JP2554032B2 - ケラチン繊維の直接染色方法 - Google Patents

ケラチン繊維の直接染色方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、毛髪等のケラチン繊維
の直接染色方法に関し、特に、スルホ官能基を有する直
接染料を含む組成物および水蒸気を用いた方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】周知のように、直接染料は酸化反応を用
いることなくそれ自体によってケラチン繊維を染色する
ものであり、半永久的な染色に使用されている。この種
の染料は、使用できるものが他種類に亙るため、黄色か
ら赤を経て青へ至るまでの広い色範囲において明暗を形
成できる利点を有する。これらの直接染料の一種とし
て、スルホ官能基を有する直接染料が従来より知られて
いる。スルホ官能基を有する直接染料は、染色結果が長
期間持続する利点を有し、処理された毛髪の色が長期に
亙って保たれる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、スルホ
官能基を有する直接染料には、使用方法の点で大きな問
題がある。すなわち、これらの直接染料は、皮膚、とり
わけ頭皮を容易に染色してしまう。したがって、もしも
染色組成物が不注意で頭皮に塗布されたり、こぼれたり
すると、毛髪の染色工程(通常、数十分の接触時間を要
する)が終了した時点で、頭皮には容易に落とせない汚
れが生じるのである。そこで、美容師の熟練によって上
記のような問題が生じることを防止しているのが現状で
ある。
【0004】本発明は、スルホ官能基を有する直接染料
に特有の欠点を解消でき、信頼性が高く、単純かつ効果
的で、設備も単純で済むケラチン繊維の直接染色方法を
提供することを目的としている。
【0005】本発明者らは、スルホ官能基を有する直接
染料を塗布した毛髪に、75℃より高い温度に加熱され
た水蒸気を含むガスを作用させることにより、極めて短
時間で良好な染色結果が得られ、しかも頭皮の汚れを生
じないことを発見した。また、処理された毛髪は美容上
の優れた特性を備えるものとなる。この方法によれば、
スルホ官能基を有する直接染料を広範なpHで使用する
ことが可能で、特に、従来の直接染色方法よりもアルカ
リ性の条件下で使用することが可能である。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は上記知見に基づ
いてなされたもので、本発明に係るケラチン繊維の直接
染色方法は、スルホ官能基を有する少なくとも1種の直
接染料を含む組成物を付着させたケラチン繊維を、水蒸
気を含むガスと接触させる工程を有し、前記ガスの温度
は75℃より高くし、かつ前記ガスと染色すべきケラチ
ン繊維との接触時間は2分間未満とすることを特徴とし
ている。
【0007】本発明者らが見いだした効果は従来の常識
に反する驚くべきものであった。スルホ官能基を有する
直接染料は、熱に対して高い感受性を有していることが
従来より知られていたため、これまでは、温度が上昇す
れば頭皮を汚染する作用も増大すると考えられており、
スルホ官能基を有する直接染料を蒸気処理と併用させる
試みは当業者により全くなされていなかった。
【0008】
【実施例】以下、本発明の実施例を詳細に説明する。ス
ルホ官能基(スルホン酸官能基)を有する直接染料は、
例えば以下に列記される化合物群から選択することがで
きる。
【0009】C.I.10316: 2,4−ジニトロ−
1−ナフトール−7−スルホン酸、ナトリウム塩 C.I.10383: アシッドオレンジ3(Acid Orange
3) C.I.13015: アシッドイエロー9(Acid Yellow
9)/フードイエロー2(Food Yellow 2) C.I.14780: ダイレクトレッド45(Direct Re
d 45)/フードレッド13(Food Red 13) C.I.13711: アシッドブラック52(Acid Blac
k 52) C.I.13065: アシッドイエロー36
【0010】C.I.14700: 1−ヒドロキシ−2
−(2',4'−キシルイル−5−スルホネートアゾ)ナ
フタレン−4−スルホン酸(ナトリウム塩);(フード
レッド1) C.I.14720: アシッドレッド14(Acid Red 1
4)/フードレッド3(Food Red 3)/モーダントブルー7
9(Mordant Blue 79) C.I.14805: アシッドブラウン4(Acid Brown
4) C.I.15510: アシッドオレンジ7/ピグメント
オレンジ17(PigmentOrange 17)/ソルベントオレンジ
49(Solvent Orange 49) C.I.15985: フードイエロー3/ピグメントイ
エロー104(PigmentYellow 104) C.I.16185: アシッドレッド27/フードレッ
ド9 C.I.16230: アシッドオレンジ10/フードオ
レンジ4(Food Orange4)
【0011】C.I.16250: アシッドレッド44 C.I.17200: アシッドレッド33/フードレッ
ド12 C.I.13683: 1−(3'−ニトロ−5'−スルホ
−6'−オキソフェニルアゾ)−2−オキソナフタレ
ン,Cr錯体;(アシッドレッド184) C.I.18055: 1−ヒドロキシ−2−(4'−ア
セタミドフェニルアゾ)−8−アセタミドナフタレン−
3,6−ジスルホン酸(ナトリウム塩);(アシッドバ
イオレット7(Acid Violet 7)/フードレッド11) C.I.18065: 1−ヒドロキシ−2−(2'−メ
チルフェニルアゾ)−8−アセタミドナフタレン−3,
6−ジスルホン酸(ナトリウム塩);(アシッドレッド
35)
【0012】C.I.19125: アシッドバイオレッ
ト3 C.I.18130: アシッドレッド135 C.I.19130: アシッドイエロー27 C.I.19140: アシッドイエロー23/フードイ
エロー4 C.I.20170: 4'−(スルホネート−2'',4''
−ジメチル)−ビス−(2,6−フェニルアゾ)−1,3
−ジヒドロキシベンゼン;(アシッドオレンジ24) C.I.20470: アシッドブラック1(1−アミノ
−2−(4'−ニトロフェニルアゾ)−7−フェニルア
ゾ−8−ヒドロキシナフタレン−3,6−ジスルホン酸
のナトリウム塩)
【0013】C.I.23266: (4−((4−メチ
ルフェニル)スルホニルオキシ)−フェニルアゾ)−
2,2'−ジメチル−4−((2−ヒドロキシ−5,8−
ジスルホネート)ナフチルアゾ)ビフェニル;(アシッ
ドレッド111) C.I.27755: フードブラック2 C.I.25440: 1−(4'−スルホネートフェニ
ルアゾ)−4−(2''−ヒドロキシ−3''−アセチルア
ミノ−6'',8''−ジスルホネートナフチルアゾ)−6
−スルホネートナフタレン(テトラナトリウム塩);
(フードブラック1) C.I.42080: 4−β−ヒドロキシエチルアミノ
−3−ニトロベンゼンスルホン酸
【0014】C.I.42090: アシッドブルー9(A
cid Blue 9) C.I.47005: (5',6'または7')−スルホネ
ート−6'−メチルキノリン−2,2'−Δ−1,3−イン
ダンジオン(indanedione);(アシッドイエロー3) C.I.60730: アシッドバイオレット43 C.I.61570: アシッドグリーン25 C.I.62045: 1−アミノ−4−シクロヘキサン
アミノ−9,10−アントラキノン−2−スルホン酸の
ナトリウム塩;(アシッドブルー62) C.I.62105: アシッドブルー78 アシッドブルー156 アシッドブルー317
【0015】C.I.58005: 1,2−ジヒドロキ
シ−3−スルホアントラキノン(ナトリウム塩);(モ
ーダントレッド3) C.I.62055: 1−アミノ−9,10−ジヒドロ
−9,10−ジオキソ−4−フェニルアミノ−2−アン
トラセンスルホン酸、ナトリウム塩 C.I.14710: 4−ヒドロキシ−3−(2−メト
キシフェニルアゾ)−1−ナフタレンスルホン酸、ナト
リウム塩;(アシッドレッド4) 2−ピペリジノ−5−ニトロベンゼンスルホン酸 2−(4'−N,N−(2''−ヒドロキシエチル)アミノ
−2'−ニトロ)アニリノエタンスルホン酸
【0016】これら染料の大部分は、「カラーインデッ
クス(Colour Index)」に記載されている。「カラーイン
デックス」は、The Society of Dyers and Colorists,
P.O.Box 244, Perkin House, 82 Grattan Road, Bradfo
rd, Yorkshire, BD1 2JB,England より発行されたもの
である。
【0017】本発明において特に好ましいスルホ染料
は、前記カラーインデックス中のコードがC.I.607
30、C.I.15510、C.I.47005、C.I.1
5985、C.I.17200、C.I.20470、C.
I.42090、C.I.61570で示されるものであ
る。
【0018】スルホ官能基を有する直接染料は、組成物
中に、この組成物の総量に対して一般に0.01〜10
wt%の濃度で含まれる。水蒸気に加えて、キャリアガ
スは、各種溶媒の蒸気、酸素、窒素、空気や他の揮発性
化合物の蒸気などを含んでいてもよい。蒸気の生成に使
用できる溶媒としては、美容上許容できる有機溶媒が使
用され、具体的には、エタノール、イソプロパノール、
ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等のア
ルコール;グリコール;エチレングリコール、プロピレ
ングリコール、ブチレングリコール、ジプロピレングリ
コール等のモノメチル、モノエチル若しくはモノブチル
エーテル等のグリコールエーテル;ジエチレングリコー
ルのモノブチルエーテル等のアルキルエーテルなどが使
用可能である。
【0019】ガスは少なくともその全体量に対して1v
ol%の水蒸気を含んでいることが好ましい。ガスは、
実質的に水蒸気のみからなるか、あるいは水蒸気と空気
の混合物であることが好ましい。ガスの温度は、85℃
以上、特に85〜150℃であることが好ましい。ガス
とケラチン繊維との接触時間は0.01〜30秒、特に
0.5〜10秒が好ましい。ガスによる処理は、同一の
ケラチン繊維に対して複数回繰り返してもよい。各処理
は、上記処理時間に応じて行われる。
【0020】本発明の第1実施例においては、スルホ官
能基を有する直接染料を含む毛髪染色用組成物を毛髪に
塗布した後、水蒸気処理を行う。本発明の他の実施例と
して、スルホ官能基を有する直接染料を含む毛髪染色用
組成物を毛髪に塗布すると同時に、水蒸気処理を行うこ
とも可能である。また、前記化学式で示される成分の一
部または全てがガス流によって搬送可能または蒸発可能
である場合には、毛髪染色用組成物の一部または全部を
ガス流を用いて毛髪に吹き付けてもよい。
【0021】本発明の特定の実施例では、水蒸気処理の
後に毛髪を水洗する。水蒸気を含むガスの生成には、周
知のいかなる装置も使用できる。しかし、本発明の場合
には、繊維を選択的かつ均一に過熱のおそれなしに処理
できるように設計された装置、例えば、フランス特許出
願FR−A−2,273,492号に記載された装置ま
たはそれと同等の装置が好適である。
【0022】本発明の直接染色方法によれば、毛髪に染
料を作用させる時間が短いため、毛髪染色用組成物の取
り扱いの失敗または事故により染料が皮膚や頭皮に付着
した場合にも、染料が皮膚に吸収されずに済む。したが
って、皮膚や頭皮が汚染されるおそれがない。
【0023】本発明に使用される毛髪染色用組成物は、
従来の毛髪染色剤と同様の形態であってよい。例えば、
濃縮または希釈された液体、ゲル状の液体、クリーム、
エーロゾル、泡状物、その他、毛髪の染色に適した形態
であればいよい。
【0024】本発明に使用される毛髪染色用組成物は、
一般に水性組成物とされる。この種の水性組成物には、
通常の毛髪染色に使用される美容成分を添加することが
できる。この種の美容成分としては、溶剤、表面活性
剤、増粘剤、治療剤(treatingagents)、アルカリ性化
剤、酸性化剤、保存剤、香料、およびこの種の組成物に
使用される各種の添加剤が例示できる。スルホ官能基を
有する直接染料を含む染色用組成物は、通常、pH2〜
11とされる。
【0025】以下に本発明の実験例を説明するが、これ
ら実験例は、本発明の範囲を限定するものではない。
【0026】[実験例]以下の薬剤を調合して染色用組
成物を作成した。 アシッドブラック1: 0.4g ベンジルアルコール: 3g 1,3−ブチレングリコール: 10g キサンタンガム(Xanthan Gum): 1.5g クエン酸: pH3.5となるように添加 水: 全体量が100gとなるように添加
【0027】以下のように染色処理を行った。まず、前
記染色用組成物を毛髪に塗布するとともに、その一部を
故意に皮膚に付着させた。そして、90℃の水蒸気を5
秒間、毛髪の生えている頭の第1の部分に直接吹き付け
た。その後、頭皮と毛髪を水洗したうえ乾燥させた(皮
膚1)。一方、毛髪の生えている頭の第2の部分に、前
記染色用組成物を塗布して室温で30分間放置した後、
頭皮と毛髪を水洗したうえ乾燥させた(皮膚2)。
【0028】各実験例について、染色前後の皮膚の色度
座標(L,a,b)をミノルタ株式会社製色度測定装置
「Minolta Chroma Meter CR 200 Colorimeter」を使用
して測定し、皮膚の汚染度の相違を比較した。下表にお
けるΔL,Δa,Δbは、染色後の皮膚の色度測定値
L,a,bと、染色前の皮膚の色度測定値L,a,bと
の差を絶対値で示したものである。
【0029】 ΔL Δa Δb −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 皮膚1 2.6 1.45 1.9 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 皮膚2 14.2 8.5 10.2
【0030】以上の結果から明らかなように、本発明の
水蒸気を用いた直接染色方法によれば、皮膚の汚染が顕
著に低減された。すなわち、ΔL,Δa,Δbの各値が
従来法に比して大幅に低下できた。

Claims (13)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ケラチン繊維を直接染色する方法であっ
    て、スルホ官能基を有する少なくとも1種の直接染料を
    含む組成物を付着させたケラチン繊維を、水蒸気を含む
    ガスと接触させる工程を有し、前記ガスの温度は75℃
    より高くし、かつ前記ガスと染色すべきケラチン繊維と
    の接触時間は2分間未満とすることを特徴とするケラチ
    ン繊維の直接染色方法。
  2. 【請求項2】 前記ガスは85℃以上であることを特徴
    とする請求項1記載のケラチン繊維の直接染色方法。
  3. 【請求項3】 前記ガスは85〜150℃であることを
    特徴とする請求項2記載のケラチン繊維の直接染色方
    法。
  4. 【請求項4】 前記ガスを、染色すべきケラチン繊維と
    0.01秒〜2分間接触させることを特徴とする請求項
    1〜3のいずれかに記載のケラチン繊維の直接染色方
    法。
  5. 【請求項5】 前記ガスを、染色すべきケラチン繊維と
    0.01〜30秒間接触させることを特徴とする請求項
    4記載のケラチン繊維の直接染色方法。
  6. 【請求項6】 前記ガスを、染色すべきケラチン繊維と
    0.5〜10秒間接触させることを特徴とする請求項5
    記載のケラチン繊維の直接染色方法。
  7. 【請求項7】 前記ガスを、染色すべきケラチン繊維と
    複数回に亙って繰り返し接触させることを特徴とする請
    求項1〜6のいずれかに記載のケラチン繊維の直接染色
    方法。
  8. 【請求項8】 前記ガスは、水蒸気のみからなることを
    特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のケラチン繊
    維の直接染色方法。
  9. 【請求項9】 前記ガスは、水蒸気と、少なくとも1種
    の他の化合物のガスまたは蒸気とを含んでいることを特
    徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のケラチン繊維
    の直接染色方法。
  10. 【請求項10】 前記ガスは、水蒸気と空気とを含むこ
    とを特徴とする請求項9記載のケラチン繊維の直接染色
    方法。
  11. 【請求項11】 前記スルホ官能基を有する直接染料
    は、カラーインデックスにおけるコードがC.I.607
    30、C.I.15510、C.I.47005、C.I.1
    5985、C.I.17200、C.I.20470、C.
    I.42090、C.I.61570で示される化合物群
    から選択される1種または2種以上の化合物であること
    を特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のケラチ
    ン繊維の直接染色方法。
  12. 【請求項12】 前記スルホ官能基を有する直接染料
    は、前記組成物中に0.01〜10wt%の濃度で存在
    することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載
    のケラチン繊維の直接染色方法。
  13. 【請求項13】 前記スルホ官能基を有する直接染料を
    含む前記組成物のpHは2〜11であることを特徴とす
    る請求項1〜12のいずれかに記載のケラチン繊維の直
    接染色方法。
JP6315272A 1993-12-22 1994-12-19 ケラチン繊維の直接染色方法 Expired - Lifetime JP2554032B2 (ja)

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