JP2557868Y2 - ガイドピン型ディスクブレーキ - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案に係るガイドピン型ディス
クブレーキは、自動車の制動に使用するガイドピン型デ
ィスクブレーキの改良に関し、ガイドピンを螺子止め固
定する作業の容易化を図るものである。

【０００２】

【従来の技術】自動車の制動に使用するディスクブレー
キとして従来から、例えば実公昭５６−５５４６１号公
報に記載された様な、ガイドピン型ディスクブレーキが
知られている。この従来のガイドピン型ディスクブレー
キは、図３に示す様に、車輪と共に回転するロータ１の
内側（車両の中央側を言い、図３で上側。）でサポート
２を、車体に固定している。このサポート２には１対の
パッド６、６を、上記ロータ１の両側に位置させた状態
で設けると共に、キャリパ４を支持している。このキャ
リパ４には、各パッド６、６を上記ロータ１の両側面に
押圧する為のピストン１０を内装している。

【０００３】上記キャリパ４の両端部に設けられた１対
の腕部７、７には１対のガイドピン３、３の基端部を支
持している。又、上記サポート２の両端部には１対のガ
イド筒部９、９を、上記１対のガイドピン３、３同士の
間隔と同じ間隔で設けている。そして、各ガイド筒部
９、９の内側に上記ガイドピン３、３を挿入する事によ
り、上記キャリパ４を上記サポート１に対し、ロータ１
の軸方向（図３の上下方向）の変位自在に支持してい
る。

【０００４】上記１対のガイドピン３の基端部をキャリ
パ４に設けた腕部７、７に固定する部分は、図３、４に
示す様に構成している。即ち、キャリパ４の一部で、ロ
ータ１の内側面よりも内側に寄った部分に形成した１対
の腕部７、７には、上記ロータ１の軸方向に亙る円孔８
を形成すると共に、各円孔８にボルト１２を、それぞれ
内側から挿通して、その先端部を各腕部７、７から外方
に突出させている。そして、各ボルト１２の先端部に設
けた螺子部を、各ガイドピン３の基端部に形成した螺子
孔１３に螺入し緊締する事で、各ガイドピン３をキャリ
パ４に対し固定している。

【０００５】上述の様にしてキャリパ４に対し支持固定
されたガイドピン３の先端部は、サポート２に形成され
たガイド筒部９、９に、摺動自在に挿入している。この
結果前述の様にキャリパ４がサポート２に対して、上記
ロータ１の軸方向に亙る変位を自在として支持される。
ガイドピン３の基端部とガイド筒部９、９の開口部との
間には、ゴム製のダストカバー１６、１６を装着して、
ガイドピン３とガイド筒部９、９との摺動部への塵芥等
の進入防止を図っている。

【０００６】上述の様に構成されるガイドピン型ディス
クブレーキにより制動を行なう場合、キャリパ４のシリ
ンダ部５に圧油を送り込み、このシリンダ部５に嵌装さ
れたピストン１０を、車輪と共に回転するロータ１に向
けて押し出す。このピストン１０の押し出しにより、先
ず内側のパッド６がロータ１の内側面に押し付けられ、
この反作用としてキャリパ４が、ガイドピン３とガイド
筒部９、９とを互いに摺動させつつ図３の上方に移動す
る。

【０００７】この様にキャリパ４が移動する事により、
ロータ１の外側に位置するパッド６が、上記キャリパ４
の外端部に形成された爪部１１、１１によってこのロー
タ１の外側面に押し付けられる。この結果、車輪と共に
回転するロータ１は内外から強く挟持され、制動が行な
われる。

【０００８】内外１対のパッド６、６の摩擦材は、制動
を繰り返し行なう事により次第に摩耗するが、摩耗した
パッド６、６を交換する場合、先ず、一方（例えば図３
の左方）のガイドピン３をキャリパ４に固定しているボ
ルト１２を緩めて、このボルト１２をガイドピン３の螺
子孔１３及びキャリパ４の腕部７に形成した円孔８の内
側から抜き取る。次いで、キャリパ４を他方（例えば図
３の右方）のガイドピン３を中心として回動させる事に
より、このキャリパ４を上記パッド６、６の周囲から退
避させる。この様にしてキャリパ４をパッド６、６の周
囲から退避させたならば、古くなったパッド６、６をサ
ポート２から取り外し、新しいパッドをサポート２に装
着する。

【０００９】新しいパッドをサポート２に装着し終った
ならば、再びキャリパ４をガイドピン３を中心として、
上述の場合とは逆方向に回動させる事により、このキャ
リパ４をパッド６、６の周囲に移動させ、上記腕部７の
円孔８に挿通したボルト１２をガイドピン３の螺子孔１
３に螺入し緊締する事で、パッド６、６の交換作業を終
了する。

【００１０】この様にして行なうパッド６、６の交換作
業時に、螺子孔１３へのボルト１２の螺合緊締作業を容
易に行なえる様にする為には、ボルト１２の回動に伴な
ってガイドピン３が回動しない様にする必要がある。こ
の為、前記実公昭５６−５５４６１号公報に記載された
構造の場合、図５に示す様に、ガイドピン３の基端部に
平坦面１４を形成すると共に、前記腕部７、７の基端部
に、この平坦面１４と係合する段部１５、１５（図３）
を形成していた。

【００１１】パッド６、６を交換した後（或はディスク
ブレーキを新規に組み立てる際に）、ボルト１２を螺子
孔１３に螺合させる際には、上記平坦面１４と段部１５
とが係合して、ガイドピン３が回動するのを阻止する
為、上記螺子孔１３へのボルト１２の螺合緊締作業を容
易に行なえる。

【００１２】

【考案が解決しようとする課題】ところが、上述の様
に、腕部７、７の基端部に直線的な段部１５、１５を形
成する作業は面倒で、ガイドピン型ディスクブレーキの
製作費を高くする原因となる。

【００１３】又、キャリパ４をパッド６、６の周囲から
退避させて新旧のパッド６、６を交換した後、再びキャ
リパ４をガイドピン３を中心として回動させ、このキャ
リパ４をパッド６、６の周囲に移動させた場合に、腕部
７の円孔８とガイドピン３の螺子孔１３とを一致させる
作業が面倒で、パッド交換作業を行なう為に腕部７から
取り外したガイドピン３の、再取付作業が面倒になる。

【００１４】そこで本考案は、上述の様な段部１５、１
５がなくても、ガイドピン３が腕部７、７に対して回動
する事のない様にすると同時に、腕部７の円孔８とガイ
ドピン３の螺子孔１３とを容易に一致させられる様にす
る事で、上述の様な面倒をなくすものである。

【００１５】

【課題を解決するための手段】本考案のガイドピン型デ
ィスクブレーキは、前述したガイドピン型ディスクブレ
ーキと同様に、車輪と共に回転するロータと、このロー
タの内側で車体に支持されるサポートと、このサポート
に支持されて上記ロータの両側に位置する１対のパッド
と、このパッドを上記ロータの両側面に押圧する為のピ
ストンを内装したキャリパと、このキャリパと上記サポ
ートとの一方の部材の両端部に設けられた１対の腕部
と、各腕部にその基端部を支持された１対のガイドピン
と、上記キャリパと上記サポートとの他方の部材の両端
部に設けられ、それぞれの内側に上記ガイドピンを挿入
する事で、上記キャリパを上記サポートに対してロータ
の軸方向の変位自在に支持するガイド筒部とから構成さ
れる。

【００１６】そして、上記１対の腕部の内、少なくとも
一方の腕部に、上記ロータの軸方向に亙る円孔を形成す
ると共に、この円孔に、上記腕部の一方の側からボルト
を挿通し、このボルトの先端部を、上記腕部の他方の側
に設けられたガイドピン端面の螺子孔に螺合する事で、
上記１対のガイドピンの内の少なくとも一方のガイドピ
ンを腕部に支持している。

【００１７】更に、本考案のガイドピン型ディスクブレ
ーキに於いては、上記一方のガイドピンの基端部に、こ
のガイドピンの軸心を中心とする円弧面とは一致しない
位置決め面を、上記一方の腕部の外側面端部に、上記位
置決め面と衝合自在で、ピストンの嵌合するシリンダ部
と同心の円弧面である内周面を持つ位置決め壁を、それ
ぞれ形成すると共に、位置決め面と位置決め壁との衝合
時に、上記円孔と螺子孔とがほぼ一致する様に、各部の
寸法を定めた事を特徴としている。

【００１８】

【作用】上述の様に構成される本考案のガイドピン型デ
ィスクブレーキにより、車両の制動を行なう際の作用自
体は、前述した従来のガイドピン型ディスクブレーキの
場合と同様である。

【００１９】更に、本考案のガイドピン型ディスクブレ
ーキに於いては、新旧のパッドを交換した後、キャリパ
をガイドピンを中心として回動させ、このキャリパをパ
ッドの周囲に移動させた場合に、ガイドピン基端部の位
置決め面と位置決め壁とが衝合して、腕部の円孔とガイ
ドピンの螺子孔とが一致すると同時に、腕部に対してガ
イドピンが回動するのが阻止される。この結果、ボルト
をガイドピン端面の螺子孔に螺合し、更に緊締する作業
を容易に行なえる。

【００２０】

【実施例】次に、図１、２に示した実施例に就いて説明
する。

【００２１】本考案のガイドピン型ディスクブレーキ
は、前述したガイドピン型ディスクブレーキと同様、図
３に示す様に、車輪と共に回転するロータ１と、このロ
ータ１の内側で車体に支持されるサポート２と、このサ
ポート２に支持されて上記ロータ１の両側に位置する１
対のパッド６、６と、このパッド６、６を上記ロータ１
の両側面に押圧する為のピストン１０を内装したキャリ
パ４と、このキャリパ４の両端部に設けられた１対の腕
部７、７と、各腕部７、７にその基端部を支持された１
対のガイドピン３、３と、上記サポート２の両端部に設
けられ、それぞれの内側に上記ガイドピン３、３を挿入
する事により、上記キャリパ４を上記サポート２に対
し、ロータ１の軸方向の変位自在に支持するガイド筒部
９、９とから構成されている。

【００２２】そして、やはり前述した従来のガイドピン
型ディスクブレーキと同様、図４に示す様に、上記１対
の腕部７に、上記ロータ１の軸方向に亙る円孔８を形成
すると共に、この円孔８に、上記腕部７の内側からボル
ト１２を挿通し、このボルト１２の先端部を、上記腕部
７の外側に設けられたガイドピン３内端面の螺子孔１３
に螺合する事により、上記１対のガイドピン３を腕部７
に支持している。

【００２３】更に、本考案のガイドピン型ディスクブレ
ーキに於いては、上記ガイドピン３の基端部外周面に正
六角柱部１９を形成する事により、この基端部外周面
に、それぞれが位置決め面を構成する、６個の平坦面１
７、１７を形成している。一方、上記腕部７の外側面端
部には、上記６個の平坦面１７、１７の内の、何れか１
個の平坦面１７と衝合自在な位置決め壁１８を形成して
いる。そして、上記何れか１個の平坦面１７と位置決め
壁１８との衝合時に、上記円孔８と螺子孔１３とがほぼ
一致する様に、上記正六角柱部１９と位置決め壁１８と
の寸法を定めている。

【００２４】尚、図示の実施例に於いては、上記平坦面
１７と対向する位置決め壁１８の内周面２０は、キャリ
パ４内に形成するシリンダ部５（図３）の内周面と同心
の円弧面としている。この為、平坦面１７と位置決め壁
１８との衝合時に円孔８と螺子孔１３とがほぼ一致する
様に、上記内周面２０を所定寸法に仕上げる作業を、シ
リンダ部５の内周面を旋削により仕上げる際に、一連の
作業として行なえる。

【００２５】上述の様に構成される本考案のガイドピン
型ディスクブレーキにより、車両の制動を行なう際の作
用自体は、前述した従来のガイドピン型ディスクブレー
キの場合と同様である。

【００２６】更に、本考案のガイドピン型ディスクブレ
ーキに於いては、新旧のパッド６、６を交換した後キャ
リパ４を、交換作業の際に腕部７から取り外さなかった
ガイドピンを中心として回動させ、このキャリパ４をパ
ッド６、６（図３）の周囲に移動させた場合に、交換作
業の際に腕部７から取り外したガイドピン３基端部の平
坦面１７と位置決め壁１８の内周面２０とが、図２に示
す様に衝合する。この衝合の結果、腕部７に形成した円
孔８とガイドピン３の内端面に開口した螺子孔１３とが
一致すると同時に、腕部７に対してガイドピン３が回動
するのが阻止される。この結果、円孔８を挿通したボル
ト１２をガイドピン３内端面の螺子孔１３に螺合し、更
に緊締する作業を容易に行なう事が出来る。

【００２７】尚、以上の説明は、サポート２の側にガイ
ド筒部９、９を、キャリパ４の側にガイドピン３、３
を、それぞれ設けた構造に就いて説明したが、これとは
逆に、サポート２の側にガイドピン３、３を、キャリパ
４の側にガイド筒部９、９を、それぞれ設けた構造のガ
イドピン型ディスクブレーキも、従来から知られてい
る。そして本考案は、この様なガイドピン３、３とガイ
ド筒部９、９との設置部位が図面とは逆のガイドピン型
ディスクブレーキにも適用出来る。

【００２８】

【考案の効果】本考案のガイドピン型ディスクブレーキ
は、以上に述べた通り構成され作用するものであり、次
の通りの効果が得られる。 (1) ガイドピンの位置決め面（１７）と位置決め壁の円
弧面である内周面（２０）との衝合により、腕部の円孔
に挿通したボルト（１２）とガイドピンの螺子孔（１
３）とを合致させることができ、腕部とガイドピントと
の結合作業が容易になる。 (2) 位置決め壁の内周面加工は、シリンダ部の内周面を
旋削し上げる際に連続して作業することができ、この内
周面加工のために独立した段取り作業が不要になる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の実施例を示す要部平面図である。

【図２】図１のＡ−Ａ断面図である。

【図３】従来から知られたガイドピン型ディスクブレー
キの平面図である。

【図４】従来のガイドピン支持部を示す、図３のＢ−Ｂ
断面図である。

【図５】従来構造に使用されたガイドピンの側面図であ
る。

【符号の説明】

１ ロータ ２ サポート ３ ガイドピン ４ キャリパ ５ シリンダ部 ６ パッド ７ 腕部 ８ 円孔 ９ ガイド筒部 １０ ピストン １１ 爪部 １２ ボルト １３ 螺子孔 １４ 平坦面 １５ 段部 １６ ダストカバー １７ 平坦面 １８ 位置決め壁 １９ 正六角柱部 ２０ 内周面

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 車輪と共に回転するロータと、このロー
   タの内側で車体に支持されるサポートと、このサポート
   に支持されて上記ロータの両側に位置する１対のパッド
   と、このパッドを上記ロータの両側面に押圧する為のピ
   ストンを内装したキャリパと、このキャリパと上記サポ
   ートとの一方の部材の両端部に設けられた１対の腕部
   と、各腕部にその基端部を支持された１対のガイドピン
   と、上記キャリパと上記サポートとの他方の部材の両端
   部に設けられ、それぞれの内側に上記ガイドピンを挿入
   する事で、上記キャリパを上記サポートに対してロータ
   の軸方向の変位自在に支持するガイド筒部とから成り、
   上記１対の腕部の内、少なくとも一方の腕部に、上記ロ
   ータの軸方向に亙る円孔を形成すると共に、この円孔
   に、上記腕部の一方の側からボルトを挿通し、このボル
   トの先端部を、上記腕部の他方の側に設けられたガイド
   ピン端面の螺子孔に螺合する事で、上記１対のガイドピ
   ンの内の少なくとも一方のガイドピンを腕部に支持する
   ガイドピン型ディスクブレーキに於いて、上記一方のガ
   イドピンの基端部に、このガイドピンの軸心を中心とす
   る円弧面とは一致しない位置決め面を形成し、上記一方
   の腕部の外側面端部に、上記位置決め面と衝合自在で、
   ピストンの嵌合するシリンダ部と同心の円弧面である内
   周面を持つ位置決め壁を形成すると共に、位置決め面と
   位置決め壁との衝合時に、上記円孔と螺子孔とがほぼ一
   致する様に、各部の寸法を定めた事を特徴とするガイド
   ピン型ディスクブレーキ。