JP2556813B2 - 水産発酵ゲル化食品およびその製造法 - Google Patents

水産発酵ゲル化食品およびその製造法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】 水産発酵食品とその製法に関す
るもので,通常のねり製品の製造法では強固なゲルを形
成させることができない鮭すり身に,乳酸菌スターター
を添加し発酵させる事により,加熱することなく弾力性
及び風味を付与する事に関する。具体的には鮭類および
鱒類を素材とし,乳酸菌による発酵を利用して製造した
発酵ゲル化食品に関する。
【0002】
【従来の技術】 一般に魚肉ねり製品とは,魚肉を食塩
と共にすりつぶし,これに調味料等の副原料を加え加熱
したものを指す(新版魚肉ねり製品 恒星社厚生閣 1
69ページ)。魚肉ねり製品の代表的なものが蒲鉾であ
る。蒲鉾の歴史は古く,1500年前後に既に製造の記
録がある。また,各地に名産品として知られる蒲鉾があ
り,広く親しまれている。材料としての魚種は限定され
るものではないが,うま味成分に富み,ゲル形成能が高
く安価な魚種が好ましいとされる。よって複数種の魚を
混合するのが普通である。昭和30年代にスケトウダラ
すり身が開発され,原料魚の確保難に伴いスケトウダラ
すり身への依存が高まった。蒲鉾の素材として,スケト
ウダラはゲル形成能こそ十分だが,ややうま味に欠ける
欠点がある。
【0003】従来の蒲鉾の製法は,魚肉すり身をらい潰
し,食塩を加えて塩摺りする。次にグルタミン酸ナトリ
ウムなどの調味料,弾力補強剤として澱粉などを加えて
混合した後,成型する。最後に加熱によってゲルを形成
させて製品としている。また,食塩を添加したすり身を
放置し,ややゲル化させ”足”(弾力性,ゲル強度)を
増強した後加熱する方法もよく行われる。現在,スケト
ウダラを材料とする蒲鉾を製造する際には,成型したす
り身を低温下でややゲル化させた後加熱している。
【0004】塩摺り工程は,網状構造のゲルを形成させ
るのに十分な量の塩溶性タンパク質を筋原繊維から溶出
させるために行う工程である。塩摺りの際添加する食塩
は,魚肉に対して最低2.5%であり,弾力性(足)を
強くするには3〜10%添加する必要がある。通常は食
味との関係で2.5〜3.5%添加される。食塩を添加
したすり身を放置しておくと,加熱なしでも繊維状のタ
ンパク質が架橋してゲル化するが,この現象は”坐り”
と呼ばれ,魚種により”坐り”の起きやすさは異なる。
加熱により”坐り”よりもはるかに硬い溶出タンパク質
のゲルが形成されるが,一度坐らせたすり身を加熱処理
することで,より丈夫なゲルを形成させる事ができる。
したがって坐りやすい魚種は,蒲鉾製造に適していると
され,現在,蒲鉾の製造に広く利用されているスケトウ
ダラの魚肉すり身は,低温下でもよく坐る性質を持つ。
【0005】一方,鮭は放流すると回帰する性質を持
ち,鮭特有の色調に優れ,豊かな風味を持つなど,スケ
トウダラでは得られない種々の優れた特徴を持つにも関
わらず,すり身は坐りにくいとされるため,蒲鉾製造に
はあまり利用されていない。鮭にはアミノ酸誘導体であ
るアンセリンが多く存在する(安藤ら 水産の研究 第
6巻 93ページ 1987年)。アンセリンは,ゲル形成に
関与するとされるトランスグルタミナーゼの働きを阻害
するので,アンセリンの多い魚種は坐りにくいとされ
る。したがって坐りによるゲル強度は,鮭ではスケトウ
ダラのようには上がらない(関ら 北海道研究開発支援
事業成果発表会資料 9〜34ページ 1994年)。この様
に従来の水産ゲル化食品では,坐りやすい魚種でなけれ
ば原料として使用しにくいという問題点がある。
【0006】加熱以外の魚肉すり身のゲル化方法とし
て,酸によってすり身のタンパク質を変性させ弾力を与
える方法と微生物によりすり身を発酵させゲル化させる
方法がある。
【0007】すり身のタンパク質を酸変性させ弾力を与
えた蒲鉾は”しめ蒲鉾”と呼ばれる(水産練り製品技術
研究会誌 第6巻 311〜314,406〜409,547〜550 ペ
ージ1981年)。しかしながら,”しめ蒲鉾”の製造方法
には2つの問題点がある。1つは成形したすり身を酸液
に浸漬する一般的な”しめ蒲鉾”の製法では,”しめ蒲
鉾”は弾力性が得られるものの,酸浸漬の過程で浸漬前
に調味したすり身の食味がほとんど消えてしまう点であ
る。消失してしまう食味を補うため,浸漬する酸液に調
味を施し味付けする手法もある。酸液に調味を施すとp
Hが上昇するため,酸液の緩衝能を高めているのが特徴
的である。もう一方の問題点は,”しめ蒲鉾”は,厚さ
が厚いと酸液が中心部にまで浸透せず,ムラができると
いう点である。この問題は未だに克服されていない。
【0008】微生物により魚肉すり身を発酵させ,ゲル
強度,弾力性ならびに風味を付与する発酵蒲鉾製造法に
関する報告は,スケトウダラを対象魚種として三重大学
とサンエイ糖化(株)が,ラクトバチルス・プランタラ
ム(Lactobacillus plantarum )ならびにラクトバチル
ス・カゼイ( Lactobacillus casei)を用いた例 (日
本食品工業学会誌 39巻,519〜523ページ 1992年),ボ
ラ類を対象魚種としたニューサウスウェールズ大学がペ
ディオコッカス・アシディラクティシイ(Pediococcus
acidilactici)を用いた例 (インターナショナル・ジ
ャーナル・オブ・フードマイクロバイオロジー(Intern
ational Jounal of Food Microbiology) 13巻,143〜1
56 ページ 1991 年),イワシおよびホッケを対象魚種
としてビフィドバクテリウム( Bifidobacterium)を用
いた例 (特許公開公報 昭61-35765)がある。しかし
ながら,これらの報告で蒲鉾原料として用いられたスケ
トウダラやイワシ,ホッケなどは,坐りやすい素材であ
るのに対し,坐りにくい鮭を素材とした水産発酵ゲル化
食品の報告はなく,水産発酵ゲル化食品を製造する上で
の原料魚種の制限が依然として残っている。また,三重
大学とサンエイ糖化(株)の例は発酵蒲鉾を加熱すると
加熱前よりも弾力性が低下したと記載されているのみで
加熱前の弾力性に関する物性値は示されておらず,発酵
によりゲル物性がどの程度変化するか不明である。ニュ
ーサウスウェールズ大学の例は微生物叢の変化について
記載されているのみであり,食品としてのゲル強度など
の物性値や味,香りについては記載されていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】 現在の水産ゲル化食
品の製法では,蒲鉾など非発酵ゲル化食品の製造につい
ては原料が坐りやすい魚種に限られ,しめ蒲鉾では成型
したすり身に対する酸の浸透過程で厚みに限度があると
ともに,酸浸漬過程で魚本来の風味が失われるという問
題点がある。また,従来の魚肉を発酵させた報告では,
使用した魚種が坐りやすい魚種である場合が多く,対象
魚種の坐りの起きやすさによる制約を解消していないと
いう問題がある。さらに既報では,発酵終了後のゲル物
性の具体的なデータが記述されていないため,発酵の関
与が不明である。
【0010】したがって,本発明が解決しようとする課
題は,香りや色調,味などに優れた特徴があるにもかか
わらず,すり身が坐りにくいために利用が困難であった
鮭すり身を原料として,加熱することなくゲル強度,弾
力性に富んだ物性と共に,さらに乳酸菌の発酵による風
味を付与し,鮭の持つ優れた特徴を生かした水産発酵ゲ
ル化食品を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手法】 本発明によれば,あら
かじめ培養,増殖させたLeuconostoc属,Lactobacillus
属,Pediococcus属,もしくはLactococcus属の乳酸菌を
スターターとして鮭すり身を発酵させ,破断強度ととも
に破断歪値が増加し,弾力性のあるゲルが加熱を要せず
に形成される。さらに鮭独特の優れた風味と色調を損な
うことなく,酸味や発酵による風味が付与された良質の
食品を,本発明によって製造しえることを見出し,本発
明に到達した。
【0012】すなわち,坐りにくいとされる鮭のすり身
を原料とした場合でも,本発明の製造法によれば,食品
として十分な弾力性とゲル強度および発酵による風味を
有する発酵ゲル化食品の製造が,加熱することなく可能
である。鮭すり身は凍結・非凍結,澱粉などの増粘剤添
加の有無,食塩添加の有無,調味料添加の有無を問わな
い。すり身の魚種は,鮭類および鱒類が該当する。製造
される水産発酵ゲル化食品としては,鮭類および鱒類を
その素材とし,Leuconostoc属,Lactobacillus属,Pedi
ococcus属,Lactococcus属のいずれか,またはこれらの
属に属する複数種の微生物を乳酸菌スターターとして発
酵させたものが該当する。
【0013】
【作用】 乳酸菌は,発酵過程で乳酸を主とする有機酸
を発酵過程で生成する作用を持つ。生成した有機酸によ
って,魚肉すり身の蛋白質が穏やかに酸変性を引き起こ
し,弾力性やゲル強度を向上させるものと考えられる。
また,発酵中に乳酸菌によってトランスグルタミナーゼ
などの酵素が生成され,ゲル化に影響を与えている可能
性もある。さらに,乳酸菌が発酵過程で生成する様々な
代謝産物が風味の向上に貢献していることが想定され
る。
【0014】
【実施例】 以下に鮭発酵ゲル化食品および製造に使用
する乳酸菌スターターの製造方法の概略を示す。
【0015】乳酸菌用培地に乳酸菌を接種し,静置培養
する。培養液から菌体を回収して,グリセロールに懸濁
後,凍結保存し,凍結乳酸菌スターターを得る。
【0016】鮭すり身に食塩を添加し,塩摺りする。さ
らに,蒸留水,乳酸菌スターターと糖類を加え混合す
る。混合したすり身を脱気した後,ケーシングに充填
し,15℃ないし20℃で発酵させる。
【0017】以下に鮭発酵ゲル化食品の製造方法及び物
性の測定方法を詳細に示す。
【0018】スターターの調製 乳酸菌用培地(例えばMRS培地)に供試菌株であるロ
イコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mese
nteroides)JCM 6124,Lactobacillus plantarum JCM 1
149,Pediococcus acidilactici JCM 5885,ラクトコッ
カス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス(La
ctococcus lactis subsp. cremoris)IFO 3427を接種
し,2日間30℃で静置培養する。培養液から菌体を遠
心分離により集菌して,20%グリセロールに懸濁後,
速やかに−85℃にて凍結し保存する。
【0019】鮭発酵ゲル化食品の調製 冷凍鮭すり身を解凍し,フードカッターで1分間空摺り
する。次にすり身に重量の4.35%の食塩を添加し,
フードカッターで3分間塩摺りする。さらに,すり身重
量の35%の蒸留水と10%の乳酸菌スターター(乳酸
菌無添加区では蒸留水),21.75%のグルコースを
添加し,フードカッターで5分間混合する。こうして生
成したすり身を真空包装機を用いて2度脱気した後,ポ
リ塩化ビニリデン製ケーシング(直径30mm)に充填
し,L. plantarum JCM 1149 を添加したものは20℃で
5日間,Lac. lactis subsp. cremoris IFO 3427 また
はP. acdilactici JCM 5885 を添加したものは20℃で
6日間,Leu. mesenteroides JCM 6124 を添加したもの
は15℃で11日間発酵させる。
【0020】測定方法 破断強度 (g)および破断歪(mm)の測定法。サン科学レオ
メーター,直径10mm円筒型プランジャーを使用する。
試料台の上昇速度は毎分60mmとする。圧出水分量 (%)
の測定法。東洋濾紙No.101,直径11cmの二層間
にスライスした試料(4〜5g)に対し,約500g/g試
料,3分間荷重して水分減量を測定する。pH及び乳酸
量の測定法。試料に等量の水を加え,ホモジナイザーを
用いて破砕し,破砕液のpHを測定する。さらに破砕液
を遠心後,その上清中のD−およびL−乳酸量をFキッ
トD,L−乳酸測定用(ベーリンガーマンハイム社製)
を用いて測定する。
【0021】以下実施例により本発明の内容を詳細に説
明する。ただし,本発明はこれらの例に限定されない。
【0022】
【実施例1】L. plantarum JCM 1149 をスターターとし
た鮭発酵ゲル化食品の製造方法
【0023】
【表1】 枠01
【0024】L. plantarum JCM 1149 をスターターとし
て発酵させた鮭発酵ゲル化食品21検体とスターターを
添加しなかった対照区21検体の破断強度を測定した。
L. plantarum JCM 1149 をスターターとして発酵させた
鮭発酵ゲル化食品の破断強度は1501〜1700 gで
あり,対照区の301〜501 gと比較し約4倍となっ
た。これは発酵によるゲル強度の増加を示している。
(表1)
【0025】
【表2】 枠02
【0026】L. plantarum JCM 1149 をスターターとし
て発酵させた鮭発酵ゲル化食品21検体とスターターを
添加しなかった対照区21検体の破断歪を測定した。L.
plantarum JCM 1149 をスターターとして発酵させた鮭
発酵ゲル化食品の破断歪は17.0〜18.9 mm であ
り,対照区の12.0〜14.9 mm と比較し,値が約
5 mm 増加した。これは発酵による弾力性の増加を示す
ものである。(表2)
【0027】
【表3】 枠03
【0028】L. plantarum JCM 1149 をスターターとし
て発酵させた鮭発酵ゲル化食品23検体とスターターを
添加しなかった対照区23検体の圧出水分量を測定し
た。L.plantarum JCM 1149 をスターターとして発酵さ
せた鮭発酵ゲル化食品の圧出水分量は10.0 %であ
り,対照区の10.0〜12.0 %と比較し,わずかに
減少した。これは発酵による離水率の低下を示すもので
ある。(表3)
【0029】
【表4】 枠04
【0030】L. plantarum JCM 1149 をスターターとし
て発酵させた鮭発酵ゲル化食品20検体とスターターを
添加しなかった対照区20検体のpHを測定した。L. p
lantarum JCM 1149 をスターターとして発酵させた鮭発
酵ゲル化食品のpHは4.6であり,対照区のpH5.
2に比べ約0.6低い値を示した。これは添加した乳酸
菌によってより多くの酸が生成されたことを示してい
る。(表4)
【0031】
【表5】 枠05
【0032】L. plantarum JCM 1149 をスターターとし
て発酵させた鮭発酵ゲル化食品20検体とスターターを
添加しなかった対照区20検体の乳酸量を測定した。L.
plantarum JCM 1149 をスターターとして発酵させた鮭
発酵ゲル化食品は,生成した乳酸量が4500〜500
0 mg/kgに達し,対照区の3000〜3500 mg/kgと
比較し,約1.5倍となった。この数値は先のpHの低
下を説明するものである。(表5)
【0033】
【表6】 枠06
【0034】L. plantarum JCM 1149 をスターターとし
て発酵させた鮭発酵ゲル化食品20検体とスターターを
添加しなかった対照区20検体のDおよびL−乳酸の比
率を測定した。DおよびL−乳酸の比率は,対照区が
2:8とL−乳酸が高い比率を占めるのに対し,L. pla
ntarum JCM 1149 をスターターとして発酵させた鮭発酵
ゲル化食品は,DおよびL−の乳酸の比率が6:4と異
なった。これによりすり身に混入した菌ではなく,添加
したスターターによって発酵していることを表す。(表
6)
【0035】L. plantarum JCM 1149 をスターターとし
て発酵させた鮭発酵ゲル化食品は,ゲル強度,弾力性に
富み,歯ごたえの良い食品となった。さらに鮭自体の持
つ風味の他に発酵による風味が付与された。
【0036】
【実施例2】Leu. mesenteroides JCM 6124 をスタータ
ーとした鮭発酵ゲル化食品の製造方法
【0037】
【表7】 枠07
【0038】Leu. mesenteroides JCM 6124 をスタータ
ーとして発酵させた鮭発酵ゲル化食品21検体とスター
ターを添加しなかった対照区21検体の破断強度を測定
した。Leu. mesenteroides JCM 6124 をスターターとし
て発酵させた鮭発酵ゲル化食品の破断強度は881〜9
10 gであり,対照区の151〜180 gと比較し5倍
強となった。これは発酵によるゲル強度の増加を示して
いる。(表7)
【0039】
【表8】 枠08
【0040】Leu. mesenteroides JCM 6124 をスタータ
ーとして発酵させた鮭発酵ゲル化食品21検体とスター
ターを添加しなかった対照区21検体の破断歪を測定し
た。Leu. mesenteroides JCM 6124 をスターターとして
発酵させた鮭発酵ゲル化食品の破断歪は21.0〜2
4.9 mm であり,対照区の13.0〜14.9 mm と
比較し,値が約9 mm 増加した。これは発酵による弾力
性の増加を示すものである。(表8)
【0041】
【表9】 枠09
【0042】Leu. mesenteroides JCM 6124 をスタータ
ーとして発酵させた鮭発酵ゲル化食品22検体とスター
ターを添加しなかった対照区22検体の圧出水分量を測
定した。Leu. mesenteroides JCM 6124 をスターターと
して発酵させた鮭発酵ゲル化食品の圧出水分量は22.
0 %であり,対照区の26.0 %と比較し,4.0 %減
少した。これは発酵による離水率の低下を示すものであ
る。(表9)
【0043】
【表10】 枠10
【0044】Leu. mesenteroides JCM 6124 をスタータ
ーとして発酵させた鮭発酵ゲル化食品20検体とスター
ターを添加しなかった対照区20検体のpHを測定し
た。Leu. mesenteroides JCM 6124 をスターターとして
発酵させた鮭発酵ゲル化食品のpHは,4.7〜4.9
であり,対照区のpH5.3に比べ約0.5低い値を示
した。これは添加した乳酸菌によってより多くの酸が生
成されたことを示している。(表10)
【0045】
【表11】 枠11
【0046】Leu. mesenteroides JCM 6124 をスタータ
ーとして発酵させた鮭発酵ゲル化食品20検体とスター
ターを添加しなかった対照区20検体の乳酸量を測定し
た。Leu. mesenteroides JCM 6124 をスターターとして
発酵させた鮭発酵ゲル化食品の乳酸量は,2700〜3
500 mg/kgであるのに対し,対照区は2300〜31
00 mg/kgであり,僅かながら増加した。この様にスタ
ーター添加区と対照区で,pHの差に比べて生成乳酸の
量の差が少ないのは,スターターとして用いたLeu. mes
enteroides JCM 6124が,乳酸以外の有機酸を多く生成
することによると考えられる。(表11)
【0047】
【表12】 枠12
【0048】Leu. mesenteroides JCM 6124 をスタータ
ーとして発酵させた鮭発酵ゲル化食品20検体とスター
ターを添加しなかった対照区20検体のDおよびL−乳
酸の比率を測定した。DおよびL−乳酸の比率は,対照
区が2:8とL−乳酸の占める比率が高いのに対し,Le
u. mesenteroides JCM 6124 をスターターとして発酵さ
せた鮭発酵ゲル化食品は,DおよびL−の乳酸の比率が
4:6〜6:4と異なった。これによりすり身に混入し
た菌ではなく,添加したスターターによって発酵してい
ることを表す。また,Leu. mesenteroides JCM 6124 を
スターターとして発酵させた鮭発酵ゲル化食品は,対照
区に比べ明らかにD−乳酸の増加が認められた。(表1
2)
【0049】Leu. mesenteroides JCM 6124 をスタータ
ーとして発酵させた鮭発酵ゲル化食品は,ゲル強度,弾
力性に富み,歯ごたえの良い食品となった。さらに鮭自
体の持つ風味の他に発酵による風味が付与された。
【0050】
【実施例3】Lac. lactis subsp. cremoris IFO 3427を
スターターとした鮭発酵ゲル化食品の製造方法
【0051】
【表13】 枠13
【0052】Lac. lactis subsp. cremoris IFO 3427を
スターターをとして発酵させた鮭発酵ゲル化食品26検
体とスターターを添加しなかった対照区26検体の破断
強度を測定した。Lac. lactis subsp. cremoris IFO 34
27をスターターとして発酵させた鮭発酵ゲル化食品の破
断強度は1150 gであり,対照区の250 gと比較し
4.6倍となった。これは発酵によるゲル強度の増加を
示している。(表13)
【0053】
【表14】 枠14
【0054】Lac. lactis subsp. cremoris IFO 3427ス
ターターとして発酵させた鮭発酵ゲル化食品26検体と
スターターを添加しなかった対照区26検体の破断歪を
測定した。Lac. lactis subsp. cremoris IFO 3427スタ
ーターとして発酵させた鮭発酵ゲル化食品の破断歪は1
5.0〜17.0 mm であり,対照区の11.0 mmと
比較し,値が約5(対照区の約50%)増加した。これ
は発酵による弾力性の増加を示すものである。(表1
4)
【0055】
【表15】 枠15
【0056】Lac. lactis subsp. cremoris IFO 3427を
スターターとして発酵させた鮭発酵ゲル化食品24検体
とスターターを添加しなかった対照区24検体の圧出水
分量を測定した。Lac. lactis subsp. cremoris IFO 34
27をスターターとして発酵させた鮭発酵ゲル化食品の圧
出水分量は8.0 %であり,対照区の12.0〜18.
0 %と比較し,4.0〜10.0 %減少した。これは発
酵による離水率の低下を示すものである。(表15)
【0057】
【表16】 枠16
【0058】Lac. lactis subsp. cremoris IFO 3427を
スターターとして発酵させた鮭発酵ゲル化食品22検体
とスターターを添加しなかった対照区22検体のpHを
測定した。Lac. lactis subsp. cremoris IFO 3427をス
ターターとして発酵させた鮭発酵ゲル化食品のpHは
4.5〜4.6であり,対照区のpH5.0に比べ約
0.4〜0.5低い値を示した。これは添加した乳酸菌
によってより多くの酸が生成されたことを示している。
(表16)
【0059】
【表17】 枠17
【0060】Lac. lactis subsp. cremoris IFO 3427を
スターターとして発酵させた鮭発酵ゲル化食品22検体
とスターターを添加しなかった対照区22検体の乳酸量
を測定した。Lac. lactis subsp. cremoris IFO 3427を
スターターとして発酵させた鮭発酵ゲル化食品は,生成
した乳酸量が6000〜6500 mg/kgに達し,対照区
の3500〜4000 mg/kgと比較し,約1.7倍とな
った。この数値は先のpHの低下を説明するものであ
る。(表17)
【0070】
【表18】 枠18
【0071】Lac. lactis subsp. cremoris IFO 3427を
スターターとして発酵させた鮭発酵ゲル化食品22検体
とスターターを添加しなかった対照区22検体のDおよ
びL−乳酸の比率を測定した。DおよびL−乳酸の比率
は,Lac. lactis subsp. cremoris IFO 3427をスタータ
ーとして発酵させた鮭発酵ゲル化食品,対照区ともに
2:8とL−乳酸が大きな比率を占める。Lac. lactis
subsp. cremoris はL−乳酸のみを生成する事が知られ
ており,このことを考慮すると,先の生成乳酸量の測定
結果とこのDおよびL−乳酸の比率の測定結果は,すり
身に混入した菌ではなく,添加したスターターによって
発酵していることを示している。(表18)
【0072】Lac. lactis subsp. cremoris IFO 3427を
スターターとして発酵させた鮭発酵ゲル化食品は,ゲル
強度,弾力性に富み,歯ごたえの良い食品となった。さ
らに鮭自体の持つ風味の他に発酵による風味が付与され
た。
【0073】
【実施例4】P. acdilactici JCM 5885 をスターターと
した鮭発酵ゲル化食品の製造方法
【表19】 枠19
【0074】P. acdilactici JCM 5885 をスターターと
して発酵させた鮭発酵ゲル化食品26検体とスターター
を添加しなかった対照区26検体の破断強度を測定し
た。P.acdilactici JCM 5885 をスターターとして発酵
させた鮭発酵ゲル化食品の破断強度は1150〜135
0 gであり,対照区の250 gと比較し約5倍となっ
た。これは発酵によるゲル強度の増加を示している。
(表19)
【0075】
【表20】 枠20
【0076】スターターを添加し発酵させた鮭発酵ゲル
化食品26検体とスターターを添加しなかった対照区2
6検体の破断歪を測定した。P. acdilactici JCM 5885
をスターターとして発酵させた鮭発酵ゲル化食品の破断
歪は18.0 mm であり,対照区の12.0 mm と比較
し,値が約6 mm (対照区の約50%)増加した。これ
は発酵による弾力性の増加を示すものである。(表2
0)
【0077】
【表21】 枠21
【0078】P. acdilactici JCM 5885 をスターターと
して発酵させた鮭発酵ゲル化食品24検体とスターター
を添加しなかった対照区24検体の圧出水分量を測定し
た。P. acdilactici JCM 5885 をスターターとして発酵
させた鮭発酵ゲル化食品の圧出水分量は10.0 %であ
り,対照区の12.0〜16.0 %と比較し,2.0〜
6.0 %減少した。これは発酵による離水率の低下を示
すものである。(表21)
【0079】
【表22】 枠22
【0080】P. acdilactici JCM 5885 をスターターと
して発酵させた鮭発酵ゲル化食品22検体とスターター
を添加しなかった対照区22検体のpHを測定した。P.
acdilactici JCM 5885 をスターターとして発酵させた
鮭発酵ゲル化食品のpHは4.6であり,対照区のpH
5.0に比べ0.4低い値を示した。これは添加した乳
酸菌によってより多くの酸が生成されたことを示してい
る。(表22)
【0081】
【表23】 枠23
【0082】P. acdilactici JCM 5885 をスターターと
して発酵させた鮭発酵ゲル化食品22検体とスターター
を添加しなかった対照区22検体の破断強度を測定し
た。P.acdilactici JCM 5885 をスターターとして発酵
させた鮭発酵ゲル化食品は,生成した乳酸量が6000
〜7000 mg/kgに達し,対照区の3000〜4000
mg/kgと比較し,約1.8倍となった。この数値は先の
pHの低下を説明するものである。(表23)
【0083】
【表24】 枠24
【0084】スターターを添加し発酵させた鮭発酵ゲル
化食品22検体とスターターを添加しなかった対照区2
2検体の破断強度を測定した。DおよびL−乳酸の比率
は,対照区が2:8とL−乳酸が大きな比率を占めるの
に対し,P. acdilactici JCM5885 をスターターとして
発酵させた鮭発酵ゲル化食品は,DおよびL−の乳酸の
比率が5:5と異なった。この結果はすり身に混入した
菌ではなく,添加したスターターによって発酵している
ことを表す。(表24)
【0085】P. acidilactici JCM 5885をスターターと
して発酵させた鮭発酵ゲル化食品は,ゲル強度,弾力性
に富み,歯ごたえの良い食品となった。さらに鮭自体の
持つ風味の他に発酵による風味が付与された。
【0086】L. plantarum JCM 1149 ,Leu. mesentero
ides JCM 6124 ,Pediococcus acidilactici JCM 588
5,Lactococcus lactis subsp. cremoris IFO 3427のい
ずれの菌株を用いても,ゲル強度,弾力性に富み,歯ご
たえの良い鮭発酵ゲル化食品を製造する事ができた。
【0087】L. plantarum JCM 1149 ,Leu. mesentero
ides JCM 6124 ,Pediococcus acidilactici JCM 588
5,Lactococcus lactis subsp. cremoris IFO 3427のい
ずれの菌株を用いても発酵による香りが付与された。特
にLeu. mesenteroides JCM 6124 をスターターとして発
酵させた鮭発酵ゲル化食品は,L. plantarum JCM 1149
をスターターとした発酵鮭発酵ゲル化食品に付与される
香りよりも,複雑かつ豊かで強い香りが付与された鮭発
酵ゲル化食品を製造する事ができた。一般に Leuconost
oc属は多様な香気成分を産生する事が知られており,風
味の付与の点では有効である。
【0088】鮭発酵ゲル化食品の評価 ゲル強度の向上
ならびに酸味の付与については前述の通りである。ま
た,DおよびL−乳酸比率および生成した乳酸量の差異
により発酵が制御されていることが示された。これら資
料により,本発明の有効性が示された。
【0089】
【発明の効果】本発明に従い乳酸菌を用いた魚肉すり身
のゲル化方法を適用することにより,坐りにくい素材で
ある鮭すり身を用いても,鮭の持つ優れた色調や風味を
損なうこと無く,十分な弾力性と発酵による風味が付与
された蒲鉾様の鮭発酵ゲル化食品を製造する事ができ
る。

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鮭を原料とした魚肉すり身もしくは冷凍
    すり身に,乳酸菌を添加し発酵させる事により,加熱を
    することなく強固なゲルを形成させ,弾力性と風味を付
    与する事を特徴とする水産発酵ゲル化食品の製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1の方法によって製造される水産
    発酵ゲル化食品。
  3. 【請求項3】 乳酸菌としてロイコノストック( Leuco
    nostoc)属の微生物を用いる請求項1の方法によって製
    造される水産発酵ゲル化食品。
  4. 【請求項4】 乳酸菌としてラクトバチルス( Lactoba
    cillus)属の微生物を用いる請求項1の方法によって製
    造される水産発酵ゲル化食品。
  5. 【請求項5】 乳酸菌としてペディオコッカス( Pedio
    coccus)属の微生物を用いる請求項1の方法によって製
    造される水産発酵ゲル化食品。
  6. 【請求項6】 乳酸菌としてラクトコッカス( Lactoco
    ccus)属の微生物を用いる請求項1の方法によって製造
    される水産発酵ゲル化食品。
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