JP2548165Y2 - 射出成形用金型 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、射出成形用金型に関す
る。更に詳述すると、本考案は、成形品の離型時の突出
し方向に引掛かりを生ずる成形品例えば自在継手用ブー
ツ等の蛇腹状円筒製品を成形する射出成形用金型の成形
品取出し機構の改良に関する。尚、本明細書において蛇
腹状製品とは一段以上の異径部ないしくびれ部を有する
筒状体を含むものとする。

【０００２】

【従来の技術】自動車用等速ジョイント用ブーツ（ＣＶ
Ｊブーツ）などの蛇腹状円筒製品を射出成形用金型で成
形する場合、従来は例えば図３の（Ａ）あるいは（Ｂ）
に示すような金型を用いて行われている。この金型は少
なくとも２分割可能な割型からなる外型１０１，１０１
とその中において製品形状に等しいキャビティ１０２を
形成する中子型１０３とから成る。中子型１０３には、
成形品の取出しを容易にするため、中子型１０３の先端
から長手方向に突き出る突出し棒１０４が備えられると
共にその突出し棒１０４と中子型１０３との間の隙間Ｓ
から突き出し時に圧縮空気を吹出すエアー吹出し機構が
形成されている。突出し棒１０４の移動に伴って隙間Ｓ
から吹き出される圧縮空気は成形品を中子型１０３から
浮き上がらせて突き出し方向に押し出す。これによっ
て、ブーツの先端部分を突出し棒１０４で突き出しなが
ら圧縮空気をブーツの大径側（後端側）に廻してその圧
力でブーツを吹き飛ばし中子型１０３から取出すように
している。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】しかしながら、この従
来の成形品取出し方式によると、圧縮空気の吹出し部が
中子型１０３の先端の１個所に集中しているため、吹き
出した圧縮空気が成形品と中子型１０３との間に生ずる
隙間内を逆流して大径部側に到達するまでに、成形品と
ランナとの境界の薄肉のゲート部分あるいは成形品その
ものの薄肉部に圧力が集中して離型前にその部分を破損
させることがある。

【０００４】特に、このことは合成樹脂を射出する場合
問題となる。合成樹脂の場合、ゴムに比べれば一般に硬
いため変形し難い（膨らみ難い）問題がある。しかも、
射出成形であるため最終の製品形状そのものに成形しな
けばならない。このため、突出し方向に引掛かりが生ず
る蛇腹状の成形品の場合、ブロー成形とは異なって中子
型１０３から成形品を取出すには難しい問題があった。
即ち、成形品の谷部分は中子型１０３の山部を乗り越え
なければ取出すことができずかなり膨らまなければ取出
しが不可能であるため、ゴムに比べて一般に硬い合成樹
脂の場合、取出しが困難であり山谷の差が大きな製品は
得ることができなかった。

【０００５】本考案は、蛇腹状製品であっても成形品の
取出しが容易な射出成形用金型を提供することを目的と
する。

【０００６】

【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するた
め、本考案は、外型と中子型とから成り、中子型内に突
出し棒を設け中子型の内側から突出し用の流体を吐出す
る射出成形用金型において、中子型を前記突出し棒の移
動方向に分割した複数の中子駒で構成し、かつ突出し棒
に中子駒が各々突き出し方向に移動できるように支持す
ると共に突出し棒の突き出し移動の際に中子駒と突出し
棒とが各中子駒ごとに異なる位置で当接する段部を設
け、各中子駒同士の間に生ずる隙間から突出し用流体を
必要に応じて吐出するようにしている。

【０００７】

【作用】したがって、射出成形後に中子型から成形品を
取外すには、突出し棒を突き出しながら突出し用流体を
中子型内に供給する。突出し棒の移動に伴って突出し棒
先端に固定されている中子駒とその次段の中子駒との間
に移動方向（軸方向）に隙間が生じ、この隙間から突出
し用流体例えば圧縮空気が吹き出される。更に突出し棒
が突き出されるにしたがって突出し棒の段部が各々対応
する中子駒に当接してこれらを順次突き出すため、互い
に隣る中子駒間に隙間が形成され各々の隙間から必要に
応じて突出し用流体が吹き出される。このため、成形品
の各山部あるいは谷部の近傍から突出し用流体が吹き出
され瞬時に成形品の全体にしかも均一に突出し用流体が
回り込み成形品を中子表面から浮上させる。そして、突
出し棒による突き出しと相俟って成形品を流体圧によっ
て中子型から離脱させる。

【０００８】一方、成形品を離型させた後の中子駒は突
出し棒の後退（引き込み）によって突出し棒の先端に固
定された中子駒に順次密着され、隙間のない中子型を構
成する。そして、再び外型内に挿入される。

【０００９】

【実施例】以下、本考案の構成を図面に示す実施例に基
づいて詳細に説明する。尚、本実施例は、全体に円錐形
を成す蛇腹状の胴部の両端に大径の円筒部と小径の円筒
部を有する等速ジョイント用ブーツに適用している。

【００１０】図２に本考案の射出成形用金型の一実施例
を示す。この射出成形用金型は、分割可能な外型１と、
該外型１との間で成形品１８と同じ形状のキャビティ２
を構成する中子型３と、先端部が中子型３の一部を構成
し中子型３内を突出し方向に貫通して移動可能に設けら
れる突出し棒４とから構成されている。

【００１１】外型１は通常少なくとも２分割される分割
型から構成され、キャビティ２の小径側にスプル１３，
ランナ１４及びゲート１５が形成されている。

【００１２】中子型３は突出し棒４の突出し方向に分割
された複数の中子駒５，５，…，５から構成されてい
る。この中子駒５，５，…，５は中央に配置された突出
し棒４に各々軸方向に移動可能に嵌合され支持されてい
る。この中子駒５，５，…，５のうちゲート１５が設け
られている小径部側のものは、突出し棒４の先端に例え
ば締付けビス１６などによって取付けられ突出し棒４と
共に移動する。また、大径側の後端の中子駒５は、図示
していない中子型支持部材に固定され、突出し棒４の動
きとは無関係に一定位置に固定されている。更に、両端
の中子駒を除く他の中子駒５，５，…，５は、それぞれ
突出し棒４に形成された段部６，６，…，６に当接した
際にのみ突出し棒４と連動するように設けられている。
この中子駒５，５，…，５は、突出し棒４が突き出され
た際に前後の中子駒５，５の間に隙間７，７，…，７が
形成されるように分割されている。例えば、本実施例の
場合、分割面１７は、谷部１１の近傍の斜面１２部分に
おいて突出し棒４に対してほぼ４５°で傾斜した円錐形
の分割面１７ａと、径方向の分割面１７ｂと、軸方向の
円筒型の分割面１７ｃ及び径方向の分割面１７ｄとで構
成されている。そして、各中子駒５，５，…，５は前の
段の中子駒５の軸方向分割面１７ｃをガイド面として軸
方向に移動可能に設けられている。また、突出し棒４は
各中子駒５，５，…，５毎に径を異ならせ、先端よりも
後端側に向かうほど径が段々に大きくなるように形成さ
れている。したがって、各段の長さを変更することによ
って中子駒５，５，…，５が軸方向に開かれたときの隙
間７の大きさ及び中子駒５による突出し量を中子駒５，
５，…，５ごとに変更することができる。例えば、離型
し難い部分（成形品の一部分）の突出し量を大きくする
ため、部分的に中子駒５の移動量を大きく設定して機械
的に成形品を抜き出させる場合に効果的である。また、
各中子駒５，５，…，５の軸方向分割面１７ｃ部分には
突出し用の流体例えば圧縮空気を通過させる通気口８が
設けられている。この通気口８は本実施例の場合、全て
の中子駒５，５，…，５に設けられているが、特にこれ
に限定されるものではなく必要に応じて任意の駒に設け
ることもある。また、突出し棒４と中子駒５，５，…，
５との間には離型用の流体例えば圧縮空気等を導入する
ための通気路９が設けられ、突出し棒４の駆動によって
中子駒５，５，…，５が突き出された時に生じる隙間
７，７，…，７から各中子駒５，５，…，５の通気口８
を経てキャビティ２内に空気がそれぞれ吹き出されるエ
アー吹出し機構が構成されている。

【００１３】尚、上述の実施例は本考案の好適な実施の
一例ではあるがこれに限定されるものではなく本考案の
要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能であ
る。例えば、本考案が適用される製品は図示のブーツに
特に限定されず両端の口径が同じ大きさの蛇腹状製品あ
るいは少なくとも一段以上の異径部若しくはくびれ部を
有する蛇腹状製品や流体の吹き出しによる突き出しを行
いつつ突出し棒で成形品の突き出しを行う必要がある製
品の全てに応用可能である。また、中子駒５，５，…，
５の分割は成形品の蛇腹部分を形成する各山ごとに分割
しているが、特にこれに限定されるものではなく、１山
を３分割以上にしたりあるいは２山以上ごとに分割する
ようにしても良い。また、分割位置は本実施例のごと
く、谷部１１から僅かにずれた斜面部１２で分割すると
きには成形品の谷部にバリが発生することがなくブーツ
製品の性能に影響を与えないという利点を有するが、特
にこれに限定されるものではなく、谷部や山部にバリが
発生しても問題とならない製品の場合には谷部１１や山
部１０で分割しても良い。しかし、山部１０あるいはそ
の近傍での型の分割は型の肉厚を薄くするため型の変形
を招き易いことからそのことへの対処が必要である。ま
た、本実施例のごとく斜面部１２で分割する場合、射出
成形時に溶融材料の射出圧を受けて分割面が閉じられる
ためバリができ難いという利点を有する。

【００１４】以上のように構成された本考案の射出成形
用金型によると、蛇腹状成形品は次のようにして中子型
３から取り出される。

【００１５】外型１とこの内側に収容される中子型３と
の間のキャビティ２に射出材料例えば合成樹脂を射出成
形機のノズルから射出して得られた所望形状の成形品１
８は外型１を分割して中子型３ごと外型１から取出され
た後、突出し棒４を突出すことによって、中子型３から
取外される。突出し棒４の突き出しによって、その先端
の中子駒５は勿論のこと、それ以降の中子駒５，５，
…，５も突出し棒４の段部６に当たって順次押し出さ
れ、中子型５，５，…，５が軸方向に分割されて隣る中
子駒５，５の間の隙間７から突出し用の流体が吹出され
る。この動きは突出し棒４の突出し速度にもよるが、通
常突出し棒４の瞬間的な突き出しによって成形品１８は
軸方向へ押し出されると共に各中子駒５，５，…，５が
押し出されることによって、成形品１８の各谷部も前方
へ押出され、成形品１８を中子型３から取出す力が付与
される。これと同時に成形品１８の全域において均一に
流体圧がかかるため成形品１８が変形しながら中子駒
５，５，…，５の各山部１０，１０，…，１０を乗り越
えて吹き飛ばされる。

【００１６】

【考案の効果】以上の説明より明らかなように、本考案
の射出成形用金型は、中子型を突出し棒の移動方向に分
割した複数の中子駒で構成し、かつ突出し棒に中子駒が
各々突き出し方向に移動できるように支持すると共に突
出し棒の突き出し移動の際に中子駒と突出し棒とが各中
子駒ごとに異なる位置で当接する段部を設け、各中子駒
同士の間に生ずる隙間から突出し用流体を必要に応じて
吐出するようにしたので、突出し棒の突出し移動に伴っ
て突出し棒の段部が各々対応する中子駒に当接してこれ
らを順次押し出し、中子型を突出し方向に複数に分割し
て各々の分割隙間から必要に応じて突出し用流体を吹き
出させ、成形品全体に瞬時にしかも均一に流体を回り込
ませて成形品を吹き飛ばすことができる。即ち、突出し
棒の突き出しによって成形品の各谷部あるいは山部の近
傍を各々中子駒で突出すのと相俟って成形品を流体圧に
よって中子型から容易に離脱させる。

【００１７】したがって、成形品の一部に高い圧力が集
中して作用することがなく、全体に均一な圧力で成形品
は吹き飛ばされ離型される。特に、変形し難い合成樹脂
材料で成形された蛇腹状製品の場合でも、部分的に離型
し難い箇所の突出し量を大きくすることができるので取
出しが容易になる。

【図面の簡単な説明】

【図１】中子型の一実施例を示す中央縦断面図で、成形
品取出し状態で示す。

【図２】本考案の射出成形金型の一実施例を示す中央縦
断面図である。

【図３】（Ａ）及び（Ｂ）は従来の射出成形用金型の一
例を示す説明図である。

【符号の説明】

１ 外型 ３ 中子型 ４ 突出し棒 ５ 中子駒 ６ 突出し棒の段部 ７ 中子駒間に生ずる隙間 ８ 通気口 ９ 突出し用流体供給のための通気路

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.⁶ 識別記号 庁内整理番号 ＦＩ 技術表示箇所 Ｂ２９Ｌ 31:24

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 外型と中子型とから成り、中子型内に突
   出し棒を設け中子型の内側から突き出し用の流体を吐出
   する射出成形用金型において、前記中子型を前記突出し
   棒の移動方向に分割した複数の中子駒で構成し、かつ前
   記突出し棒に前記中子駒が各々突き出し方向に移動でき
   るように支持すると共に前記突出し棒の突き出し移動の
   際に前記中子駒と突出し棒とが各中子駒ごとに異なる位
   置で当接する段部を設け、各中子駒同士の間に生ずる隙
   間から前記突出し用流体を必要に応じて吐出することを
   特徴とする射出成形用金型。