JP2552406B2 - 大規模構造物における上下方向の制震床装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、大きなスパンや持ち
出しの大きい梁を有する大規模な構造物に採用して、上
下方向の地震に対処させる制震床装置に関するものであ
る。

【０００２】

【従来の技術】近年、オフィス空間の大規模化や自由空
間の確保等の需要に応じて、大架構の構造物の建設が増
大している。そしてこのような大架構の構造物に従来か
ら採用されている制震床装置としては、コンピュータや
高精度の機械類を設置した床等の下面に、部分的に緩衝
装置を設置してなり、主に水平方向の振動を低減させる
ものが一般に知られている。なおこの従来の制震床装置
では、固定した荷重が主な対象で、振幅レベルが小さ
い。

【０００３】

【この発明が解決しようとする課題】しかし大架構の構
造物における床は、地震時に際して、水平方向の振動に
加え、上下方向の振動が卓越する。そのためこの振動を
緩衝，軽減して震災を抑制させる必要がある。これに対
して従来の制震床装置は、前述したように、地震時にお
ける上下方向への振動に対しての対策を主にしていない
ものである。

【０００４】また大きな床架構の構造物，即ち展示場の
展示スペースや高層ビルの屋上レストランおよび大会議
場等のような構造物における床構造の特徴としては、次
の課題があげられる。

【０００５】３Hz以下の低い振動数を有する床の振動
制御。展示物, 移動機器, 人間等の変動荷重に対する
処理。大きなはねだし部分がある場合には、床面の場
所によって平面的で不均一な上下方向の加速度分布が生
ずる。上下方向の振動に対処すると同時に、水平震動
によって生ずる水平方向のせん断力の処理。通常時に
おける歩行感覚の確保。

【０００６】これらのことから近年では、地震時におけ
る上下方向への振動に対して制震でき、しかも前述した
〜の課題にも対処することのできる制震床装置が望
まれている。

【０００７】この発明は前述した事情に鑑みて創案され
たもので、その目的は上下方向への振動に対して制震で
き、大きな床架構の構造物における、低い振動数，変動
荷重，平面的不均一な上下方向の加速度分布，水平方向
のせん断力，歩行感覚等の課題を解消することのできる
大規模構造物における上下方向の制震床装置を提供する
ことにある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】この発明の制震床装置に
よれば、水平方向の振動に加え上下方向の振動が卓越す
るため、この振動を緩衝，軽減できるように、水平方向
に対して被制振部の床に拘束した，即ちせん断受け材を
設けたバネ部材を用いて構成する。

【０００９】また前述した〜に述べた課題に対処す
るために、次に述べる構成とする。

【００１０】に対しては、上下方向に１Hz以下の固有
振動数をもつバネ部材を使用することで行う。の変動
荷重に対しては、レベルセンサーの高さ情報に基づいて
バネ部材の内圧を調整することにより、バネ部材で支持
する床部材を一定の高さに保つことで行う。に対して
は、小振幅から大振幅までの線形特性を有するバネ部材
を用いることにより、床部材の不陸を押えることで行
う。に対しては、上下方向にはスムーズに働き、水平
方向にはせん断受け材により拘束することで対処する。
に対しては、ダンパーにより確保する。

【００１１】

【実施例】以下、この発明の大規模構造物における上下
方向の制震床装置を図示する実施例によって説明する。

【００１２】大きなスパンや持ち出しの大きい梁を有す
る大規模な構造物における上下方向の制震床装置１（図
１参照）は、床構造における被制震部の床部材２とこの
床部材２を支持する梁３との間に複数配置した、上下方
向に対して１Hz以下の固有振動数をもつと共に、水平方
向への移動をせん断受け材４で拘束してなるバネ部材５
と、このバネ部材５による床部材２の不陸を検出するレ
ベルセンサー６と、ダンパー７とを備えてなっている。
またバネ部材５の固有振動数とダンパー７とにより、地
震時に作用する上下方向の加速度を低減できるようにな
っている。

【００１３】なおこの実施例でのバネ部材５は、空気バ
ネで構成されている。そしてこのバネ部材５に付随する
せん断受け材４は、このバネ部材５の両側を挟むように
して下部支持部８から一体に立設しており、上下方向へ
延びる二本のガイドレール９と、このガイドレール９に
摺動自在に係合している共に、バネ部材５の可動部にゴ
ム等の弾性体10を介して固定されている摺動ブロック11
とからなる。

【００１４】またこの実施例でのダンパー７は速度依存
型のオイルダンパーを使用していると共に、レベルセン
サー６は磁気変化で検出するもの使用している。

【００１５】このような構成からなる本発明の制震床構
造１によれば、上下方向に１Hz以下の固有振動数をもつ
バネ部材５を使用することで、３Hz以下の低い振動数を
有する床部材２の振動制御を行う。

【００１６】また磁気変化で検出するレベルセンサー６
の高さ情報に基づいてバネ部材５の内圧を調整すること
で、バネ部材５で支持する床部材２を一定の高さに保
ち、展示物, 移動機器, 人間等（図示せず）の変動荷重
に対する処理を行う。

【００１７】さらに大きなはねだし部分がある場合で、
平面的で不均一な上下方向の加速度分布が生ずる床部材
２に対しては、小振幅から大振幅までの線形特性を有す
るバネ部材５を用いることにより、床部材２の不陸を押
えることで対処する。

【００１８】また上下方向の振動に対処するための、水
平方向のせん断力の処理は、上下方向にはせん断受け材
４であるガイドレール９および摺動ブロック11によりス
ムーズに働くようにし、水平方向にはせん断受け材４で
あるガイドレール９により拘束することで行う。

【００１９】また速度依存型のダンパー７を使用するこ
とにより、通常時における歩行感覚を確保する。

【００２０】なお図２にこの発明の制震床装置１におけ
る各バネ部材５の配置状態を示す。

【００２１】また図１において符号12は壁で、符号13は
周辺壁緩衝ゾーンで、符号14はバネ部材５用配管で、符
号15は構造床である。

【００２２】

【発明の効果】この発明によれば、水平方向の振動に加
え上下方向の振動が卓越するためこの振動を緩衝，軽減
できるように、水平方向に対して拘束した，即ちせん断
受け材を設けたバネ部材を用いると共に、レベルセンサ
ーおよびダンパーを設けることで制震床装置を構成す
る。

【００２３】そしてこの制震床装置によって、床構造の
上下方向への振動に対して制震することができる。その
ため大きな床架構の構造物における床の、低い振動数，
変動荷重，平面的不均一な上下方向の加速度分布，水平
方向のせん断力，歩行感覚等の課題を解消することがで
きる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の大規模構造物における上下方向の制
震床装置を示す概略斜視図である。

【図２】この発明の制震床装置における各バネ部材の配
置状態を示す概略平面図である。

【符号の説明】

１…制震床装置、２…床部材、３…梁、４…せん断受け
材、５…バネ部材、６…レベルセンサー、７…ダンパ
ー、８…下部支持部、９…ガイドレール、10…弾性体、
11…摺動ブロック、12…壁、13…周辺壁緩衝ゾーン、14
…バネ部材用配管、15…構造床。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 古宇田 潔 東京都調布市飛田給２丁目19番１号 鹿 島建設株式会社技術研究所内 (72)発明者 五十殿 侑弘 東京都港区元赤坂１丁目２番７号 鹿島 建設株式会社内 (72)発明者 林 英雄 東京都港区元赤坂１丁目２番７号 鹿島 建設株式会社内 (72)発明者 宮村 正光 東京都港区元赤坂１丁目２番７号 鹿島 建設株式会社内 (72)発明者 神田 克久 東京都港区元赤坂１丁目２番７号 鹿島 建設株式会社内 (72)発明者 上村 隆一 東京都港区元赤坂１丁目３番８号 鹿島 建設株式会社東京支店内 (72)発明者 松里 征男 東京都清瀬市上清戸１−11−24 (72)発明者 鈴木 孝夫 東京都東村山市廻田町４−３−37

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 大きなスパンや持ち出しの大きい梁を有
   する大規模な構造物における上下方向の制震床装置であ
   り、 前記床構造における被制震部の床部材とこの床部材を支
   持する梁との間に複数配置した、上下方向に対して１Hz
   以下の固有振動数をもつと共に、水平方向への移動をせ
   ん断受け材で拘束してなるバネ部材と、このバネ部材に
   よる前記床部材の不陸を検出するレベルセンサーと、ダ
   ンパーとを備えてなり、 前記バネ部材の固有振動数とダンパーとにより、地震時
   に作用する上下方向の加速度を低減できるように構成さ
   れていることを特徴とする大規模構造物における上下方
   向の制震床装置。