JP2558899Y2 - 工作機械用着脱式主軸公転制御ユニット - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、工作機械の主軸等に自
由に装着，取り外しできるようにした着脱式主軸公転制
御ユニットに関し、詳細には繰り出し主軸を備えた工作
機械において使用でき、スライド主軸の軸方向動作を利
用することにより、公転径を調整するための専用の駆動
機構を設けることなく主軸公転制御を可能にした公転制
御ユニットに関する。

【０００２】

【従来の技術】工作機械の公転制御装置は、加工軸の主
軸に対する偏心量を調整可能に構成することにより、刃
具を加工軸回りに自転させ、かつ上記偏心量を変化させ
て公転径を調整しながら公転させるようにした装置であ
る。上記刃具の公転制御を行う構造として従来、例えば
特公平2-25737 号公報に記載されたものがある。これは
主軸に結合される回転体と、該回転体の先端に径方向に
移動可能に連結された横動部材と、この横動部材に上記
回転体の回転中心に対する偏心量を調整可能に連結され
た工具回転駆動用エアモータと、上記横動部材を微動さ
せる偏心量調整手段と、該調整手段を作動状態，休止状
態に切り換えるピストンとを備えた構造となっている。
この従来装置では、刃具の公転は主軸で行い、自転は専
用のエアモータで行なうようになっており、また刃具の
偏心量の調整は、これも専用の調整手段，及びピストン
によって行うようになっている。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】しかしながら上記従来
の主軸公転制御ユニットは刃具を自転させるための専用
のエアーモータが必要であり、また主軸回転を刃具の公
転駆動と公転径制御駆動に切替えて使用するため複雑な
切替機構が必要で、刃具を公転させながら公転径を制御
する同時動作が出来ないという問題がある。

【０００４】本考案は、上記従来の状況に鑑みてなされ
たもので、別個独立の専用駆動源、専用機構を必要せ
ず、刃具の公転及び公転径を同時制御できる繰出し主軸
を備えた工作機械用着脱式主軸公転制御ユニットを提供
することを目的としている。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本考案は、主軸ケース内
に回転自在に配設された回転主軸と、該回転主軸内に該
回転主軸と共に回転しかつ軸方向に移動可能に挿入さ
れ、先端部に刃具が装着されるスライド主軸とからなる
繰り出し主軸を備えた工作機械に着脱可能に装着される
主軸公転制御ユニットであって、上記回転主軸に着脱可
能にかつ該回転主軸と共に回転するように装着されるユ
ニットケースと、該ユニットケースに上記回転主軸と直
角方向に移動可能に装着された公転ケースと、該公転ケ
ースに上記回転主軸と平行の加工軸回りに回転可能に装
着された刃具と、上記回転主軸の回転を上記刃具に増速
して伝達する回転駆動機構と、上記スライド主軸の軸方
向動作により上記公転ケースを上記回転主軸と直角方向
に移動させる径方向駆動機構とを備えたことを特徴とし
ている。

【０００６】

【作用】本考案に係る着脱式主軸公転制御ユニットで
は、回転主軸の回転が回転駆動機構によって旋回刃具に
増速して伝達され、これにより刃具が加工軸回りに回転
する。そしてこの場合に、スライド主軸を軸方向に移動
させると、この軸方向動作によって径方向駆動機構が公
転ケースを回転主軸と直角方向に移動させ、これにより
公転径が制御される。

【０００７】

【実施例】以下、本考案の実施例を図について説明す
る。図１ないし図３は本考案の一実施例による着脱式主
軸公転制御ユニットを説明するための図であり、図１は
該実施例ユニットを工作機械に装着した状態の断面側面
図、図２は上記制御ユニットを装着する前の刃具を装着
した状態の断面側面図、図３は該実施例工作機械の概略
構成図である。

【０００８】図３において、１は本実施例の主軸公転制
御ユニットを装着できるように構成された工作機械の繰
り出し主軸である。この繰り出し主軸１の主軸ケース１
ｃはベース８によって図示Ｚ軸方向に移動可能に支持さ
れており、該ケース１に固着されたボールナット１ａに
Ｚ軸ボールねじ１ｂを螺挿し、該ボールねじ１ｂを主軸
送りモータＭ２で回転駆動することにより、Ｚ軸方向に
移動可能になっている。

【０００９】また上記主軸ケース１ｃ内には回転主軸２
が軸受３ａ〜３ｃによって回転可能かつ軸方向移動不能
に挿入配置されている。この回転主軸２は、伝達機構４
ａ，４ｂを介して主軸駆動モータＭ１によって回転駆動
される。また上記回転主軸２内にはスライド主軸５が軸
方向に摺動可能に挿入されている。このスライド主軸５
はスベリキー６によって上記回転主軸２に回転方向に固
定されており、該回転主軸５と共に回転する。またこの
スライド主軸５の軸芯にはドロー穴５ａが貫通形成され
ており、その前端部には刃具Ｔ１を保持するテーパ状の
保持穴５ｂが形成されている。

【００１０】また上記ドロー穴５ａ内には、ドローバー
５ｂが挿入されている。このドローバー５ｂは、上記保
持穴５ｂ内に挿入された刃具Ｔ１（図２参照）をロック
するコレット５ｃを図示右方に引っ張り、又は上記刃具
Ｔ１を突き出すためのものである。なお、５ｅは上記ド
ローバー５ｄをロック方向に付勢する皿ばね、５ｆはド
ローバー５ｄをロック解除方向に押圧する解除ロッドで
ある。

【００１１】また上記スライド主軸５の後端部にはブラ
ケット７が軸受７ａを介して装着されている。このブラ
ケット７に固着されたボールナット７ｃにはスライド主
軸駆動用ボールねじ７ｂが螺挿されており、該ボールね
じ７ｂは駆動モータＭ３で回転駆動される。これによ
り、上記スライド主軸５は回転主軸２と共に回転し、か
つＺ軸方向に繰り出し可能となっている。

【００１２】図１において、１０は本実施例の主軸公転
制御ユニットであり、これは上記回転主軸２に対して着
脱可能に、かつ該回転主軸２と共に回転するように装着
されたユニットケース１１と、該ユニットケース１１に
Ｚ軸と直角方向に移動可能に装着された公転ケース１２
と、該公転ケース１２にＺ軸と平行の加工軸Ａ回りに回
転可能に装着された刃具Ｔ２と、該刃具Ｔ２に上記回転
主軸２の回転を上記加工軸Ａ回りの回転に変換し、かつ
増速して伝達する回転駆動機構２４と、上記スライド主
軸５の軸方向動作を上記刃具Ｔ２の上記Ｚ軸と直角方向
の動作に変換して上記公転ケース１２に伝達する径方向
駆動機構２１とから構成されている。

【００１３】上記ユニットケース１１は、角筒状のもの
で、その先端部内面には一対のガイド溝１１ｃがＺ軸と
直角方向に延びるように形成されている。また該ユニッ
トケース１１の基部１１ａは上記回転主軸の先端のテー
パ部２ａに嵌合し、かつ固定ナット１６で固定されてい
る。これによりこのユニットケース１１は、上記回転主
軸２に着脱可能で、かつ該回転主軸２と共に回転するよ
うになっている。

【００１４】上記公転ケース１２の後端面には上記径方
向駆動機構２１の一部を構成するラックギヤ１２ｂが上
記Ｚ軸と直角方向を進行方向とするように形成されてい
る。またこの公転ケース１２の後部には一対のガイド片
１２ａが形成されており、このガイド片１２ａは上記ユ
ニットケース１１のガイド溝１１ｃによってＺ軸と直角
方向に摺動可能に支持されている。また上記公転ケース
１２にはこれの加工軸Ａに一致するように、上記回転駆
動機構２４の一部を構成する太陽軸１３が挿入され、回
転自在に軸支されている。この太陽軸１３の先端突出部
には刃具Ｔ２が着脱可能に装着されている。この刃具Ｔ
２はボディ１９ａの先端に回転砥石１９ｂを固着してな
り、上記ボディ１９ａが固定ナット１８で上記太陽軸１
３に着脱可能に固定されている。

【００１５】また上記回転駆動機構２４は、上記回転主
軸２にユニットケース１１及び公転ケース１２の組立体
を結合するとともに、該公転ケース１２内に、太陽軸１
３，複数の遊星軸１４を回転自在に配置し、各軸に形成
された太陽ローラー１３ａ，遊星ローラー１４ａを圧接
させ、またこの各遊星ローラー１４ａをこれらを囲むよ
うに配置された固定リング１５の固定軸１５ａに圧接さ
せた構造となっている。なお、上記固定リング１５は結
果的に上記複数の遊星軸１４で支持されており、かつ該
固定リング１５のスライド溝１５ｂに軸直角方向にスラ
イド可能に係止された係止ピン１５ｃを固定フランジ１
７の係止孔１７ａに係止させることによって、回り止め
されている。

【００１６】上記径方向駆動機構２１は、上記スライド
主軸５の保持穴５ｂに保持されたホルダ２２の前部にラ
ックギヤ２２ａを主軸Ｚ方向が進行方向となるよう形成
し、これにピニオンギヤ２３ａを噛合させるとともに、
該ピニオンギヤ２３ａを中間ギヤ２３ｂ〜２３ｄを介し
て上記公転ケース１２のラックギヤ１２ｂに噛合させた
構造となっている。

【００１７】次に本実施例装置の作用効果について説明
する。本実施例の工作機械を通常の状態で使用する場合
は、図２，図３に示すように、スライド主軸５に刃具Ｔ
１を装着し、この状態で回転主軸２を主軸駆動モータＭ
１により伝達機構４ａ，４ｂを介して回転駆動すれば、
これにより回転主軸２と共にスライド主軸５も回転す
る。またこの状態で駆動モータＭ３の回転により、ボー
ルねじ７ｂ，ボールナット７ｃ及びブラケット７を介し
てスライド主軸５が軸方向に移動し、これにより加工が
行われる。

【００１８】そして主軸公転制御を行う場合は、まず上
記解除ロッド５ｆでドローバー５ｄを前進させることに
よりスライド主軸５から刃具Ｔ１を取り外し、主軸公転
制御ユニット１０を装着する。この場合、ホルダ２２を
スライド主軸５の保持穴５ｂ内に挿入し、これの掛止片
２２ｂにコレット５ｃを掛止させるとともに解除ロッド
５ｆを後退させれば、皿ばね５ｅの付勢力によりドロー
バー５ｄが上記コレット５ｃを引っ張り、上記ホルダ２
２を保持穴５ｂ内にロックする。そしてさらにユニット
ケース１１を、これの基部１１ａを回転主軸２の先端テ
ーパ部２ａに嵌合させるとともに固定ナット１６で固定
する。またこの時、固定リング１５の掛止ピン１５ｃを
固定フランジ１７の掛止孔１７ａ内に掛止させて固定リ
ング１５の回り止めを行う。

【００１９】上記主軸公転制御ユニット１０を装着した
後、主軸駆動モータＭ１で回転主軸２を回転駆動する。
するとこの回転主軸２と共にスライド主軸５が回転し、
またこの回転主軸２の回転が回転駆動機構２４によっ
て、ユニットケース１１，公転ケース１２から遊星軸１
４を経て太陽軸１３に増速されて伝達され、これにより
刃具Ｔ２が加工軸Ａ回りに高速回転する。なお、この場
合のＺ軸方向の送りについては、主軸送りモータＭ２に
よって主軸ケース１ｃごと繰り出し主軸１を移動させる
ことによって行う。

【００２０】そして主軸の公転制御、つまり上記加工軸
ＡのＺ軸からの偏位量の制御については、上記繰り出し
モータＭ３によりスライド主軸５をＺ軸方向に送ること
により行う。即ち、スライド主軸５の移動に伴ってホル
ダ２２がＺ軸方向に移動し、これのラックギヤ２２ａに
よってピニオンギヤ２３ａが回転し、この回転が中間ギ
ヤ２３ｂ〜２３ｄを介して公転ケース１２のラックギヤ
１２ｂに伝達され、その結果刃具Ｔ２が公転ケース１２
と共にＺ軸と直角方向に移動し、公転制御が行われる。

【００２１】このように本実施例では、主軸公転制御ユ
ニット１０を装着することにより通常の繰り出し加工の
機構，及び機能はそのままに保持しながら主軸公転制御
加工を１台の工作機械で実現できる。

【００２２】そしてこの場合、通常の繰り出し加工を行
うための駆動モータＭ３，ボールねじ７ｂ等及びスライ
ド主軸５をそのまま主軸公転制御の駆動源として利用す
ることができ、上述の従来例のような別個独立の主軸公
転制御専用の駆動源を必要としないからそれだけコスト
高の問題を回避できる。

【００２３】

【考案の効果】以上のように本考案に係る工作機械の着
脱式主軸公転制御ユニットによれば、該ユニットを回転
主軸部分に装着することにより、一般的な繰り出し加工
と、刃具の公転半径を変化させる主軸公転制御加工の両
方を１台の工作機械で実現できる効果があり、またこの
場合にスライド主軸の軸方向動作を公転制御動作に変換
して刃具を移動させるようにしたので、主軸公転制御専
用の駆動源が不要となり、構造，制御構成を簡素化でき
る効果がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の一実施例による主軸公転制御ユニット
の装着状態を示す断面側面図である。

【図２】上記主軸公転制御ユニットの代わりに刃具を装
着した状態の断面側面図である。

【図３】上記実施例ユニットが装着される繰り出し主軸
の概略構成図である。

【符号の説明】

１ 繰り出し主軸 １ｃ 主軸ケース ２ 回転主軸 ５ スライド主軸 １０ 主軸公転制御ユニット １１ ユニットケース １２ 公転ケース ２４ 回転駆動機構 ２１ 径方向駆動機構 Ａ 加工軸 Ｔ１ 刃具 Ｔ２ 刃具

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 主軸ケース内に回転自在に配設された回
   転主軸と、該回転主軸内に該回転主軸と共に回転しかつ
   軸方向に移動可能に挿入され、先端部に刃具が装着され
   るスライド主軸とからなる繰り出し主軸を備えた工作機
   械に着脱可能に装着される主軸公転制御ユニットであっ
   て、上記回転主軸に着脱可能にかつ該回転主軸と共に回
   転するように装着されるユニットケースと、該ユニット
   ケースに上記回転主軸と直角方向に移動可能に装着され
   た公転ケースと、該公転ケースに上記回転主軸と平行の
   加工軸回りに回転可能に装着された刃具と、上記回転主
   軸の回転を上記刃具に増速して伝達する回転駆動機構
   と、上記スライド主軸の軸方向動作により上記公転ケー
   スを上記回転主軸と直角方向に移動させる径方向駆動機
   構とを備えたことを特徴とする工作機械用着脱式主軸公
   転制御ユニット。