JP2564620B2 - シワの発生しない表皮一体成型品及びその製造方法 - Google Patents

シワの発生しない表皮一体成型品及びその製造方法

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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明はオフィス・家具用シートクッション、自動
車用シートクッション、二輪車用シートクッション、ヘ
ッドレスト、アームレスト等の表皮一体成型品におい
て、特に製品のコーナー端末部等の表皮材表面に生じる
シワを可及的に阻止するシワの発生しない表皮一体成型
品及びその製造方法に関するものである。
〔従来の技術〕
従来から表皮一体成型品を製造する方法の一つとし
て、表皮材を真空成型し、これにウレタンフォームを一
体発泡するいわゆる表皮材の真空成型一体発泡を行なわ
れているが(特開昭60-256484号)、例えばシート形状
においてセパレートタイプ及び背座一体タイプともコー
ナー端末部や折れ部などにシワが発生しやすい欠点があ
った。すなわち第4図に示すように、セパレートタイプ
では、コーナー端末部イに、また背座一体タイプでは、
第5図に示すように、オーバーハング部ロにシワが発生
し、いわゆる折れ部及びその周辺部等の箇所にシワが必
ず発生するのが通常であった。このため、従来はこのシ
ワの発生を回避するためにセパレートタイプでは、コー
ナー端末部のオーバーハングをなくしたり、背座一体タ
イプでは、デザイン的にスリット(溝)を入れたり、高
硬度のインサートパッドを挿入したり、また一時的に折
れ部の表皮材を剥離して、シェルへの組付け工程で処理
するなどの対策がとられていた。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかしながらかかる方法では、デザイン的にも触感的
にも制約を受け、また工程数が増加し、コストアップす
る点で好ましくない。
そこでこの発明の目的は、デザイン・触感面で設計上
自由度が規制されず、かつ製造容易で、廉価に製造し得
るシワの発生しない表皮一体成型品及びその製造方法を
提供しようとする点にある。
〔課題を解決するための手段〕
シワが発生する原因を鋭意検討した結果、その最大の
原因は、第6図、第7図に示す様に、製品を脱型前、真
空成型によるテンションで引き伸ばされていたファブリ
ック1に(第6図)、脱型後、元にもどる力が働き、そ
れが軟かいポリウレタンスラブフォーム2に溝cをつく
ることであることは判明した(第7図)。なお図におい
て3はフィルム、4はウレタンフォームで、5は当該フ
ァブリック1、スラブフォーム2及びフィルム3から積
層構成された表皮材、aの矢印は脱型前のテンションの
方向、bの矢印は脱型後のテンションの戻り方向を示
す。
そこでこの発明は、この表皮材のテンションの戻りを
恒久的に固定してやれば、シワの発生がなくなるという
点に着目し、真空成型により成型された、ファブリッ
ク、軟質ポリウレタンスラブフォーム及びフィルムの3
層構造の表皮材に、ポリウレタンフォームのクッション
層を一体発泡で一体化したシートクッション等の表皮一
体成型品において、そのコーナー端末部等シワが発生し
易い部位に、脱型時の表皮材のテンションの戻りを抑制
する不織布、表皮材内面に接着され、かつ一体発泡され
たウレタンフォームにより含浸、圧着される構成を採用
した。
なおシワが発生する他の原因としては、シワが発生す
る部位の製品形状(オーバーハングの大きさ、折れ部角
度、製品の厚さ)、並びに表皮材の特性(打込み本数、
伸長率、残留伸長率)の2点があげられる。そこでこの
発明ではさらに表皮材の特性を検討し、下記の結論を得
た。
すなわち表皮材に使用するファブリックとしては、イ
ンチあたりの打込み本数(平織)が10本程度であり、伸
長率が100%以上(引張荷重12.5kg f、引張速度50mm/mi
n)かつ1時間放置後の残留伸長率が90%以上であるこ
とが望ましい。また、3層ラミネートに使用するスラブ
フォームの厚みは、製品脱型後、表皮材のテンションの
戻りを回収してシワを発生しにくいように、6mm以下で
あることが好ましく、フィルムとしては、非多孔質系透
湿フィルム、例えば透湿性ウレタンフィルム(特開昭61
-9423号)を使用することでムレ防止機能を持たせるこ
とが好ましい。ただしファブリック、スラブフォーム、
フィルムともこれらに特に限定されるものではない。
成型方法としては、ファブリック、軟質ポリウレタン
スラブフォーム及びフィルムの3層ラミネート構造の表
皮材を、真空箱を装備したウレタン発泡用金型を用いて
真空成型し、しかる後製品のコーナー端末部等シワの発
生し易い部位に、脱型時の表皮材のテンションの戻りを
抑制する不織布を、上記表皮材内面から接着した後、該
表皮材に、ウレタンフォームを一体発泡する方法が好適
である。
なおここで特に重要な点は、使用する接着剤は、速乾
性でない高粘度(4.0P/20℃以上)合成ゴム系のスプレ
ータイプを使用する事が好ましく、不織布表面でのみウ
レタンフィルムと接着することが望ましい。接着剤自体
が低粘度(3.0P/20℃以下)であると、不織布内に拡散
してしまい、ウレタンフィルムとの接着性が低下するば
かりでなく、ウレタンフォームとの一体発泡時に不織布
内へのウレタンフォームの含浸を阻害し、発泡圧(約1k
g f/cm2)で圧着し難くなり、シワが発生する傾向が生
じる。
使用する不織布の目付量としては、50g/m2〜200g/m2
が適切であり、特に好ましくは、80g/m2〜120g/m2であ
る。
なお成型方法として、表皮材の真空成型とは別個に、
ウレタンフォームを一体発泡させる方法も採用できる
が、経済性等の点を考慮すれば前記方法が最も好まし
い。
〔作用〕
この発明はシワの発生し易い部位に、脱型時の表皮材
のテンションの戻りを抑制する不織布を表皮材の内面か
ら接着した表皮一体成型品であるので、シワの発生が防
止できるとともに、シワの発生し易い折れ部等にセット
してあるため、耐久性に優れ、且つ、感触的にも従来の
インサートパッドのものよりも軟かい。さらに任意に形
状が変更可能であるため、デザイン上の制約を受けな
い。また不織布を使用すれば、3次元的形状でも比較的
容易にセットでき、かつ不織布の目付量を調整すること
で、任意に製品の表面硬度を変えることも可能である。
〔実施例〕
本発明を座席シートを例にとって説明する。
まず表皮材5には、ファブリック1に、伸長率100
%、残留伸長率25%(引張荷重12.5kg f、引張速度50mm
/min)の丸中整染(株)製KR-500シリーズ、スラブフォ
ーム2には密度0.023g/cm3、硬度9.0kg f/200φのウレ
タンフォーム6mmを、フィルム3には分子量200〜600の
エチレングリコールと有機ジカルボン酸単独又はジカル
ボン酸とε−カプロラクトン及び又は短鎖ポリオールと
の混合物を反応させてポリオキシエチレン含有率が17〜
70%で分子量が500〜3000のポリエスエルポリオールと
なし、該ポリイソシアネートを反応させてポリオキシエ
チレン含有率を15〜62%の範囲とした非多孔質性透湿性
ウレタンフィルム25μを使用し、これらをフレームラミ
ネートすることにより3層ラミネート品として表皮材5
を成形した。なおこの透湿性ウレタンフィルムは、厚さ
25μで、3413g/m2・24hr.の透湿度を有する。不織布10
は、目付量120g/m2、厚さ3.0mmの粗毛布を使用し、接着
剤は、合成ゴム系のスプレータイプ(株)コニシ製Z−
3(粘度4.8P/20℃)を30cm離して3秒間塗布した。
成型は、第1図に示すように、まず真空箱6を装備し
た下型7に上記表皮材5をセットし、固定枠付クランプ
8で固定する〔同図(a)、(b)〕。次に、同図
(c)に示すように、下型7は分割されているので、は
じめに左右の両サイド部A、A、続いて中央部Bをおよ
そ760mmHgの真空圧で真空引きし、最後に中央部Bの上
下に位置するオーバーハング部C、Cを、座部屈曲部を
中心に両サイド相反する方向に向かって四方方向(矢印
方向)にテンションをかけるようにして滑り込ませる。
続いてオーバーハング部C、Cを固定枠付クランプ9で
固定した後、次にその他の固定枠付クランプ8を少しず
つ緩めて下型7に滑り込ませる〔同図(d)〕。さらに
オーバーハング部C、Cに、予め熱成型された不織布10
を、該オーバーハング部C、Cより外にでないように接
着剤で貼付ける〔同図(e)〕。次に上型11に離型剤を
散布し〔同図(f)〕、さらに上型11をセットして固定
し、注入口12よりウレタンを1400gの注入量で注入する
〔同図(g)〕。最後に製品13を脱型し、クラッシング
にかける〔同図(h)〕。
なおここで第2図は下型7に表皮材5をセットし、真
空成型直後の状態を示す斜視図、第3図は同状態におい
て不織布10の接着状態を示す部分拡大概略状態図であ
る。符号14は接着剤である。
発泡機はクラウスマツファイ(株)製高圧発泡機で、
発泡条件は吐出量500g/sec、注入圧力POLY130kg/cm2、I
SO:100kg/cm2、液温POLY:28℃、ISO:28℃、金型温度:62
℃、cure time 5minである。
第8図はこの背座一体タイプの完製品を示す斜視図で
ある。同図においてデザイン上、2本のスリット15、16
が入っているが、従来は2本とも製品両端までスリット
が入ってないため、座部屈曲部にシワが発生していた。
なおセパレートタイプの座席シートの製品をも成型し
た。
(実施例1) セパレートタイプの製品で、第9図に示す様に、その
端末において逆テーパー形状になっている部分に粗毛布
である不織布10を接着して一体発泡した。
(実施例2) 第10図に示す様に、製品角度120°の背座一体タイプ
の座部屈曲部に粗毛布である不織布10を接着して一体発
泡した。
(実施例3) 第11図に示す様に、製品角度87°の背座一体タイプの
座部屈曲部に粗毛布(目付量200g/m2)である不織布10
を接着して一体発泡した。
〈比較例1〉 第12図に示す様に、実施例2の場合において、粗毛布
を接着せず一体発泡した。
〈比較例2〉 第13図に示す様に、実施例3の場合において、低粘度
(2.2P/20℃)のスプレータイプ合成ゴム系接着剤を粗
毛布である不織布10全体に含浸する様に塗布し、一体発
泡した。
〈比較例3〉 第14図に示す様に、実施例2の場合において、伸長率
46.7%、残留伸長率7.5%のファブリックを用いた表皮
材を使用し、座部屈曲部に粗毛布である不織布10を接着
して一体発泡した。
以上についてシワの発生状態の結果を第1表に示す。
また、同時にこれらの各実施例及び比較例について、そ
のシワの発生状態を示す側面図を、第15図ないし第20図
に示す。第15図は実施例1、第16図は実施例2、第17図
は実施例3、第18図は比較例1、第19図は比較例2、第
20図は比較例3である。
第1表及び第15図ないし第20図から、本発明のセパレ
ートタイプ、背座一体タイプいずれの座席シートも、従
来のもの(比較例1)に比してシワの発生を抑制する効
果が認められる。特に実施例1、2、3のシートは効果
が格別顕著である。
次に各実施例について製造時における不良率を測定し
た。その結果を第2表に示す。
〔発明の効果〕 以上のごとく、本発明では、シワ発生が起こりやすい
折れ部位に不織布を接着するとにより、表皮材を下型に
全周に渡って均一に滑りこませることができ、表皮材に
かかるテンションをほぼ同一とし、ウレタンフォームの
発泡圧を一定としたため、シワのない製品が得られ、不
良率を著しく低減でき、かつ非常に再現性も高く、デザ
インの自由度も著しく増加するもので、当該技術分野に
資するところきわめて大きい。
【図面の簡単な説明】
第1図はこの発明の表皮一体成型品の製造方法の一実施
例に係る工程図であり、同図(a)は下型に表皮材をセ
ットした状態の側面概略図、同図(b)は同状態の平面
概略図、同図(c)は下型の概念図、同図(d)はクラ
ンプの固定状態を示す平面図、同図(e)はオーバハン
グ部における不織布の接着状態を示す要部拡大平面図、
同図(f)は上型に離型剤を散布する状態の側面図、同
図(g)はウレタンの注入状態を示す側面図、同図
(h)は脱型後の製品の斜視図、 第2図は背座一体タイプの座部屈曲部に不織布を接着し
た真空成型直後の状態を示す斜視図、 第3図は同状態の要部拡大断面図、 第4図はセパレーションタイプのシートクッションの斜
視図、 第5図は背座一体タイプのシートクッション斜視図、 第6図は脱型前の、ファブリックのテンションのかかる
状態を示す概略図、 第7図は脱型後の、ファブリックのテンション戻りによ
るシワ発生の状態を示す概略図、 第8図は背座一体タイプの表皮一体成型品を示す斜視
図、 第9図ないし第14図は順次実施例1、2、3、比較例
1、2、3に係る粗毛布の接着位置を示す座席シートの
概念図、 第15図ないし第20図は順次実施例1、2、3、比較例
1、2、3に係るシワの発生状態を示す概略側面図であ
る。 1……ファブリック 2……ポリウレタンスラブフォーム 3……フィルム、4……ウレタンフォーム 5……表皮材、6……真空箱 10……不織布
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 B29L 31:58 (72)発明者 牛尾 正弘 兵庫県加古郡稲美町六分一字内ケ池1176 番地 東洋ゴム工業株式会社兵庫事業所 兵庫工場内 (72)発明者 山本 純治 兵庫県加古郡稲美町六分一字内ケ池1176 番地 東洋ゴム工業株式会社兵庫事業所 兵庫工場内 (56)参考文献 特開 昭63−125333(JP,A) 特開 昭62−184814(JP,A) 実開 昭63−79799(JP,U)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】真空成型により成型された、ファブリッ
    ク、軟質ポリウレタンスラブフォーム及びフィルムの3
    層ラミネート構造の表皮材に、ポリウレタンフォームの
    クッション層を一体発泡で一体化したシートクッション
    等の表皮一体成型品において、そのコーナー端末部等シ
    ワの発生し易い部位に、脱型時の表皮材のテンションの
    戻りを抑制する不織布が、表皮材内面に接着され、かつ
    一体発泡されたウレタンフォームにより含浸、圧着され
    ていることを特徴とするシワの発生しない表皮一体成型
    品。
  2. 【請求項2】ファブリック、軟質ポリウレタンスラブフ
    ォーム及びフィルムの3層ラミネート構造の表皮材を、
    真空箱を装備したウレタン発泡用金型を用いて真空成型
    し、しかる後製品のコーナー端末部等シワの発生し易い
    部位に、脱型時の表皮材のテンションの戻りを抑制する
    不織布を、上記表皮材内面から接着した後、該表皮材
    に、ウレタンフォームを一体発泡することを特徴とする
    シワの発生しない表皮一体成型品の製造方法。
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