〜7μm程度であることが好ましい。
この厚さが8μmをこえると媒体の小型化、長時間記
録等の目的は達成されない。また、この厚さがあまり薄
くなりすぎると、磁性層を上述のように多層構造として
膜強度を向上させた効果が相殺され、走行性、出力低
下、ヘッド摩耗等の問題が生じる。
そして、本発明の強磁性金属薄膜層の多層構造化によ
る電磁変換特性向上の効果は基板の厚さを薄いものにし
た場合に、より顕著に現われるものであり、例えば2層
構造を例にとれば、基板の厚さ10μmにおいて、強磁性
金属薄膜層を従来の単層構造から本発明の2層構造にす
ることによる電磁変換特性の向上巾は、0.75MHzの低周
波領域の信号で+6(dB)程度、5MHzの高周波の領域の
信号で+6(dB)程度であるが基板の厚さを7μmとし
て場合の向上巾は0.75MHzの低周波領域の信号で+6(d
B)程度で、基板厚10μmの場合と同等であるが、5MHz
の高周波領域の信号では+7.5(dB)程度まで増大す
る。
このように10μm厚の基板に比べ、7μm厚の基板に
おける電磁変換特性の向上が著しいのは、基板厚みを10
μmから7μmにすることにより、基板剛度不足によヘ
ッドタッチが急激に悪化し、5MHz等の高周波領域におい
て、この影響がより大きく、このような場合に本発明の
効果が発現されるものである。
本発明において、磁性層形成はいわゆる斜め蒸着法に
よって形成されることが好ましい。
この場合、基体法線に対する蒸着物質の最小入射角
は、最下層設層時においては50゜以下、最上層設層時に
おいては、20゜〜90゜、また、3層以上の構造の場合に
おける中間に位置する層の設層時においては20゜〜50゜
とすることが好ましい。
最小入射角がそれぞれ前記の入射角からはずれたもの
となると電磁変換特性が低下する。
また、磁性層は一工程で2層以上を連続して設層して
もよいが、通常は角層毎に蒸着工程に流して設層するこ
とが好ましい。このように磁性層の設置を各層毎に分け
ることにより、前述のように基体法線に対する磁性柱状
結晶粒の傾斜の向きが相隣接する各層間で、媒体の長さ
方向で相対向する向きとなる。
このような磁性層構成とすることにより電磁変換特性
は著めて良好となる。
なお、蒸着雰囲気は、通常、アルゴン、ヘリウム、真
空等の不活性雰囲気に、酸素ガスを含む雰囲気とし、10
-5〜100Pa程度の圧力とし、また、蒸着距離、基体搬送
方向、キャンやマスクの構造、配置等は公知の条件と同
様にすればよい。
そして、酸素雰囲気での蒸着により、表面に金属酸化
物の被膜が形成される。なお金属酸化物が形成される酸
素ガス分圧は、実験から容易に求めることができる。
なお、表面に金属酸化物の被膜を形成するには、各種
酸化処理が可能である。
適用できる酸化処理としては、下記のようなものがあ
る。
1)乾式処理 a.エネルギー粒子処理 特願昭58−76640号に記載したように、蒸着の後期
に、イオンガンや中性ガンにより酸素をエネルギー粒子
として磁性層にさしむけるもの。
b.グロー処理 O2、H2O、O2+H2O等とAr、N2等の不活性ガスとを用
い、これをグロー放電してプラズマを生じさせ、このプ
ラズマ中に磁性膜表面をさらすもの。
c.酸化性ガス オゾン、加熱水蒸気等の酸化性ガスを吹きつけるも
の。
d.加熱処理 加熱によって酸化を行うもの。加熱温度は60〜150℃
程度。
2)湿式処理 a.陽極酸化 b.アルカリ処理 c.酸処理 クロム酸塩処理、過マンガン酸塩処理、リン酸塩処理
等を用いる。
d.酸化剤処理 H2O2等を用いる。
本発明におけるトップコート膜はプラズマ重合膜であ
り、この膜は炭素およびフッ素あるいは炭素、フッ素、
水素を含有する薄膜である。
これらの元素を含む薄膜は、通常、操作性の良いこと
から常温で基体のフッ化炭素、例えばテトラフロロメタ
ン、オクタフロロプロパン、オクタフロロシクロブタ
ン、テトラフロロエチレン、ヘキサフロロプロピレン等
やフッ化炭化水素、例えばフロロメタン、ジフロロメタ
ン、トリフロロメタン、ジフロロエタン、テトラフロロ
エタン等の1種以上を原料ガスとして用い、プラズマ重
合によって形成される。
また、さらにこれらに加えて炭化水素、例えばメタ
ン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、エチレン、
プロピレン、ブテン、ブタジエン、アセチレン、メチル
アセチレン等の1種以上を混合させて原料ガスとして用
いることもできる。
また、その他のフッ化物、例えば、フッ化ホウ素、フ
ッ化窒素、フッ化ケイ素等も原料ガスの1成分として上
記ガスと混合して用いることもできる。
またさらに、必要に応じて常温で液体または固体のフ
ロン12,フロン13B1,フロン22等を原料として用いてもよ
い。
また、必要に応じて、原料に窒素、酸素、ホウ素、リ
ン等の微量成分を添加してもよい。
これらの結果、トップコート膜には、ホウ素、窒素、
酸素、リン、ケイ素等が微量含有されていてもよい。
本発明のトップコート膜5の炭素含有量は、30〜80at
%、より好ましくは30〜60at%であることが好ましい。
炭素含有量が80at%をこえると走行摩擦が高くなる。
また30at%未満となると走行耐久性が低下する。
また、トップコート膜5中の水素/フッ素の原子比
は、好ましくは0〜1、より好ましくは0〜0.9であ
る。
この値が1.0をこえると走行摩擦が大きくなる。
本発明のトップコート膜5に炭素およびフッ素が含有
される場合、フッ素/炭素の原子比は0.3〜2であり、
より好ましくは0.5〜1.5であることが好ましい。この原
子比が0.3未満であると、走行摩擦が十分低下しない。
また、この原子比が2をこえると走行回数の増加に伴
い出力が低下する。
またトップコート膜に炭素、フッ素および水素が含有
される場合、炭素/水素の原子比は2〜8であり、より
好ましくは2.5〜5であることが好ましい。この原子比
が2未満であると、耐食性が十分でない。
また、この原子比が8をこえると、耐久性が悪化し、
好ましくない。
また、水素/フッ素の原子比は0.2〜1.0であり、より
好ましくは0.2〜0.9であることが好ましい。
この原子比が0.2未満であると、耐久性が悪化する。
また、1.0をこえると初期摩擦が大きすぎる。
さらに本発明においては、トップコート膜5に含有さ
れるフッ素/炭素の原子比がトップコート膜5の表面方
向にいくにつれて大きくなるように成膜することが好ま
しい。
具体的には、トップコート膜5表面に含有されるフッ
素と炭素の平均原子比F/Cが、トップコート膜5の基体
2側から1/3の位置までの膜中に含有されるフッ素と炭
素の平均原子比F/Cの1.5倍以上、より好ましくは2倍以
上であることが好ましい。
このようなフッ素の濃度分布をもたせる場合、トップ
コート膜は、通常、炭素、フッ素および水素を含有す
る。そして、膜全体の炭素等の含有量は上記したとおり
である。
そして、表面部のフッ素/水素の原子比は1.5〜3.0、
また反対側のフッ素/水素の原子比は1.0〜1.5であり、
その比が1.5以上であることが好ましい。
このようにトップコート膜5表面側をフッ素リッチに
することによって、媒体の耐久性はさらに向上する。
なお、このような膜中のフッ素/炭素の分布は、連続
的でも非連続的であってもよく、これらの製法は、例え
ばプラズマ原料ガスの組成を時間的に制御すればよい。
なお、トップコート膜5のF/Cの元素分析は、SIMS,ES
CAオージェなどの分析方法を用いればよい。SIMSを用い
る場合、通常、Ar等でイオンエッチングを行いながらF
およびCのプロファイルを測定して算出する。SIMSの測
定については、表面科学基礎講座第3巻(1984)表面分
析の基礎と応用P70“SIMおよびLAMMA"の記載に従えばよ
い。
そして、プラズマ重合膜の膜厚は3〜80Å程度であ
る。
この膜厚が80Åをこえるとスペーシングロスが大きく
なり好ましくない。
また3Å未満であると、本発明の実効がなくなる。
なお、後述のカーボン保護膜を磁性層上に設層すると
きには、プラズマ重合膜の膜厚は3〜40Åであることが
好ましい。
膜厚の測定はエリプソメーター等を用いればよい。
さらに、このトップコート膜5と水との接触角は100
〜130゜であり、より好ましくは110〜125゜である。こ
の接触角が100゜未満であると、初期摩擦が大きく、実
用上使用に耐えない。
また、この接触角が130゜をこえるプラズマ重合膜を
つくるのは困難であり、また実用上その必要性がないか
らである。
このような膜厚の制御は、プラズマ重合膜形成時の反
応時間、原料ガス流量等を制御すればよい。
本発明におけるプラズマ重合膜5の形成は、W/(F・
M)[ここに、Wはプラズマ投入電力(Joule/sec)、
Fは原料ガス流量、Mは原料ガス分子量、F・Mの単位
は(Kg/sec)である。]値が107Joule/Kg以上の条件範
囲内で行われる。W/(F・M)値が107未満であると、
表面が緻密なプラズマ重合膜が出来ない。そのため耐食
性に劣り実用に耐えない。なお、W/(F・M)の上限値
は、一般に1015Joule/Kg程度である。
なお、原料ガスを2種以上用いるとき、FおよびM
は、その総和で算入される。
プラズマ重合膜は、原料ガスとしての前述のフッ化炭
素等を用い、このガスの放電プラズマを被処理体に接触
させることにより重合膜を形成するものである。
プラズマ重合の原理について概説すると、気体を低圧
に保ち電場を作用させると、気体中に少量存在する自由
電子は、常圧に比べ分子間距離が非常に大きいため、電
界加速を受け、5〜10eVの運動エネルギー(電子温度)
を獲得する。
この加速電子が原子や分子に衝突すると、原子軌道や
分子軌道を分断し、これらを電子、イオン、中性ラジカ
ルなど、通常の状態では不安定の化学種に解離させる。
解離した電子は再び電界加速を受けて、別の原子や分
子を解離させるが、この連鎖作用で気体はたちまち高度
の電離状態となる。そしてこれは、プラズマガスと呼ば
れている。
気体分子は電子との衝突の機会が少ないのでエネルギ
ーをあまり吸収せず、常温に近い温度に保たれている。
このように、電子の運動エネルギー(電子温度)と、
分子の熱運動(ガス温度)が分離した系は低温プラズマ
と呼ばれ、ここでは化学種が比較的原型を保ったまま重
合等の化成的化学反応を進めうる状況を創出しており、
本発明はこの状況を利用して媒体表面にプラズマ重合膜
を形成しようとするものである。なお低温プラズマを利
用するため、磁性層等への熱影響は全くない。
媒体表面にプラズマ重合膜を形成する装置例が第3図
に示してある。第3図は、周波数可変型の電源を用いた
プラズマ重合装置である。
第3図において、反応容器Rには、処理ガス源21また
は22から処理ガスがそれぞれマスフローコントローラ23
および24を経て供給される。ガス源21または22からから
別々のガスを供給する場合は、混合器25において混合し
て供給する。
処理ガスは、各々1〜250ml/分の流量範囲を取りう
る。
反応容器R内においては、基体上に有機物をとりこん
だ磁性層を有する例えばフィルム状の被処理体がくり出
ロール31からくり出され、巻き取りロール30によって巻
き取られる。この間に磁性層中にとりこまれた有機物の
重合が行われる。
さらに重合処理装置20につてい詳細に説明すると、被
処理体を間に狭んで対向する電極27、57が設けられてお
り、一方の電極27は周波数可変型の電源26に接続され、
他方の電極57は28にて接地されている。
さらに、反応容器R内には、容器内を排気するための
真空系統が配備され、そしてこれは液体窒素トラップ11
1、油回転ポンプ112および真空コントローラ113を含
む。これら真空系統は反応容器内を0.01〜10Torrの真空
度の範囲に維持する。
操作においては、反応容器R内を、まず10-3Torr以下
になるまで排気し、その後処理ガスが所定の流量におい
て容器内に混合状態で供給される。
このとき、反応容器内の真空は0.01〜10Torrの範囲に
管理される。
原料ガスの流量が安定すると、電源がオンにされる。
こうして、被処理体上にプラズマ重合膜が形成される。
なお、キャリアガスとして、Ar、N2、He、H2などを使
用してもよい。
また、印加電流、処理時間等は通常の条件とすればよ
い。
プラズマ発生源としては、高周波放電の他に、マイク
ロ波放電、直流放電、交流放電等いずれでも利用でき
る。
このようなプラスチックフィルムの磁性層が設けられ
ていないの他方の面上には裏地層を介して、あるいは直
接バックコート層が設層されることが好ましい。
裏地層を設層する場合、裏地層はAl、Cu、W、Mo、C
r、Ti等の単一金属ないしこれらを含む合金、あるいは
その酸化物等の薄膜であることが好ましい。
このように形成された裏地層の膜厚は、0.05〜1.5μ
m、とされる。
さらにこのような必要に応じ設けられる裏地層の上に
は、バックコート層が設層される。
バックコート層には顔料および放射線硬化型化合物の
バインダーが含有される。
顔料としては、 1)導電性のあるカーボンブラック、グラファイト、ま
た、 2)無機充填剤としてSIO2、TiO2、Al2O3、Cr2O3、Si
C、CaO、CaCO3、酸化亜鉛、ゲーサイト、αFe2O3、タル
ク、カオリン、CaSO4、窒化ホウ素、フッ化黒鉛、二硫
酸モリブデン、ZnS等があり、中でもCaCO3、カオリン、
ZnO、ゲーサイト、ZnSやカーボンが使用される。
このような無機顔料の使用量は、 1)に関してはバインダー100重量部に対して20〜200
重量部、また 2)に関しては10〜300重量部が適当であり、無機顔
料があまり多くなると、塗膜がもろくなり、かえってド
ロップアウトが多くなるという欠点がある。
なお、顔料の平均粒径は、0.01〜0.3μm程度より好
ましくは0.02〜0.1μmとされる。
上記のバックコート層で用いられる放射線硬化系樹脂
のバインダーは、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアル
コール共重合体(カルボン酸導入のものも含む)、また
はアクリル変性塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコ
ール共重合体(カルボン酸導入のものも含む)およびウ
レタンアクリレート等からなるものが好ましい。
放射線硬化系樹脂については、前記の好ましい組み合
わせのほかに、ラジカル重合性を有する不飽和二重結合
を示すアクリル酸、メタクリル酸あるいはそれらのエス
テル化合物のようなアクリル系二重結合、 ジアリルフタレートのようなアリル系二重結合、 マレイン酸、マレイン酸誘導体等の不飽和結合等の、
放射線照射による架橋あるいは重合する基を熱可塑性樹
脂の分子中に含有または導入した樹脂等を用いることが
できる。
その他、使用可能なバインダー成分としては、単量体
としてアクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド等が
ある。
二重結合のあるバインダーとしては、種々のポリエス
テル、ポリオール、ポリウレタン等をアクリル二重結合
を有する化合物で変性することもできる。さらに必要に
応じて、多価アルコールと多価カルボン酸を配合するこ
とによって、種々の分子量のものもできる。
放射線感応樹脂として上記のものはその一部であり、
これらは混合して用いることもできる。
さらに好ましいのは、 (A)放射線により硬化性をもつ不飽和二重結合を2個
以上有する、分子量5000〜100000のプラスチック状化合
物、 (B)放射線により硬化性をもつ不飽和二重結合を1個
以上有するか、または放射線硬化性を有しない、分子量
3000〜100000のゴム状化合物、および (C)放射線により硬化性をもつ不飽和二重結合を1個
以上有する、分子量200〜3000の化合物を、 (A)20〜70重量%、 (B)20〜80重量%、 (C)10〜40重量%の割合で用いた組み合わせである。
これにより、塗膜の破断強度が上り、塗膜の強化がな
され、バックコート削れが少なく、バックコート層から
磁性層への無機充填剤粉末の転移がないためドロップア
ウトの少ない、かつロール状に巻き取った形での硬化の
際の巻きしまりのない、長さ方向で均一の特性を有する
磁気記録媒体が得られる。
本発明の磁気記録媒体の製造において、有機バインダ
ーが熱硬化型では、製造過程において、バックコート層
の潤滑剤が磁性薄膜に裏型転写し、前述のような不安定
な走行による出力ダウンが発生し、画像が出なくなると
か、あるいは、摩擦レベルが未だ大きく不十分であり、
裏型転写により強磁性薄膜が取れたり、あるいは破壊さ
れるという現象が生じ、好ましくない。
そのため、例えば、磁性層上に設層されるトップコー
トを最初に行うことが考えられるが、操作上、傷つきや
すく不都合なことが多い。
さらに、熱硬化型の場合、硬化時の巻きしまりによる
バックコート面の裏型転移のため、熱硬化中のジャンボ
ロールの内側、外側での電磁変換特性の差が問題とな
る。
これに対して、放射線硬化型樹脂の場合、製造上、連
続硬化が可能であり、硬化時間も短く、上記の裏型転写
がないので、ドロップアウトが防止でき、その上放射線
硬化およびトップコート処理がオンライン上で処理でき
るので、省エネルギー対策、製造時の人員の減少にも役
立ち、コストの低減にもつながる。
特性面では熱硬化時の巻きしまりによるドロップアウ
トの外に、ロール状に巻かれたときの内外径の個所の圧
力のちがいにより、磁気テープの長さ方向の距離による
出力差が生じることもなくなる。
上記の(A)、(B)、(C)の化合物における不飽
和二重結合は、1分子当り(A)は2以上、好ましくは
5以上、(B)は1以上、好ましくは5以上、(C)は
1以上、好ましくは3以上である。
本発明で用いる(A)のプラスチック状化合物は、放
射線によりラジカルを発生し、架橋構造を生じるよう
な、不飽和二重結合を分子鎖中に2個以上含むものなの
であり、これはまた熱可塑性樹脂を放射線感応変性する
ことによっても得ることができる。
放射線硬化性樹脂の具体例としては ラジカル重合性
を有する不飽和二重結合を示すアクリル酸、メタクリル
酸、あるいはそれらのエステル化合物のようなアクリル
系二重結合、ジアクリルフタレートのようなアリル系二
重結合、マレイン酸、マレイン酸誘導体等の不飽和結合
等の放射線照射による架橋あるいは重合乾燥する基を、
熱可塑性樹脂の分子中に含有または導入した樹脂であ
り、その他放射線照射により架橋重合する不飽和二重結
合を有する化合物で、分子料が5000〜100000のもの、好
ましくは10000〜80000のものであれば用いることができ
る。
放射線照射による架橋あるいは重合乾燥する基を熱可
塑性樹脂の分子中に含有する樹脂としては、次のような
不飽和ポリエステル樹脂がある。
分子鎖中に放射線硬化性不飽和二重結合を含有するポ
リエステル化合物、例えば下記(2)の多塩基酸と多価
アルコールのエステル結合からなる飽和ポリエステル樹
脂で、多塩基酸の一部をマレイン酸とした放射線硬化性
不飽和二重結合を含有する不飽和ポリエステル樹脂を挙
げることができる。
放射線硬化性不飽和ポリエステル樹脂は、多塩基酸成
分1種以上と、多価アルコール成分1種以上に、マレイ
ン酸、フマル酸等を加え、常法すなわち触媒の存在下
で、180〜200℃、窒素雰囲気下、脱水あるいは脱アルコ
ール反応の後、240〜280℃まで昇温し、0.5〜1mmHgの減
圧下、縮合反応により得ることができる。
マレイン酸やフマル酸等の含有量は、製造時の架橋、
放射線硬化性等から酸成分中1〜40モル%、好ましくは
10〜30モル%である。
放射線硬化性樹脂に変性できる熱可塑性樹脂の例とし
ては、次のようなものを挙げることができる。
(1)塩化ビニール系共重合体 塩化ビニールー−酢酸ビニール−ビニールアルコール
共重合体、塩化ビニール−ビニールアルコール共重合
体、塩化ビニール−ビニールアルコール−プロピオン酸
ビニルー共重合体、塩化ビニール−酢酸ビニール−マレ
イン酸共重合体、塩化ビニール−酢酸ビニール−末端OH
側鎖アルキル基共重合体、たとえばUCC社製VROH,VYNC,V
YBGX,VERR,VYES,VMCA,VAGH等が挙げられ、このものに後
述の手法により、アクリル系二重結合、マレイン酸系二
重結合、アリル系二重結合を導入して、放射線感応変性
を行う。
(2)飽和ポリエステル樹脂 フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、
アジピン酸、セバシン酸、のような飽和多塩基酸と、エ
チレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリ
ン、トリメチロールプロパン、1,2プロピレングリコー
ル、1,3ブタンジオール、ジプロピレングリコール、1,4
ブタンジオール、1,6ヘキサンジオール、ペンタエリス
リット、ソルビトール、グリセリン、ネオペンチルグリ
コール、1,4シクロヘキサンジメタノールのような多価
アルコールとのエステル結合により得られる飽和ポリエ
ステル樹脂、またはこれらのポリエステル樹脂をSO3Na
等で変性した樹脂(例えばバイロン53S)が例として挙
げられ、これらも同様にして放射線感応変性を行う。
(3)ポリビニルアルコール系樹脂 ポリビニルアルコール、ブチラール樹脂、アセタール
樹脂、ホルマール樹脂およびこれらの成分の共重合体
で、これら樹脂中に含まれる水酸基に対し、後述の手法
により放射線感応変性を行う。
(4)エポキシ系樹脂、フェノキシ系樹脂 ビスフェノールAとエプクロルヒドリン、メチルエピ
クロルヒドリンの反応によるエポキシ樹脂、例えばシェ
ル化学製(エピコート152,154,828,1001,1004,1007)、
ダウケミカル製(DEN431,DER732,DER511,DER331)、大
日本インキ社製(エピクロン400,800)、さらに上記エ
ポキシの高重合度樹脂であるUCC社製フェノキシ樹脂(P
KHA,PKHC,PKHH)、臭素化ビスフェノールAとエピクロ
ルヒドリンの共重合体、大日本インキ化学工業製(エピ
クロン145,152,153,1120)等がある。
これら樹脂中に含まれるエポキシ基を利用して、放射
線感応変性を行う。
(5)繊維素誘導体 各種のものが用いられるが、特に効果的なものは、硝
化綿、セルローズアセトブチレート、エチルセルロー
ズ、ブチルセルローズ、アセチルセルローズ等が好適で
ある。
樹脂中の水酸基を利用して後述の方法により放射線感
応変性を行う。
その他、放射線感応変性に用いることのできる樹脂と
しては、多官能ポリエステル樹脂、ポリエーテルエステ
ル樹脂、ポリビニルポロリドン樹脂および誘導体(PVP
オレフィン共重合体)、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹
脂、フェノール樹脂、スピロアセタール樹脂、水酸基を
含有するアクリルエステル、およびメタクリエステルを
重合成分として、少なくとも1種含むアクリル系樹脂等
も有効である。
本発明で用いる(B)の高分子化合物は、熱可塑性エ
ラストラーもしくはプレポリマー、またはこれらを放射
線感応変性したものであり、後者の場合は、より効果的
である。
以下にエラストマーもしくはプレポリマーの例を挙げ
る。
(1)ポリウレタンエラストマーもしくはプレポリマー ウレタン化合物の例としては、イソシアネートとし
て、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジ
イソシアネート、1,3−キシレンジイソシアネート、1,4
−キシレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソ
シアネート、m−フェニレンジイソシアネート、3,3−
ジメチル−4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、
4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3−ジメチ
ルビフェニレンジイソシアネート、4,4−ビフェニレン
ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、
イソフォロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタ
ンジイソシアネート、デスモジュールL、デスモジュー
ルN等の各種多価イソシアネートと、 線状飽和ポリエステル(エチレングリコール、ジエチ
レングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパ
ン、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ペ
ンタエリスリット、ソルビトール、ネオペンチルグリコ
ール、1,4−シクロヘキサンジメチノールのような多価
アルコールと、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル
酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸のような飽和多
塩基酸との縮重合によるもの)、 線状飽和ポリエーテル(ポリエチレングリコール、ポ
リプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコー
ル)やカプロラクタム、ヒドロキシル含有アクリル酸エ
ステル、ヒドロキシ含有メタクリル酸エステル等の各種
ポリエステル類の縮合物よりなるポリウレタンエラスト
マー、プレポリマーが有効である。
これらのウレタンエラストマーの末端のイソシアネー
ト基または水酸基と、アクリル系二重結合またはアリル
系二重結合を有する単量体とを反応させることにより、
放射線感応性に変性することは非常に効果的である。
(2)アクリロニトリル−ブタジエン共重合エラストマ
ー シンクレアペトロケミカル社製ポリBDリタイッドレジ
ンとして市販されている末端水酸基のあるアクリロニト
リルブタジエン共重合体プレポリマー、あるいは日本ゼ
オン社製ハイカー1432J等のエラストマーは、特にブタ
ジエン中の二重結合が放射線によりラジカルを生じ、架
橋および重合させるエラストマー成分として適する。
(3)ポリブタジエンエラストマー シンクレアペトロケミカル社製ポリBDリタイッドレジ
ンR−15等の低分子量末端水酸基を有するプレポリマー
が、特に熱可塑性との相溶性の点で好適である。
R−15プレポリマーにおいては、分子末端が水酸基と
なっているため、分子末端にアクリル系不飽和二重結合
を付加することにより放射線感応を高めることが可能で
あり、バインダーとしてさらに有利となる。
また、ポリブタジエンの環化物、日本合成ゴム製CBR
−M901も熱可塑性樹脂との組合わせにより、すぐれた性
質を有している。
その他、熱可塑性エラストマーおよびそのプレポリマ
ーの系で好適なものとしては、スチレン−ブタジエンゴ
ム、塩化ゴム、アクリルゴム、イソプレンゴム、および
その環化物(日本合成ゴム製CIR701)があり、エポキシ
変性ゴム、内部可塑化飽和線状ポリエステル(東洋紡バ
イロン#300)等のエラストマーも下記に述べる放射線
感応変性処理を施すことにより有効に利用できる。
本発明で用いられる(C)放射線硬化性不飽和二重結
合を有する化合物としては、 スチレン、エチルアクリレート、エチレングリコール
ジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレー
ト、ジエチレングリコールアクリレート、ジエチレング
リコールジメタクリレート、1,6−ヘキサングリコール
ジアクリレート、1,6−ヘキサングリコールジメタクリ
レート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、
多官能オリゴエステルアクリレート(アロニックスM−
7100、東亜合成)、ウレタンエラストマー(ニッポラン
4040)のアクリル変性体、あるいはこれらのものにCOOH
等の官能基が導入されたもの等が挙げられる。
高分子には、放射線照射により崩壊するものと分子間
に架橋を起こすものが知られている。
分子間に架橋を起すものとしては、ピリエチレン、ポ
リプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステ
ル、ポリアクリルアミド、ポリ塩化ビニル、ポリエステ
ル、、ポリビニルピロリドンゴム、ポリビニルアルコー
ル、ポリアクロレンがある。
このような架橋型ポリマーであれば、上記のような変
性を特に施さなくても、架橋反応が起こるので、前記変
性体の他に、これらの樹脂はそのまま放射線架橋用バッ
クコート樹脂として使用可能である。
さらにまた、この方法によれば溶剤を使用しない無溶
剤型の樹脂であっても、短時間で硬化することができる
ので、このような樹脂をバックコート用として用いるこ
とができる。
本発明に用いる放射線硬化性樹脂組成物の、特に好ま
しい組合わせとしては、 (A)の化合物が一部ケン化した塩化ビニール−酢酸
ビニール共重合体、カルボン酸が導入された塩化ビニー
ル−酢酸ビニール共重合体、フェノキシ樹脂にポリイソ
シアネート化合物を反応させて得られたイソシアネート
基を有する化合物に、イソシアネート基との反応性を有
する官能基をもつアクリル化合物、あるいはメタクリル
化合物を反応させてなる化合物であり、 (B)の化合物がポリオールにイソシアネート化合物
を反応させて得られた、イソシアネート化合物またはポ
リオール(ポリウレタンエラストマー)に、反応性を有
する官能基をもつアクリル化合物あるいはメタクリル化
合物を反応させてなる化合物であり、 (C)が多官能(メタ)クリレートモノマー、オリゴ
エステルアクリレート、または(B)の低分子量化合物
というものである。
このようなバックコート層の膜厚は0.2〜2.5μmであ
り、より好ましくは0.3〜1.5μm程度とされる。膜厚が
0.2μm未満であると充分な走行安定性が得られなくな
り、また2.5μmをこえるとバックコート層のケズレが
発生するからである。
なお、バークコート層には、上述したような顔料、有
機バインダーの他に、必要に応じで潤滑剤等の種々の公
知の添加剤を含有させてもよい。
塗布溶剤としては、MEK、シクロヘキサノン、MIBK等
のケトン系、IPA等のアルコール系、トルエン等の芳香
族系、ジクロロエタン等のハロゲン系などが用いられ
る。
使用に際しては、これらの1種類を単独で用いたり、
2種類以上を混合して用いたり、いずれでもよい。
潤滑剤としては(分散剤をも含めて)、従来この種の
バックコート層に用いられる種類のものはいずれも用い
ることができるが、 カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン
酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン
酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアロ
ール酸等の炭素数12以上の脂肪酸(RCOOH、Rは炭素数1
1以上のアルキル基);前記の脂肪酸のアルカリ金属(L
i,Na,K等)またはアルカリ土類金属(Mg,Ca,Ba等)から
なる金属石鹸;レシチン等が使用される。
この他に、炭素数12以上の高級アルコール、およびこ
れらの硫酸エステル、界面活性剤、チタンカップリング
剤、シランカップリング剤等も使用可能である。
これらの潤滑剤(分散剤)はバインダー100重量部に
対して1〜20重量部の範囲で添加される。
潤滑剤としては、上記の他にシリコンオイル、ブラフ
ァイト、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、炭素
数12〜16個の一塩基性脂肪酸と炭素数3〜12個の一価の
アルコールからなる脂肪酸エステル類、炭素数17個以上
の一塩基性脂肪酸とこの脂肪酸の炭素数と合計して、炭
素数が21〜23個よりなる一価のアルコールとからなる脂
肪酸エステル等が使用される。
これらの潤滑剤はバインダー100重量部に対して0.2〜
20重量部の範囲で添加される。
また、その他の添加剤としては、この種のバックコー
トに用いるものは何にでも用いることができるが、例え
ば、帯電防止剤として、 サポニンなどの天然界面活性剤; アルキレンオキサイド系、グリセリン系、グリシドー
ル系などのノニオン界面活性剤; 高級アルキルアミン類、第4級アンモニウム塩類、ピ
リジンその他の複素環類、ホスホニウムまたはスルホニ
ウム類などのカチオン界面活性剤; カルボン酸、スルホン酸、リン酸、硫酸エステル基、
リン酸エステル基等の酸性基を含むアニオン界面活性
剤; アミノ酸類、アミノスルホン酸類、アミノアルコール
の硫酸またはリン酸エステル類等の両性活性剤などが使
用される。
また、バックコート層あるいは後述するトップコート
層に含まれる潤滑剤、酸化防止剤等としては放射線硬化
型のものが好ましい。
このような場合、その架橋に使用する活性エネルギー
線としては、放射線加速器を線源とした電子線、Co60を
線源としたγ−線、Sr90を線源としたβ−線、X線発生
機を線源としたX線、あるいは紫外線が使用される。
特に照射線源としては、吸収線量の制御、製造工程ラ
インへの導入、電離放射線の遮断等の見地から、放射線
加熱器により放射線を使用する方法が有利である。
上記のバックコート層、および下記のトップコート層
を硬化する際に使用する放射線特性としては、透過力の
面から加速電圧100〜750Kv、好ましくは150〜300Kvの放
射線加速器を用い、吸収線量を0.5〜20メガラッドにな
るように照射するのが好都合である。
上記の放射線硬化に際しては、米国エナージーサイエ
ンス社にて製造されている低線量タイプの放射線加熱器
(エレクトロカーテンシステム)等がテープコーティン
グ加工ラインへの導入、加速器内部の2次X線の遮断等
に極めて有利である。
また、従来より放射線加速材として広く活用されてい
ることろのファンデグラフ型加速器を使用してもよい。
また、放射線架橋に際しては、N2ガス、Heガス等の不
活性ガス気流中で放射線をバックコート層、トップコー
ト層に照射することが重要であり、空気中で放射線を照
射することは、バインダー成分の架橋に際し、放射線照
射による生じたO3等の影響でポリマー中に生じたラジカ
ルが有利に架橋反応に働くことを阻害するので、極めて
不利である。
したがって、活性エネルギー線を照射する部分の雰囲
気は、特に酸素濃度が最大で5%であるN2、He、CO2
の不活性ガス雰囲気に保つことが重要となる。
また、バックコート層が設けられる基体ないし裏地層
の表面には、接着強度を向上させる目的でプラズマ処理
を施すことが好ましい。このようなプラズマ処理は通
常、無機ガスを処理ガスとして行われ、これらの処理ガ
スの中では特にO、N、Hとを含む処理ガスを用いるこ
が好ましい。
プラズマ処理の周波数については特に制限はない。
このようなプラズマ処理によって裏地層とバックコー
ト層の接着強度は格段と向上する。
なお、裏地層を設ける前にプラスチックフィルム上に
プラズマ処理を施すこともできる。
本発明の磁気記録媒体の表面には、微細な突起が所定
の密度で設けられてもよい。
微細な突起は、30〜300Å、より好ましくは50〜250Å
の高さを有するものである。
すなわち、突起は、光学顕微鏡で観察でき、かつ触針
型表面粗さ計で測定できるものではなく、走査型電子顕
微鏡にて観察できる程度のものである。
突起高さが300Åをこえ、光学顕微鏡にて観察できる
ものとなると、電磁変換特性の劣化と、走行安定性の低
下をもたらす。
また、30Å未満となると、物性の向上の実効がない。
そして、その密度は1mm2あたり平均105個以上、より
好ましくは105〜109個、特に106〜108個である。
突起密度が105個/mm2未満となると、ノイズが増大
し、スチル特性が低下する等物性の低下をきたし、実用
に耐えない。
また、109個/mm2をこえると、物性上の効果が少なく
なってしまう。
なお、突起径は、一般に200〜1000Å程度とする。
このような突起を設けるには、通常、基体上に微粒子
を配設すればよい。微粒子径は、30〜1000Åにすればよ
く、これにより微粒子径に対応した微細突起が形成され
る。
用いる微粒子としては、通常、コロイド粒子として知
られているものであって、例えばSiO2(コロイダルシリ
カ)、Al2O3(アルミナゾル)、MgO、Tio2、ZnO、Fe
2O3、ジルコニア、CdO、NiO、CaWO4、CaCO3、BaCO3、Co
CO3、BaTiO3、Ti(チタンブラック)、Au、Ag、Cu、N
i、Fe、各種ヒドロゾルや、樹脂粒子等が使用可能であ
る。この場合、特に無機物質を用いるのが好ましい。
このような微粒子は、各種溶媒を用いて塗布液とし、
これを基体上に塗布、乾燥してもよく、あるいは塗布液
中に各種水性エマルジョン等の樹脂分を添加したものを
塗布、乾燥してもよい。
また、樹脂分を用いる場合、これら微粒子にもとずく
微細突起に重畳してゆるやかな突起を設けることができ
るが、通常はこのようにする必要はない。
もし必要であるならば、強磁性金属薄膜層の最上層と
最下層との間に非磁性金属薄膜層を介在させてもよい。
なお、本発明の磁気記録媒体は、磁性薄膜層の各層の
間あるいは磁性薄膜層と基体との間に中間プラズマ重合
膜を有していてもよい。
この場合の中間プラズマ重合膜は、炭素および水素を
含む薄膜である。
原料ガスとしては、通常、操作性の良いことから、常
温で気体のメタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタ
ン、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン、アセ
チレン、メチルアセチレン、その他の飽和ないし不飽和
の炭化水素の1種以上を用いるが、必要に応じて常温で
液体の炭化水素を原料としてプラズマ重合によって形成
させてもよい。
このような炭化水素の1種以上に、H2、O2、O3、H
2O、N2、No、N2O、NO2などのNoX、NH3、Co、Co2等の1
種以上を加えたものを原料ガスとして用いても好適であ
る。
さらに必要に応じて、原料にSi、B、P、S等のソー
スを微量成分として添加することもできる。
このような原料を用いて形成されるプラズマ重合膜7
1、75の膜厚はそれぞれ3〜80Åである。
この膜厚が80Åをこえるとスペートングロスなどが大
きくなり好ましくない。
また、3Å未満であると、本発明の実効がなくなる。
このような中間プラズマ重合膜の設層は、上述のトッ
プコート膜と同様の方法に従えばよい。
また、基体と強磁性金属薄膜層との間には、必要に応
じ、公知の各種下地層を介在させることもできる。
V 発明の具体的作用効果 本発明によれば、磁性層が2層以上の層構成をなすこ
とにより、磁性柱状結晶粒の長さが小さいものとなるた
め磁性層の膜強度が向上する。このため、走行安定性が
きわめて高く、また、走行による磁性層のクラックや磁
性面のケズレの発生がきわめて少なく、ヘッド摩耗量、
ドロップアウトの発生もきわめて少ないものとなる。
また、最上層の柱状結晶粒が基体主面法線に対し、20
゜〜90゜の傾きを有し、特に50゜以上の傾きを有するも
のがあり、同時に最下層の酸素濃度C2と最上層の酸素濃
度C1との比C2/C1が0.3以下であり、さらに最上層に隣接
する層の最上層界面近傍の酸素濃度C3と最上層の濃度C1
との比がC3/C1が0.1〜3.0であると、最上層では保磁力H
cが相対的に高くなり、比較的浅い磁界を有する中心周
波数が5MHz程度の信号を有効に保持し、かつ分解能が良
好なものとなる。
さらに、最下層の柱状結晶粒が基本主面法線に対して
50゜以下の傾きを有し、基体に対し立っている状態を呈
すると、また、同時に、最下層では最大残留磁束φr、
角形比が高く、さらに、最上層に隣接する層の最上層界
面近傍では、保磁力Hcのピークが存在しているため、比
較的深い磁界を有する中心周波数0.75MHz程度の信号を
有効に保持するものである。
また、本発明によれば、媒体表面に所定の組成成分を
含有するプラズマ重合膜からなるトップコート膜を有す
る。
そのため、得られた媒体は、耐久性、耐摩耗性、耐候
性、耐食性等に優れヘッドへの吸着がなく実用に際して
きわめて高い信頼性を有する。
VI 発明の具体的実施例 以下、本発明の具体的実施例を示し、本発明をさらに
詳細に説明する。
実施例1 下記表1に示す厚さのポリエステル(PET)フィルム
を円筒状、冷却キャンの周面に沿わせて移動させ、O2
Ar(容積比1:1)を毎分800ccの速さで流し真空度を1.0
×10-4Torrとしたチャンバー内で、Co80、Ni20(重量
比)の合金を溶融し、入射角を表1に示す入射角とし
て、斜め蒸着により第1図に示されるCo−Ni−Oの2層
薄膜を形成した。
また、比較として、入射角30〜90゜の部分のみ斜め蒸
着し膜厚0.15μmのCo−Ni−Oの単層薄膜を形成した。
酸素は下層と上層との界面およびベースと反対側の表
面に多く偏在していた。また、ベースの反対側の表面は
ほぼ酸化物のみで覆われていた。
Hc=1000Oe。膜中の平均酸素量はCoとNiに対する原子
で40%であった。
表1にはArにてイオンエッチングを行ないながら、オ
ージェ分光分析を行なって得たO/(CoまたはCo+Ni)原
子比のうち、C1(表面)、C1 (上層平均)、C2(下層
の基体との界面)、C2 (下層平均)、C3(下層の上層
との界面近傍)が併記される。
この上に下記に示される条件でプラズマ重合膜のトッ
プコート膜5を成膜した。
すなわち、第3図に示されるごとく、上記被処理体を
真空チャンバ中に入れて、一担10-3Torrの真空に引い
た。そしてこの中に下記表1に示される所定の原料ガス
を導入し、その後、ガス圧0.05Torrに保ちながら、13.5
6MHzの高周波電圧をかけてプラズマを発生させ所定のプ
ラズマ重合膜を有する種々のサンプルを作製した。
これらトップコート層の元素分析は、アルゴンでトッ
プコート層をイオンエッチングしながらSIMSで測定し
た。
なお、サンプルNo18は、磁性層の上層と下層との間に
も下記条件にてプラズマ重合膜を成膜した。
原料ガス:CH4 W/F・M(Joule/Kg):5×108 膜厚(Å):10 C/H:2.0 このフィルム裏面をプラズマ処理した後、下記に示す
ようなバックコート層を設層した。なお、プラズマ処理
条件は、処理ガスをO2ガスとし、ガス流量100ml/分、真
空度0.5Torr、電源50KHz、200W、フィルム走行速度30m/
分とした。
バックコート層 重量部 カーボンブラック 7 SiO2 2 アクリル変性塩化ビニル−酢酸ビニル −ビニルアルコール共重合体 30 アクリル変性ポリウレタンエラストマー 10 アクリルエステルオリゴマー 4 分散助剤 0.4 上記混合物をボールミル中5時間分散させ、プラズマ
処理が施された裏地層上に塗布し、エレクトロカーテン
タイプ電子線加速装置を用いて加速電圧105KeV、電極電
流10mA、吸収線量5Mrad、N2ガス中で電子線を照射し、
厚み0.5μmのバックコート層を形成した。
このように作製したサンプルにつき下記の測定を行っ
た。なお、媒体走行方向と下層の基体法線に対する磁性
結晶粒の傾きの方向を同一方向とした。
(1)スチル耐久性 温度0℃の条件下で出力が5dB低下するまでの時間を
求めた。
使用デッキ:SONY A−300(スチル解除機構をはずして使
用した) ヘッド:スパッタ センダスト (2)電磁変換特性 中心周波数0.75MHzおよび5MHzの出力を測定し、サン
プルNo.17の出力を0dBとした時の値を求めた。
使用デッキ:SONY A−300 ヘッド:スパッタ センダスト モード:SPモード また、これらの出力の高低は、保存後の出力に影響を
与える。そこで、60℃、90%にて5日間保存した後の5M
Hzの出力を測定した。
(3)走行摩擦 20℃、相対湿度60%にて測定。
結果を表2に示す。
実施例2 ベース厚みおよび磁性層の上層厚みと下層厚みの比を
表3に示すものとした他は、実施例1と同様の方法によ
り磁性層を形成し、実施例1と同様のバックコート層、
トップコート層を用いて表3に示されるサンプルを作製
した。(サンプルNo.21〜29)。
このように作製した各サンプルについて、実施例1と
同様の測定を行なった。なお、電磁変換特性は、サンプ
ルNo.29の出力を0dBとした時の値を求めた。
結果を表4に示す。
なお、サンプルNo.27(ベース厚7μm、磁性層構
成:単層)の出力に対するサンプルNo.21〜25(ベース
厚7μm、磁性層構成:2層)の出力の向上巾を表4の
( )内に記載した。
表1〜表4に示される結果より、本発明の効果は明か
である。
すなわち、各測定項目のすべてにおいて良好な値が得
られるのは、本発明の磁性層構成およびプラズマ重合膜
のトップコート層を有するサンプル(No1、2、5、1
1)であることが明かである。
また、ベース厚8μm以下では、上層厚/下層厚が0.
2〜0.9であると、特に5MHzの出力および耐久性のきわめ
て高い向上がみられ(サンプルNo、21、24)5MHz出力の
点で実用に耐えないベース厚のうすいものでも、十分実
用可能な電磁変換特性、耐久性を示すことがわかる。
実施例3 基体の磁性層形成面側表面にコロイダルシリカを塗布
し、微小突起を有する基体を得た。
この場合、突起高さ:250Å、突起密度:5×107/mm2
あった。
この基体を用いて、実施例1および実施例2と同様の
テストを行った結果、高温走行時のヘッドへの付着物量
が30〜40%減少した。
実施例4 2層構造の磁性層の層間に他の中間プラズマ重合膜を
形成した。
この中間プラズマ重合膜の形成は、被形成体を真空チ
ャンバ中に入れて、一担10-3Torrの真空に引いた後、ガ
ス状炭化水素としてCH4、キャリアガスとしてArを1:1で
導入し、ガス厚0.1Torrに保ちながら500W,13.56MHzの高
周波電圧をかけてプラズマを発生させ、プラズマ重合膜
を形成した。
膜厚は25Åであった。
また、W/F・Mは5×108、C/H比は2であった。
上記の中間プラズマ重合膜を設けた以外は、実施例1
および実施例2と同様のテストを行った結果、破断強度
が20〜30%向上した。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の磁気記録媒体の1実施例の媒体方向
に平行な断面の模式図である。 第2図は、本発明の磁気記録媒体の他の実施例の媒体方
向に平行な断面の模式図である。 第3図はプラズマ処理装置の概略図である。 符号の説明 1……磁気記録媒体、 2……基体、 3……強磁性金属薄膜下層部、 4……強磁性金属薄膜上層部、 5……トップコート膜、 6……下層結晶粒、 7……上層結晶粒、 20……重合処理装置、 21、22……処理ガス源、 23、24……マスフローコントローラ、 25……混合器、 26……直流、交流および周波数可変型電源、 27、57……電極、 30……巻き取りロール、 31……くり出しロール、 111……液体窒素トラップ、 112……油回転ポンプ、
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高井 充 東京都中央区日本橋1丁目13番1号 テ ィーディーケイ株式会社内 (72)発明者 黒瀬 茂夫 東京都中央区日本橋1丁目13番1号 テ ィーディーケイ株式会社内 (56)参考文献 特開 昭57−98133(JP,A) 特開 昭61−145722(JP,A) 特開 昭61−115232(JP,A)

Claims (11)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】プラスチックフィルム基体上にCoを主成分
    とする強磁性金属薄膜層を有し、 この強磁性金属薄膜層が2層以上の層からなる多層構造
    を有し、 前記強磁性金属薄膜層被着時の基体法線に対する被着物
    質の最小入射角が基体側の最下層設層時は50゜以下、基
    体と反対側の最上層設層時は20゜〜90゜であり、 最下層の基体側界面近傍の酸素濃度C2を最上層の基体と
    反対側表面近傍の酸素濃度C1で除した値が0.3以下であ
    り、 最上層に隣接する層の最上層との界面近傍での酸素濃度
    C3を最上層の基体と反対側表面近傍での酸素濃度C1で除
    した値C3/C1が0.2〜0.92であり、 C1が0.2〜0.7であり、 最上層および全層の平均酸素濃度がそれぞれ0.1〜0.5で
    あり、 前記強磁性金属薄膜層上にトップコート膜を有し、 このトップコート膜が、炭素およびフッ素または炭素、
    フッ素および水素を含有するプラズマ重合膜である磁気
    記録媒体。
  2. 【請求項2】前記強磁性金属薄膜層が2層構造を有する
    特許請求の範囲第1項の磁気記録媒体。
  3. 【請求項3】前記トップコートの炭素含有率が30〜80at
    %である特許請求の範囲第1項または第2項の磁気記録
    媒体。
  4. 【請求項4】前記トップコート膜の水素/フッ素の原子
    比が1.0以下である特許請求の範囲第1項ないし第3項
    のいずれかの磁気記録媒体。
  5. 【請求項5】前記トップコート膜が炭素およびフッ素を
    含有し、フッ素/炭素の原子比が0.3〜2.0である特許請
    求の範囲第1項ないし第4項のいずれかの磁気記録媒
    体。
  6. 【請求項6】前記トップコート膜が炭素、フッ素および
    水素を含有し、炭素/水素および水素/フッ素の原子比
    が、それぞれ2〜8および0.2〜1.0である特許請求の範
    囲第1項ないし第4項のいずれかの磁気記録媒体。
  7. 【請求項7】前記プラズマ重合膜の膜厚が3〜80Åであ
    る特許請求の範囲第1項ないし第6項のいずれかの磁気
    記録媒体。
  8. 【請求項8】前記トップコート膜表面で測定されるフッ
    素と炭素の平均原子比F/Cが、トップコート膜の基体側
    から1/3の位置で測定されるフッ素と炭素の平均原子比F
    /Cの1.5倍以上である特許請求の範囲第1項ないし第7
    項のいずれかの磁気記録媒体。
  9. 【請求項9】前記トップコート膜の水との接触角が100
    〜130゜である特許請求の範囲第1項ないし第8項のい
    ずれかの磁気記録媒体。
  10. 【請求項10】前記プラズマ重合膜の形成がW/(F・
    M)[ここにWはプラズマ投入電力(Joule/sec)、F
    は原料ガス流量、Mは原料ガス分子量、F・M単位は
    (Kg/sec)である]が107Joule/Kg以上の条件で行われ
    る特許請求の範囲第1項ないし第9項のいずれかの磁気
    記録媒体。
  11. 【請求項11】前記強磁性金属薄膜層の最下層と基体と
    の間あるいは、各層の間のいずれかに炭素、または炭素
    と水素、窒素および酸素のうちの少なくとも1種とを含
    む中間プラズマ重合膜を有する特許請求の範囲第1項な
    いし第10項のいずれかの磁気記録媒体。
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