JP2562761B2 - 金属繊維焼結シートの製造方法 - Google Patents

金属繊維焼結シートの製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は多孔性の金属焼結シート
の製造方法に関し、詳しくは、半導体装置、精密コネク
ター部材等の電子機器用の導電部材に好適な金属繊維焼
結シートの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】電子機器等のコネクター部材として銅線
又は銅合金線が用いられているが、さらに部材の精細化
のために極細線が求められている。しかしながら極細線
は製造する上で難しく、かつ極めて高価である。そのた
めに、コネクターの精細化が可能で、かつ、積層化が可
能なことから、多孔性の薄葉シートで体積固有抵抗値が
1×10-4 Ω−cm程度の導電性を有する材料が求め
られている。このような背景のもとに従来提案されてき
た多孔性の金属シート状物としては、多孔性金属箔、金
網、金属織布、金属焼結シート等が知られている。しか
しながら、多孔性金属箔は、機械的に金属箔に孔や裂け
目を付与したものであるため、機械的強度が弱くてハン
ドリングに問題があり、金網や金属織布は、一種あるい
は複数の金属繊維を用いてメッシュ状あるいは布状に編
んだり、織ったりしたものであるので、その繊維径によ
って多孔性、空隙率、厚さ等が制約されて厚さ100μ
m以下の金網の製造が困難であることや、極細径繊維を
使った薄葉クロスの価格が極めて高いことに問題があ
り、また金属焼結シートは粉末状または短繊維状の金属
を金網状のキャリヤーの上に散布し、これを真空あるい
は不活性ガスの雰囲気下で加圧、加熱融着させたもので
あるので、薄いシートの製造が困難で、また均質性に欠
けるうえに、長尺シートが得られない等々の問題があっ
た。
【0003】そこで、本出願人は、上述したような従来
技術の問題を解決するために、先に特開昭61−223
105号において、湿式抄造法により金属繊維を70重
量%以上含有するシートを作成し、それを真空又は不活
性ガス雰囲気下に金属繊維の融点を越えない温度で焼結
した金属繊維焼結シートの製造方法を提案した。しかし
ながら、上記の製造方法で作成した金属繊維焼結シート
は導電性の点で必ずしも満足できるものではなかった。
一方、導電性金属材料としては銅材が汎用されている
が、繊維径が30μm以下の銅繊維の製造は困難であ
り、かつ極めて高価であるという問題がある。また、金
属シートに導電性を付与するためには金属メッキ法があ
るが、例えばステンレス鋼へのメッキが困難であること
や二次加工による製造コストのアップなどが問題であ
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の事情に
鑑みてなされたもので、十分な導電性と物理強度をもっ
た金属シート状物を薄葉で多孔性シートとして提供する
ことを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、ステンレス繊
維を主成分とする金属繊維50〜90重量部と微細状導
電性金属10〜50重量部とからなる導電材料およびバ
インダー繊維を含有するスラリーを湿式抄紙法によりシ
ート化して金属繊維シートを作成し、然るのち該シート
を無酸素雰囲気下に金属繊維の融点を越えない温度かつ
導電性金属の融点以上の温度に加熱して、繊維間を焼結
するとともに、該金属繊維の表面に導電性金属を融着せ
しめることを特徴とする金属繊維焼結シートの製造方法
である。本発明により得られる金属繊維焼結シートは、
ステンレス繊維を主成分とする金属繊維を50〜90重
量%含有し、該金属繊維の表面に導電性金属が融着され
ていることを特徴とするすなわち、本発明により得ら
れる金属繊維焼結シートは、シート中の金属繊維間に結
着剤としての非金属材料を介在させることなく、金属繊
維の表面焼結溶融によって繊維間強度を保ち、かつ該繊
維表面に導電性金属を融着させた厚さの薄い緻密な網状
構造の均質な導電性シートである。
【0006】本発明に用いる金属繊維としては、細線加
工が可能で耐熱性、耐錆性のあるステンレス繊維が必須
構成成分として使用され、その他必要に応じてチタン、
アルミニウム、銀、銅、真ちゅう等の繊維が配合され
る。その性状は、特に繊維径2〜16μm、繊維長2〜
12mmのものが好ましい。
【0007】本発明にいう導電性金属は、常温で体積固
有抵抗が1×10-5 Ω−cm以下の金属で、例えば
銅、銀、アルミニウム、亜鉛、マグネシウムが挙げら
れ、それらの中でも銅が本発明に好適に使用できる。
【0008】本発明において、ステンレス繊維の含有率
が導電性金属に対して90重量%を越えると、シートの
導電性が十分に得られず、また50重量%に満たない場
合は、焼結時の繊維間の焼結融合が十分でないため、シ
ートの物理強度が十分に得られないので好ましくない。
【0009】本発明は、さらに次の第2の方法及び第3
の方法からなる金属繊維焼結シートの製造方法である
【0010】第2の方法は、ステンレス繊維を主成分と
する金属繊維70〜95重量部とバインダー繊維5〜3
0重量部とからなるスラリーを湿式抄紙法によリシート
化して金属繊維シートを作成し、然るのち該シートの表
面に微細状導電性金属を散布し、無酸素雰囲気下に金属
繊維の融点を越えない温度かつ導電性金属の融点以上の
温度で加熱して繊維間を焼結するとともに、該金属繊維
の表面に導電性金属を融着させることを特徴とする。
【0011】また第3の方法はステンレス繊維を主成分
とする金属繊維70〜95重量部とバインダー繊維5〜
30重量部からなるスラリーを湿式抄紙法にてシート化
して金属繊維シートを作成し、然るのち該シートを無酸
素雰囲気下で金属繊維の融点を越えない温度で加熱して
繊維間を予め焼結して得た金属繊維の表面に微細状導電
性金属を散布し、再度無酸素雰囲気下で金属繊維の融点
を越えない温度かつ導電性金属の融点以上の温度にて加
熱し、該金属繊維の表面に導電性金属を融着させること
を特徴とするものである。
【0012】本発明において、用いられる微細状導電性
金属としては繊維状小片もしくは粉末状等の銅、銀、ア
ルミニウム、亜鉛、マグネシウムあるいはその合金、ろ
う材、炭酸銅が適用できる。ろう材としては、銀ろう、
黄銅ろう、りん銅ろう、アルミニウム合金ろう等が挙げ
られる。
【0013】本発明において、湿式抄紙の際に配合する
バインダーとしては、例えばクラレ社製のフィブリボン
ドVPB105−1−3(商品名)として知られる水中
溶解度70℃のPVA繊維やダイセル化学工業社製の微
細化セルロースが好適に使用できる。
【0014】本発明における焼結温度条件としては、金
属繊維の融点を越えない温度かつ導電性金属の融点以上
の温度、例えば、ステンレス繊維の場合は約1200℃
を焼成温度に設定して焼結する。この場合、焼結を水素
ガス単独の連続焼結炉で行ってもよいし、窒素ガス等の
不活性ガス雰囲気炉の前工程と水素ガス雰囲気炉の後工
程とを併用した連続焼結炉で行ってもよい。
【0015】本発明においては、焼結炉における加熱の
過程でまず金属繊維シート中のバインダーである非金属
繊維が約400℃で熱分解するので、一旦金属繊維間の
結合状態が失われてシートのハンドリング性もなくなる
が、更に昇温し、例えばステンレス繊維の場合約800
℃で金属繊維の一部が焼結しはじめ繊維間結合が生じ、
ハンドリング性のある機械強度の大きいシートを得るこ
とができる。この際、溶融した導電性金属が金属繊維の
表面を被覆して融着することができる。
【0016】本発明においては、上記の焼結工程で金属
繊維シートに新たに機能を付与できるほか、その添加量
によって、性能を容易にコントロールできるという作用
効果を有する。また金属繊維間の結合、交絡状態をより
安定な密着状態にするために焼結工程の前後、もしくは
焼結時に加圧処理を施すことも可能であり、その場合1
0数μmの極めて薄い平滑な多孔性金属焼結シートを得
ることができる。
【0017】
【実施例】以下に実施例をもって本発明をさらに詳細に
説明する。 実施例1 繊維長4mm、繊維径8μmのステンレス繊維(商品名
サスミック、東京製綱社製)60重量部、微細状導電性
金属として繊維長4mm、繊維径30μmの銅繊維(商
品名カプロン、エスコ社製)20重量部、及び水中溶解
度70℃であるPVA繊維(フィブリボンドVPB10
5−1−3クラレ社製)20重量部からなるスラリーを
湿式抄紙法によって脱水プレス、加熱乾燥し100g/
2 の金属繊維シートを得た。得られた該シートを表面
温度が160℃の加熱ロールを用い線圧300kg/c
m、速度5m/minの条件で加熱圧着した。次に上記
の圧着した金属繊維シートを加圧を施すことなく水素ガ
ス雰囲気の連続焼結炉(メッシュベルト付ろう付炉)を
用い、熱処理温度1120℃、速度15cm/minで
焼結処理を行い坪量80g/m2 、密度1.69g/cm
3 のステンレス繊維表面に銅が融着して被覆された本発
明による金属繊維焼結シートを得た。更に得られたシー
トを金属ロール間で処理を施し、加圧処理後の本発明の
金属繊維焼結シートを得た。
【0018】実施例2 繊維長4mm、繊維径8μmのステンレス繊維(サスミ
ック、東京製綱社製)60重量部、微細状導電性金属と
して炭酸銅(CuCO3・Cu(OH)2・H2O和光純
薬工業社製)30重量部、及び水中溶解度70℃である
PVA繊維(フィブリボンドVPB105−1−3クラ
レ社製)10重量部からなるスラリーを湿式抄紙法で脱
水プレス、加熱乾燥して、100g/m2 の金属繊維シ
ートを得た。該シートを表面温度が160℃の加熱ロー
ルを使用し線圧300kg/cm、速度5m/minの
条件で加熱圧着した。次に該圧着シートを加圧を施すこ
となく水素ガス雰囲気の還元焼結炉を用い、熱処理温度
1120℃、速度15cm/minで焼結処理を行い、
坪量74g/m2 、密度1.61g/cm3 のステンレス
繊維表面に銅が融着された本発明による金属繊維焼結シ
ートが得られた。得られた該シートを、さらに金属ロー
ル間で処理することによって加圧処理後の本発明の金属
繊維焼結シートを得た。
【0019】実施例3 繊維長4mm、繊維径8μmのステンレス繊維(サスミ
ック、東京製綱社製)90重量部、及び水中溶解度70
℃であるPVA繊維(フィブリボンドVPB105−1
−3クラレ社製)10重量部からなるスラリーを湿式抄
紙法で脱水プレス、加熱乾燥して、80g/m2 の金属
繊維シートを得た。次に該シートを表面温度が160℃
の加熱ロールを使用して、線圧300kg/cm、速度
5m/minの条件で加熱圧着した。さらに、1m2
該圧着シートに銅繊維(繊維長2mm、繊維径30μ
m、商品名カプロン、エスコ社製)30gを概ね均一に
散布し、加圧を施すことなく、水素ガス雰囲気の還元焼
結炉を用いて、熱処理温度1120℃、速度15cm/
minで焼結処理を行い、坪量101g/m2 、密度
1.71g/cm3 のステンレス繊維表面に銅が融着して
被覆された本発明による金属繊維焼結シートを得た。更
に得られたシートを金属ロール間で処理を施し、加圧処
理後の本発明の金属繊維焼結シートを得た。
【0020】実施例4 繊維長4mm、繊維径8μmのステンレス繊維(サスミ
ック、東京製綱社製)90重量部、及び水中溶解度70
℃であるPVA繊維(フィブリボンドVPB105−1
−3クラレ社製)20重量部からなるスラリーを湿式抄
紙法で脱水プレス、加熱乾燥して、坪量79g/m2
金属繊維シートを得た。得られた該シートを表面温度が
160℃の加熱ロールを使用して、線圧300kg/c
m、速度5m/minの条件で加熱圧着した。次に、前
記の圧着した金属繊維シートを加圧を施すことなく、水
素ガス雰囲気の連続焼結炉(メッシュベルト付ろう付
炉)を用い、熱処理温度1120℃、速度15cm/m
inで焼結処理を行い、坪量81g/m2 、密度1.7
g/cm3のステンレス繊維焼結シートを得た。さらに、
該シート1m2 に銅繊維(繊維長2mm、繊維径30μ
m、商品名カプロン、エスコ社製)30gを概ね均一に
散布し、加圧を施すことなく水素ガス雰囲気の還元焼成
炉を用い、再度熱処理温度1100℃、速度30cm/
minで焼成処理を行い、坪量100g/m2 、密度
1.75g/cm3 のステンレス繊維表面に銅が融着して
被覆された本発明による金属繊維焼結シートを得た。さ
らに、得られたシートを金属ロールで処理を施し、加圧
処理後の本発明の金属繊維焼結シートを得た。
【0021】比較例1 繊維長4mm、繊維径8μmのステンレス繊維(商品名
サスミック、東京製綱社製)90重量部と水中溶解度7
0℃であるPVA繊維(フィブリボンドVPB105−
1−3クラレ社製)10重量部からなるスラリーを湿式
抄紙法で脱水プレス、加熱乾燥して、78g/m2 の金
属繊維シートを得た。次に該シートを加圧を施すことな
く水素ガス雰囲気下に処理温度1180℃、20cm/
分の速度の条件で焼結し、坪量75g/m2 、密度1.
65g/cm3 の比較例の金属繊維焼結シートを作成し
た。得られたシートを金属ロール間で処理をすることに
よって加圧処理後の比較用の金属繊維焼結シートを得
た。
【0022】実施例1〜4および比較例の性状および特
性についての試験結果を表1に示す。表から明らかなと
おり、本発明の金属繊維焼結シートは薄葉シートであり
ながら導電性の向上が確認できた。
【0023】
【表1】 注1) 空隙率の計算方法:d×100/(Ws・ds
+WM・dM) d:焼結シートの密度の実測値、Ws:シート中のステ
ンレス繊維の配合量、WM:シート中の微細状導電性金
属の配合量、ds:ステンレス繊維の比重、dM:微細
状導電性金属の比重 注2) 体積固有抵抗の測定:長さ70mm、巾50m
mの試験片の長さ方向の両端をクリップ状電極にスパン
50mmになるようにはさみ、通電して電圧および電流
を測定して得られた実測抵抗値から次式により算出し
た。 体積固有抵抗(Ω−cm)=R×S/l 但しRは実測抵抗値 S:試料の断面積(cm2) l:スパン距離(cm)
【0024】
【発明の効果】本発明の金属繊維焼結シートは体積固有
抵抗が非常に低く、厚さが20μm程度の緻密な網状構
造のシートとして得られるので、半導体装置、精密コネ
クター等の諸電子機器用導電部材として広範な用途に利
用できる。
【図面の簡単な説明】
「繊維の形状を示す写真」
【図1】本発明の実施例1における銅を表面に融着した
ステンレス繊維焼結シートの表面写真。
【図2】比較例におけるステンレス繊維焼結シートの表
面写真。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭64−79307(JP,A) 特開 昭50−133107(JP,A) 特開 昭57−169002(JP,A)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ステンレス繊維を主成分とする金属繊維
    50〜90重量部と微細状導電性金属10〜50重量部
    とからなる導電材料およびバインダー繊維を含有するス
    ラリーを湿式抄紙法によりシート化して金属繊維シート
    を作成し、然るのち該シートを無酸素雰囲気下に金属繊
    維の融点を越えない温度かつ導電性金属の融点以上の温
    度に加熱して、繊維間を焼結するとともに、該金属繊維
    の表面に導電性金属を融着せしめることを特徴とする金
    属繊維焼結シートの製造方法。
  2. 【請求項2】 ステンレス繊維を主成分とする金属繊維
    70〜95重量部とバインダー繊維5〜30重量部とか
    らなるスラリーを湿式抄紙法によりシート化して金属繊
    維シートを作成し、然るのち、該シートの表面に微細状
    導電性金属を散布し、無酸素雰囲気下に金属繊維の融点
    を越えない温度かつ導電性金属の融点以上の温度で加熱
    して、繊維間を焼結するとともに、該金属繊維の表面に
    導電性金属を融着せしめたことを特徴とする金属繊維焼
    結シートの製造方法。
  3. 【請求項3】 ステンレス繊維を主成分とする金属繊維
    70〜95重量部とバインダー繊維5〜30重量部とか
    らなるスラリーを湿式抄紙法によりシート化して金属繊
    維シートを作成し、然るのち該シートを無酸素雰囲気下
    で金属繊維の融点を越えない温度で加熱して繊維間を予
    め焼結して得た金属繊維の表面に微細状導電性金属を散
    布し、再度、無酸素雰囲気下で金属繊維の融点を越えな
    い温度かつ導電性金属の融点以上の温度にて加熱し、該
    金属繊維の表面に導電性金属を融着せしめたことを特徴
    とする金属繊維焼結シートの製造方法。
  4. 【請求項4】 微細状導電性金属が繊維状の小片もしく
    は粉末状の銅、銀、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム
    あるいはその合金、炭素銅から選ばれた少なくとも1種
    であることを特徴とする請求項1、2、又はに記載の
    金属繊維焼結シートの製造方法。
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