JP2550617B2 - エステル系潤滑油組成物 - Google Patents

エステル系潤滑油組成物

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は不飽和脂肪酸ポリオールエステルを基油とし
た酸化安定性にすぐれるエステル系潤滑油組成物に関す
るものである。
〔従来の技術〕
脂肪酸のポリオールエステルは、従来より、潤滑油の
基油として広く用いられている。潤滑油はその目的上高
温で使用されることが多いため、酸化安定性が問題とな
りやすく、上記エステルを基油とした潤滑油では使用中
に酸価の増加や粘度の変化などが起きやすかつた。そこ
で、かかる酸化安定性の改善のため、上記エステル基油
中に酸化防止剤を含ませることがよく行われている。
このような酸化防止剤としては、たとえばジオクチル
ジフエニルアミン(特開昭53−27282号公報)、フエノ
チアジン(特開昭57−56520号公報)、N・N′−ジ第
二ブチル−p−フエニレンジアミン(特開昭53−42740
号公報)などの芳香族アミン類、1・1−ビス(4−ヒ
ドロキシフエニル)シクロヘキサン(特開昭57−135897
号公報)、4・4′−ビス−(2・6−ジイソプロピル
フエノール)(特開昭53−27282号公報)などのフエノ
ール類、アンチモンジアミルジチオカルバメート(特開
昭53−27282号公報)、ジンクジアミルジチオフオスフ
エート(特開昭53−42740号公報)などの金属塩類など
が知られている。
〔発明が解決しようとする問題点〕
しかるに、これら従来公知の酸化防止剤では、酸化安
定性の向上効果が低く、特にエステル基油がオレイン酸
に代表されるような不飽和脂肪酸を用いて合成されたポ
リオールエステルの場合、その分子内に熱的に不安定で
かつ酸化されやすい二重結合を有することが原因で、目
的とする酸化安定性の向上効果はほとんど望めなかつ
た。
したがつて、本発明は、上記従来の問題点に鑑み、不
飽和脂肪酸ポリオールエステルを基油としたエステル系
潤滑油組成物の酸化安定性の大幅な改善を図り、使用中
での酸価の増加や粘度の変化の少ない長寿命の上記潤滑
油組成物を提供することを目的としている。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意検討
を重ねた結果、エステル基油に配合する酸化防止剤とし
て特定のフエノール系酸化防止剤を二種組み合わせて使
用し、これらを上記の基油にそれぞれ特定量含ませるよ
うにしたときには、使用中での酸価の増加や粘度の変化
の少ない酸化安定性に非常にすぐれた長寿命のエステル
系潤滑油組成物が得られるものであることを知り、本発
明を完成するに至つた。
すなわち、本発明は、不飽和脂肪酸ポリオールエステ
ルを基油としたエステル系潤滑油組成物において、上記
の基油に対し2・6−ジ−tert−ブチル−フエノール、
2・6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、4・4−
メチレンビス(2・6−ジ−tert−ブチル−フエノー
ル)または2・5−ジ−tert−ブチル−ヒドロキノン
〔以下、これらを酸化防止剤Aと総称する〕を0.2〜1.8
重量%および4・4−ブチリデン−ビス(3−メチル−
6−tert−ブチル−フエノール)〔以下、これを酸化防
止剤Bという〕を0.1〜0.7重量%含有させたことを特徴
とするエステル系潤滑油組成物に係るものである。
このように、本発明では、上記の酸化防止剤Aと酸化
防止剤Bとからなる二種のフエノール系酸化防止剤を組
み合わせて使用し、かつエステル基油に対するこれらの
使用量を特定したときに、これら酸化防止剤の相乗効果
によつて、前記従来の酸化防止剤はもちろんのこと上記
の酸化防止剤Aと酸化防止剤Bとをそれぞれ単独で用い
たものに較べて、格段にすぐれた酸化安定性が得られる
ことを見い出したのものである。
本発明によつて奏せられるかかる相乗効果がいかなる
理由に基づくのかは、今のところ必ずしも明らかとはい
えない。後記の比較例にて示すように、フエノール系酸
化防止剤同志の組み合わせでも、本発明以外の組み合わ
せでは、上記の如き相乗効果はほとんど認められない。
このことからも、本発明の上記特定の組み合わせが、特
定の使用量のもとに、不飽和脂肪酸ポリオールエステル
からなる基油に対しその酸化劣化を効果的に防ぐ特別な
化学的作用をもたらすものと推定される。
〔発明の構成・作用〕
本発明において基油として用いられる不飽和脂肪酸ポ
リオールエステルは、不飽和脂肪酸(モノカルボン酸)
とポリオールとの多価エステルであつて、通常上記の両
原料を化学量論比で混合し、必要に応じて適宜のエステ
ル化触媒を用いて、150〜250℃の温度で直接エステル化
することにより、得られるものである。
上記の不飽和脂肪酸は、分子内に炭素−炭素二重結合
を1個有する炭素数が12〜22程度の不飽和脂肪酸を主成
分として含むものであればよく、したがつて飽和脂肪酸
と不飽和脂肪酸との混合物であつてもよい。一般には、
オレイン酸を主成分とする脂肪酸が用いられ、その純度
は70重量%以上であり、オレイン酸以外の他の成分とし
て炭素数12〜22の飽和または不飽和脂肪酸が含まれる。
また、上記のポリオールは、分子内に2〜4個の水酸基
を有するネオペンタン炭素骨格構造を持つものが好まし
く、具体的にはネオペンチルグリコール、トリメチロー
ルプロパン、ペンタエリスリトールなどがある。
本発明において上記の基油に含ませる一方の酸化防止
剤Aは、2・6−ジ−tert−ブチル−フエノール、2・
6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、4・4−メチ
レンビス(2・6−ジ−tert−ブチル−フエノール)ま
たは2・5−ジ−tert−ブチル−ヒドロキノンであり、
これら酸化防止剤のうちの一種または二種以上を使用す
る。この酸化防止剤Aの使用量は、基油に対し0.2〜1.8
重量%、好適には0.5〜1.5重量%の範囲とすべきであ
り、これより過少でもまた過多となつても酸化安定性の
改善に好結果が得られない。
また、本発明において上記の基油に含ませる他方の酸
化防止剤Bは、4・4−ブチリデン−ビス(3−メチル
−6−tert−ブチル−フエノール)であり、その使用量
は、基油に対し0.1〜0.7重量%、好適には0.1〜0.5重量
%の範囲とすべきである。これより過少でもまた過多と
なつても酸化安定性の改善にやはり好ましい結果が得ら
れない。
本発明のエステル系潤滑油組成物は、上記の基油およ
び酸化防止剤A,Bを必須成分とするが、必要に応じて他
の公知の各種添加剤、たとえば粘度指数向上剤、油性向
上剤、極圧添加剤、摩耗防止剤、流動点降下剤、清浄
剤、金属不活性化剤、防蝕剤、防錆剤、防水剤、乳化
剤、消泡剤、色相安定剤、着色剤、螢光剤、賦香剤など
を任意成分として含ませることができる。また、本発明
の効果を妨げることのない限り、前記酸化防止剤A,B以
外の他の公知の酸化防止剤を含ませるようにしても差し
支えない。
〔発明の効果〕
本発明のエステル系潤滑油組成物は、酸化安定性にす
ぐれており、使用中での酸価の増加や粘度の変化が少な
く、かつ色相の変化も少ない長寿命のものであるため、
作動油、自動車エンジン油、トランスミツシヨン油、圧
延油などの広範囲の用途に用いることができる。
〔実施例〕
つぎに、本発明の実施例を記載してより具体的に説明
する。
実施例1 トリメチロールプロパンのオレイン酸エステルとペン
タエリスリトールのオレイン酸エステルとを重量比1:1
で混合して、基油とした。この基油の特性値は、下記の
第1表に示されるとおりであつた。
上記の基油に、2・6−ジ−tert−ブチル−フエノー
ル〔酸化防止剤A〕0.5重量%と、4・4−ブチリデン
−ビス(3−メチル−6−tert−ブチル−フエノール)
〔酸化防止剤B〕0.1重量%とを添加し、均一に溶解混
合して、本発明のエステル系潤滑油組成物とした。
実施例2 酸化防止剤Aとして2・6−ジ−tert−ブチル−p−
クレゾールを用い、これを0.5重量%添加するようにし
た以外は、実施例1と同様にして、本発明のエステル系
潤滑油組成物を得た。
実施例3 酸化防止剤Aとして4・4−メチレンビス(2・6−
ジ−tert−ブチル−フエノール)を用い、これを0.5重
量%添加するようにした以外は、実施例1と同様にし
て、本発明のエステル系潤滑油組成物を得た。
実施例4 酸化防止剤Aとして2・5−ジ−tert−ブチル−ヒド
ロキノンを用い、これを0.5重量%添加するようにした
以外は、実施例1と同様にして、本発明のエステル系潤
滑油組成物を得た。
比較例1 酸化防止剤を全く添加せず、基油のみで比較用のエス
テル系潤滑油組成物とした。
上記実施例1〜4および比較例1の各潤滑油組成物に
つき、下記の要領で酸化安定性試験を行つて、その酸化
安定度(酸価および粘度の変化)を下記の方法で測定評
価した。結果は、後記の第2表に示されるとおりであつ
た。
<酸化安定性試験> JISK−2514の内燃機関用潤滑油酸化安定度試験方法の
一部を変更し、温度150℃で6時間の酸化条件とした以
外は、上記の試験方法に準じて行つた。詳しくは、試料
容器に触媒として銅片(厚さ0.5mm,幅26mm,長さ60.8m
m)と鋼片(厚さ0.5mm,幅26mm,長さ121.8mm)を円形状
の輪にしていれ、この試料容器に室温で250mlの試料を
秤りとり、これを本体保持具に取り付け、さらに試料か
き混ぜ棒を羽根の下端が容器底部から10mm上になるよう
に回転子に取り付けて試料容器のフタをしたのち、150
℃で6時間撹拌して酸化させ、その後室温まで冷却して
測定用試料とした。
<酸化安定度の測定評価> 上記試験後の測定用試料(酸化油)と試験前の測定用
試料(未酸化油)とにつき、それぞれ全酸価と40℃にお
ける動粘度を測定して、下記の式にしたがつて酸価差お
よび粘度比を求め、これら酸価差および粘度比により酸
化安定度の評価を行つた。すなわち、これらの値が小さ
いほど酸化安定性にすぐれていることを意味する。
酸価差=試験後の全酸価−試験前の全酸価 上記第2表の結果から明らかなように、本発明の酸化
防止剤A,Bを組み合わせ使用することにより、比較例1
に係る酸化防止剤無添加のエステル系潤滑油組成物の酸
化安定性を大幅に向上できるものであることが判る。
実施例5 酸化防止剤Aとしての2・6−ジ−tert−ブチルフエ
ノールの添加量を種々変更した以外は、実施例1と同様
にして数種のエステル系潤滑油組成物をつくり、上記酸
化防止剤Aの使用量と酸化安定度(前記同様の酸価差お
よび粘度比)との関係を調べた。結果は、第1図に示さ
れるとおりであつた。同図中、曲線−1aは酸価差、曲線
−1bは粘度比である。
第1図から明らかなように、酸化防止剤Aの添加量を
0.2〜1.8重量%、特に好適には0.5〜1.5重量%の範囲と
することにより、酸化安定性にすぐれるエステル系潤滑
油組成物が得られるものであることが判る。
実施例6 酸化防止剤Bとしての4・4−ブチリデン−ビス(3
−メチル−6−tert−ブチル−フエノール)の添加量を
種々変更した以外は、実施例1と同様にして数種のエス
テル系潤滑油組成物をつくり、上記酸化防止剤Bの使用
量と酸化安定度(前記同様の酸価差および粘度比)との
関係を調べた。結果は、第2図に示されるとおりであつ
た。同図中、曲線−2aは酸価差、曲線−2bは粘度比であ
る。
第2図から明らかなように、酸化防止剤Bの添加量を
0.1〜0.7重量%、特に好適には0.1〜0.5重量%の範囲と
することにより、酸化安定性にすぐれるエステル系潤滑
油組成物が得られるものであることが判る。
比較例2 酸化防止剤Aを添加しなかつた以外は、実施例1と同
様にして、比較用のエステル系潤滑油組成物を得た。
比較例3 酸化防止剤Bを添加しなかつた以外は、実施例1と同
様にして、比較用のエステル系潤滑油組成物を得た。
比較例4 酸化防止剤Bを添加しなかつた以外は、実施例2と同
様にして、比較用のエステル系潤滑油組成物を得た。
比較例5 酸化防止剤Bを添加しなかつた以外は、実施例3と同
様にして、比較用のエステル系潤滑油組成物を得た。
比較例6 酸化防止剤Bを添加しなかつた以外は、実施例4と同
様にして、比較用のエステル系潤滑油組成物を得た。
比較例7 酸化防止剤Aに代えて2・4−ジ−tert−ブチル−フ
エノールを用い、これを0.5重量%添加するようにした
以外は、実施例1と同様にして、比較用のエステル系潤
滑油組成物を得た。
比較例8 酸化防止剤Aに代えて2−tert−ブチル−p−クレゾ
ールを用い、これを0.5重量%添加するようにした以外
は、実施例1と同様にして、比較用のエステル系潤滑油
組成物を得た。
比較例9 酸化防止剤Aに代えてカテコールを用い、これを0.5
重量%添加するようにした以外は、実施例1と同様にし
て、比較用のエステル系潤滑油組成物を得た。
比較例10 酸化防止剤Aに代えてp−tert−ブチル−カテコール
を用い、これを0.5重量%添加するようにした以外は、
実施例1と同様にして、比較用のエステル系潤滑油組成
物を得た。
比較例11 酸化防止剤Aに代えて1・1−ビス(4−ヒドロキシ
フエニル)シクロヘキサンを用い、これを0.5重量%添
加するようにした以外は、実施例1と同様にして、比較
用のエステル系潤滑油組成物を得た。
比較例12 酸化防止剤Aに代えて4−tert−ブチル−フエノール
−サリチレイトを使用し、これを0.5重量%添加するよ
うにした以外は、実施例1と同様にして、比較用のエス
テル系潤滑油組成物を得た。
比較例13 酸化防止剤Aに代えて2−ヒドロキシ−4−メトキシ
ベンゾフエノンを用い、これを0.5重量%添加するよう
にした以外は、実施例1と同様にして、比較用のエステ
ル系潤滑油組成物を得た。
比較例14 酸化防止剤Aに代えて2・4−ジヒドロキシ−ベンゾ
フエノンを用い、これを0.5重量%添加するようにした
以外は、実施例1と同様にして、比較用のエステル系潤
滑油組成物を得た。
比較例15 酸化防止剤Aに代えて2・2′−ジヒドロキシ−4−
メトキシ−ベンゾフノンを用い、これを0.5重量%添加
するようにした以外は、実施例1と同様にして、比較用
のエステル系潤滑油組成物を得た。
上記の比較例2〜15の各潤滑油組成物につき、前記と
同様にして酸化安定性試験を行い、その酸化安定度を調
べた。結果は、つぎの第3表に示されるとおりであつ
た。なお、同表には、参考のために、前記比較例1の結
果をも併記した。
上記第3表の結果から明らかなように、酸化防止剤A,
Bをそれぞれ単独で用いた場合(比較例2〜6)および
二種の酸化防止剤を併用するときでも本発明以外の組み
合わせとする場合(比較例7〜15)は、いずれも比較例
1に係る酸化防止剤無添加のエステル系潤滑油組成物の
酸化安定性を、前記本発明のように大幅に改善できず、
特に上記の比較例7〜15においては酸化安定性が却つて
低下するものも認められることが判る。
【図面の簡単な説明】 第1図は実施例5のエステル系潤滑油組成物における酸
化防止剤A(2・6−ジ−tert−ブチルフエノール)の
添加量と酸化安定度(酸価差および粘度比)との関係を
示す特性図、第2図は実施例6のエステル系潤滑油組成
物における酸化防止剤B〔4・4−ブチリデン−ビス
(3−メチル−6−tert−ブチル−フエノール)〕の添
加量と酸化安定度(酸価差および粘度比)との関係を示
す特性図である。 曲線−1a……酸化防止剤Aの添加量と酸価差との関係を
示す特性曲線 曲線−1b……酸化防止剤Aの添加量と粘度比との関係を
示す特性曲線 曲線−2a……酸化防止剤Bの添加量と酸価差との関係を
示す特性曲線 曲線−2b……酸化防止剤Bの添加量と粘度比との関係を
示す特性曲線
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C10M 129:24) C10N 30:10 40:04 40:08 40:24 40:25

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】不飽和脂肪酸ポリオールエステルを基油と
    したエステル系潤滑油組成物において、上記の基油に対
    し2・6−ジ−tert−ブチル−フエノール、2・6−ジ
    −tert−ブチル−p−クレゾール、4・4−メチレンビ
    ス(2・6−ジ−tert−ブチル−フエノール)または2
    ・5−ジ−tert−ブチル−ヒドロキノンを0.2〜1.8重量
    %および4・4−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−
    tert−ブチル−フエノール)を0.1〜0.7重量%含有させ
    たことを特徴とするエステル系潤滑油組成物。
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