JP3906459B2 - 表裏印刷機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、湿し水装置を有すると共に印刷胴部の回転方向を正転と逆転に切り替え可能にした印刷機を用いて、輪転紙の表面と裏面のいずれか一方に印刷するようにした表裏印刷機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図7は直接給水方式の湿し水装置1aを有すると共に、印刷胴部2がフレーム3に対して着脱可能にした交換胴型のオフセット印刷機4を示すもので、フレーム3に対して交換可能にした交換胴フレーム5に版胴6、ブランケット胴7、圧胴8が支持されている。そして印刷胴部2がフレーム3に組み込まれた状態で、フレーム3側に設けたセクショナルモータ9に設けた駆動歯車が版胴6に設けた従動歯車に連結されるようになっている。またこの状態で版胴6の周面がこれの回転方向に離間して配置したインキ装置10の第1・第2インキ着けローラ10a,10bに転接すると共に、湿し水装置1aの水着けローラ1bに転接するようになっている。そして上記湿し水装置1aはフレーム3内で、かつ印刷胴部2の装着方向奥側に設けられており、正転する版胴6のインキ装置7の回転方向上流側に水着けローラ1bが転接されている。
【0003】
しかして、輪転紙11の表面に印刷する場合には、図7に示すように、印刷胴部2の各胴を正転させ、輪転紙11を印刷胴部2の上流側から下流側へ向けてブランケット胴7と圧胴8の間を通す。
【0004】
一方、輪転紙11の裏面に印刷する場合には、図8に示すように、印刷胴部2の各胴を逆転させ、輪転紙11を、オフセット印刷機4の上方から後側へ迂回反転させ、これを通常印刷の場合とは逆方向に回転されている印刷胴2の下流側から上流側へ供給して輪転紙11の裏面に印刷し、ついでこれを再び迂回反転させて下流側へ走行させるようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記した従来のオフセット印刷機にあっては、図7に示したように、印刷胴部2を正転させた表面印刷の場合には、版胴6はインキ装置10からインキが供給される前に湿し水装置1aより湿し水が供給されるため、版胴6の非画線部へのインキ乗りを完全に防ぐことができるが、図8に示したように、印刷胴部2を逆転させた裏面印刷の場合には、版胴6の回転方向において、インキ装置10が上流側になって、版胴6へはインキが供給されてから湿し水が供給されることになり、版胴6の非画線部へのインキ乗りを完全に防ぐことができず、印刷汚れ、画線不良が生じやすかった。
【0006】
本発明は上記のことに鑑みなされたもので、印刷胴部を逆転させての裏面印刷時においてもインキ着けに先行して湿し水を版胴表面に供給できて、選択的に行われる裏面印刷を表面印刷と同様に良好に印刷できるようにし、また、裏面印刷時に用いる湿し水装置を容易に取り外し可能にした表裏印刷機を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係る表裏印刷機は、版胴へ湿し水を供給する湿し水装置を有する共に、印刷胴部の回転を正、逆切り替え可能にし、この印刷胴部の回転の正、逆切り替えに従って輪転紙の走行方向を変えて輪転紙の表面と裏面のいずれか一方に印刷するようにした表裏印刷機において、版胴に対向して設けたインキ装置の版胴の回転方向両側に湿し水装置を、湿し水の供給を断続可能にして設けた構成になっている。
【0008】
そして上記表裏印刷機において、インキ装置のインキ着けローラを版胴の回転方向に複数設け、版胴の回転方向両側に位置する各インキ着けローラに湿し水装置の水供給ローラを接離可能に対向させた。
【0009】
また、これらの表裏印刷機において、版胴の回転方向両側に設けられる湿し水装置の一方で、かつ裏面印刷時にインキ装置の上流側となる湿し水装置を着脱可能にした。
【0010】
【作 用】
印刷胴部を正転させると共に、この印刷胴部の回転に従って輪転紙を走行させることにより、この輪転紙の表面に印刷が行われ、また、印刷胴部を逆転させると共に、この印刷胴部の回転に従って輪転紙を走行させることにより、この輪転紙の裏面に印刷が行われる。
【0011】
このとき、版胴にインキを着けるインキ装置に対して、版胴の回転方向上流側に位置する湿し水装置からのみ湿し水の供給を可能にする。これにより、印刷胴部の回転方向を切り替えて、輪転紙の表面と裏面のいずれ側を印刷する場合でも、インキ着けに先行して湿し水を版胴に供給することができる。
【0012】
そして上記裏面印刷時に用いられる一方の湿し水装置は適宜印刷機より取り外すことができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態図を図1から図6に基づいて説明する。なお、図7、図8に示した従来の装置と同一構成部材は同一符号を示して説明する。また、図7、図8に示した従来例における湿し水装置による給水方法は、上記したように、版胴6に直接給水する直接給水法を用いた例を示したが、本発明の実施の形態では、インキ着けローラに湿し水を供給するダールグレン法の例を示す。
【0014】
図1は本発明の主要な構成部を概略的に示すもので、これは、図7、図8に示した場合と同様に交換胴型の印刷胴部2を逆転させると共に、輪転紙11を迂回反転させてこれの裏面に印刷を行う場合を示している。
【0015】
インキ装置10の第1・第2のインキ着けローラ10a,10bは図7、図8に示したものと同様に版胴6の回転方向両側に設けてあり、この両インキ着けローラ10a,10bに揺動ローラ12a,12bが転接されている。そして版胴6の正転(図中右回転)方向上流側に位置する第1のインキ着けローラ10aに正転側の湿し水装置1が対設されている。この正転側の湿し水装置1は第1のインキ着けローラ10aに対して接離可能にした水供給ローラ13と、この水供給ローラ13に転接するメータリングローラ14と、メータリングローラ14の一部が浸漬される水舟15とからなっている。なお10cは補助インキ着けローラである。またメータリングローラ14は図示しないセクショナルモータにて駆動されるようになっている。ダールグレン法の場合、水供給ローラ13には表面にクロムメッキ処理を施したクロムローラが用いられる。
【0016】
版胴6の正転方向下流側、すなわち、版胴6の逆転(図中左回転)方向上流側に位置する第2のインキ着けローラ10bに逆転側の湿し水装置16が着脱可能に対設されている。この逆転側の湿し水装置16は上記した正転側のものと同様に、第2のインキ着けローラ10bに転接する水供給ローラ17と、この水供給ローラ17に転接するメータリングローラ18と、メータリングローラ18の一部が浸漬される水舟19とからなっている。
【0017】
逆転側の湿し水装置16の水供給ローラ17とメータリングローラ18を支持する前後一対のローラ支持板20,20は、カセットフレーム21に水供給ローラ17がインキ着けローラ10bに対して接離する方向に移動可能に支持されている。そしてカセットフレーム21はフレーム3に対して着脱可能に支持されていて、このカセットフレーム21をフレーム3から外すことにより逆転側の湿し水装置16がオフセット印刷機4から外されるようになっている。
【0018】
図2にこの逆転側の湿し水装置16の水供給ローラ17とメータリングローラ18の支持構成を概略的に示す。なお両ローラ17,18の両端部の支持構成は同一になっていて、この図ではその一方のみを示す。水供給ローラ17とメータリングローラ18のそれぞれの両端は、上記したように、互いに転接するようにして前後一対のローラ支持板20,20に回転自在に支持されているが、一方のローラ、例えばメータリングローラ18の両端のそれぞれは両ローラ17,18の軸間距離が変わる方向に移動可能にした可動軸受22に支持されている。この可動軸受22にねじ軸23がねじ込み貫通しており、このねじ軸23は傘歯車機構24を介して回転つまみ25に連結されていて、この回転つまみ25を回転することにより可動軸受22が移動して両ローラ17,18の接触圧が変えられるようになっている。メータリングローラ18の一方の軸端部に従動歯車26が取り付けられており、これにセクショナルモータ27aに連結した駆動歯車27が噛み合わせてあり、セクショナルモータ27aの駆動により、上記水供給ローラ17がインキ着けローラ10bと略等速で逆方向に回転するようになっている。
【0019】
前後一対のローラ支持板20,20のそれぞれの外面には上下方向に離間してガイドピン28a,28bが突設してあり、この両ガイドピン28a,28bが、カセットフレーム21の前後各枠板29,29に固着された溝板30,30に上下方向に設けた溝31に摺動可能に係合されている。また、この前後一対のローラ支持板20,20とカセットフレーム21の各枠板29,29とは上下方向に配置した前後一対のシリンダ装置32,32にて連結されており、この前後一対のシリンダ装置32,32を伸縮動することにより前後一対のローラ支持板20,20がガイドピン28a,28bを介して溝31に沿って上下方向に平行移動されるようになっている。
【0020】
カセットフレーム21の前後一対の枠板29,29はステー33にて連結されて一体構成となっている。このカセットフレーム21のフレーム3への結合は、前後一対の枠板29,29の前端部をフレーム3の端部の内側に係脱可能に結合することによってされている。
【0021】
すなわち、図3、図4、図5に示すように、フレーム3の両側の内面に、上下離間して係合突起34a,34bが突設してあり、これに、カセットフレーム21の両枠板29,29の先端の上下に設けた係止片35とフック部36を係合すると共に、枠板29の上部に設けた耳部37をボルト38にてフレーム3の端面に固着し、及び枠板29の下部をフレーム3の内側にボルト39にて固着するようになっている。
【0022】
図2において40は一対のローラ支持板20,20の先端部に下方へ向け、かつ先端を、インキ着けローラ10bを支持するレバー部材41に設けたストッパ42に対向させて設けた印圧調整ボルトであり、この印圧調整ボルト40にて湿し水装置16の下動方向への移動ストローク端を調整するようになっている。
【0023】
インキ着けローラ10bは揺動ローラ12bの軸心を中心に回動可能にした一対のレバー部材41,41に支持され、これをシリンダ装置43にて回動することによりインキ着けローラ10bが揺動ローラ12bに接触した状態で版胴6に対して接離するようになている。44はインキ着けローラ10bの軸心に設けた偏心カム、45はこの偏心カム44に対向して版胴6の軸心に設けたストッパカムであり、この偏心カム44とストッパカム45とが当接することによりインキ着けローラ10bと版胴6が所定の印圧で接触するようになっており、かつ偏心カム44を回動することによりこの印圧が調節されるようになっている。
【0024】
上記構成の逆転側の湿し水装置16の作用を説明する。図2、図3、図4はこの湿し水装置16が上昇し、これの水供給ローラ17が下動状態の第2のインキ着けローラ10bから上方へ離間している状態である。そしてこの状態から前後のシリンダ装置32,32を伸長すると、ローラ支持板20,20がガイドピン28a,28bを介して溝31に沿って下方へ平行移動する。この移動は、下方へ回動して版胴6に接触しているインキ着けローラ10bに接触するまで行われる。そしてこのときの水供給ローラ17とインキ着けローラ10bとの接触印圧の調整は、印圧調整ボルト40にて行われる。
【0025】
水供給ローラ17がインキ着けローラ10bに接触した状態でセクショナルモータ27aを駆動し、歯車27,26を介してメータリングローラ18を回転する。これにより水供給ローラ17がメータリングローラ18に従動してメータリングローラ18に付着した水舟19の水が水供給ローラ17を介してインキ着けローラ10bへ供給される。
【0026】
シリンダ装置32を短縮動することにより、ローラ支持板20,20が溝31に沿って上方へ平行移動し、水供給ローラ17がインキ着けローラ10bより離間し、この逆転側のインキ着けローラ10bへの湿し水の供給が停止される。
【0027】
この逆転側の湿し水装置16は、枠板29とフレーム3とを結合しているボルト37,39を外すことによりフレーム3から離脱される。
【0028】
上記構成において、輪転紙11の表面に印刷する場合には、図1において輪転紙11を、これの表側がブランケット胴7に接触する点線矢印の方向に紙通しする。そして、正転側の湿し水装置1の水供給ローラ13を第1のインキ着けローラ10aに接触させると共に、逆転側の湿し水装置16を上昇させてこれの水供給ローラ17を第2のインキ着けローラ10bから離間させる。
【0029】
この状態で印刷胴部2を点線矢印にて示すように正転することにより、輪転紙11は点線矢印にて示すように順走されてこれの表側に印刷される。
【0030】
このとき、版胴6には、これの回転方向上流側で第1のインキ着けローラ10aにてインキ装置10からのインキと正転側の湿し水装置1からの湿し水が供給される。また、回転方向下流側で第2のインキ着けローラ10bにてインキ装置10からのインキが供給され、湿し水がこのインキ供給の上流側で供給される。
【0031】
また、輪転紙11の裏面に印刷する場合には、図1において、輪転紙11を迂回させて、これの裏側がブランケット胴7に接触する実線矢印の方向に紙通しする。そして、正転側の湿し水装置1の水供給ローラ13を第1のインキ着けローラ10aから離間させると共に、逆転側の湿し水装置16を下降させてこれの水供給ローラ17を第2のインキ着けローラ10bに接触させる。
【0032】
この状態で印刷胴部2を実線矢印にて示すように逆転することにより、輪転紙11は実線矢印にて示すように逆送されてこれの裏側に印刷される。
【0033】
このときの版胴6には、これの回転方向上流側で、第2のインキ着けローラ10bにてインキ装置10からのインキと逆転側の湿し水装置16からの湿し水が供給される。また、回転方向下流側で第1のインキ着けローラ10aにてインキ装置10からのインキが供給され、湿し水がこのインキ供給の上流側で供給される。
【0034】
この発明における実施例では印刷胴部2に交換胴型を用いているが、この印刷胴部2を交換する場合には、印刷胴部2の交換胴フレーム5とフレーム3との結合を解除してからわずかにこれを下流側へ移動し、ついで手前側へ引き出すようになっている。このとき、逆転側の湿し水装置16のカセットフレーム21の両枠板29,29のフレーム3側に、上記印刷胴部2の交換胴フレーム5と干渉しないように逃げ部29aが設けてあるので、この逆転側の湿し水装置16が装着されている状態でも印刷胴部2の交換をスムーズに行うことができる。
【0035】
この表裏印刷機において輪転紙11の表側印刷のみを行う場合があるが、この場合には、逆転側の湿し水装置16をフレーム3から取り外しておく。これにより、表側印刷のみを行う際の印刷胴部2の下流側のスペースを広くすることができる。
【0036】
上記した実施の形態では湿し水をインキ着けローラに供給するダールグレン方式の場合について説明したが、図6に示すように、両湿し水装置1a,16aのモルトンにて構成した水供給ローラ13a,17aを版胴6の表面に直接接触する直接給水方式にしてもよい。
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば、印刷胴部を逆転させての裏面印刷時においてもインキ着けに先行して湿し水を版胴表面に供給できて、選択的に行われる裏面印刷を表面印刷と同様に良好に印刷できる。また裏面印刷時に用いる湿し水装置が容易に取り外すことができるので、表面印刷のみを行う場合には、この裏面印刷用の湿し水装置が邪魔になることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を概略的に示す構成説明図である。
【図2】本発明の実施の形態の要部を示す一部破断斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態の要部を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態の要部を示す正面図である。
【図5】カセットフレームのフレームへの取り付け部を示す斜視図である。
【図6】直接給水方式の湿し水装置を用いた場合の本発明の実施の形態を概略的に示す構成説明図である。
【図7】従来の技術で表面印刷状態を示す説明図である。
【図8】従来の技術で裏面印刷状態を示す説明図である。
【符号の説明】
1,1a,16,16a…湿し水装置、2…印刷胴部、3…フレーム、4…オフセット印刷機、5…交換胴フレーム、6…版胴、7…ブランケット胴、8…圧胴、9,27a…セクショナルモータ、10…インキ装置、11…輪転紙、10a,10b,10c…インキ着けローラ、12a,12b…揺動ローラ、13,13a,17,17a…水供給ローラ、14,18…メータリングローラ、19…水舟、20…ローラ支持板、21…カセットフレーム、22…可動軸受、23…ねじ軸、24…傘歯車機構、25…回転つまみ、26…従動歯車、27…駆動歯車、28a,28b…ガイドピン、29…枠板、29a…逃げ部、30…溝板、31…溝、32,43…シリンダ装置、33…ステー、34a,24b…係合突起、35…係止片、36…フック部、37…耳部、38,39…ボルト、40…印圧調整ボルト、41…レバー部材、42…ストッパ、44…偏心カム、45…ストッパカム。

Claims (3)

  1. 版胴へ湿し水を供給する湿し水装置を有する共に、印刷胴部の回転を正、逆切り替え可能にし、この印刷胴部の回転の正、逆切り替えに従って輪転紙の走行方向を変えて輪転紙の表面と裏面のいずれか一方に印刷するようにした表裏印刷機において、
    版胴に対向して設けたインキ装置の版胴の回転方向両側に湿し水装置を、湿し水の供給を断続可能にして設けたことを特徴とする表裏印刷機。
  2. インキ装置のインキ着けローラを版胴の回転方向に複数設け、版胴の回転方向両側に位置する各インキ着けローラに湿し水装置の水供給ローラを接離可能に対向させたことを特徴とする請求項1記載の表裏印刷機。
  3. 版胴の回転方向両側に設けられる湿し水装置の一方で、かつ裏面印刷時にインキ装置の上流側となる湿し水装置を着脱可能にしたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の表裏印刷機。
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