JP2563165B2 - 平版印刷機の給水装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、水舟内に蓄えられた湿し水内で回転する水
元ローラと、その下流側の振りローラとの間で往復動す
る呼出しローラを備えた平版印刷機の呼出し式給水装置
に関するものである。

〔従来の技術〕

オフセツト印刷機などの平版印刷機による印刷作業
は、版胴に装着された版の表面にインキ装置と給水装置
とでインキと湿し水とを供給して画像を形成し、この画
像を紙に転写させて印刷を行なうものであつて、その給
水装置は、水舟内の水を下流側のローラへ連続的に転移
させるか、あるいは呼出しローラを用いて間欠的に転移
させるかによつて連続給水装置と、呼出し式給水装置と
に分類される。

このうちの呼出し式給水装置は従来一般に湿し水を蓄
えた水舟内で回転する水元ローラと、この水元ローラの
下流側に配置された振りローラと、揺動自在なローラア
ームに支持されこのローラアームの揺動によつて水元ロ
ーラと振りローラとに交互に接触するようにこれら両ロ
ーラ間を往復動する呼出しローラとを備えており、水元
ローラで引き上げられた水舟内の湿し水は、呼出しロー
ラの往復動により振りローラへ間欠的に転移したのち複
数個のローラを経て版面に供給されるように構成されて
いる。

〔発明が解決しようとする問題点〕

しかしながらこのような従来の呼出し式給水装置にお
いては、装置を空転調整したり、印刷物の仕様変更によ
り段取替をしたりする場合に呼出しローラの往復動を停
止させるので、湿し水が蒸発してしまい、運転再開時に
鉄砲水と称する水の補給が必要となつて、労力の負担や
休転時間が増大するばかりでなく、水の補給量の設定に
熟練を要し、これを誤ることにより印刷物の品質が低下
したり損紙の発生量が増大したりするという問題があつ
た。

〔問題点を解決するための手段〕

このような問題点を解決するために本発明では平版印
刷機の給水装置において、水元ローラを変速可能な駆動
手段と駆動連結するとともに、呼出しローラを往復動さ
せる移動機構と水着ローラに接触し水を供給するローラ
と版胴とを常に駆動連結した。

〔作 用〕

空転，印刷用運転にかゝわらず、機械を運転すれば呼
出しローラが必ず往復動する。そして、空転時には水元
ローラ駆動用モータを低速にすれば、呼出しローラが回
転していても湿し水は自然蒸発分だけしか呼出されず、
蒸発量は絶えず補給される。印刷開始時には給水ローラ
群が乾燥しているので、水元ローラ用駆動モータを高速
にし、また印刷中、乾燥により汚れが出始めた場合には
高速にすれば、急速に正常な給水状態になる。通常の印
刷中は、水元ローラ用駆動モータの速度を、印刷物の仕
様に合わせて設定し、この速度で印刷を続ける。

〔実施例〕

第１図ないし第３図は本発明に係る平版印刷機の給水
装置の実施例を示し、第１図はその右側フレームの内側
から見た側面図、第２図は同じく左側フレームの外側か
ら見た側面図、第３図は展開平面図である。これらの図
において、左側のフレーム１と右側のフレーム２との間
には、周面に印刷用の版が装着された版胴３が軸支され
ており、その端軸には、原動側から回転駆動される版胴
ギア４が軸着されている。版胴３の斜め上方に位置して
フレーム１の外側に植設されたギア軸５には、版胴ギア
４と噛合う広幅のギア６が、軸方向への移動を規制され
て回転自在に嵌装されており、このギア６には、スプロ
ケツト７が一体的に固定されている。８は菱形板状に形
成された支持板であつて、版胴ギア４の斜め下方に位置
してフレーム１の外側に植設された１対のスタツド９に
フレーム１と平行して支持されており、その上側の１隅
に設けたボスの軸孔には、カム軸10がこれに軸着された
後述するカム11とスプロケツト12とで軸方向への移動を
規制されて回転自在に軸支されている。スプロケツト12
と前記スプロケツト７との間には、チエーン13が張架さ
れており、このチエーン13には、フレーム１側のスタツ
ド14に割締め固定されたアーム15遊端部のテンシヨンス
プロケツト16が添接されて張力を付与している。

一方、版胴ギア４の斜め下方に位置して左右のフレー
ム1,2の内側にボルト止めされたブラケツト17間には、
版胴３とほゞ同長の水舟18と水受皿19とが支架されてお
り、水舟18内には、湿し水20（以下水20という）が蓄え
られている。水舟18の上方には、水元ローラ21がその周
面下部を水20に浸漬させ左右の端軸21aをフレーム1,2に
軸受を介し軸支されて軸架されており、フレーム２側の
端軸21aのフレーム外突出端部には、ウオームホイル22
が軸着されている。23は変速可能なモータであつて、フ
レーム２の外側にボルト止めされたブラケツト24に固定
支持されており、そのモータ軸25に一体形成されたウオ
ーム26は前記ウオームホイル22と噛合つている。こうす
ることにより水元ローラ21は手動または自動により０か
ら全速に至るまで広範囲に無段階で変速されて回転す
る。

さらに、水元ローラ21と版胴３との間には、振りロー
ラ27が左右のフレーム1,2に軸受28を介し軸支されてい
てそのフレーム１側端軸27aのフレーム外突出端部には
前記広幅のギア６と噛合う小幅のギア29が軸着されてお
り、振りローラ27は版胴ギア４側から回転駆動されてい
る。また、フレーム２の振りローラ27軸支部近傍に位置
して外側にボルト止めされたブラケツト30には、垂直状
の振りレバー31の中央部が枢着されており、この振りレ
バー31の上端部に枢着されたカムフオロア32は、フレー
ム２側に支持されて図示しない駆動機構を介し印刷機と
同調して往復運動する溝プーリ33の溝と係合している。
そして、振りレバー31の下端部に枢着されたころ34は、
振りローラ27の端軸27bに固定された溝プーリ35の溝と
係合しており、溝プーリ33の往復運動により振りレバー
31を介して振りローラ27が所定の周期と振り幅で往復動
するように構成されている。なお、前記ギア６を広幅に
形成したことにより、振りローラ27が振つても、ギア6,
29の噛合に支障がない。

振りローラ27の下方には、ローラアーム軸36が、左右
のフレーム1,2と支持板８との３箇所で軸支されて軸架
されており、このローラアーム軸36には、左右１対のス
トツプアーム37が、フレーム1,2の内側に接しローラア
ーム軸36の軸方向への移動を規制してそれぞれ軸着され
ている。38は、ローラアーム軸36の支持板８近接部に割
締め固定されたカムレバーであつて、その遊端部に枢着
されたカムフオロア39は、前記カム11のカム面に対接し
ており、カムフオロア39は、後述する圧縮コイルばね46
により、大径部と小径部とからなるカム面に圧接されて
いる。前記各ストツプアーム37と、その内方に位置して
ローラアーム軸36に軸着されたカラー40との間には、Ｕ
字状の軸支部41aとその開口部を閉塞するカバー41bとを
備えた左右１対のローラアーム41が、回動自在に遊装さ
れており、このローラアーム41の遊端部と、前記ストツ
プアーム37の遊端部との間の間隔は、ストツプアーム37
側のねじ孔に螺入された調節ボルト42を進退させてナツ
ト43で固定することにより、調節可能に構成されてい
る。さらに、ローラアーム41の遊端部に一端を枢着され
たばね軸44の他端は、フレーム1,2に植設されたスタツ
ド45の軸孔に摺動自在に挿入されており、このばね軸44
上には、ばね圧調節自在な圧縮コイルばね46が、スタツ
ド45とばね軸44の鍔との間に介装されている。そして、
左右のローラアーム41には、両ローラ21,27の周面間間
隔よりも小径の呼出しローラ47が軸支されており、カム
11が回転してその大径部と小径部とが交互にカムフオロ
ア39に対接することにより、カム面と圧縮コイルばね46
との協働で両アーム37,41が揺動し、呼出しローラ47
が、水元ローラ21と振りローラ27との周面に交互に接触
しながら両ローラ21,27間を往復動するように構成され
ている。48はフレーム1,2側に固定されたローラアーム4
1の回動端規制用のストツパであり、また、呼出しロー
ラ47の両ローラ21,27への接触圧は、圧縮コイルばね46
のばね圧と、調節ボルト42とで調節される。

さらに、振りローラ27の両端軸27a,27bには、それぞ
れ１対ずつのローラアーム49,50がフレーム1,2の内側に
位置して回動自在に遊装されており、各ローラアーム4
9,50の遊端部には、版胴３の版面と振りローラ27の周面
とに対接する水着ローラ51,52が、偏心機構により振り
ローラ27との接触圧を調節自在に形成されて軸支されて
いる。また、各ローラアーム49,50の遊端部に一端を枢
着されたばね軸53,54の他端は、フレーム1,2に植設され
たスタツド55,56の軸孔に摺動自在に挿入されており、
各ばね軸53,54上には、ばね圧調節自在な圧縮コイルば
ね57,58が、スタツド55,56とばね軸53,54の鍔との間に
介装されている。こうすることにより、各水着ローラ5
1,52は圧縮コイルばね57,58のばね圧によりローラアー
ム49,50の揺動を介して版面に圧接される。全体を符号5
9で示すものは、水着ローラ51,52を版面に着脱させるロ
ーラ上げ装置であつて、左右のフレーム1,2間に軸架さ
れた操作軸60と、これを回動操作するハンドル61と、フ
レーム1,2に近接して操作軸60にノツクピンで固定され
た１対のレバー62と、各レバー62の遊端部に枢着された
ころ63と、フレーム1,2に枢着されたローラ上げレバー6
4と、レバー62の回動限を規制するストツパ65,66とを備
えており、ハンドル61の回動操作によりレバー62が回動
してその遊端部のころ63がローラ上げレバー64を揺動さ
せ、ローラ上げレバー64の円弧面と圧縮コイルばね57,5
8との協働により水着ローラ51,52が版面に着脱されるよ
うに構成されている。

以上のように構成されていることにより、機械を運転
すると、水舟18内の水20は、水元ローラ21の回転によつ
て引上げられてその表面に付着する。このとき、ローラ
アーム41がカム機構で揺動していて、その遊端部の呼出
しローラ47が水元ローラ21の周面と、振りローラ27の周
面とに交互に接触するように両ローラ21,27間を往復動
するので、水元ローラ21上の水20は、振りローラ27の周
面へ間欠的に転移する。振りローラ27に転移した水20
は、振りローラ27がカム機構で軸方向へ往復動している
ことにより、ならされ、これに対接する水着ローラ51,5
2を介して版面に供給される。

このような給水装置においては、水元ローラ21を変速
可能なモータ23で回転駆動することにより、水元ローラ
21による水20の引上げ量を０から最大量まで無段階で調
節でき、また、振りローラ27が回転すると必ず呼出しロ
ーラ47が往復動するので、空転時や、印刷開始時などに
対応して水20の呼出し量を調節することができる。すな
わち、紙を通さない空転時においては、従来、呼出しロ
ーラ27の往復動を停止させていたので、空転中に水が蒸
発してしまい、空転調整後、印刷開始に際し鉄砲水の供
給が必要であつたが、本装置においては、空転調整時に
モータ23を低速にして水20の呼出し量を例えば最大量の
20％以下にしておけば、呼出しローラ27が往復動してい
ても水20は蒸発量だけが絶えず補給され、印刷開始時に
鉄砲水を供給する必要がない。さらに、朝の印刷開始時
には、各ローラが乾き切つているので、この場合には始
めからモータ23を全速運転すれば、急速に水20を供給す
ることができ、また、印刷中に水が乾いて汚れが出始め
たときにも同様に全速運転すれば、急速に水20を供給す
ることができる。さらに、印刷物の仕様に合わせてモー
タ23を変速し水20の補給量を調整すれば、適切な給水量
が確保される。

〔発明の効果〕

以上の説明により明らかなように、本発明によれば、
平版印刷機の給水装置において、水元ローラを変速可能
な駆動手段と駆動連結するとともに、呼出しローラを往
復動させる移動機構と水着ローラに接触し水を供給する
ローラと版胴とを常に駆動連結したことにより、機械を
運転すれば呼出しローラが必ず往復動し、かつ水元ロー
ラによる水の引上げ量を任意に調整できるように構成し
たので、例えば空転調整時や段取替時には水の引上げ量
を少なくして自然蒸発させるようにすれば、絶えず蒸発
量だけが補給されて印刷開始時に鉄砲水の補給を必要と
せず、熟練を要することなく適切な水の補給量が確保さ
れ、印刷物の品質が向上するとともに損紙の発生量が減
少する。また、給水ローラ群が乾いている印刷開始時等
には、モータを高速にして水の補給量を大きくすれば、
急速に正常な給水状態が得られ損紙の発生量が減少す
る。また、ローラと版胴とを常に駆動連結したことによ
り、版の交換をするために版胴の回転を停止させた際に
は、水着ローラおよびローラの回転が停止し、かつ呼出
しローラの往復動も停止するので、版交換作業を安全に
行うことができるとともに、呼出しローラを往復動させ
る専用の駆動手段を不要としたので、部品点数が減少
し、構造が簡易となる。

【図面の簡単な説明】

第１図ないし第３図は本発明に係る平版印刷機の給水装
置の実施例を示し、第１図はその右側フレームの外側か
ら見た側面図、第２図は同じく左側フレームの外側から
見た側面図、第３図は展開平面図である。 ４……版胴、6,29……ギア、7,12……スプロケツト、11
……カム、13……チエーン、18……水舟、20……湿し
水、21……水元ローラ、22……ウオームホイル、23……
モータ、26……ウオーム、27……振りローラ、36……ロ
ーラアーム軸、38……カムレバー、39……カムフオロ
ア、41……ローラアーム、47……呼出しローラ。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】水舟内に蓄えられた湿し水内で回転する水
   元ローラと、版胴に対接する水着ローラと、この水着ロ
   ーラに接触し水を供給するローラとを備え、前記水元ロ
   ーラによって引き上げられた水を往復動する呼出しロー
   ラを介して前記ローラに供給する平版印刷機の給水装置
   において、前記水元ローラを変速可能な駆動手段と駆動
   連結するとともに、前記呼出しローラを往復動させる移
   動機構と前記ローラと前記版胴とを常に駆動連結したこ
   とを特徴とする平版印刷機の給水装置。