JP2554271B2 - (−)−N−(1−アルコキシカルボニルプロペン−2−イル)−a−アミノ−a−(p−ヒドロキシフエニル)酢酸アルカリ金属塩の製造法 - Google Patents

(−)−N−(1−アルコキシカルボニルプロペン−2−イル)−a−アミノ−a−(p−ヒドロキシフエニル)酢酸アルカリ金属塩の製造法

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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は一般式 (式中、Mはアルカリ金属、RはC1〜C3の低級アルキル
基を意味する。) で表わされる(−)−N−(1−アルコキシカルボニル
プロペン−2−イル)−α−アミノ−α−(p−ヒドロ
キシフエニル)酢酸アルカリ金属塩(以下Dane Saltと
略す)の製造法に関する。更に詳しくは、有機溶媒中、
窒素ガスの雰囲気下にD(−)−p−ヒドロキシフエニ
ルグリシンのアルカリ金属塩とアセト酢酸エステルとを
加熱縮合させることを特徴とし、長期間保存しても着色
や品質の劣下等が極めて少なく、安定性に優れたDane S
altの工業的製造法に関するものである。
Dane Saltはβ−ラクタム系抗生物質、たとえばアモ
キシシリン、セファドロキシル、セファトリジンなどの
製造に用いられる中間原料として極めて重要な化合物で
ある。
〔従来の技術〕
有機溶媒中、D(−)−p−ヒドロキシフエニルグリ
シンのアルカリ金属塩とアセト酢酸エステルとを加熱縮
合させてDane Saltを得る方法は既に知られている(Ang
ew、chem、74、873、1962、特公昭42-15947号、特公昭4
6-41557号) 〔発明の解決しようとする課題〕 しかし、上記方法にて得られるDane Saltは安定性が
悪く長期間の保存には耐えられないという共通の欠点を
有している。例えば、室温下での保存においては1ケ月
まではわずかな着色であるがそれ以降は急激に着色が強
まり2ケ月後には黄色に変化してしまう。
又、室温下での保存における安定性を短期間に推測す
る加速試験(60℃)においては5日目以降、黄褐色に着
色しAPHA値は製造時の5〜10倍の着色が観察される程で
ある。Dane Saltは式〔I〕 (式中Mはアルカリ金属を意味する。) で示されるD(−)−p−ヒドロキシフエニルグリシン
のアルカリ金属塩と式〔II〕 CH3COCH2COOR 〔II〕 (式中RはC1〜C3の低級アルキル基を意味する。) で示されるアセト酢酸エステルとの脱水縮合により得ら
れる化合物であるが、通常の有機溶媒にほとんど不溶で
あり、再結晶などの精製をすることは不可能なため、い
ったん着色してしまうと製品にはならない。
そこで従来法ではできるだけ着色並びに品質の低下を
防ぐためには低温下で保管しなければならないことから
余計な費用がかかり生産コストが高くなるという難点が
あった。
〔課題を解決するための手段〕
そこで本発明者らは、上記方法を改良してDane Salt
の工業的製造に適した方法とするために先ずDane Salt
の着色の原因について検討したところ、着色はフエノ
ール性水酸基が酸化されることによるものであること、
着色につながる酸化は2種類あり、そのうちの一つは
D(−)−p−ヒドロキシフエニルグリシンに水酸化ア
ルカリを作用させてD(−)−p−ヒドロキシフエニル
グリシンアルカリ金属塩を製造する工程での酸化であ
り、残る一つは生成するDane Salt自体の酸化であるこ
とがわかった。
そこで、本発明者らは反応中酸化を受けず、長期間の
保存においても着色や品質の低下が極めて少ないDane S
altの製造法を鋭意検討した結果、反応装置内の空気を
窒素で置換すること又は還元剤を添加することが最良の
方法であることを発見した。即ち、本発明は有機溶媒
中、窒素ガス又は還元剤の存在下にD(−)−p−ヒド
ロキシフエニルグリシンのアルカリ金属塩とアセト酢酸
エステルとを加熱縮合させることを特徴とする一般式 (式中、Mはアルカリ金属、RはC1〜C3の低級アルキル
基を意味する。) で表わされる(−)−N−(1−アルコキシカルボニル
プロペン−2−イル)−α−アミノ−α−(p−ヒドロ
キシフエニル)酢酸アルカリ金属塩の製造法に関する。
本発明を更に詳細に説明すると、原料であるアセト酢
酸エステルとしてはこのメチルエステル、エチルエステ
ルなどの低級アルキルエステルがあげられ、その量はD
(−)−p−ヒドロキシフエニルグリシンに対し1.0当
量以上であれば特に制限はないが、1.0〜1.2当量が好ま
しく、又、D(−)−p−ヒドロキシフエニルグリシン
のアルカリ金属塩を得る際に用いる水酸化アルカリの量
はD(−)−p−ヒドロキシフエニルグリシンに対し1.
0当量以下であれば特に制限はないが0.98〜0.99当量が
好ましい。水酸化アルカリとしては、例えば水酸化ナト
リウム、水酸化カリウムなどがあげられる。
本発明に用いる反応溶媒は水酸化アルカリを溶解し、
反応に悪影響を及ぼさないものであれば特に制限はない
が、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコ
ール類が好ましく、反応温度は通常、溶媒の沸点に近い
温度で行うことが望ましい。反応は0.5〜2.0時間で完結
する。
本発明を実施する場合はD(−)−p−ヒドロキシフ
エニルグリシンに水酸化アルカリを作用させてD(−)
−p−ヒドロキシフエニルグリシンアルカリ金属塩を製
造するときから、反応機内を窒素雰囲気に保つこと、又
は還元剤を添加することはD(−)−p−ヒドロキシフ
エニルグリシンアルカリ金属塩及び生成するDane Salt
の酸化を抑えることができ、好ましい。
還元剤を用いる場合、添加する還元剤は、還元作用を
有するものであれば特に制限はないが、例えばビタミン
C、トリエタノールアミン、アミノイミノメタンスルホ
ン酸等の有機還元剤、重亜硫酸塩、亜硫酸塩、ハイドロ
サルファイト、次亜リン酸塩等の無機還元剤があげられ
るが、ビタミンC、重亜硫酸塩、亜硫酸塩、ハイドロサ
ルファイトが好ましく、その添加量はD(−)−p−ヒ
ドロキシフエニルグリシンに対して1.0%以下が好まし
く、通常0.2〜0.8%の量を使用する。
反応液からの目的物の単離は通常の方法でよく、極め
て容易に高品質のDane Saltを得ることができる。即
ち、反応終了後、反応液を10℃以下に冷却して析出した
結晶を取するだけでよく、必要に応じては液を濃縮
し溶媒を留去後、冷却すれば目的物の2番晶を得ること
ができる。このとき結晶をアルコールにて洗浄すれば一
層効果的である。
〔発明の効果〕
本発明によると、窒素ガス又は還元剤の存在下でD
(−)−p−ヒドロキシフエニルグリシンのアルカリ金
属塩化および引き続くアセト酢酸エステルとの縮合反応
を行うので、酸化を極力抑えることができるため、従来
の製造法では避けられなかった長期間の保存におけるDa
ne Saltの着色や品質の低下、あるいは品質の低下を防
ぐための低温倉庫中での保管によるコスト高等の問題を
解決でき、容易に長期保存に耐えられる高品質のDane S
altが得られることになり、優れた工業的製造法となっ
た。下に従来の製法で得られたDane Saltとの加速試験
による安定性の比較を示す。
〔実施例〕 以下実施例において本発明を具体的に説明する。
実施例1 2lの4径フラスコに95%水酸化カリウム58.2g(0.985
mol)、亜硫酸水素ナトリウム0.85gおよびメタノール95
0mlを仕込み、25〜30℃の温度にて水酸化カリウムを溶
解させる。次にD(−)−p−ヒドロキシフエニルグリ
シン167.2g(1.0ml)を加えた後、反応容器を密封し、2
5〜30℃の温度にて一時間攪拌する。
アセト酢酸メチル121.9g(1.05mol)を一度に加え、
2時間加熱還流させる。ついで、反応液を8〜10℃に冷
却し析出した結晶を取し、メタノール330mlにて洗浄
後、乾燥すると(−)−N−(1−メトキシカルボニル
プロペン−2−イル)−α−アミノ−α−(p−ヒドロ
キシフエニル)酢酸カリウムの一次晶260g(収率86%)
が得られる。
液を常圧濃縮し、メタノール940mlを留去後、残渣
を8〜10℃に冷却し析出した結晶を取し、メタノール
75mlにて洗浄後乾燥すると(−)−N−(1−メトキシ
カルボニルプロペン−2−イル)−α−アミノ−α−
(p−ヒドロキシフエニル)酢酸カリウムの二次晶21.2
g(収率7%)が得られる。
一次晶および二次晶を合せた収率は93%であった。こ
のものはNMR.IRにおいて別途合成した標準品と完全に一
致し、APHA値は6であった。
実施例2〜7 アセト酢酸エステル、水酸化アルカリ、還元剤および
アルコールを変えて実施例1と同様に反応及び処理した
結果を下に示す。
実施例8 2lの4径フラスコに95%水酸化カリウム58.2g(0.985
mol)およびメタノール950mlを仕込み、25〜30℃の温度
にて水酸化カリウムを溶解させる。
次にD(−)−p−ヒドロキシフエニルグリシン167.
2g(1.0mol)を加えた後、反応容器を減圧にし、減圧度
500mmHgにて5分間脱気する。窒素ガスにて常圧までも
どした後、反応容器を密封し25〜30℃の温度にて一時間
攪拌する。
アセト酢酸メチル121.9g(1.05mol)を一度に加え、
2時間加熱還流させる。ついで、反応液を8〜10℃に冷
却し析出した結晶を取し、メタノール330mlにて洗浄
後乾燥すると(−)−N−(1−メトキシカルボニルプ
ロペン−2−イル)−α−アミノ−α−(p−ヒドロキ
シフエニル)酢酸カリウムの一次晶260g(収率86%)が
得られる。
液を常圧濃縮してメタノール940mlを留去後、残渣
を8〜10℃に冷却し、析出した結晶を取し、メタノー
ル75mlにて洗浄後乾燥すると(−)−N−(1−メトキ
シカルボニルプロペン−2−イル)−α−アミノ−α−
(p−ヒドロキシフエニル)酢酸カリウムの二次晶21.2
g(収率7%)が得られる。一次晶および二次晶を合せ
た収率は93%であった。
このものはNMR、IRにおいて別途合成した標準品を完
全に一致し、APHA値は10であった。
実施例9〜11 アセト酢酸エステル、水酸化アルカリ又はアルコール
を変えて実施例1と同様に反応及び処理した結果を下に
示す。
参考例(特公昭46-41557号) 300mlの4径フラスコにメタノール性水酸化ナトリウ
ム60ml(0.324N)、D(−)−p−ヒドロキシフエニル
グリシン3.34g(0.02mol)およびメタノール20mlを仕込
み、加熱環流させる。次にメタノール20mlとアセト酢酸
メチル2.4ml(0.022mol)の混合液を10分間で加えた
後、さらに40分間加熱環流させる。
メタノールを加熱環流下、留去させると同時に留出量
と同量の乾燥トルエンを加える。この操作を留出温度が
100℃又は170mlのトルエンを加え終るまで行う。懸濁液
を5℃に冷却し、析出している結晶を取し、トルエン
にて洗浄後乾燥すると(−)−N−(1−メトキシカル
ボニルプロペン−2−イル)−α−アミノ−α−(p−
ヒドロキシフエニル)酢酸ナトリウム4.5g(収率95%)
が得られる。
このもののAPHA値は30であった。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】有機溶媒中、窒素ガス又は還元剤の存在下
    にD(−)−p−ヒドロキシフエニルグリシンのアルカ
    リ金属塩とアセト酢酸エステルとを加熱縮合させること
    を特徴とする一般式 (式中、Mはアルカリ金属、RはC1〜C3の低級アルキル
    基を意味する。) で表わされる(−)−N−(1−アルコキシカルボニル
    プロペン−2−イル)−α−アミノ−α−(p−ヒドロ
    キシフエニル)酢酸アルカリ金属塩の製造法。
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